――ブリーフィングルームにて――

ミーナ「…ということで、臨時補給を実施することになりました。」

食料とその他の物資等の調達が必要のため、大型トラックを運転できるシャーリー、ロマーニャの土地勘があるルッキーニが指名された。

シャーリー「よっしゃぁ!久しぶりの運転だー!」

ルッキーニ「わーい!どらいぶどらいぶ~♪」ピョンピョン

ミーナ「他に、宮藤さんとリーネさんも同行します。」

リーネ「あの…やっぱり…私は待機で……」
リーネがそっと手を挙げ、小さな声でミーナに話す。

宮藤「えぇ?どうして?」 リーネ「えっ?」

ミーナ「分かりました。では宮藤さん、お願いね。」

坂本「この前ように、敵の襲来がいつあるか分からないので、人数が出せなくてすまんな。残った隊員は、なるべく基地の復興作業に協力してくれ。」

前回のネウロイによる襲撃により、基地では復興作業が行われている。
しかし、最悪の状況に見舞われながらも、ウィッチ達の尽力があったために被害は最小限に抑えられた。

一番大きな被害を受けたのは車両庫であったが、いくつかのトラックはかろうじて無事であり、ロマーニャへの買い出しに向かうことが可能となった。

ミーナ「では、欲しいものがある人は言ってください。」

坂本「欲しいものか…新しい訓練器具とか…」

各隊員が自らの欲しいものを話し始め、宮藤がメモをとりながら各員に聞いて回る。

彼「ん?おれの欲しいもの?そうだな…宮藤の好きな物なら何でもいいよ。」

宮藤「え…はっ…はい!」///

宮藤が嬉しそうに返事をした。


――復興作業中の車両庫周辺にて――

俺「…………」ガッ ガッ ザラー

落ちている破片をシャベルで拾い、荷台に乗せて運ぶ。俺は崩れた瓦礫を整理していた。
謹慎が解けてからの初めての作業。

あれから、一体何日たったのだろうか。実際の日数はそれほどでもないが、時間がとても長く感じる。
頭の中が空っぽになったように、何も考えられず、やる気も湧いてこない。

……と言うか、やる気が湧いてくるわけがないだろ………

俺は宮藤のためを想い、彼を助けることができた。
でも目の前で、宮藤は彼に告白した。好きだと言った。

そのことが、ズキズキと心を痛めつける。小説やテレビドラマ、フィクションで感じ取った、失恋に対して抱いていた想像とは違う、現実の痛み。

それと同時に、俺は自分の無力さにも失望していた。
努力しても、とどかない。才能が無いため、努力さえもできない。魔法も使えない。空も飛べない。ウィッチ達と会うことも出来ない。
スタートラインが違う。子供の時から変わらない、変わることもできない自分自身。

………俺は……馬鹿すぎる……本当に馬鹿すぎる……。

最悪の精神状態。いわゆる、負のスパイラルへと陥っていた。

俺「……あっ……」ガラガラッ ガシャーン

荷台の瓦礫を地面にぶちまけてしまった。しかし、何も感じない。拾う気にもならない。

………この世界でも……元の世界でも……俺は………

おじさん「――おーい、ここにいたか。」 

向こうの方から、おじさんが俺の近くへと歩いてきた。

おじさん「おっ、なにこぼしてんだ。今日から謹慎が解けたからって、いつまでも怠けてちゃいけねぇぞ。」

俺「……はぁ…ぃ…。」 素っ気なく、とても聞こえないような声で返事をする。

おじさん「男兵から聞いたぞ、走って彼を救ったって噂をな!お前はなんだかんだ言ってとんでもないことをする奴だな!」
髭の生えた顔がニカニカと笑う。

……そのとんでもないことをしたって……俺には意味がないんだ……何も得られないんですよ……。

俺「……そっすね…。」

おじさん「……元気がなさそうだな。大丈夫か?」

その時、片付いてきた車両庫から、大型のトラックが出てきた。
…トラックの運転席にいるのは…シャーリー大尉?
そういえば、食料庫の穀物がほとんど無かったな……買い出しに行くのか…

あれ、これって何話だっけ…?6話が神話で……じゃあこれは5話……

宮藤「シャーリーさぁーん!こっちですよ~!」

宮藤の声。俺は思わず、声がする方向を見た。そこには宮藤とリーネ、ピョンピョンと跳ねているルッキーニがいる。

ルッキーニ「シャーリぃー!こっち~!」

久しぶりに見る、ウィッチ達と宮藤。笑顔で手を振っている。

「私のロマーニャ」か……欲しいものを頼まれて、ロマーニャに行くんだよな……
たしか宮藤が他のウィッチ達の欲しいものを聞いて……じゃあ彼にも……

……彼とはきっと、両思いなんだろうな……あんなに明るく笑っているし……

これ以上落ちるはずがない気分が、まさかさらに悪化するとは思ってもいなかった。

トラックが基地を出発し、リーネが手を振って3人を見送っている。

俺は荷台を持ったまま突っ立ち、トラックが見えなくなるまで、ロマーニャへと続く道を眺めていた。

俺「…………」

おじさん「……なぁ、お前もロマーニャに行かないか?」

俺「……えっ…?」
おじさんの方へ振り向く。突然の提案に、俺はすぐには理解できなかった。

おじさん「おれも買いたい物があるんだ。整備に使う物とか、趣味の物とかな。手伝ってくれねぇか?」

俺「でも……俺はこの作業がまだ……」

おじさん「親族を同行させてもいいって許可を貰った。お前はおれの親戚名義で軍に入隊したからな。」

俺「……なんで……俺を……?」

おじさん「まぁまぁ。実は今日、おれは休みでね。」

答えになっていない。しかし、おじさんが誘ってくれたことは嬉しかった。
……そういえば、あの車両庫で会った兵士も、彼の救助のことで俺を褒めてくれたっけ…。

俺は地面に落とした瓦礫を拾い、ロマーニャへと同行することにした。


――ロマーニャ市街地に向かう道にて――

ゴァァァァァァ…ゴンッ…ゴンッ…
不整地を走り、ガタガタとトラックがロマーニャへと向けて移動する。おじさんが運転し、俺は助席に座っている。

俺「………あれ……あそこは……」
ふと気になって、窓の外の景色を見た。彼が墜落し、俺が走った森がある。

おじさん「………彼が落ちたところだよな。こんなところをお前は走ってたのか。」

おじさんがハンドルと前方を気にしつつ、俺の様子を伺っているように、チラチラと横目で見ながら話し掛けた。

おじさん「おれからしてみたら信じられねぇよ。目立ちにくいとはいえ、走ってここまで来るなんてな。」

………そういえば確かに…あの時は夢中だからって、片道はネウロイに見つからないであの森に行けたんだよな……
彼を背負って帰ってくる時は、周りをグルグルされたけど……すぐにビームを打たないで、なんであんな俺をからかうような動きをしたんだ……

……ネウロイって……ネウ子以外でもあんな動きするんだな………どうでもいいけどさ……

おじさん「……おっ、街が見えてきたぞ。」

いつの間にかトラックは整地された道を走っており、芸術的な建物を見る回数が増えてきた。


――ロマーニャ市街地にて――

マリア「離してください!」

黒服の男が女性の腕を掴んで、何やら押さえつけようとしている。

ルッキーニ「すぅぱぁ~るッきぃぃぃぃにぃキィィィィクゥ!」ダダダダダ ズァァッ!

黒服A「ぐはっ!」バキィ! ルッキーニ「もいっちょ!」ドシャ! 黒服B「…ぐぁ」バタッ…
いきなり走ってきたルッキーニが、男二人を蹴っ飛ばした。

マリア「はわわわわ…あっあの…」オロオロ

ルッキーニ「い~こっ♪」
ルッキーニがマリアの腕を掴んで走り出す。 ルッキーニ「こっちこっちぃ~♪」タッタッタッタ……

マリア「えっ…えええぇ!?」タッタッタッタ……

黒服A「まっ…待てっ……――」バタッ――


――ゴァァァァァァ キィィッ

おじさん「まずはここだ。大抵の物が揃ってる。」ガチャ バタン

俺「はぁ………あれ……?」ガチャ バタン

とある店の前でトラックから降りた。

俺はすぐに、基地で見かけた大型トラックが前方に止まっていることに気付く。
反対側の通路にも、気になる光景を見つけた。

黒服A「痛つつ…くそっ…何処へ行ったんだ!?」 黒服B「確か…あっちのほうだ!」タッタッタッタ……

顔に痛そうなアザがあり、黒服を着た2人の男がどこかへ走っていく。

……おい……まさか……

ガチャ カラン おじさん「はいるぞーって、シャーリーじゃねぇか。」

シャーリー「ん?…整備長のおやっさんじゃないか!奇遇だなオイ!…サボりか?」

おじさん「んな…今日はちゃぁんと許可貰ってンだよ。」

店の中にはシャーリーがいた。おじさんと話している。
……大尉がここにいるってことは……それじゃ……

宮藤「シャーリーさん?どーしたんですか?」
棚の奥の方から、商品が入った紙袋を持った宮藤が、シャーリーとおじさんの方へ歩いてきた。

俺はいきなり呼吸が止まったような、胸の苦しさを感じる。

…………宮藤……さん……。

シャーリー「ほら、いつもハンガーにいる整備長のおやっさんだ。」

おじさん「よっ、嬢ちゃん。」ニカッ 宮藤「こんにちは!」

……俺は確かに、宮藤やウィッチ達に会えることを期待していた感情は少なからずあった。
だがいざとなると足が動かない。動かしたくない、立ち去りたいという感情もある、矛盾だらけの状態。

シャーリー「今日は一人かい?」
シャーリーがおじさんに訪ねた。ドアが開いている入り口の前に、俺は立ちすくんでいる。

おじさん「いいやっ、連れがいるんでね。ほら、入って来いよ。」

俺「……」ビクッ

……まじかよ……。俺は覚悟を決めて店の中へ入っていった。

俺「どうも……た…大尉。俺、二等兵です。」 気持ちが不安定なこともあり、挨拶も上手くできない。

…あぁ……どうしよう…もう逃げ

宮藤「あれ、俺さん…?」

俺「…………えっ……」

……なんで……俺の…名前を…?

宮藤が俺の名前を喋った時、俺は信じられなかった。もう忘れられているかと思っていたからだ。
基地の洗濯干し場で出会った時から……俺の名前を覚えていてくれたのか……

シャーリー「なんだ宮藤、知り合いなのか?」

宮藤「はい!彼さんと同じ時期に入ってきた人です。ここ最近、全く会ってなくて……」

……やっぱり…この前のことは知らないのか……そりゃな……彼の方が気になるもんな……

おじさんに頼んで、俺が彼を救助したって言っ………まぁ今さら意味無いよな……

俺「……お久しぶりです。宮藤軍曹。」

……名前を覚えててくれたと分かった時、俺は少しだけ…嬉しいと思う感情があった。

俺が彼を助けたことを知っていないとしても……それでも…嬉しかった。

シャーリー「それじゃ、私達は他の店に行くよ。ここでの買い物はもう終わったからなぁ。」

おじさん「おう、それじゃあな。……たのむからあんまり改造しすぎんなよ…。」
ジェットストライカーの件もあり、おじさんはシャーリーのストライカー改造に対して、かなり神経質になっているらしい。

ガチャ カラン ドアを開け、シャーリーと宮藤が店を出て行った。

俺「………」
ほんの一瞬だけ、俺は救われたような気がした。

しかし…

シャーリー「宮藤~彼にはいったい、何を買ったんだっ?」

宮藤「シゃっ、シャーリーさんっ…!」///

シャーリー「んふふふ…ってあれ?ルッキーニは何処へ行ったんだ?」

ドアの外から、二人の会話が聞こえてくる。それを聞き、俺は先程感じた僅かな喜びが、虚しさへと変わっていくことに気付く。

……………っ……くそぉ…っ!

手に取った商品を握りつぶしたくなった。


――ロマーニャの大広場にて――

大きな噴水の周りには、子供達が楽しそうにキャッキャと遊んでいる。

俺「…………。」

工具やストライカーの整備に使う部品等の買い物も終わり、俺は大広場のベンチで休憩していた。

ボーッとしながら空を眺め、ミーナからウィッチ達との一切の接触禁止命令が出ていたことを思い出す。
俺がこうなることを、彼女は予想していたのであろうか。

ロマーニャの街は見たこともない建造物や彫刻で溢れているが、今は観光なんてする気にもならない。
何もせず、ここに座っていたい。

おじさん「食い物持ってきたぞ。ほら、ロゼッタとスプリだ。うめぇから食べてみろ。」

どこかの店で食べ物を買ってきたおじさんが、俺にパンとコロッケの様なものを渡し、隣に座った。

おじさん「今日は助かった。おれの奢りだ。」ムシャムシャ
パンをほおばりながら、隣にいる俺に話しかける。

俺「どうも……。」パクッ

返事をして、貰ったパンを口に入れる。基地で食べていた時のパンとは、比べようのない美味しさだ。
コロッケも食べてみる。サクッとした歯ごたえと、口の中にチーズと米の旨みが広がっていった。

…………おいしい……。

できたてのそれを何度も口の中で噛みしめる。

俺は普段感じないおじさんの優しさを感じ取り、知らぬ間に目が涙で溢れていた。

おじさん「まぁ…なんだ。違反扱いされたけど、お前は倒れるまでよく頑張った。しっかり食べて、明日からまた頑張れ。」

おじさんが俺を励ます。しかし俺が落ち込んでいる原因は、命令違反扱いにされたことだけだと思っているようだ。

彼を助けるために、倒れるまで走ったけど……他にも理由が……

……あれ?なんで俺は倒れたんだろう…………

今まで、彼を背負って走るよりキツい練習をやってきたけど……あんなに長く意識を失ったのは初めてだ……

確かに苦しかったけど……倒れるような距離を走ったわけでもない……

それに、彼についても分からないことばかりだ……いきなりシールド張ったり、強大な魔法力がある理由も、固有魔法も、そもそも存在自体が……

おじさん「……そういえばお前、自分は別の世界から来たって言ってたよな。」

俺「……えっ……。」

おじさん「川沿いで初めてお前を見つけた時は、見たこともない変な格好をしてるし、あんなことをする奴に『別世界から来た』なんて言われたら、そりゃまぁ納得はするがな。」

あんなこと…とは俺がネウロイへ向けて銃を乱射したことだろうか……

おじさん「一番気になんのは、大型がすぐ近くに降りてきてもの凄い瘴気だってのに、お前が立ってい――」


――ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

いきなり大きな音がロマーニャの市街地へと響いた。 おじさん「なっ……空襲!?」

人々がどよめく。上空には黒い固まりが飛んでおり、それに気がついた市民が指をさして叫ぶ。

ロマーニャの大広場はパニックに陥り始めた――


おじさん「なにやってんだ俺!市民の誘導はお前の使命だろうがっ!」

俺「……でも……」
俺はベンチから動かない。動こうともしない。

ネウロイだって、本編の流れからしてルッキーニに倒されるはずだ。それに…今は何もしたくない。

おじさん「おい、俺っ!」

避難しようとした子供がつまずき、倒れて泣いているのが見える。母の名前を必死に叫んでいる。

………でも……前回のように…また未来が変化するとしたら……?
俺がこの世界に来て初めて目の当たりにした……ネウロイに焼かれた街のように……この街がなってしまうとしたら…?

俺はあの時の、死体で街が溢れている時の光景を思い出す。

……そうだ……あのときみたいな光景はもう見たくない……
落ち込んでる場合じゃないだろ……動かなきゃ、目の前の人達が死ぬかもしれないんだぞ……

太腿を指で抓り上げ、自分自身に喝を入れる。
力を入れ、痛みが増してくると共に、沈んでいた頭が段々と上がっていく。

…俺は一応、下っ端だけど…軍人なんだ…………

……今は……誇りを持て………俺……

…自分のことだけを………考えるな!

俺はベンチから立ち上がり、泣いている子供の所へ走っていった――


俺「大丈夫だ!落ち着いて!誰か…誰かこの子のお母さんを知ってる人は…っ!」

背筋を伸ばして胸を張り、無理矢理大きな声を出す。


~つづく~



……たとえ今は…自分を押し殺してでも、行動しなければならない状況なんだ……。
あの日、ネウロイによって破壊された街の光景が、俺を突き動かす。

そして、アニメ2期6話、「空より高く」の未来が迫っていた。

ロマーニャで購入したものが、ロケットブースターの整備へと活かされる。
最終更新:2013年02月03日 15:55