――ロマーニャの大広場にて――

上空を飛行するネウロイの出現により、ロマーニャの街はパニックに陥っていた。

大勢の人々が退避しようと、もの凄い勢いで避難所へと走っていく。

俺「落ち着いてくださ……っうわっ!」ドンッ

見る限り100人以上は居るであろう押し寄せる人の波に、俺は突き飛ばされた。
身動きも出来ないほど混雑しているため、すぐには立ち上がれない。

俺「おぃ…!痛たっ!…ちょ……まっ……くそっ!……やめっ…」バタバタ ドスドス

走ってきた何人かに腕や背中を踏みつけられる。
立とうとするとまた足が乗っかってくるので、地面にへばり付いている状態になってしまった。
身体に何度も体重がのし掛かり、背中を踏まれるとみぞおちを殴られたような苦しさと痛みが襲ってくる。

少し時間が経って人の波が治まってくると、ようやく俺は立ち上がることが出来た。

周りを見渡すと、おじさんとロマーニャの兵士はすでに市民を誘導しており、走っていた連中も大分静かになってきている。

俺「…………。」

俺は身体に残る痛みを感じながら、慣れないことはやるもんじゃないと心から思った。

「「「撃てっ!」」」ダダダダダダ! ドンッ ドンッ

ロマーニャ防空がネウロイに向けて対空砲火を開始する。
しかしダメージを与えられず、ビクともしていない。

…………早く……宮藤さん達が来てくれれば……!

ウィッチ達に期待を抱きながら、自分は何も出来ない無力さを、俺はひしひしと感じていた。


――大聖堂にて――

マリアがルッキーニの手を掴み、避難を呼び掛けた。

ルッキーニ「私、行かなきゃ!」

マリア「えっ…?」

宮藤「いたっ!シャーリーさん、あそこ!塔の上です!」

シャーリー「塔!?」

ルッキーニを見つけた宮藤がシャーリーに場所を伝え、大聖堂の下の所へとトラックを走らせる。

二人がトラックから降り、宮藤が荷台の布を剥がすと、そこにはルッキーニのストライカーが現れた。

ルッキーニ「シャーリー!」
シャーリー達と自分のストライカーを見つけたルッキーニが、柵を跳び越える。

マリア「あ…危ない!」

ルッキーニ「行かなきゃ!私、ウィッチだから!」

マリア「えっ?」

ルッキーニ「これ、持ってて!」シュルル…
帽子を投げ、それをマリアが受け取った。

マリア「ウィッチ…?」

ルッキーニ「うん!」ダッ マリア「あっ…!」
下に飛び降り、大聖堂の屋根を滑り降りていく。

ルッキーニ「だから…ロマーニャを守らなきゃー!」

屋根をジャンプしてトラックのストライカーへ飛び乗る。

ルッキーニは武器を持ち、勢いよく空へと飛び立っていった。


――ロマーニャの上空にて――

すでにストライカーを履いて飛行していたシャーリーと宮藤に、ルッキーニは合流した。

シャーリー「いくぞ!連携攻撃だ!」

ネウロイがビームを放つ。それを回避しつつ、ルッキーニがネウロイの下へと回り込んで銃弾を撃ち込んだ。
装甲が剥がれ、コアが露出する。

ルッキーニ「あれだ!シャーリー、コアが見えた!」ダダダダダ!

シャーリー「よし、X攻撃だ!」ブゥゥゥゥゥゥン!


――ロマーニャの避難所近くにて――

大勢の市民が誘導され、避難所へ向けて列を作っている。

市民「ウィッチ達だ!」

その声に気が付いた俺は、すぐさま空を見上げた。3人のウィッチ達がネウロイと戦っている。
しかしそれほど苦戦している様子では無いことが、地上からでも何となく分かった。

ウィッチを見つけた市民や兵士達は喜び、何処からも応援の声が聞こえてくる。

俺(これでアニメ通りに行けば……ロマーニャの街は大丈夫のはずだ……!ルッキーニ少尉…!)

この5話の敵は、たしかすんなり倒せたということを、俺は思い出した。


――上空にて――

シャーリー「いいぞっ…こい……こいっ!」ダダダダダ!

ネウロイ「ピキィィィィィィ!!」

シャーリー「くっ…気付かれた…!」

隙を狙うため、シャーリーが敵を引きつける。
しかしネウロイは宮藤とルッキーニに気づき、方向を変え、攻撃する体勢になった。

ネウロイ「ピキィィィ!!」バシュウウウ!

宮藤「くぅぅ…!!」バシュウウウ!
宮藤へ向けてビームを放つが、それを防ぎ、張ったシールドでどんどん押し返していく。

その隙を付いたルッキーニが多重シールドを張り、ネウロイに突っ込んでいった。

ルッキーニ「えぇい……やぁあああ!」ズドォォォォン!

ネウロイ「ピキィィ……!!」パリィィィィン……


――避難所近くにて――

ぶつかった瞬間はよく分からなかったが、ネウロイが白い光に変わり、砕け散ったことから、俺は彼女達が勝ったということを理解した。
先程まで不気味な黒い固まりだったものが、今ではキラキラと結晶のようなものとなって空中に散らばっている。

兵士「お……おおお!…勝ったぞー!」

「ありがとぉおおおおお!」「おぁぁあー!結婚してくれー!」オオオオオオオオオオオ!

誰か一人の兵士がそう叫ぶと、周りの人も連られて声を上げ、瞬く間にロマーニャに歓喜が広がっていった。

……俺も叫びたい……
……でも…またこの前みたいに………新しい敵が来るんじゃないのか……?

俺は一人だけ不安のままだったが、その後、ネウロイが現れることはなかった。


――夕方、ロマーニャの大広場にて――

安全が確認され、市民の誘導が終わった頃には、街はすでに夕焼けに染まっていた。

おじさん「はぁー……ったくよぉ…折角の休日が…何でこう……よぉ……」
ロマーニャの一軍人として誘導を手伝ったおじさんは、後から来る疲れに嘆いていた。

俺も休憩していると、背中や腰からの痛みがズキズキと響いていることに気が付く。

……あの後、新しいネウロイが出てこなかったから……きっと本来の展開通りに進んだと思うけど……

……結局…………何も出来なかった……

…ネウロイを倒した宮藤さん達……そして本物の軍人達……

俺がどう行動したって……覚悟を決めたって……何も………

報われないのか…どうすりゃ…いいんだよ……

もう帰るかとおじさんが言おうとした時、避難所の方から女の子が俺のところへ走ってきた。

タタタタタタ…… 

女の子「いたっ!ぐんじんさん!今日はありがとー!」

ネウロイからの避難する時、転んでいたところを俺が助けた女の子だった。
無事に両親と再会できたらしく、明るい笑顔を見せてくる。

誘導も出来ず、声も張れず、市民にも相手にされなかった俺が、唯一もらった感謝の言葉。

その言葉から、俺は少しの元気を貰った。

俺「……どういたしまして…。」

ぎこちない、久しぶりの笑顔で俺は答える。

報われたと言うべきなのだろうか。
しかし…

その女の子の無邪気な顔は、宮藤が彼に見せた笑顔にどことなく似ている気がした。

宮藤が彼に好きだと言った瞬間を、俺は鮮明に思い出した。


――次の日、ストライクウィッチーズ基地、外にて――

ルッキーニ「びぇぇぇん!…ヒック…ごめんなしゃぁぁい……ヒック…」

食料調達分の渡された資金を全て使い果たしてしまったルッキーニは、両手にバケツを持って罰を受けていた。

坂本「監督責任!……仕方ない……私も反省しよう。」

シャーリー「あはは……ごめんな~…ルッキーニ…」

ビェェェェン!ウェッ…ヒック…

俺(あ、やっぱり…。)

空から食料が降ってくることを予想して、俺は外に出ていた。遠くの方から、泣きながら反省しているルッキーニを見つける。
昨日の出来事が「私のロマーニャ」通りに進んでいたということを、俺は改めて認識した。

今回はアニメ5話通りにいった……
じゃあ何でジェットストライカーの時は……新しいネウロイが出てきたんだ?

……彼が…影響しているのか…………たしかにあのストライカーを履いたのは彼だ…

……………彼……のせいじゃないのか……彼のせいで、現れるはずがないネウロイも……

…………宮藤…さん………も…

未来が変化したジェットストライカーの事件のことと同時に、宮藤が彼に告白した瞬間を思い出す。

俺は空を見上げ、彼を妬み始めた。

…男が魔法を使えたら…それは戦わざるを得ないだろうよ……

辛いだろうけど…きっと心のどこかでは楽しいと思うはずだ。
誰からも注目され…ウィッチ達とも気軽に話せ…スト魔女SSのように、恋だってすることも出来るんだから。

他の誰かのためだって、好きな人のためだって……そんなかっこいい理由をつけて戦うことも出来る。

でも……俺はそんな理由つけて頑張ったって……彼女達と話したり、恋なんてすることも出来ない。一歩も近づくことさえも。

確かに彼や救えた人もいる……

兵士や子供に褒められた時は嬉しかったけど……それでも……彼のように…魔法力があって…ストライカーも履けるなら…

才能があるなら……空を飛べるなら……

………誰からも馬鹿にされず……反対されず……

…尊敬され……倒れるまで走っても見捨てられず……

……好きな人に………近づけるはずだと思う…。

もしも……空を飛べるなら……

っ……本当に情けないな……もしものことばっかり考えて…

俺はやっぱり……下っ端の…ままだ……

彼を走って救ったという事実が、返って俺の精神を悪化させていった。
自己嫌悪、そして彼を嫉妬する感情がどんどん湧き出てくる。

気が付いたときにはロマーニャの飛行機が大量の物資を空から投下させており、ルッキーニがそれに埋もれていた。

俺はその物資を食料庫に運び、また変わらない雑用の日々へと戻っていった――


――数日後、山岳地帯上空にて――

アーメガフッテモキニシナイー ヤーリガフッテモキニシナイー ダダダダダ! パリィン パリィン

シャーリー「こんなもんか?」

バルクホルン「粗方撃墜したはずだが…妙だな……手応えがない。」

坂本「これは全て子機だ。操っている、本体を探しているんだが……。」キュィィィィン

ペリーヌ「まだ健在だと…?」

ルッキーニ「いつの間にかやっつけちゃたんじゃない?」

リーネ「本体も倒せたなら、子機も消えるはずだよ…。」

山岳地方に出現した子機のネウロイを撃墜していったウィッチーズ隊は、その手応えの無さと、操っている本体が見つからないことを疑問に思っていた。

坂本「……!!」キュィィィィン
魔眼で本体を探していた坂本が、後ろに気配を感じて振り返る。

彼「なんだよ……あれ…!」

ペリーヌ「雲を突き抜けていますわ…!」

シャーリー「まさか…あれが本体?」

全員がその姿に驚く。遥か上空へと続く、黒い四角柱。山脈の間からネウロイがそびえ立っていた。

坂本「お前達はここで待て。」ブゥゥゥゥゥン!

ペリーヌ「しょ、少佐!」

坂本がそのネウロイに沿って上昇していき、魔眼でコアの位置を見極める。
しかしストライカーの高度限界に達し、コアはそれよりも上に位置していた。

坂本「厄介だな……」

坂本は降下し、全隊員に一時撤退命令を告げた。


――夕方、基地まで帰投する間の上空にて――

宮藤「どこで見つけたんですか~?なんでそんなの持ってるんですかぁー?」ブゥゥゥン

エイラ「そんなのどうだっていいダロ!」ブゥゥゥゥン!

宮藤「見せてくれたってっ、いいじゃないですかー!」ブゥゥゥン ブゥゥゥン!

エイラの持つイトスギの枝が気になるが、固有魔法により全く捕まえることが出来ず、宮藤はスイスイとかわされる。

宮藤「はぁ…はぁ…エイラさんって、何でそんなにすばしっこいんですか……。」

エイラ「フフン、私は未来予知の魔法が使えるノサー。」

エイラは宮藤の周りを飛びながら、自らの固有魔法を自慢する。
その話を彼も聞いていた。

彼「へぇ~、中尉にそんな固有魔法があったのか。」

エイラ「まったく、オマエら2人合わせて……今までナニ見てたンダ?」

宮藤「あれ…?そういえば彼さんの固有魔法って……」

彼「ん?おれの使える魔法言ってなかったっけか?」

エイラ「聞いたこともないし、見たこともないゾ。」

彼「そうだったか。まぁでも、おれのは見えると言うより、あれだからな。おれの固有魔法は――」

エイラ「あ!サーニャ!」

彼「……おい。」

ロマーニャの基地が見え、夜間哨戒へと向かおうとするサーニャが出迎えに来た。


――夜、大広間にて――

映写機により、空軍が撮影した昼間のネウロイの写真が公開された。

坂本「全長は30000mを超えると推測される。」

バルクホルン「30000!?高さ30kmってことか。」

毎時10kmの速度でローマ方面に移動するネウロイ、そして天辺にあるコアを狙い撃つための作戦が立てられる。

坂本「ロケットブースターだ。」

強力であり、大量の魔力を消費するロケットブースターの使用。
人間の限界である、30000mを超えたところによる戦闘。
その極限状態において、高い攻撃力を備えたサーニャ、そして高い防御力を備えた宮藤が選ばれた。


――次の日、ハンガーにて――

おじさん「ふざけんなっ!また危ない物を送りつけやがって、あのカールスラントの嬢ちゃんめっ!」

俺がハンガーに移動して一番初めに気付いたことは、激怒しているおじさんの姿だった。

俺「…何があったんですか?」

整備兵A「ん?整備長が聞かないんだよ……。カールスラントから開発されたロケットブースターなんか使うなって。」

整備兵B「作戦に使うから仕方がないのに……まだジェットのことを根に持ってる。せっかく前にウルスラさんが謝罪しに来てくれたのに。」

ロケットブースターの話を聞き、これは6話だということを俺は推測した。
このままおじさんがブースターの整備を行わなければ、作戦に支障が出るのではないかということも考える。

……このままじゃとんでもない事故になる可能性だって……

…ジェットの件は、本来ならバルクホルン大尉の墜落で済むところを……彼まで墜落しちゃったからなぁ……

俺「あの……ジェットスト」

おじさん「うるせぇ!」

俺「…………。」

整備兵A「さぁて、どうしようか……。」

整備兵B「まぁ大丈夫だ。さっき整備長を説得してくれるよう、上官に頼んできた。もうそろそろ来るだろう。」

俺はとりあえず自分の作業に移ろうと考えたとき、背後から声がした。

彼「整備長はここにいるか?」

俺「…!!」

振り返ると、そこには彼がいた。目を合わせ、俺は彼を見てから、自分の気持ちが変化していくことを感じる。

…そうか、上官って……

……目の前にいる……できるやつ、空を飛べる、魔法を使える……

…宮藤……さん……

……彼……こいつが……っ……

彼「お前は……そうだ、後で君にも話したいことがある。」

俺「えっ…?」

……彼は俺のことを知っているのか?

彼「でも今は……おやっさんの説得の方が先だ!」
顔が赤くなっているおじさんの方へと、彼は歩いていく。

ジェットストライカーを履いて墜落した本人が説得というのは、むしろ好都合になると彼は考えたのだろうか。

彼がロケットブースターの必要性、安全性を言葉の中に入れて説得を始める。


その彼の後ろ姿を見て、俺は嫉妬、そして数々の疑問を抱いていた。


~つづく~



……こいつが……いるせいで……!

俺はついに、彼との会話が実現することとなる。
疑問を抱き、嫉妬をし、隠された謎と自分との差を見つけ出そうとする。

空へと向かうウィッチ達、襲来する虫、同じはずなのに違う世界。

俺の心に溜まっていくものは、自分を貶す感情と、憎しみを生み出すものであった。
最終更新:2013年02月03日 15:55