海上
私「……これで最後か」
甲板から周りを見渡しながら呟く。
辺りには戦艦や護衛艦が沈んでいく様子が見える。
艦隊で巣に攻撃を仕掛けて来たので、宣言通り全てを沈めさせてもらった。
私「さて、と」
海兵「ぐ、ぐ……」
私に胸倉を掴まれ苦しそうに呻く海兵。
今、この戦艦にいるのはもうコイツだけだ。
私「ふん」
ぽい、と海に放り投げる。
海兵「うわあああぁぁぁぁ……」
ザボン!
そっと海を覗き込むと、先にボートや浮輪と共に捨てた他の海兵達が今落下した男を救出しているのが見えた。
この戦い、恐らく人間側に死者はいない。
殺す前に私が海にボートなどと共に放り投げているからだ。
確かに怪我人はいるかもしれないが、命にかかわる怪我をした海兵はいないだろう。
昔の私なら間違いなくこの近海は血で染まったことだろう。
何故変わったか、それは間違いなく――
私「……さあ沈めるか」
首を左右に振って考えるのを止める。
考えていてもしょうがないことだ。もう彼女達とは決別したのだから。
体制を低くし右手を力を込める。
戦艦といってもこの船は小さい。断艦を使う必要もない。
ガゴン!
と、鈍い音と共に戦艦は割れる。
同時に足場が傾いてきたので海に落ちる前に足を変化させ空へと飛ぶ。
海面を見ると海兵達が忌々しそうに私を睨みつけているのが見えた。
私「……彼女達に感謝してもしたりないぞ?」
吐き捨てるように呟くと、巣にもどることにした。
ネウロイの巣
巣に帰るとネウ子が何やら作っていた。
よほど集中して作っているのか、私が近付いても気付きもしない。
私「何作ってるんだ?」
肩に手を置く。
ネウ子(もっきゃー!?)
聞いたことのない声と共にネウ子は背筋を伸ばした。
ネウ子(お、おおおおお、脅かさないでヨ! コアに悪いよコアに!)
手をブンブンと振りながらネウ子が言う。
私「でもお前のコアってそこの大きい奴じゃないのか?」
ネウ子(気分の問題なの気分の!)
ネウ子は腰に腕を当てて胸を前に出す。
私「ああそうかそうかそれは悪かったな」
ネウ子(もーなんで棒読みなのさ!)
腕を上下して怒るネウ子を無視して、後ろにある何かを確認する。
私「ガラス……か?」
そこには一枚の薄い板の様なものがあった。
地面も黒いので分かりにくかったが、どうやらそれは黒色をしているようだ。
ネウ子(ああもうこれは秘密兵器なの! 秘密だからキミにはまだみせれないの!)
ネウ子は板をどこかへ隠す。
どうやら本当に重要なものらしい。まあ、この状況で遊んでいる余裕は流石に無いだろう。
私「……ところで、基地の様子はどうだ?」
最初の一週間は泣いてたことに凹んでしまい、まともに様子を見ることが出来なかった。
なので基地を確認するのは実は今日が
初めてだったりする。
ネウ子(特に変わりは無いかな。多分彼女達はボク達と戦うつもりだ)
私「当たり前だろ? なにせあいつらは――」
ネウ子(……嬉しそうだね)
ネウ子の言葉にはっとして口を閉じる。
ネウ子(ああ、変わったといえばさ)
ネウ子が指を鳴らすと、空間に映像が映し出された。
月が出ていることから夜の屋外のようだ。
視点は段々下に下がって行き、滑走路を映し出した。
私「……」
そこには彼女が、ルッキーニが膝を抱えて座っていた。
ネウ子(ここ一週間毎日夜になると彼女はここに来るんだ。少しして誰かに部屋に戻されてるみたいだけど)
私「……そうか」
魔力を奪われたのが原因で落ち込んでいるのだろう。
ネウ子(ねえ、一度会ってみたら?)
画面を見つめる私の肩をネウ子が叩いた。
夜 501基地付近
結局あれからなすがまま流されるまま、会いに行くことになってしまった。
ネウロイとばれているのでコアを隠す必要はないが、坂本やサーニャに見つかると厄介だ。
今はサーニャの他にも別のメンバーも一緒に飛んでいる可能性が高い。
私「しかし……」
今更ながら会ったとして何を言えばいいんだ。
私は魔力を奪った張本人だぞ。
それでも会いたいという気持ちは滑走路に近づけば近づくほど大きくなる。
私「……いた」
ずっと下に、映像と同じように膝を抱えて座っているルッキーニが見えた。
少しずつ音を立てないように降下して、ルッキーニの背後へと降りる。
私「ルッキーニ」
背中がピクリと反応してゆっくりとこちらを振り向く。
ルッキーニ「……私?」
立ち上がるとふらふらした足取りでこちらへ近づいてくる。
目に涙を浮かべながら少しずつ少しずつ。
きっと殴られるだろう。それほどのことを私はしたのだから。
目を瞑りその瞬間を待つ。
しかし、私の想像とは裏腹に、痛みはいつまで経ってもやってこない。
それどころか胸の当りに暖かいものを感じる。
恐る恐る目を開くと、そこには抱きついて泣きじゃくるルッキーニがいた。
ルッキーニ「あ、ああ、うじゅ……ぐしゅっ……うあああああああん!」
私はただ、泣きやむまでルッキーニの頭を撫でてやることしかできなかった。
数分後
滑走路の先に二人で並んで座った。
ルッキーニは泣きやんで、赤くなった目でじっと海を見つめている。
私「……恨まないのか?」
私が先に口を開く。
ルッキーニ「ううん」
意外にもルッキーニは首を横に振った。
ルッキーニ「なんとなくだけどわかってた。私は普通の人じゃないってこと」
私「……結構努力したんだぞ? わからないように色々とな」
ルッキーニ「でも、少しずれてたよ」
ルッキーニは笑う。
それは私が仲間だったときのことを思い出してのことだろう。
私「魔力のこと……すまなかったな」
ルッキーニ「ねえ、なんで魔力を奪ったの?」
私「……だ」
ルッキーニ「え?」
聞き取れなかったようでルッキーニが顔を近づけてくる。
私「……お前と戦いたくなかったからだ」
私の復讐の対象はウィッチと軍人。
魔力が無くなった彼女はウィッチではなくなる。
また幼い彼女は恐らく1カ月以内に軍をやめさせられることになるだろうと思ったからだ。
一部を除いて退役したウィッチや軍人は復讐の対象ではない。
しかしそれは私の願望や考えだ。私は彼女の翼を奪ってしまった。
ルッキーニ「そっか……」
それだけ言ってルッキーニはまた海を見る。
私「……」
言いたい。言ってしまいたい。私の感情を全て。
だが駄目だ。私に言う資格なんてない。
潮風が髪を撫でる。
私「なあ……」
ルッキーニ「なに?」
私「……お前もネウロイにならないか?」
これは私の歪んだ望みなのかもしれない。
一緒にいたい。だが私と彼女はそもそも違う種族になっている。
私が人間に戻るのは不可能。ならば、彼女がこっちに来ればいい。
ルッキーニ「ヤダ」
きっぱりと答える。
私「だよなー」
私はルッキーニの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
きっと私もどこかでわかっていたのだろう。断られても哀しみも憎しみも何も感じなかった。
ただ、少しだけ羨ましく感じた。
どんな状況でも自分を貫き通す彼女が眩しかった。
私「……ん」
ふと背後に人の気配を感じ振り向く。
そこには
シャーリーが複雑な表情で立っていた。
私「シャーリー……」
シャーリー「ルッキーニ今日は寝ておけ」
シャーリーはルッキーニを立ち上がらせる。
ルッキーニ「……またね私」
何度もこちらを振り向きながらルッキーニは基地へと戻って行った。
シャーリーは先ほどまでルッキーニがいた場所に座る。
私「……お前は憎くないのか?」
シャーリー「さっきまで一番の被害者のルッキーニが話してたんだ。あたしがどうこういう問題じゃないさ」
私「そうか……」
シャーリー「ホントの所、一発殴ってやりたいところだけどな」
シャーリーは拳を握りしめる。
シャーリー「でもルッキーニが殴らないならあたしもそうする。……見つけたのがバルクホルンじゃなくてよかったな」
私「やっぱり相当憎まれるよなあ……」
シャーリー「もう原形とどめないくらい殴られるんじゃないか?」
私「だよなあ……」
乾いた笑いを二人して浮かべる。
少しだけ空気が緩くなった気がした。
シャーリー「……一ついいか?」
私「なんだ?」
シャーリー「どうして私はネウロイになったんだ? 元は人間だったんだろう?」
話すべきかどうか、私は少し悩んだが、話すことにした。
多分、シャーリーなら話しても構わないと前から思っていたからだろう。
それにルッキーニには少々重すぎる話だ。
私「……私の出身国はな、医学で有名な国だった。軍事力あたりは隠してたがな」
シャーリー「あの国だったな」
私「ああ。……主にその研究は軍が進めてたんだ。軍で研究されていた医療が国を大きくしていった」
私は事実を知った時の感情は生きている限り忘れられないだろう。
私「……科学者がなんでもできると知って、一番やりたい実験はなんだと思う?」
シャーリー「んー……」
シャーリーは悩むが直ぐに答えを出した。
シャーリー「まさか……人体実験か」
私「そう。あの国はネウロイとの戦いが終わった後に備えて、対人兵器を作っていたんだ。身寄りのない孤児を集め、様々な薬物を使ってな」
シャーリー「……なるほど」
私「全てを知った私は上官に言ったさ。直ぐに実験を止めろってな。何年も軍人として戦っていたのに知ったのは死ぬ前日だ。滑稽すぎて涙が出る」
私は頭を抱えながら吐き捨てるように言う。
私「そしたら上官はこう言ってきたんだ」
お前が国の近くにあるネウロイの巣を破壊できたなら実験を止める
私「私は次の日、部隊を率いて巣に攻撃に向かった。その中には私の妹もいた」
大きく息を吸い、吐く。
思い出しただけで気分が悪くなる。
私「巣の上空まで行ったところで、私は部隊の全員に背後から銃撃を受けた。もちろん妹も攻撃してきた」
シャーリーは信じられないといった表情で話を聞いている。
困ったことにこれは真実だ。事実は小説より奇なりといったところだろうか。
私「妹は知識欲に、他の連中は地位に負けて私を裏切ったよ。そして私は巣に落下して、目が覚めたらこうなっていた」
胸元のボタンをはずし、さらにその下に隠れたコアを露出させる。
私「悪いな。長い話につきあわせてしまって」
コアを直してボタンをとめる。
シャーリー「……その基地の人たちは」
私「ご想像の通りだ」
シャーリー「そうか……」
私「まあ、この話はこのくらいにしよう」
立ち上がりズボンについた砂を掃う。
私「あいつは、ルッキーニは強いな。魔力を失っても目は変わっていなかった。それが私には羨ましい」
シャーリー「私……」
私「シャーリー……私は待っている」
私は足をネウロイユニットにすると空へと浮かび上がる。
言葉の意味を理解したのかシャーリーは無言で頷いた。
私(……少し、寄り道をしよう)
私は巣へ直接戻らずに帰ることにした。
ネウロイの巣
帰ってくると再びネウ子が作業をしていた。
今度は気付いたのか振りかえる。
ネウ子(お帰りー……って、どうしたの?)
じろじろと私を上から下まで舐めまわすようにみてくる。
ネウ子(髪ほどけてるけど、リボン無くしたの?)
私「ちょっとした気分の変化だ。気にするな」
ネウ子(ふーん……そっか)
ネウ子は私の背後に回り込むと、髪を触り始めた。
ネウ子(……なにこの世界が嫉妬する髪)
髪を触るのを止めネウ子は再び作業に戻る。
ネウ子(多分今日の朝にはできるんじゃないかな)
私「さっきも聞いたが何作ってるんだ?」
ネウ子は何も言わず作業を続ける。
聞えなかったのかそれとも言いたくなかったのか私にはわからない。
私「……寝よう」
作業を続けるネウ子を見ながら私は目を閉じた。
朝 ネウロイの巣
ネウ子(できたー!)
私「んぁ?」
元気のよいネウ子の声に目が覚める。
気が緩み過ぎて口元から出た涎を服の袖で拭いながら立ち上がる。
私「出来たのか」
ネウ子(もちろん! ボクの科学力はネウロイ一!)
胸を張ってネウ子は体をそらした。
完成したそれは黒い箱だった。
巨大とも言えないが小さいとも言えない微妙な大きさをしている。
私「これが秘密兵器?」
とても私にはこれが特別な力がやどっているとは思えない。
中に入っている武器が秘密兵器なのかと思い開いてみるが、中身は入っていない。
まさかこれで殴りつけるのかと思って持ちあげる。大きさに反して多分その辺の小冊子よりも軽い。
私「……なんだこれ」
いや本当になんなのだろうこれは。
私「ネウ子これは一体……」
ネウ子(これはね、再生機)
箱に近づき頬ずりをする。
ネウ子(これに何かの欠片でもいいから入れておくと、元の形に再生するってわけさ)
私「確かにそれは秘密兵器だな」
私は素直に驚いた。
人間がこの技術を得るには恐らく後数百年はかかるだろう。
ネウ子(これにキミのコアの欠片を入れる)
私「何故だ?」
ネウ子は私に近づくと両肩を掴み顔を近づけてきた。
ネウ子(正直に言おう、ボク、いやわたしはキミに生きてもらいたい)
私「……まだ死ぬときまった訳じゃない」
ネウ子(いいや、キミは死ぬつもりだ。シャーロット・E・イェーガーの手によって倒される気だ)
どうやらネウ子は私達の会話を聞いていたようだ。
私「……盗み聞きなんてするもんじゃないぞ」
ネウ子(なんとでも言ってくれ)
私はため息をつくとネウ子の手を肩から離す。
私「確かに一度倒された後復活するのも悪くは無いさ」
ネウ子(ならどうしてだい!?)
もし声が出ていたなら部屋全体に響くようなテレパシーが頭の中に響いた。
私「でもな、それは私じゃないんだ。お前と今話して、彼女達と過ごした私じゃないんだ」
箱に手のひらを乗せて力を込め破壊する。
パリパリと薄い氷の割れるような音が空間に響いた。
ネウ子(そっか。……まあ、約束したしね。ボクはキミが選んだ道を一緒に歩くヨ)
私「悪いな」
ネウ子(そういうのは彼女達に言ってあげてヨね。……というか壊さないでほしかったなー。ボクも使うかもしれなかったのになー)
私「あー、それはその、……悪かった」
ネウ子(なんてね。気にしなくていいさ。ボクもすぐ追いかけるから)
ネウ子は私の腰に手を回し抱きしめてきた。
冷たいはずの彼女の体が何故か暖かく感じられた。
ネウ子(……行ってらっしゃい)
私「……ありがとう。ネウ子」
ネウ子から体を離し、外へつながる道へと歩きだす。
一度だけ振り返るとネウ子が手を振ってくれていた。
海上
コアを露出させ、腕を組みながらシャーリーを待つ。
背後にはネウロイの巣がある。もうあそこに戻ることは無いだろう。
一時間ほど前にコアの反応を大きくさせ、わざと感知させた。
それから少しも動いていないので恐らくシャーリーには伝わったはずだ。私が待っていると。
私「むぅ……海風が……」
髪を結んでいないので風で髪が乱れる。
まあ無い物をねだってもしょうがないので風にまかせるままに放っておくことにした。
私「来たか」
遠くから魔力の反応を感じた。
反応は1つ、そしてこの魔力のパターンからしてシャーリーに間違いない。
予想より少し時間がかかったのは、多分基地の連中を説得していたか、それともこっそり抜け出してきたかのどちらかだろう。
私「……しかし遅いな」
あまり速度は出していないようだ。
普段の彼女らしくないが、私は彼女には戦うとだけ言ったので、大量の武器を持っている可能性もある。
どちらにせよ私は適当に戦って死ぬ気なのであまり関係ないが。
私「ん……?」
ようやく肉眼で目視できるようになったが、どこか違和感を感じる。
少し影が大きいような気がする。手に武器を持っているのは判るが、背中にも何かがある。
目をネウロイ化させさらに確認する。
私「あれはまさか……!」
シャーリーの背に人がしがみついている。それも私がよく知る人物が。
ツインテールが風で揺れているのが見える。必死に風に耐えてしがみついているのが見える。
やがて二人は私の前で止まった。
私「……何故だ!? 何故来たルッキーニ!」
怒声を彼女達に浴びせる。
私「お前はもう魔力が無いんだ! お前は戦えないんだ!」
シャーリー「私、お前もわかってるはずだ」
私「何がだ!」
シャーリー「あたし達は決して諦めないってことをさ」
シャーリーが銃を構えるとルッキーニも左手に拳銃を持つ。
今にもルッキーニは落ちそうだが必死に耐えている。
ルッキーニ「あたしね、私があたしと戦いたくないから魔力を奪ったって聞いて、それから私とシャーリーが戦うって知ってすっごく悩んだ」
ルッキーニの目はあの時、出会ったときと同じように輝いている。
ルッキーニ「でもあたしは私と戦わなきゃって思った。嫌いだからじゃない、凄く大好きだから、戦わなきゃって思ったの」
ルッキーニは涙を浮かべながら言う。
私「……」
ああ、そうか、そうだったな。
私も胸を張って言いたかった。今頃気づいても遅いんだがな。
ルッキーニ「だからあたしが私を止める、だってあたしは、あたし達は――」
だってお前達は――
ウィッチなんだから
私「ふ、ふふ……」
自然と笑みがこぼれてきた。これはきっと嬉しいからだろう。
私が彼女に惹かれた理由が分かった気がした。
妹に似ているわけでもなく、ピザが美味しかったわけでもなく。
子供っぽくて、まっすぐで、人懐っこくて、誰にでも優しいそんな彼女に惹かれたのだと。
私「そういえばお前達二人と宮藤には色々と復讐したいことがあったな」
背中からジリオスを抜き取り構える。
二人が戦闘態勢に入る。
私「本当にお前達は人の胸ばかり触ってばかりで……」
ジリオスの刃を自分に向け
私「でも、楽しかったぞ」
自らのコアに突き刺した
ピキン
ガラスにひびが入るような音が辺りに響く。
足の力が抜けユニットを維持できなくなって私は海へと落下する。
シャーリー「私ぃぃぃぃぃ!」
ルッキーニ「あたしのことは気にしなくていいからシャーリーやって!」
銃を投げ捨てシャーリーが加速する。
ルッキーニは振り落とされないように必死にしがみついている。
ホント、無茶をする連中だ。まあそれがいいんだけどな。
海にたたきつけられる寸前に私は受け止められた。
私「……泣くな、馬鹿」
泣きじゃくる二人の頭をを力があまり入らない手で撫でる。
もう感覚も無くなっているようで何も感じない。
幸い痛みは無いので話すこともできる。ある意味ネウロイ化に感謝すべきところだな。
私「……本当はな、シャーリーに私を倒してもらうつもりだった」
シャーリー「なら、なんで……」
私「でも、ルッキーニの言葉を聞いて思いだしたよ」
二人に私は笑いかける。
私「お前達はウィッチだ。そして、私もウィッチだった。だからネウロイは自分の手で倒した、それだけだ」
足をみると足首の所まで白い破片になっていた。
私「ルッキーニ」
ルッキーニ「な、に」
必死に涙をぬぐいながらルッキーニは返事をする。
私「ちょっと顔近づけてくれないか」
背中から身を乗り出したルッキーニに、かろうじて力の入る首を持ち上げ、キスをした。
今度はルッキーニは暴れず、じっと眼を瞑って私のキスを受け入れている。
ほんのりと甘い味がした。
悪いなシャーリーほんといろんな意味で。
ルッキーニ「ぷぁっ……」
口を離したルッキーニは顔を赤くして深呼吸をする。
私「魔力、返したからな。それに私の魔力も追加してな」
魔力を与えたことによって少し体の崩壊が早くなったがこれでいい。
ルッキーニ「あたし、また、飛べるの?」
私「今よりもっと高くにな。……やっぱり、お前は飛んで笑っているほうがいい」
ルッキーニは泣きながら笑っている。
私「気にすることは無いさ。嬉しいなら嬉しいと言ったほうがいい」
シャーリー「わ、私!」
私「どうした?」
シャーリー「か、髪! 髪が!」
シャーリーが手鏡で私の顔を写す。
そこには髪が銀髪の私の姿があった。
どうやらコアが壊れたことで人間時に戻りつつあるようだ。
もちろん死ぬことには変わりないが。
私「……お前達のおかげだ。お前達のおかげで私は人間として、ウィッチとして死ねる」
私はルッキーニの手を掴む。
もう体の半分は無くなってしまった。
私「ルッキーニ、私のことは忘れろ」
ルッキーニ「嫌だ! 嫌だよ!」
必死に首を横に振るルッキーニ。
涙が海へと落ちていく。
私「まあ、そういうと思ったよ」
左手を何とか動かし、ルッキーニの頭に載せる。
私「少し強引だが、記憶を弄らせてもらおう」
ルッキーニ「やだやだ!」
私「……忘れたほうがいいんだルッキーニ」
ルッキーニ「あたしは忘れない! 絶対、絶対に! 記憶いじられても絶対に私のこと思い出すから!」
記憶を弄るとルッキーニは眠った。
目覚めた時には私のことなど覚えていないだろう。
それでも手をルッキーニは離さない。感覚の無い手が少しだけ暖かく感じる。
私「シャーリー、他の連中に説明を頼む」
シャーリー「……わかったよ。なあ、ルッキーニの記憶を弄る必要なんてあったのか?」
泣きやんだようだがシャーリーは未だに目が赤い。
私「……私はルッキーニの泣く顔を見たくないんだ」
シャーリー「ルッキーニはそんなに弱くない。きっと立ち上がるさ」
私「そう、だな。そうだったな。ルッキーニは、強いからな」
私達は眠っているルッキーニの寝顔を見て微笑む。
シャーリー「もうルッキーニは私のことを思い出すことは……」
私「多分無い。いや、もしかしたら……」
シャーリー「あるのか!?」
私「あるかもしれない、けれどそれは多分起きたら奇跡に近いな」
シャーリー「奇跡程度ならルッキーニなら簡単に起こせるさ」
私「ふふふ、そうだな」
少し眠くなってきた。
もう体は胸と頭と手しか残っていない。
遠くで巣が壊れる音を聞いた。ネウ子も私についてくるようだ。おせっかいなやつめ。
私「そろそろお別れだな」
シャーリー「……そうか」
私「もし」
シャーリー「ん?」
私「もし、ルッキーニが記憶を取り戻した時の為に伝言を頼む」
シャーリー「ま、任せてくれ! 一言一句正確に伝える!」
私「その、だな……『大好き』とそれだけ伝えてくれ」
シャーリー「そ、それくらいルッキーニに面と向かって言えよ!」
私「恥ずかしいんだよ! 言わせるな恥ずかしい! まあ……頼んだぞ、親友」
シャーリー「っ! ……わかった」
猛烈な眠気が私を襲う。
目を閉じる前にルッキーニの顔をちらりと見た。
とても可愛らしかった。出会えてよか
エピローグ
三ヶ月後 ローマ
きょろきょろと辺りを見ながらルッキーニはローマの街を歩いている。
今日は休暇でシャーリーと宮藤と一緒に買い出しに出かけていた。
が、どうやら二人とはぐれてしまったらしい。
ルッキーニ「シャーリー、芳佳ーどこー?」
探し疲れたのか人通りが激しい道の真ん中で立ち止り、なんとなく空を見上げる。
もうネウロイがローマにやってくることは無い。
三か月前、ストライクウィッチーズがネウロイの巣を攻撃、その際にルッキーニは攻撃を受けて気絶していたらしい。
目が覚めた時にはもうネウロイの巣は跡形もなく消滅していた。
それでも何があるかわからないので、ストライクウィッチーズは解散はしなかった。
振り向くとそこには髪型で名前を付けるが、パンチ、スキン、リーゼントという特徴的な髪型の持ち主がいた。
パンチ「お嬢ちゃんの探してるのはウィッチだろう?」
リーゼント「それならさっき軍服来たウィッチをあっちの方で見たぜ」
リーゼントが道を指をさす。
ルッキーニ「あ、ありがとう! でもお兄さん達どうしてあたしがウィッチを探してるってわかったの?」
スキン「んー? そういやなんでだ?」
リーゼント「さあ?」
パンチ「ワカンネ」
ルッキーニの質問に3人は首をかしげた。
リーゼント「まあ気にしてもしょうがないよな」
パンチ「そうだな」
スキン「あ、そろそろ店に行かないと店長に怒られるぞ!」
慌てて3人は走り去っていく。
その姿にルッキーニは何かを感じた気がした。
ルッキーニ(なんだろこの感じ……)
胸にもやもやを感じながらルッキーニは教えられた方向へ走りだした。
噴水前
指さされた方向へと歩いたルッキーニは、噴水の前で足をとめた。
ルッキーニ「あれ?」
前にここに来たような様な誰かと約束したような。
とても大切な誰かを忘れている様な――
ルッキーニ「え? あ、あれ……」
ぽろぽろと涙がこぼれてきた。
拭っても拭っても、次々に溢れてくる。
???「お嬢ちゃんどうしたんだい?」
ぬぐいながら振り返ると、そこには優しそうな老婆が立っていた。
老婆「おやおや大丈夫かい?」
老婆はルッキーニにティッシュを手渡す。
ルッキーニ「あり、がと、う……」
老婆「ひょっとしてお嬢ちゃん……ルッキーニって名前かい?」
ルッキーニ「なん、で知ってるの?」
老婆「三ヶ月くらい前に黒い髪の女の人が来てね、もしルッキーニって名前の子がここに来たらこれを渡してくれって頼まれてたのよ」
老婆は服のポケットから何かを取り出すとルッキーニに手渡す。
それは黒い色をしたリボンだった。
老婆「なんでだろうね。なんとなくわたしはお嬢ちゃんがルッキーニちゃんって直ぐにわかったよ。じゃあ、わたしは散歩の続きにいこうかね」
笑いながら老婆は去って行く。
ルッキーニ「……」
ルッキーニは涙をぬぐうと、右側の白いリボンをほどき、代わりに黒色のリボンで髪を結ぶ。
ルッキーニ「……おかえり」
空を仰いで、ルッキーニは少し無理に笑顔を作った。
最終更新:2013年02月02日 14:27