――ヴェネツィア上空、ネウロイの巣近くにて――

戦艦大和を中心に展開する扶桑艦隊と合流した12人のウィッチ達は、敵ネウロイから大和を護衛する任務を開始させた。
大和がネウロイ化するまでの3分間、何としても守り切らなければならない。

円盤型のネウロイが大量に飛び回り、攻撃を大和に集中させている。それに対して宮藤は、大型のシールドで大和を護衛する役割を担っていた。

本来存在しない「彼」がいるため、2期本編よりもネウロイを撃破する数が格段に増え、任務は十分遂行できていると言えるだろう。

しかし全艦隊が対空弾を勢射してネウロイの巣が煙に包まれた後、本編と同様にペリーヌとリーネはネウロイに包囲された。

リーネ「あぁっ…!」

ペリーヌ「囲まれた…!」

宮藤「リーネちゃん、ペリーヌさんっ!」バシュゥゥゥン!

彼「くそっ…!ここからじゃ間に合わない!」ブゥゥゥゥゥン!

坂本「させるかぁぁあっ!」ブゥゥゥゥゥン!
ペリーヌとリーネのすぐ近くにいるネウロイを、坂本は上空から降下して叩き斬ろうとする。

ミーナ「少佐っ!」

坂本「烈ッ風…ぅぅぅぅぅぅう斬ッ!」

カキィィィィィン!

だがしかし、今までのような「烈風斬」を放つことは出来ず、ネウロイの装甲に刀がぶつかって金属音が響いた。

坂本「なっ…!?」
坂本の手を離れた烈風丸は、ヒュンヒュンと回転しながら飛んでいき、大和の甲板に突き刺さる。

円盤形ネウロイ「ウゥゥゥゥゥン!」バシュゥゥ…

宮藤「…ぅうっ!」バシュゥゥゥン!
武器を失った坂本の前へと宮藤が駆けつけ、ビームが放たれる寸前のところでシールドを張った。

ダダダダダダ! そしてミーナの砲撃によって、そのネウロイは撃墜される。

宮藤「大丈夫ですかっ、坂本さんっ!!…………はっ…」
振り向いた宮藤の目に映ったのは、手のひらを見つめ、唖然としている坂本の姿だった。

坂本(魔法力が………烈風斬が…………効かない………?――)


その時大和では、ネウロイ化まであと30秒と時間が迫っていた。魔道ダイナモの軌道準備が始まる。

杉田艦長「追い込まれた人間の恐ろしさを、奴らに見せてやれ…!」

副長「残り20秒…!19……18……――」


ウィッチ達は大和ネウロイ化までの残された時間を、戦い抜かなくてはならない。

彼「大丈夫か…!?宮藤っ!」

エイラ「くっそぉぉっ!」ダダダダタ!

ルッキーニ「はぁ……はぁ……ぇ…」

シャーリー「ルッキーニ、がんばれ!」

バルクホルン「まだまだぁ!」ダダダダダダ!

エーリカ「もう、しょうがないなぁ~…。」

ミーナ「魔法力の消耗した者は、各自空母天城に退避して!」
ミーナはインカムで他のウィッチ達に通信した後、自分の手を見つめている坂本の姿を見た。

坂本「もう私は戦えないのか………もう…守れないのか…………。」

ミーナ「……少佐………――」


副長「4……3……2……1……0!」

杉田「コアコントロールシステム……起動!」

大和に赤い線の六角形模様が浮かび上がり始め、遂にネウロイ化が始まった。


――ロマーニャ基地、待機室にて――

サーニャ『…ザザッ……エイラ…見てっ…!』

エイラ『あぁ、ホントにネウロイになってる……!…ザザッ』

俺や他の兵士達が待機している部屋の中に、無線機からの声や音が響き渡る。
誰もが耳に集中をし、その無線機に向けて身体ごと傾けている中、俺は隅に座って地面を見つめていた。

俺(……大和に烈風丸が突き刺さったみたいだし、この様子じゃ…本編通りに進んでるってことか………)

『ゴォォォォォォ!』と、もの凄い音が無線機から聞こえ始めた。大和が浮上し、ネウロイの巣へ向かって発進したのだろう。

ミーナ『ザザッ……任務完了!全員、空母天城に帰還して!…少佐…私達の任務は成功したのよ……』

坂本『私にとって……生きることは戦うことだった……ザザッ……だが、もうシールドを失い……烈風斬も使えない……』

無線機からミーナと涙ぐむ坂本の会話が聞こえてくる。俺は少し顔を上げ、微かに笑った。

……そうだよ…その辛さだよ…!何も出来ない…戦おうとしても出来ない…俺がずっと感じてきた辛さだよ……!
あんたは今まで戦えてきたんだから、別にいいじゃねぇか……十分満喫できただろ……?

そりゃ、いきなりそうなるのはもっと苦しいだろうよ……!今まで出来ていたことが、いきなり出来なくなるんだから……

でも……………もう戦えない………のか………もっさんは……
俺の笑いが、段々と消え始めた。

戦えない苦しみを…………感じているのか………

彼女も……俺と同じように……今……苦しんでいるのか…

何も出来ない…辛さを……

俺「……………。」

……いや、そんなことはどうでもいい。俺はとにかく、あいつ等が憎いんだ。最悪の展開になってくれればいい。
ネウロイが……頑張ってくれればいい。ネウロイを応援する…今思うのはそれだけだ…。

『ダダダダダダダダダダダダ!バシュゥゥゥ…パリン…パリィン!…ザザッ…ゴォォォォォォ!……ザザッ…』

無線機から殆ど騒音に近い音が聞こえてくる。大和は巣のすぐ近くへと突入しており、対空砲火、そして受ける攻撃に対しての破壊と再生を繰り返す音。
ネウロイ化した無敵の大和は、敵からの攻撃を物ともせずに巣へと向かって直進しているようだ。

兵士「一体どうなっているんだ……!?」

現場を見たことがない兵士達には、一体何が起こっているのか絶対に分からないだろう。
俺自身も、頭の中で音と映像を繋ぎ合わせることによって、どうにか今の状況を推測することが出来ている。

『ゴォォォォォォォォ!……ドォン………ヒュウゥゥゥゥゥゥゥン―――――!……ザザッ………きゃぁっ!……ザザッ…」

無線機からの音が更に激しくなっていき、一度止まったと思うと、次は耳が張り裂けそうな重低音が聞こえ始めた。一瞬、ミーナの声らしきものも俺は聞き取った。

……!?…すごい音だ…っ…!!…でも…ミーナの叫び声もした……。
ってことは……この音はつまり、大和が…巣に直撃したってことなのか…?

俺の予想通り、既に大和は巣に衝突しており、杉田は主砲を勢射する指令を下していた。

しかし大和は動かず、巣に突き刺さったまま停止した。


――ヴェネツィア、ネウロイの巣近くにて――

水平「艦長!火器管制システムが起動しません!」

杉田「なんだと…!?」

水兵「魔道ダイナモが停止しています!駄目です、主砲撃てません!」

杉田「っ…なんてザマだ……!」ダンッ!
杉田は両手の拳を目の前の台に叩き付けた。

完全に停止した大和へ群がるように巣から円盤形のネウロイが大量に発生し、上から爆弾を落とすように攻撃し始める。
大和全体が見えなくなるまで爆風が広がっていき、破片が飛び散っていく。大和は再生することも極めて困難な状態に陥っていた。

杉田はこれ以上、作戦を続行することは不可能だと、判断を下す。

杉田『みな、よく戦ってくれた……しかし、大和の魔道ダイナモが起動せず、主砲が撃てない…!作戦は…失敗した……。』

ウィッチ達も動揺を隠せない。この作戦が失敗すれば、ロマーニャ全土はネウロイの支配下に晒されてしまう。ルッキーニは大声で泣き出した。

坂本「…まだだっ!」

杉田「……!!」 坂本『まだ終わってなどいない…!』

坂本「この戦いも…そして、私もだっ…!」ブゥゥゥゥゥン!

ミーナ「美緒っ…!?」

ミーナに支えられていた坂本は、その手を振り払い、大和へ向かって飛んでゆく。自らの魔法力で、魔道ダイナモを再起動させようとしていた。
本編と同様の展開に発展し、坂本を止めようとするミーナの声がインカムを通して全員に伝わる。

しかし…

彼「待てぇっ、少佐ぁッ!!」ブゥゥゥゥゥン!

後ろから猛スピードで追ってきた彼が、坂本の前に入り込み、身体を大の字にして彼女を止めた。

坂本「…!!彼っ……私は…行かなければならない…。私が行かねば…誰が大和を動かせるんだ。」

彼「…それはこっちのセリフだ、少佐。今魔法力が一番残っているウィッチ、それはおれだ。飛ぶ力しか残っていないあんたを、そんな危険に晒すようなことはできない。」

坂本「!!…彼……お前……やはり知っていたのか……。」

ミーナ「少佐っ…!彼少尉…!」ブゥゥゥゥゥン!
ミーナも、坂本と彼を追って駆けつけた。

彼「…ミーナ隊長…それに坂本少佐。今誰よりも魔法力が残っているおれが…今やらなければならないこと……それは…501、ロマーニャ、そして全ての人達を守ることです。おれが大和へ向かいます。」

坂本「…彼………しかし……!」

ミーナ「だめよ!いくら魔法力が残っていたとしても、危険すぎるわ…!」

3人の会話が、インカムを通して天城にいるウィッチ達にも届く。宮藤は不安の色を隠せない。

彼「今まで、ずっと一人だった、実験道具のようなおれのことを認め、家族のように迎えてくれた501…。隊長…おれは嬉しいんですよ。最後まで…仲間として…戦えることが!!」

坂本「彼……………。」

坂本とミーナに、彼の想いが伝わる。
同時に安心感もあった。501には「彼」という、膨大な魔法力を秘めているウィッチがいる。
彼ならば、成し遂げられると。

ミーナ「……っ…………必ず、必ずっ…帰ってくるのよ…彼さんっ!」

彼「……もちろんだ…!……あぁ、そうだ少佐…」ブゥゥゥゥゥン…
彼が大和に向かおうとした時、一度止まって、坂本の方へ振り向いた。

彼「基地に…少佐のことをとても心配してくれる奴がいました。少佐のことを馬鹿にしていた部分もあったが……少佐の命を大切にしろって気持ちは…本当だったと思う。」

坂本「…?…………そうか……。」

彼「帰ったら…奴に話してやってくれ………………行ってくる!」ブゥゥゥゥゥン!

ネウロイのビームの雨をかいくぐり、彼は大和へと飛んでいった。


――ロマーニャ基地、待機室にて――

宮藤『……ザザッ……彼さんっ……本当に…大和に行くんですか…!?』

彼『大丈夫だ、安心しろ宮藤。おれは必ず…帰ってくる…!……ザザッ…』

俺「……………っ…。」

あぁ…そういうことか……もっさんじゃなくて、彼が…大和に………
これって…つまりはどっちにしろハッピーエンドか。烈風丸だって、大和に刺さってるし…彼がでっかいコアに吸収されたところを…宮藤の真烈風斬で救出……。
…まさしく…いい終わり方だよ……くそ…っ………。

俺は彼が大和で魔道ダイナモを再起動させようとしているということを把握し、そこから本編と照らし合わせて未来を予測した。
彼がこのまま巨大なコアに吸収されたとしても、宮藤の真烈風斬によって救出され、ロマーニャは解放される。
ラストシーンは宮藤と坂本の訓練生と教官の関係が、彼と宮藤の恋人の関係ということになるだけだろう。

それしか考えられない。最悪の展開は見えてこない…くそっ……ちくしょう……なにが…今まで一人ぼっちで…家族のようにだよ……っ!
結局は……自分の才能のおかげじゃねぇか……。

俺は…いつだって、仲間に入れてくれないままなんだ……生まれた時からもう決まってたんだよ…。

それにあいつは…俺のことを哀れみやがった…っ!殴っておいて…自分が特別だからって…まるで同情するかのように……
表裏が無いなんて…んなわけねぇだろうが…。最悪のエンディングにしたいから…もっさんを止めただけだよ!お前等が憎いから…!

少佐の命を考えて出撃を中止させるべきなんて…本当は……思ってもないんだよ…そんなわけがない…
…未来が変わったら…もしかして少佐が死ぬかもしれないからなんていうことも…一度も思っちゃいない…

一度も……思っているわけがないんだ。俺はこの、ストライクウィッチーズの世界でさえ……消えてしまえと思っているから…。

本当に……

『ピキィィィィィイ!』

…後はもう、ネウロイを信じるしかない。

彼『ザザッ……ザザッ……ぅぉぉぉおおっ!』

兵士「彼少尉が大和に到着したようだぞ…!」
周りの兵士達は「おぉっ」と声を上げる。彼は大和に到着し魔道ダイナモに魔法力を供給し始めている。

彼『………ザザッ…あと少しだ…っ!…これで…ロマーニャを、501を……芳佳を……守れる!!…………っ…!?なんだ……!?』
彼のストライカーもネウロイ化が始まった。しかし彼は供給を止めず、更に自分の魔法力を送り込む。

彼『…………っ…くそったれが…!……負けるかぁあああああっ!!』

魔道ダイナモの出力が臨界に達した。彼が大和を直接操作し、砲台を構える。

彼『ザザッ…(おれを迎えてくれた……ストライクウィッチーズ……芳佳……みんなのために……!)撃てぇえええええええッ…!』

『……ドオォォォォォォォン――!!…ザザッ…』
彼によって大和は砲撃し、轟音が響き渡った。俺は思わず、両手で耳を塞ぐ。

暫くして待機室内の兵士達にざわめきが広がり、無線機から聞こえてくる次の音を、誰もが息を殺して待っていた。

扶桑艦隊兵士『…ザザッ…滅っ……ネウロイの巣……消滅…!!やりました……!彼少尉がやりました…!』

兵士「……おっ…おおおおおおおおおっ!彼少尉がやったぞぉぉぉっ!」
無線機からの声を聞き、待機室にいる誰もが歓喜の声を上げた…だがしかし…

サーニャ『ネウロイの反応が復活…!』

バルクホルン『なんだってっ!?…ザザッ』

彼を取り込んだ巨大なネウロイのコアが、爆風が消えた上空にその姿を表した。


――ヴェネツィア、空母天城にて――

巨大なネウロイのコアが放つ、強大な破壊力をもったビームによって次々に戦艦が沈められてゆく。艦隊は砲撃して対抗するものの、弾は全てシールドで弾かれる。
このままでは確実に全滅する。誰もが希望を無くし、その場に佇んでいた。

しかし宮藤は、坂本が話していた「真烈風斬」のことを思い出し、震電を履き、中央エレベーターに参上した。
大和に突き刺さっている烈風丸を目指し、ミーナの反対を押し切って飛び立つ。

そしてその姿を見た坂本を含め10人のウィッチ達は、決意を新たにし、次々と天城から飛び立っていった。

一人でも戦おうとしていた宮藤が振り向くと、そこには「ストライクウィッチーズ」の仲間達がいた。

ミーナ「いくわよっ!フォーメーション・ヴィクトル!……宮藤さんを援護します!」

全員「「「了解!」」」ブゥゥゥゥゥン!
ウィッチ達は宮藤を援護し、彼女を大和へと導かせ始めた。

坂本「頼んだぞ…!宮藤!…敵を誘導することならば…私にも出来る…!」ブゥゥゥゥゥン!

道を塞ぐ数多くのネウロイを撃墜していく。魔法力がほぼ限界だとしても、宮藤に希望を託した彼女達の士気は上がっていった。

宮藤「……彼さんっ!!」

そして遂に、宮藤は烈風丸が刺さっている大和に到達した。
渾身の力で烈風丸を抜き取り、握った刀から巨大な魔法力の衝撃波が立ち上った。

彼「………芳佳…!っ…だめだ…それじゃお前の魔法力は…!」

宮藤「……かまいませんっ!……彼さん、約束したじゃないですか!一緒に帰ろうって……何としてもみんなを…彼さんを守りますっ!」

彼「…芳佳………!」

宮藤は魔法力を吸い尽くす烈風丸の影響に耐えながら、必死に上昇していく。

そして巨大なコアの天辺の位置で烈風丸を構えた。

宮藤「おねがい烈風丸…私の魔法力を全てあげる!その代わり、ネウロイを倒してっ!私に真烈風斬を撃たせて…!」

宮藤は烈風丸に願いを込め、そして目を見開く。

宮藤「みんなを…彼さんを……守って!!」ブゥゥゥゥゥン!

コアへと全速力で突っ込んでいく。烈風丸から放つ光、それは正しく「真烈風斬」そのものだった。
誰もが宮藤の姿に、「ネウロイを倒せる」と確信した。

宮藤「はあああああぁぁっ!!」ズァァァァァァッ!

しかし…


――バキィィィィィィィィン!


宮藤「……っ…!?…くぅぅぅっ!!」ガガガガガ!

コアに真烈風斬が届く寸前、彼の魔法力を吸収した巨大なシールドによって防がれた。
宮藤は更に力を込める。しかし、そのシールドはビクともしない。

彼の強大な魔法力によって発生するシールドは、本編で坂本が取り込まれたコアよりも桁違いの防御力を備えていた。
彼を取り込んだ強靱なコアは、宮藤がどんなに力を、想いを込めようとも、真烈風斬でさえも敵うことが出来ない、最悪のネウロイへと化していた。

彼が固有魔法である「エネルギー吸収」を発動させたとしても、彼自身がネウロイと一体化しているため、吸収したエネルギーをまたコアへと戻すことになる。

宮藤「そんなっ………真烈風斬でも……勝てないなんて……うぅ…っ…」シュゥゥゥゥ…
烈風丸は宮藤の魔法力を全て吸い取り、震電が脱げ、海へと墜落していった。

彼「……!!…芳佳っ…!!」

本編とは異なった最大の、最悪の展開。それは彼がこの世界に存在し、大和に向かう時点で、既に起きてしまっていたのだった。

宮藤の一撃が効かなかった以上、もう希望は何もない。作戦は失敗に終わった。ロマーニャは確実にネウロイの支配下に晒される。

坂本「くっ……宮藤…!!」ブゥゥゥゥゥン!
坂本がかろうじて落下していた宮藤を救出する。

宮藤「……………さ……坂本さん……私……………彼さんが……」

ストライクウィッチーズは絶望に包まれた。

巨大なコアが激化し、戦艦を一撃で粉砕出来るほどの猛攻をし始めた。
このままでは空母天城を含めた扶桑艦隊もいずれ全滅し、魔法力が限界に達したウィッチ達も全員死亡するだろう。

俺が望んだ結末、それが遂に訪れたのだった。
最終更新:2013年02月03日 15:57