――ヴェネツィア上空、彼を取り込んだ巨大なコアにて――
俺「…っ……なんで……なんでだよっ……どうしてっ俺は………」
梅花は巨大なコアのシールドに突き刺さったまま停止している。
俺がほんの少しでも梅花にエネルギーを供給すれば、確実に梅花はシールドを貫く。彼を殺すことが出来る。
しかし、
俺「…後一歩で彼を殺せるんだぞ……なのに……どうしてっ…俺は力を入れないんだよぉ…っ。」
操縦桿を握る手に、力を込めようとはしない。俺は彼を殺そうとはしない。
俺「っ……うぐっ……どうしてっ………なんでっ…ううっ………く…そっ…ぐぞっ……」
……今…彼を殺したら………俺自身は………宮藤は……
ここから推薦BGM Supercar - Storywriter -
「惨めな人生」に立ち向かい、僅かだけでも報われた事実、「走る」という今まで自分が貫き通してきたものの存在、
そして宮藤への想いが、今まで多くの人間によって非難され、そして「俺は変われない、どうせ悲惨な人生だ」と自らの心に植え付けられている潜在意識を打ち破り、
今まで諦めていた「変わりたい」という自分を引き出し始めた。
俺「っ…ぐぞ……彼を……殺せば…っ…俺は……憎いあいつを殺せば……報われるんじゃないのかよ……変われるんじゃないのかよぉっ……」
…………そうしたって、今までの俺は何も変わらない。
何度も言われてきた、「お前は変わらない、悲惨な人生を歩み続ける」「誰からも非難され、苛められ続ける」
「犯罪を犯してのみ有名になれる、主人公になれる」「走ったって無駄だ」「お前に恋愛など出来るわけがない、ただ迷惑をかけるだけだ」……
彼を殺せば…そんな自分に、俺はなってしまう。
俺「彼を殺せば……俺は変わるんじゃないのかよ……だってそうでもしないと……宮藤はっ……彼とずっと……」
彼を、宮藤の恋人を殺す……それほど俺は宮藤を好きなんだ…
でも…魔法力を失った彼を殺すのは…全部自分のためだ。宮藤のためなんかじゃない…
彼を殺そうとするのは……宮藤よりも…俺は自分のことが好きだからなんだ……。
だけど宮藤は………彼を本当に愛してるんだっ………命をかけ、魔法力を全て失うことを知っていたとしても…それでも助けようとした…。
…彼が死ねば……俺は宮藤を不幸のどん底に突き落とすことになる………
俺「…彼を殺して……俺がっ……宮藤を愛し続ければいいんじゃないのかよ……そうするしか…俺は宮藤と……」
今彼を殺してしまえば、宮藤の恋人が消える。それは俺自身の「宮藤の恋人になれる」という微かな希望にも繋がる。
しかし、そうしてしまえば、結局は俺の「惨めな人生の延長」になる――
……今まで俺が変わることを否定し、俺の惨めな姿を見て、楽しんできた奴らの期待通りの人生になろうとしている……
…そんなの、嫌だ――
俺「うぅっ………くっそ……くっそおおおおおおおっ…!!」
…宮藤に本当の幸せなんて………彼を殺したら……与えることなんてできない…
俺も変われない……。自分のためだけに…殺す必要の無い人間を殺し……その後も今まで通りの…馬鹿にされ、貶され、笑われ、
非難され、のけ者にされ、苛められ続ける人生を…送り続けることになる。
ストライクウィッチーズのみんなや……大好きな…宮藤の幸せを奪って……自分の欲望を…叶えようとするなんて…
そんな自分に…なりたくないんだ…!
俺「……っ……ごほっ……ゴホッ……えぅ……くそっ……くそ…――」
今こそ…戦う時なんだ。
俺「っ…俺は…彼が……憎いんだっ……殺したいんだ……っ………。」
俺は…戦うんだ。
俺「俺にはない才能をもった奴らと同じ……彼を…今なら殺せるんだ……」
あの時、非難し…暴力を振るい…変わろうとする俺のことを妨げた…世間と社会とあいつ等と、
俺「あと少しでも…梅花を前進できるように……力を入れれば……殺せるんだ……」
苛められ、自分の殻に閉じこもり、引きこもり続け、「俺はこのままがいいんだ」「この方が好きなんだ」「結局は駄目なんだ」と理由を付け…諦めてきた自分自身と、
俺「彼を殺したら……俺はっ…宮藤の恋人にだってなれるかもしれないんだ……」
501や宮藤ためではなく…自分だけの……欲望のために…行動しようとする意志と。
俺「…………だけど…っ……でもっ……!…うぅっ…」
そして、今までの自分を変えるために…誰からも非難される俺自身の人生を変えるために、
俺「でも……お…れは…っ…俺は……!!」
本当の幸せを願う…大好きな宮藤のために、
俺は、
俺「彼をっ…
俺「殺さないんだぁあああああああああああっ!!!」
――
俺「うぐっ……っあぁぁぁぁぁああっ!!」ガシャンッ! ゴアァッ!
俺はコアコントロールシステムを起動する前におじさんから説明を受けた、梅花の操縦席の右端にある、本来なら目標地点を修正するための自動から手動操縦へと切り替えるレバーを前に倒した。
レバーを右腕で身体ごと力強く倒したために、汗と唾がキャノピー内部の右側部分にはじけ飛ぶ。
そして共鳴者である俺が正確にコントロール出来るよう梅花に念をかけ、もう一度、操縦桿を握りしめる。
俺「このおおっ……つぁっ…!っぁあっ………!」ゴアァァァァッ!
操縦桿を手前に倒し、機尾を上げ、機首を下げようとする。
梅花の衝突目標地点を、「彼」から、巨大なコアの「側面部」変更させようとし始めた。
自分だけにしかない特性である「ネウロイとの共鳴」を持つ俺には、コアコントロールシステムを内蔵した大和同様に、真っ黒なネウロイの形をした梅花を操作することが出来る可能性があった。
しかし、俺の思い通りに操作するには、エネルギーを更に供給しなくてはならない。
もう一度、エネルギーを吸収されることによって生じる苦しみと痛みが、ジワジワと沸き上がってきた。
俺「くそっ…さぁあがぁれえええええええええええっ!!」ゴアァァァァッ!
機首を下げるために操縦桿を目一杯前に倒し、梅花に向けて「機尾を上げ、機首を下げろ」とだけ、ひたすら念を送り続けた――
彼「――な…なんだ?一体…どうなっているんだ………。」
彼の目の前に衝突し、先程までシールドを破ろうとしていた梅花が急停止したと思いきや、もう一度起動し始めた。
しかし先程の動きとは違う。壊れかけたシールドを破ろうとはぜず、突き刺さったまま衝突する地点を下の方へ変更させようとしている。
彼の目には、先程まで自分を殺そうとしていた梅花が、今ではわざと避け始めているように見えた。
彼「…おれのことを………避けている……のか…?」
俺「――ううっ…がっ…ぐそっ……どうしで…こんなに…辛いんだよぉ…っ…!!」ゴアァァァァッ!
彼を殺そうとしていた時のような、俺の苦しみを忘れさせる要素は消えていた。
俺「どうしてっ……さっきより…辛いんだよ…はぁっ……くそっ…ちくしょおおおおおっ!!」
…本当の…戦うって……こんなに苦しいのかよ……辛いのかよ……
汗が止まらない。体中が熱く、ガクガクと力が抜けていくような感覚がする。
ハンガーノックに似たような症状が起こり、全身の力が抜けていった。
喉の下の鎖骨がある部分を、金槌で叩かれるような苦しみが襲ってくる。
俺「ゴホッ…!がぁっ…もう止めたいっ…苦しいのから逃げたい……ぐぁ……。」
苦しみと共に、諦めようとする本能、
そしてもう一度、もしも彼を殺せるのならばという思いが発生する。
しかし、俺は戦う。
…でも…ここなんだろ…「一番苦しいときが勝負」…なんだろ……
馬鹿みたいな…根性論なんかは…正直……信じられないけど……
今の俺にとっては………この…言葉が…頼りなんだ…
俺「ちくしょぉ…ちくじょぉ…っ!!……あいつが…彼が何をしたって言うんだよ…!!501やみんなを守るために…命がけで戦ってきたじゃねぇかよっ!!」
彼を褒めなければ、認めなければ、今の俺は操縦桿から手を離してしまう。
俺「っ…ぐぞぉ…!!彼は俺に対して何かしたのか…っ?悪意を持って何かしたことがあったか…?あいつは必死に…守りたいからって…戦ってきただけじゃねぇかっ…!!」
……でも……
宮藤が…
俺「っ…!…宮……藤っ……。」
宮…藤…がいる……
俺「…宮藤っ……お願いだっ……俺を見てくれよっ!!彼を助けるからっ…お前の幸せを誰よりも願っているがらっ…」
宮藤……芳佳……
俺「おねがいだ…みや…ふじっ……ううぅ……うあっ……うわああああああっ…っ…――」
――空母天城にて――
ペリーヌ「これは……。」
艦内にいた8人のウィッチ達が、先程の爆発を聞きつけ、宮藤と坂本、ミーナがいる甲板へ駆けつけていた。
『ピキィィィィッ……!!ザザッ……ピキィィィッ……!!ザザッ……グオオッ……ゴアアアッ……』
全員のインカムに、梅花からの通信が届く。しかし俺の声は、瘴気と雑音によって妨害されている。
坂本「…………梅花で……何が起きているんだ…?」
『ザザッ……ピキィィィッ……!!みっ…グオオッ…じ…ゴアアアッ……』
宮藤「………………この…声って…………」
――彼を取り込んだ巨大なコアにて――
俺「みやっ……ふじっ………うぅっ…ああっ……ぐっ……うう………………」
…宮藤…俺は……君を……好きなんだ…
君がいたから…俺は変わろうとすることが出来た…
だから…
…守りたい…。
口を大きく開いて、喉は枯れているとしても、俺は叫んだ。
俺「――っ!!ああああああああああああああああああああっ!!」
――ゴアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!
俺「下がれっ……ざがれぇえええええええええええええ!!」
梅花は大きな音を上げ、機首が下がり始めた。
ビーム膜のための、梅花に蓄積されていたエネルギーが底をつく。
そしてエネルギー供給の全ては、俺の身体に託された。
俺「ぐっ……あぁぁあああああっ!!」
ギギッっという音をたて、キャノピーから見える視界が下がってゆく。
俺「はぁっ……はぁッ……はあっ……ぐっ……あぁっ……」
そして、次に俺が顔を上げた時、目の前に見えるのは彼ではなく、
巨大なコアの、側面だった――
宮藤……
俺「あああっ…ぐっ…ああああああああああああああああ!!!」
みや…藤…
俺「すすめぇええええええええっ!!!」グオオオオオオオオオッ!!
操縦桿を握るガクガクする手をもう片方の手で押さえつけ、一心に「進め」と梅花に念じた。そして、
みや…ふじ……
――ビキィッ!!ビキビキビキィ!!ビキビキビキビキッ!!
俺…頑張ったよ…――
俺「………芳…佳……。」
パリイイィィィィィィィィィィインン――
ヒュゥゥゥゥゥゥン……
――ズドォオオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオン!!!
梅花はシールドを打ち破り、巨大なコアに衝突した。
彼のいない、側面部の部分に。
梅花は蓄積用のエネルギーが底をつき、ビーム膜を張っていない状態のままで、コアに突き刺さった。
その衝撃によって相当なダメージを被った梅花は、再生が間に合わず、胴体部までの黒いネウロイの装甲は消えさっていた。
そして足の固定や、操縦桿を失った俺は、操縦席から仰け反るようにして後ろへ吹き飛んだ。
身体を大の字にして、大空を仰ぎ見る。
巨大なコアの欠片はアニメで見た時のように、いや、それ以上に多く、キラキラと眩しすぎる輝きを放っていた。
そして、白く光る欠片が上から振りそそいでくる中に、落下してくる彼の姿が見えた。
彼……
梅花から飛び出た俺に向かって、何かを大声で言っているようだ。だが聞こえない。
『ザザッ…!!!…あれ……はっ…!!ザザッ……れ…さっん…?…ザザッ…れ…さぁん!!』
インカムから、天城にいるウィッチ達の声が聞こえてきた。
………ほら…みんなも…宮藤も……お前を待ってるぞ…
早く行けよ…彼……
………これで……
………よかった……よな。
――
不思議と、俺がコアにぶつかったとき、俺は痛みを感じなかった。
降り注ぐネウロイのコアの欠片に手が触れたとき、あの時、夢で見た白い光が視界を覆っていった。
そして俺は、
巨大なコアと共に、ストライクウィッチーズの世界から消失した。
――
『ブゥゥゥゥゥゥン!』
飛行が可能なウィッチ達は、彼が落下している、砕け散ったコアの上空を目指しハンガーから飛び立っていった。
――ネウロイの巣にて――
やっぱり……最後まで俺は俺だったよ…
「でっかいコアの撃墜に成功して…アニメ2期の宮藤ともっさんみたいに……俺と彼は空から落下していって…
そこをウィッチ達が助けに来てくれて……みんなが俺を迎えてくれる…
そうすれば…彼を殺したりなんかしないで…宮藤を振り向かせるための努力をすることが出来る…そんな日々を送れる…」
そう期待してたし…そう心から信じていたんだ…
だって…俺は変わろうとしたんだし…行動も起こして…彼も殺さず…今までとは違う自分に近付けたんだ…
だったら…報われても……いいじゃないかよ……
でも…やっぱり…何もない……やっぱり……何も……無いじゃないかっ……――
俺は彼と宮藤の話しを盗み聞きしていた時の夜に見た、夢の中の光景と同じネウロイの巣の中にいた。
身体はかろうじて無事であるが、エネルギー切れを起こしており、手を動かすのがやっとだ。
ここに俺が来たのは、夢を含めると3度目になる。最初に来たのは、俺が土手でコアを触った時だった。
周りはドス暗い雲のようなもので覆われ、身体は宙に浮いていると言うより、下から上へ飛ばされているような状況だった。
ストライクウィッチーズの世界に来た時とは違う、巣の中を落下しているのではなく、何かの風圧のようなものに押され、上昇している。
『……おれの憶測だが…コアに触ってこの世界に来たお前なら、もう一度コアに触れることによって元の世界に戻れる可能性もあるだろう……』
俺はおじさんの言葉を思い出した。
俺「…あぁ…そっか…スト魔女の世界に来た時と……進んでる方向が逆だ…」
ってことは……俺は……元の世界に帰るのか…。
俺「………ははっ……そっか…帰るんだ……。」
……元の世界に帰ったって……どうせ…いいことなんてありゃしない…。
宮藤のために…変わりたい自分のために……行動して……身体までボロボロになっても……
見返りなんか…何もない……501のみんなとも…宮藤とも…もう会えなくなった…。
…もう…最悪だ……。
元の世界に帰ったら…現実の世界に帰ったら…もっと大変で…また何にも行動できないまま、辛い日々が過ぎていくんだ…
もういくら頑張ったって…無理だ。
俺が悲惨なのは…やっぱ本当の「運命」なんだよ……
ははっ……はははっ……こんな形で…本当に運命が存在するって確信するなんて、小さい頃の俺は思っちゃいないだろうな…
元の世界でも…ストライクウィッチーズの世界でも…昔から…俺はだめだったんだ…
こんなのもう…生きていたくない…もう辛いのは嫌だ…。
そうだ…死ねば……全てを忘れられる。
辛いこと、嫌なこと、全部から。
…死のう…帰ったら…楽に死ねる方法を探して…
もう…死のう…自殺しよう…
生きているのは…
嫌だ…
『ザザッ……』
俺「……?…」
俺は、耳に付けてあったインカムに気が付いた。
……インカム…?あぁそうだ…耳に付けたままだったんだっけ…
ザザッっと、無線特有の音が響いている。
俺はインカムを取り外そうとした。
……もう……こんなもの…どうでも…いい………
俺自身も…もうどうでも……――
『ザザッ……ザザッ……』
『ザザッ……』
――
『…ありがとう……俺…さんっ…』
それは確かに、宮藤芳佳の声だった。
俺「…っ…!!………………………っ……えっ……」
俺の耳に響いたのは、宮藤からの言葉だった。
俺「………みや……ふじっ………っ」
インカムを取り外そうとした手を、カタカタと振るわせた。
俺「……………ょ…し…か」
俺「芳佳ぁ………」
俺「うぐっ…ううっ……ょ…し…か…っ!…」
俺「……よしかぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!――」
嬉しいのか、悲しいのか分からない。
でも俺は、ひたすら涙を流し続けた。
ずっと、その言葉を待っていたような気がした。
最後の最後でも、たった一言の「ありがとう」だったけど、
その言葉は、俺にあることを気付かせてくれた。
俺「俺はっ……守れたんだ…こんな俺でも…ロマーニャを…ストライクウィッチーズをっ……」
俺「彼を………」
俺「芳佳を………っ…」
俺「俺でも…みんなを守れたんだ……っ…うああああっ…ああああっ…っ。」
俺には「みんなを守ることが出来た」という事実ができ、
そしてそれを、大好きな宮藤の声が決定づけた――
報われたのか、報われてないのか何て分からない。
ただ、宮藤のその言葉を聞いたとき、俺はこう思えた。
たとえ現実の、元の世界に戻ったとしても、俺はまだ頑張れる。
たとえどんなに馬鹿にされようと、非難されようと、
惨めな人生を、諦めていた人生を
変えようとし続ける。
本当に強くて、怖いものに立ち向かい続ける。
俺はまだ、
――戦える。
EDテーマ スガ シカオ - Progress
――2013年、日本、川沿いの土手にて――
俺は少し、後悔していた。
足は当然の如く腱鞘炎を起こしており、疲労困憊で倒れそうにフラフラしている。
しかし、家を走り出してから約4時間、距離にして50kmになる道のりを走ってきた。
後悔よりも、達成感が勝っていたのは確かだった。
今日は1月1日。2013年になった瞬間に走り始め、「ここで見る初日の出が一番綺麗で最高だ」という話を友人から聞き、目標の場所に訪れることが出来た。
初日の出まで、まだ時間があるようだが――
俺がこの世界に戻って来た時、時間経過はスト魔女の世界とは同様では無かったらしく、「二週間ほど俺は行方不明になっていた」と病院で聞かされた。
土手の川沿いに昔の兵士の服装をして倒れていた俺は、土手を散歩していたおばさんの通報によって、どうにか一命を取り留めた。
何週間か入院し、梅花に吸収された分の体力も回復していった。梅花に吸収されたとしても、魔法力同様、完全に無くならなければ体力は回復するものだ。
親にも迷惑をかけ、殺されるのではないかと思ったが、どうやらかなり心配していたらしく、その様子があった親の顔を見たとき、俺は自然と涙目になっていた。
今では身体も大分良くなり、こうして無茶をすることも出来る――
退院し、俺は長い間休んでいた大学にそれから毎日通い出した。「今までの人生を変えるんだ」と言うこと自体が、今では俺の潜在意識になり始めている。
俺「あぁーまだかな初日の出……さぶっ…」ガクガク
……この世界に戻ってきて…何ヶ月か経ったけど…やっぱり、そう簡単に変わりはしない。
俺のことを見て笑う奴もいれば、見下してくる奴だっている。
でも……少しずつ…少しずつだけど…俺は変わっていることが分かる。
こっちから話し掛けて、友達になれた人も少なからずいる。そんなに…俺が思っているほど怖くは無かった。
…………正直…宮藤のことは…まだ好きだし忘れられない……でも……
それはもう…いつか……
俺「…やっぱ騙されたのか…俺?くっそ!あの野郎……ん?って…あれは……」
少しずつ、川の境界線上から太陽の光が見え始めた。
……あぁ……確かに…最高…そうだな…――
あの世界は、ストライクウィッチーズの世界は思ったより残酷で、人だって普通に死んでいる、「戦争」をしていた世界だった。
今自分のいるこの世界の人よりも、過酷な人生に戦わなくてはならない人達が大勢いるだろう。厳しい戦いを強いられるだろう。
でも、俺が本当に戦わなくちゃいけないのは、現実のこの世界なんだ。
いつまでも、他の世界に逃げて何かいられない。
本当の、今いるこの世界で戦いをしなくちゃならない。
あのスト魔女の世界で見た、命をかけ、大切な人達を全身全霊をかけて守ろうとする彼女達のように、
俺も、この世界の現実に、立ち向かっていくんだ。
女の子が戦ってるのに、男の俺が戦わないなんて、恥ずかしいからな――
目の前にはいつの間にか、「最高の初日の出」とも言える光景が広がっていた。
眩しい日光が、俺の身体に降り注ぐ――
潜在意識。
どの環境、どの場所、どの世界でも、自分は自分であり続けようとする。
成功する人は成功し、失敗する人は失敗する。
俺はどちらかといえば後者だった。
……でも今は、どんな状況であってもあきらめず、頑張ってみようと思うんだ。
変わりたいと思い続ける、
俺は俺、だからこそ――
俺「……よしっ…満足したっ!そろそろ帰るかっ!!足は痛いし、帰れるかどうか分かんないけど…」
正月は何をしようか…帰れても足は動かないわけだし…一日中駅伝でも見てるか…
俺「…………………そうだ……まだ、あれがあったんだ。」ゴソゴソ
ゴソゴソとウインドブレーカーのポケットをあさる。そして、何かが指に当たった。
俺「…………ありがとう……みんな…宮藤……――」
俺はポケットからインカムを取り出し、それを思いっきり朝日の方向へ投げ飛ばした。
~おわり~
最終更新:2013年02月03日 15:59