ミッケリ臨時空軍基地 夕方 いらんこ中隊の教室

エイラ「あ、エルマ中尉達が帰ってキタゾ」

俺「ん?」

 補修訓練を終えて先に教室に戻っていた俺とエイラはいらんこ中隊面々が教室に入ってきた

キャサリン「あらー?今日は二人とも訓練じゃなかったのかねー」

俺「ハッキネン少佐に今日はもう休めと言われてな」

エイラ「あれ?智子少尉はドウシタンダ?」

エルマ「えー…っと」

ウルスラ「…司令室」

エイラ「司令室?」

ビューリング「…今日は爆撃任務があったのは知ってるだろう?だが途中で爆弾を投下してしまってな
 それについてハッキネン少佐に今頃しぼられている頃だろう」

俺「失敗…」

 俺とエイラの新人二人がこのいらんこ中隊に配属されてから負け戦ばかりが続いている
それが新人軍曹達ではなく、少なくとも実戦経験のある数名と2人の精鋭が居るにも関わらずだ

俺(次は俺とエイラも作戦参加だけど…出来るのか?)

キャサリン「何暗い顔してるねー、聞いたヨー?」

俺「何をですか?」

キャサリン「次から参加する事ねー」

俺「ああ…そうですね、よろしくお願いします」

 生返事で上官に対して答えてしまうがキャサリンは気にせず笑っている
俺の表情を見て何かを思ったのかビューリングが口を開いた

ビューリング「心配するな、初陣で冷静さを失わなかったお前達だ 無理をしなければ墜ちる事はない」

エイラ「で、でもダナ…ネウロイをやっつけられなかったンダゼ?」

ビューリング「…ふふ、お前達の装備でケファラスにダメージを与えられた方が奇跡に近い」

エイラ「けふぁらす?」

俺「ケファラスはたしか中型爆撃機型ネウロイの事ですね」

ビューリング「そうだ、そしてお前達の装備しているのは名前は確か…」

エルマ「スオミM1931ですね~」

ビューリング「そのスオミM1931は短機関銃で元々はラロス級またはそれ以下の小型ネウロイへの使用を目的とした武器だ
 それ以上の敵相手にはよほど接近して銃弾を浴びせなければ傷一つすら与えられないだろう」

エルマ「短機関銃は元々拳銃弾ですからねー」

キャサリン「ケファラスに傷を与えただけでも奇跡ねー、最初は耳を疑ったね」

ビューリング「私達は今でこそ爆撃任務だが、基本的にはラロス(戦闘機型)ネウロイを攻撃する制空部隊だ、基本的には問題ないが
 それより大型で頑丈なネウロイが今後押し寄せる可能性もある」

俺「そ、そんなぁ…じゃあ作戦に参加した時はどうすれば…」

ビューリング「心配するな、この中隊にいる各国へ新型ストライカーと武器の補充を依頼した。
 まだ先だがいずれ届く、それまではその短機関銃で耐えてくれ」

エイラ「わ、私にも来るノカ!」

ビューリング「何が来るかはまだ分からないがユーティライネン軍曹の分も依頼してある、心配するな」

俺「カールスラントからの補給か…」ボソッ

ウルスラ「…」

 エイラが喜んでいる横目でエイラほどの身長と短い金髪にカールスラント空軍の軍服を着た
ウルスラ・ハルトマン軍曹は眼鏡越しに何かを呟いた俺の事を開いた本から視線を上げて見ていた




ミッケリ臨時空軍基地 夜 いらんこ中隊の教室

俺「私の首が体から離れ胴体を湖に捨てられるであります」

智子「…よろしい」

 本日も何かしら怪しい行動をした場合俺がどうなるかを智子に復唱し
それを確認した智子は先日よりも力なくベットへと滑り込んだ

エイラ「むぅぅぅ…」

俺「どうしたエイラ?」

エイラ「本当にそこの位置じゃないとダメなのカ?」

俺「仕方ないだろ、穴吹少尉の指示なんだから」

エイラ「うううむうううゥゥゥゥ…」

 先ほどからエイラが俺を睨んで唸りをあげている
 それが始まったのは智子がこの教室に戻ってすぐに俺に命令してからだった気がする

俺(ベットの位置を変えなさいって言われたあたりだったかなぁ…エイラが唸りだしたの)

 昨日まで俺とエイラは教室の窓際端で隣同士だったが、智子の指示により配置は
 キャサリン、エルマ、ウルスラ、ビューリング、智子、俺、ハルカ、エイラ
 の順番になり、俺はハルカを挟んでエイラと離れてしまっていた

俺(壁端から離れたけどこれって信用されてるのか?)

エルマ「け、消しますよー…」

エイラ「うぐぅ…」

 まだ不安があるのか少し震えた声を出しながらエルマが教室の明かりを消す
 消す前に立っていたら変に不安を与えるだけだろうと思いベットに潜り込んで横になりさっさと寝ようとするが…

ハルカ「ともこしょぉぉぉいぃぃぃぃ…」

俺「…迫水ハルカ一等飛行兵曹、自分のベットに戻ってください」

ハルカ「うぅ…ううう…」ギュウゥゥゥゥ

俺「…痛いです」

 信用されているというより、ハルカとの壁役をやらされている気がする…
 自分のベットに戻らず、俺のベットから智子のベットを見つめ、俺の脇腹当たりを力強く両手で握られる

俺(昨日も暴れられたお陰で数箇所打撲によりあまり寝れなかったのに今日もなのか…ん?)

 隣の、智子のベットに誰か滑り込んだのかもそもそとシーツが盛り上がった後、話し声が聞こえる

「話がある」
「な、何よいきなり…」

俺(ビューリング少尉か、というかまさか常識人だと思ったビューリング少尉も…というか脇腹がさっきにも増してイテェ)

 ここスオムスに来てから現在進行形で脇腹の痛みの原因である迫水ハルカ一等飛行兵曹のお陰で、スオムスにいる魔女は
特別な性癖を持っているんじゃないかと一種の偏見を持つ俺だったがその不安は次の言葉でふっと消えてしまった

「お前、私達が負けた理由が分かるか?」
「敵が強くなったからよ」

俺(…たしか今日は爆撃任務を失敗したんだよな、他はどうかは分からないがこの精鋭二人がいるのに)

「違う、我々の機体の性能が敵に差をつけられ始めたんだ」

 機体の性能差、という言葉に智子の否定的な応答を聞き流しながら考えていた

俺(俺の使ってるBf109D型はアホネン大尉の居る第一中隊のBf109E型の一つ型遅れだったよな、確か)

 俺だけではない、エイラが使っているバッファローもリベリオンの中では型遅れ、それ以外は分からないが
ビューリング少尉が言っている事が正しければ全員が全員型遅れの機体を使っているのであろう

俺(あいつの機体も…メッサーシャルフの開発競争に負けた機体だったよな)

 俺が連想したのは無類の本好きなのか明かりの消えた部屋でも本を読んでいるウルスラ・ハルトマン
 彼女の機体He112も改良を加えられているとはいえBf109E型には性能は及ばない

俺(下手したら俺のD型よりも性能は低いのか…というか噛み付くな迫水ハルカいっぴ、いだだだだだ!?)

 自分の分かる範囲でいらんこ中隊の所持するストライカーの分析をしていたが途中でシーツ越しにハルカに脇腹を噛み付かれて
考えていた事が一気に吹っ飛ぶ

俺「いい加減にしろ迫水一等飛行兵曹!」ガシッ

ハルカ「ひっ!?」

 シーツ越しに思いっきり噛みつかれていた俺はハルカの首根っこを掴み話したところでハルカは手足をバタバタしはじめ

ハルカ「た、助けてください!助けてください智子しょーい!このままでは私身包みを○○されて、欲望という名の
 オオカミに○○されて○○されちゃいます!」

俺「だ、誰がんな事するか!大体お前が噛み付いて…」

エイラ「んぅー…みぐるみをはがされて、よくぼうというなのおおかみにりょうじょくされてはらまされるってどういう意味ナンダ?」

俺「寝ぼけ眼で復唱せんでいい!そして知らなくてもいいから!」

エイラ「んー…?」

キャサリン「今日は俺がうるさいねー」

 ハルカに続いて俺まで大声をあげてしまった為に寝ていたメンバーも起きてしまったようだ

エルマ「お、俺軍曹が…そ、そんな事を…」ガタガタガタ

 中隊長のエルマは布団に包まり身を丸くし目だけ出してこちらを見て震えている
 話し合いが終わったのかビューリングは何事も無かったかのように自分のベットに戻り
智子がベットから身を起こしハルカを掴んだ俺の前に立ち上がる

俺「あ、穴吹少尉…ごかんべんを…命だけは、命だけは…」

 ベットの上でハルカを離し土下座する俺、その影に隠れたハルカを智子は掴み彼女のベットへ投げ捨てる

智子「…寝なさい」

 気分ではなかったのか、真実を悟ったのかは分からないが彼女はそれだけ言って自分のベットに潜って深く
シーツを被った




ミッケリ臨時空軍基地 午前

ハルカ「あの…お話宜しいですか?」

俺「ん、俺にですか?」

ハルカ「はい、ここでは話し辛い事なので…」

 元体育館の臨時ハンガーでBf109Dの整備をしていた俺に珍しく声をかけたハルカは
俺を元々図書館のような場所に連れて行く

俺「なんですか、話って?」

ハルカ「昨日のことです、俺軍曹にあんな事言って…」

俺「あー…」

 先日の夜、少女の口から出したらいけないような単語を並べたアレか

ハルカ「すみませんでした、智子少尉の気を引く為とは言っても言いすぎました」

俺「いや、気にしないで良いですよ」

俺(他の人は真に受けて無かったみたいだしな…というか穴吹少尉の前じゃなかったらこんなに普通な女の子なのか)

エイラ「何を話してるんダ?」

俺「うお!?」

 図書館の椅子にハルカと対面して座っていた俺の背後からエイラが急に出てきてひっくり返りそうになる

俺「なんだ、エイラか…」

ハルカ「いえ、昨日のことを」

エイラ「昨日のことー?」

ハルカ「はい…私が俺軍曹に狼という名の」

俺「ストップ迫水一等飛行兵曹!覚えてないなら忘却したままで良い、忘れろ」

エイラ「ェー…」

俺「とりあえず、特に気にしてないですし部隊に影響が無いわけですし…ん?」

 不満そうに俺の隣の椅子に座るエイラのその背後、何か視線を感じると思い目を向けてみると

エルマ「…」ジー

俺(ものすごく警戒してる目で壁から顔半分だしてコッチ見てる…というかエルマ中尉だけ真に受けてる?)

 そう思っていると視線が合って、エルマはびくっ!っと肩を震わせるが逃げる様子もない

俺「あー…エルマ中尉?何か御用でしょうか?」

エルマ「い、いいえ…そのぉ…あのぉ…」

エイラ「?」

 エルマがしどろもどろに答え、俺が席を立ってエルマの元に歩いて行くと

エルマ「ひ、ひぃ…!」ズザザザ

 俺の歩数と同じくらい後ろに滑り、俺との距離を一定に保とうとする
 先日のハルカの台詞を完全に真に受けてしまったようだ

俺「あの、エルマ中尉?先日の事は誤解で…」

エルマ「…」ガクガクブルブル

俺(聞こえてないのか、というか涙目…)

 可哀想なほど震えるエルマに俺はどうしたもんかと考え、心を鬼にする事に決めた

俺「エイラ、エルマ中尉を確保して来い」

エイラ「え、イイノカ~?」

俺「ああ…流石にこのままだとらちが明かない」

 俺の指示を聞いたエイラは悪戯そうな表情をして両手の指をワキワキと動かしている

エルマ「や、やめてください~!」ズザザザ

エイラ「悪く思うナヨ~」ニジリニジリ…

 俺の台詞を聞いたエルマは走って逃げるかと思ったが足が震えている為か少しずつしか後進しないため
彼女は図書館の扉から数メートル離れた所であっさりとエイラに掴まった




エルマ「は、離してくださいー!」

エイラ「捕まえてきたんダナ」

俺「よろしい、あとで好きな物を買ってやろう」

エイラ「借り一つだかんナー」カチャリ

 エルマの腰当たりを掴んで俺とハルカの居る図書館に引きずり込んで逃げないようとする配慮なのか
図書館の鍵を閉める

エルマ「ど、どうして鍵を閉めるんですか…う…うう…」

俺「手荒なマネをしてすみません、でもこうでもしないと話を聞いてくれないとおもって」

エルマ「私はここで終わりなんですね…」

俺「だからそうじゃなくてデスネ…」

エルマ「…わかりました」

 図書館の床にペタリと座って震えているエルマは意を決したように俺を見上げる
エイラはドアの前で面白そうに笑みを浮かべている

エルマ「せめて…せめてハルカさんは見逃してあげてください!」

俺「はぁ!?見逃すって」

エルマ「せ、せくしぃじゃないかも知れませんけど、私がハルカさんの代わりに…そのぉ…受け止めますから!
 だからハルカさんや中隊の人には手を…その代わり好きにしていいですから!」

俺「…あれ?ちょ、ちょっとまってエルマ中尉!?誤解ですって!迫水一等飛行兵曹、誤解を解いて」

ハルカ「ひっく…しょういぃ…」

俺「なんで泣いてるの!?」

エイラ「女泣かせなヤツダナ」

俺「ちーがーうー!どこでそんな言葉覚えるんだ!」

 涙目で訴えるエルマ、面白そうに笑い続けるエイラ、静かだと思ったら泣いていたハルカ
なんか…泥沼だ…

 その後誤解を解消するのに1時間程度かかった
説明するようにハルカに求めようとするとエルマが腰にすがって手を出さないでと叫ばれたりするし
エイラは何もせずに終止笑ってるしでとにかく大変な1時間だった…




エルマ・ハルカ「すみません…」

俺「分かれば宜しい、というかコレっきりにしてください…」

 既に昼にさしかかろうととしていた時にようやく誤解が解けた
 個人的にはエルマ中尉の提案は魅力的なものではあったが、流石にああいうのは受け付けない…

エイラ「もーすこし面白くなるとおもったんだけどナ」

俺「面白くなる為に俺の肩身が狭くなるのはカンベンだ」

 落ち着くために食堂からもらったコーヒーをテーブルに並べ、女性人3人同様に俺も座る

エイラ「こういう時は紅茶じゃないカ?」ズズー

俺「無いから仕方ないだろ…はぁ」

 暖かい物を飲んで落ち着いたのかエルマとハルカもゆっくりとコーヒーの入ったカップに口をつける
半分ほどカップの中身が無くなったところでハルカが切り出す

ハルカ「智子少尉はビューリング少尉みたいな姉系の娘が好みなんですかね?」

俺「うぐっ?ごほっ、ごほっ…いきなり何を言うんですか」

ハルカ「だって昨日ビューリング少尉が智子少尉のベットに入って行ったじゃないですか…」

俺「いや、あれは相談してたみたいに見えたけど」

ハルカ「相談なら別の場所でも出来るじゃないですか!よりによってベットだなんて…何時の間に出来ていたのかしら…」

俺(そーいうんじゃ無いと思うんだけどなぁ…昨日の任務失敗の反省というかそんな会話だったし)

 先日、俺とエイラが留守番を食らったいらんこ中隊の爆撃任務は智子が爆弾を途中で捨てさせて任務失敗
その事でハッキネン少佐に散々絞られた後、3日飛行停止になった

ハルカ「私みたいなお子様じゃ相手にならないというのかしら…しょういぃぃ…」

エルマ「それではビューリング少尉みたいになったら良いんじゃないでしょうか?」

俺「エルマ中尉、それはさすがに…」

ハルカ「それです!」ガタン

 泣き声をあげていたかと思えば急に立ち上がって大声を上げるハルカ

ハルカ「ビューリング少尉みたいに…いえ、それ以上にクールになれば智子少尉もきっと振り向いてくれるはず!」

俺「それ以上クールに…」

エイラ「…ムリダナ」ボソリ

ハルカ「こうしては居られません!私これからちょっとお酒を調達してきます!エルマ中尉、俺軍曹、エイラ軍曹
 ありがとうございました!」

 エイラの言葉すら聞こえていないハルカは勢いよく図書館の扉を開けて出て行ってしまった

エルマ「ハルカさん元気が出てよかったですね~」

俺「確かに元気は出たけど…」

エルマ「どうなる事ヤラ」

 さっきまで落ち込んでいたとは思えないハルカの行動に俺達は置いてけぼりを食らった心境を抱えながら

俺「昼飯…行きますか」

エルマ「そうですね~」

 とりあえず昼になったのでご飯を食べに臨時食堂に食事を貰いに行く事にした


続く
最終更新:2013年02月04日 14:51