~2380年、地球 サンフランシスコ 宇宙艦隊司令部~
俺少佐「失礼します」
提督「おお、君を待っていたよ」
俺は艦隊アカデミーで教官の一人だった提督の執務室まで来ていた。
提督「先日の外交任務の活躍、おめでとう」
俺少佐「いえいえ、提督が私を大使に推薦してもらったお陰です」
提督「今回の成果は私の想像よりも大きい。君の力を甘くみていたようだ」
提督は僅かに微笑むとすぐに真顔に戻る。
提督「今は休暇中だが君に新しい任務が来ている」
提督は俺にPADDを渡し、俺は任務内容を確認する。
俺少佐「派遣先はカーデシアですか・・・」
カーデシア連合は数年前のドミニオン戦争で大きい被害を受けた国だ。民間人が8億人も犠牲となった。
提督「復興途中である以上、優秀な士官を派遣しなければならない。慎重に事を運んでくれ」
俺少佐「ベストを尽くせるよう頑張ります」
提督「君はよく頑張ってる。近いうちに昇進の話も来るかもしれないな
このままのペースなら艦長になるのも早いだろう」
俺少佐「喜ばしい限りです」
提督「君のご両親も喜ばれるだろう・・・」
俺少佐「・・・」
提督「・・・すまない・・・思い出したくは無いはずだ。だが彼らは私の教え子の中でも特に優秀な士官だった
今の君の頑張る姿を見れば喜んでくれるだろう」
俺少佐「・・ええ、分かってるつもりです」
提督「・・・船は火星のユートピア・プラニシア造船所で待機中だ。ノヴァ級の船で奴大佐が指揮を執る
明日スペースドックからシャトルで向かってくれ」
そう言うと提督は窓の外に広がる庭園を見ている。もう話す事が無いようだ。
俺少佐「ありがとうございます」
そう言って一礼し、部屋を後にした。
?「俺大尉か?」
PADDを読みながら庭園を歩いていると後ろから急に呼びかけられる。
俺少佐「!・・彼大佐、お久しぶりです!」
彼大佐「うむ、それにその階級章は・・」
俺少佐「先日昇格しました」
彼大佐「ほう・・・少し話さないか?」
俺と大佐はそのまま近くのベンチで身の上話をする事になった。
彼大佐「君と
初めて会ったのは2年前だったな
あの頃の君は私が惑星の上陸任務に行こうとするたびに呼び止める程堅物だった
「艦隊規則では艦長の上陸任務は禁じられております(キリッ」と言うたびに
ブリッジクルーが影で笑っていたのを今でも覚えているよ」
俺少佐「あ、あの頃の事は忘れさせてください//」
最近知ったが大半の艦長は一度は規則に反して上陸任務に参加するらしい。探検心旺盛と言うべきなのか・・・
彼大佐「今私はUSSベレロフォンを指揮して深宇宙探査を行っている。中々楽しいものだよ」
彼大佐「君は君でどの任務に就いていたのかね?」
俺少佐「もっぱら外交任務でした。10種族以上の外交問題でした・・・
最近は戦争ばかりで連邦内部でも色々不満が出てきています」
彼大佐「この20年で二回のボーグ侵攻、ドミニオン戦争、予測はしていたが・・」
俺少佐「・・・多くの命が失われました・・・」
あの時の事を思い出すと何も話せなくなってしまう・・・
彼大佐「あの時はもっと早く君たちを助けてあげれば・・」
俺少佐「いえ、良いんです。大佐が助けに来たら大佐まで死ぬ事になっていたでしょう」
俺少佐「それに・・・私が考える限り、父と母はあなたを恨んではいないと思います」
彼大佐「そうか・・・」
大佐は遠くの空を眺めている。視線の先にはゴールデンゲートブリッジとその上を飛ぶシャトルがある。訓練生でも乗っているのだろうか
彼大佐「偉くなれば多くの人を助けてあげられる、そう思ってた頃もあったが・・・」
大佐宛てにコムバッチから呼びかけが入ったようだ。話を止めて大佐が応答する。
彼大佐「私だ・・・・了解した。すぐに戻ろう」
通信を切り俺の方を向く。
彼大佐「船の修理が終わったと同時に新しい任務が来た。ロミュラン中立地帯のパトロールらしい」
俺はすぐに疑問を投げかける。
俺少佐「今は関係修復すべき時なのにどうしてそんな任務が・・・」
彼大佐「未確認情報だがクリンゴンがロミュランに侵攻する可能性があるらしい」
俺少佐「・・・また戦争が始まるのですね・・・」
クリンゴン帝国と連邦は初接触から何度か戦争の危機にあったもの、90年前にキトマー和平条約が締結され今は信頼関係で結ばれている。
だがクリンゴンとロミュランの関係は冷え切った状態であった。
彼大佐「今ロミュランは前年のクーデターで内部崩壊している。攻め時と言えるな」
俺少佐「やっと平和になったと思ったのに・・・
連邦にまで火の粉が飛んで来なければ良いですが・・・」
俺はそのままずっと黙っていたが、少しの後大佐は俺の肩に静かに手を乗せた。
彼大佐「クリンゴンは我々と同盟を結んでいる。彼らが攻める可能性は無い・・・と信じたい
だが彼らの力が大きくなっていけばいつか我々と対立する事は目に見えている
その時は今では無い、だが君が艦長を務める頃には来る。そう私は考えているんだ
そうなったら君は彼らと戦わなければならない」
「君も考えておく事だ・・・」
そう言うと大佐は立ち上がり少し歩くとこちらを向く。
彼大佐「俺少佐、また会おう」
大佐はコムバッチを叩き、通信リンクを開くとそのまま転送で船に帰った。
俺(これからどうなっていくのだろうか・・・)
翌日、宿泊先から最寄の転送機を使い、スペースドックまで行く。
ドックには多くの艦隊士官で溢れていた。窓の外には多くの宇宙艦が係留されている。
?「俺少佐でしょうか?」
振り向くと黄色の制服に身を包む若い男がいた。
俺少佐「そうだが?」
友チーフ「私は友上級兵曹長です。今回のカーデシア外交任務での機関部員としてやってきました
今まで俺少佐をお待ちしていました」
俺少佐「ああ、ありがとう」
友チーフ「シャトルはこちらです」
彼に着いて行くとシャトルの発着場まで来た。
俺少佐(訓練でシャトルには何回も乗ったが狭くて嫌なんだよな・・・操縦は楽しいけど)
友チーフ「我々が乗るのはこのデルタフライヤー級シャトルです」
そこにはシャトルとは思えない船があった。
俺少佐「・・・ランナバウトの間違いでは?」
普通シャトルは全長10m程度の長方形型で座席自体も小さく、大半は簡単なワープ航行しか出来ない。
だが目の前のシャトルは全長20m以上の菱型で両翼に格納式ワープナセルもある。武装もかなり強化されてそうだ。
これは俗に言うランナバウト(小型宇宙艦)では無いのか・・?
友チーフ「これは従来のシャトルにあった居住性の悪さや武装の弱さなどを取り除くために設計されたシャトルです
気にいってもらえると思います」
友チーフ「中にお入りください」
そう言うと彼はエアロックを開ける。俺が先に入ると彼も入って来てエアロックを閉めた。
コックピットは前部の操縦席とコンソール付きの後部座席2つで構成されている。
友チーフ「私が操縦するので小佐はセンサーのチェックをお願いします」
俺小佐「分かった」(俺も操縦したいなぁ・・)
操縦席には普通のタッチパネルコンソール以外にも、数世紀前に廃れたはずの操縦桿まで付いている・・・ここは彼に任せよう
俺はそのまま後部座席に座るとセンサー記録とシャトルの仕様を呼び出す。
俺少佐(センサーには異常が無いが・・・フェイザーアレイに光子魚雷、
ワープコアはシャトルでは通常の核融合式ではなく対消滅反応式か。パワフルな船だな)
友チーフ「発進準備が整いました。よろしいでしょうか?」
俺少佐「分かった。コンピュータ、管制室に繋いでくれ」
すぐに管制室と通信が繋がる。
俺少佐「こちらシャトル、発進許可をお願いします」
管制室「了解した、これからハッチを開ける」
目の前の巨大なスペースドアが開く。ドックと宇宙空間の境界にはフォースフィールドが張られ、空気が漏れる事は無い。
管制室「こちら管制室、幸運を祈る」
俺少佐「感謝します」
通信を切り友チーフに目配せをする。友チーフはスラスターを使いゆっくりと発着場を離脱した。
そのままフォースフィールドを通過すると地球軌道上に出た。後部モニターを呼び出すと離れていくスペースドックが映っている。
俺少佐「そろそろだな・・・インパルスドライブを起動。コースは火星、ユートピア・プラニシア造船所。推力最大で向かえ」
友チーフ「コースセット、推力最大」
シャトルの針路が変わり、僅かな揺れと共にキャノピーから地球が離れていくのが見える。シャトルは既に秒速75000kmまで加速していた。
友チーフ「到着まで40分近く掛かります。私が操縦とセンサーチェックを行うので少佐はゆっくりしていてください」
俺少佐「そうか、すまないな」
俺は興味本位から後部船室に行ってみた。
船室は小さいながらもコンソールとレプリケーター、医療用ベットが置いてある。脇のスペースには様々な器械や宇宙服が置いていたようだが
今は船に運ぶ備品の箱で埋め尽くされていた。
俺少佐(箱の中身は最新式のトリコーダーにフェイザーライフルが一杯だな・・・)
友チーフ「俺少佐!異常が発生しました!来てください!」
俺少佐「一体何が・・・何なんだこれは・・・」
船室からコックピットに戻ると慌てふためく友チーフと共にキャノピーが見えた。外は謎の青い光で輝いている。
俺はすぐに座席のコンソールからセンサーの情報を呼び出す。
俺少佐「マズイな・・どうやら空間異常が発生しているらしい。後数分で飲み込まれるぞ!」
俺少佐「インパルスドライブを再起動しろ!駄目ならワープドライブも行え!」
友チーフ「無理です!謎の粒子が空間全体に干渉して行動不能です!」
俺少佐「クソッ!コンピュータ、亜空間通信を全チャンネルで開くんだ!」
俺少佐「こちらシャトル!謎の空間異常に遭遇しシャトルがのみ込まれ始めている!至急救援を求む!」
? 「・・・こちらUSSベレロフォン、艦長の彼大佐だ。俺少佐か?」
俺少佐「大佐でしたか!すみませんがすぐに我々を転送してください!」
彼大佐「了解した。転送に備えてくれ」
俺達は転送されるのを待ったが一向に来ない。
彼大佐「空間異常のスピードが早まっている・・転送主任!補正をかけてもう一度転送するんだ!」
俺少佐「・・・もう空間異常がのみ込むまで時間がありません。すぐに船を退避させてください」
彼大佐「まだだ!もう一度補正をかけて・・・」
通信も途切れてしまったようだ。キャノピーの外の光も眩しいほどになっている。
俺少佐「もう無理か・・・友チーフ、空間異常に備えてシールドを強化しておくんだ」
友チーフ「了解、インパルスドライブに回しているパワーをシールドに回します・・・」
俺少佐(まさかこんな事になるとはな・・・ハハハ)
俺達はすぐに光に包み込まれて意識を失ったのであった・・・。
彼大佐「まだだ!もう一度補正をかけて・・」
その瞬間スクリーンから青い光と共にシャトルの姿が消えた。
転送主任「・・・彼らの反応が消えました」
彼大佐「周囲のスキャンを行うんだ!異常は無いのか!」
オペレーター「何もありません・・・空間や重力子、タキオン、クロノトンの異常も発見できません」
彼大佐「くっ・・・艦隊本部にチャンネルを開くんだ」
彼大佐「今回も守れなかった・・・」
最終更新:2013年02月03日 16:22