ミッケリ臨時空軍基地 いらんこ中隊 居室
俺「そういえば、エルマ中尉は何で図書館に?」
エルマ「あ、そうでした ちょっと待ってくださいね~」
エイラ「ムグムグ…」
図書室での騒動の後、食堂から食事を受け取り居室に戻り3人は食事をしていた
エルマは居室を出て少ししてからすぐ戻って来た
エルマ「これを二人に見せようかと思って」
エイラ「資料?」
エルマ「はい、お二人は次の作戦から参加するという事を聞いていましたので簡単に現状の説明しようとしたんです…」
俺(けど俺が怖くて近づけなかったのか、誤解だけど)
エルマ「カウハバ基地から撤退して数日、スラッセンの街はネウロイに占領されたのは知ってますよね」
エイラ「…ソウダナ」
エルマ「この資料は街を占領したネウロイの姿の航空写真です」
エイラ「ウェー…」
俺「…不気味な戦車だな、キャタピラの代わりに多脚になった戦車みたいですね」
エルマ「でも戦車よりも2~3倍の大きさなので…」
エイラ「爆撃で効果はあるノカ?」
エルマ「それは…で、ですが!」
少し落ち込んだ表情を見せたエルマだがぐっと握りこぶしを右手で作ってエイラに向き直る
エルマ「カールスラントから中隊規模の増援が明日来るので次は失敗しないと思いますよ!」
エイラ「お~、それなら爆弾を持たなくてイインダナ!」
俺「俺達が爆弾を持ったら途中で落としそうだしなぁ…」
エルマ「それが…そのぉ…」
何か言いづらそうにしているエルマをよそに俺とエイラは気楽に構えはじめて
俺「それじゃあ今日も飛行訓練しておくか、エイラ行かぁ」
エイラ「リョーカイ~」
エルマ「あ、まって、待ってくださいぃぃ~」
小声で終止訴えていたエルマを置いて新人二人は簡易ハンガーに向かっていってしまった
ミッケリ臨時空軍基地 正午 臨時滑走路
ズザザザザザ…という音と共に十数名のカールスラント軍服を着たウィッチが次々と
凍った湖の上である臨時滑走路に着陸する
エイラ「あれが増援の爆撃部隊カ?」
俺「Ju-87シュツーカ、爆撃に特化した地上攻撃機の部隊みたいだな」
無骨な甲冑を思わせるような頑丈さを思わせるストライカーにいくつもの傷が付いており
それが激戦を戦ってきた熟練を思わせる
着陸した増援部隊の一人、鼻の上に横に一本の線のような傷跡が印象的なカールスラント軍人が
こちらに歩いて並んでいたいらんこ中隊のメンバーとハッキネン少佐に敬礼を寄こす
「ハンナ・ルーデル大尉以下、カールスラント空軍第二急降下爆撃航空団第十飛行中隊ただいま着任しました」
ハッキネン「歓迎します、まさかあなたのような急降下のエースが…」
俺(急降下のエースって事は対地攻撃のエースって事だよな…)
対地攻撃のエースと聞いて俺は自分を拾ったアドルフィーネ・ガランドを思い出し嫌な顔をする
そんな事を考えていると智子の怒鳴り声ではっと彼女を振り向く、たしか自己紹介してたんだよな…
智子「なんて事いうの!」
俺「なんだ…エイラ、智子少尉達はなんの話しをしてたんだ?」ボソボソ
エイラ「聞いて無かったノカ、あのルーデル大尉がビューリング少尉にインネンをつけてタンダヨ」ボソボソ
俺「ふ~ん…」
ビューリング「よせ智子、上官だぞ」
智子「仲間がバカにされてるのよ、黙ってられないじゃない!」
智子が怒り狂う様子にルーデルは微笑を浮かべる
ルーデル「東洋人に機械化航空歩兵が勤まるのか?」
智子「な、な、なぁぁぁぁ!」
エイラ「お、オイ、トモコ少尉が剣に手を掛けてルゾ!」
俺「げ、少尉!流石にそれはダメだって!」
キャサリン「落ち着くねートモコ!」
いらんこ中隊の面々は怒りの余り軍刀を抜こうとする智子を全員でなんとか押しとどめる
ルーデル「ハッキネン少佐殿、彼女達は護衛任務から外してください」
ハッキネン「ですが、第一中隊だけでは護衛に支障をきたす可能性があります」
ルーデル「足並みを崩す味方は敵より厄介だ、悪く思うなよ少尉。これ以上顔の傷を増やしたくなのだ。わたしは」
そう言って振り向く時に俺に視線を一瞬だけ向け、ルーデル大尉はいらんこ中隊の面々に背を向けて歩き出した
俺「…カールスラント軍人らしいな、全く」
ミッケリ臨時空軍基地 いらんこ中隊居室
智子「私達の戦いを見たわけでもないのに、なにあの態度は!」
俺(実戦なら俺もエイラも見た事無いんだけどね…ん、迫水一等飛行兵曹?)
居室に戻って早々、智子は声を張り上げて怒りをあらわにした
その後ろでハルカが何処から調達したのか分からないバーボンを片手に智子の隣に座る
ハルカ「ふぅ…まあ落ち着け」
智子「なによ?」
ハルカ「一杯やれ。頭を冷やすんだな。ふっ」
俺(昨日のビューリング少尉以上のクールってやつか、ただあれはクールというよりはシュールな気がする…)
扶桑海軍の制服にエイラよりも少しだけ高い身長なのだが言っては悪いがまだそんな子供が
智子に片手に持っていたバーボンを突き出している
そんな様子に智子は何を思ったのかそのバーボンを受け取り、そのままハルカの口に押し込み、それを突き返す
ハルカ「ごほ!ごほごほ!」
俺(あ、意外と扱いが酷いな…)
智子「あのね、うるさい」
ハルカ「智子少尉…酷いです、こんなにも慕っているのに…」
智子「ねぇハルカ」
ハルカ「はい…うぇっぷ、ごほ…」
智子「今私達がどれだけ悔しい思いをしてるのかわかってるの?あなたそれでも義勇軍独立中隊の隊員なの?
私の列機なの?まったくもう、こんな緊張感のない子が私の列機なんて」
その言葉にハルカはガーンという擬音が似合うくらいにショックを受け、涙目になりながらも震える声で続ける
ハルカ「わ、わたしはただ、智子少尉を慰めたいと考えただけなのに…」
智子「慰めなんていらないは、私に必要なのは優秀な列機なのよ」
ハルカ「落ち込んだりしているときに、その心をお慰めするのも、立派な列機の仕事ですわ!」
智子「そういう事はせめて敵にまともに弾が当たるようになってから言いなさい」
ハルカ「う…うわぁぁぁああーん!」
エイラ「あ、出て行ッタ…」
今の智子の台詞は耐えられなかったのかハルカは大粒の涙を零しながら居室を出て行った
キャサリン「言いすぎねートモコ」
智子「あの子にはいい薬よ…」
エルマ「ど、どどど、どうしましょう…!?」
俺「…ちょっと探してきます」
エイラ「わたしも行こうカ?」
俺「あんまり大勢で行くのも大変だろ、俺一人で行って来る」
エイラ「わかった…気をつけろヨ?」
俺「何に気をつけるんだよ…行って来る」
微妙な空気の居室から出た俺はハルカが向かって行った方向に走り出した
ミッケリ臨時空軍基地 昇降口
ハルカ「うう…うっぷ…うう…ずず…少尉ぃぃ」
俺「迫水一等飛行兵曹、こんな所で晩酌なんて風邪を引きますよ」
ハルカ「構いません…少尉にいらないって言われた私はただの酔いどれです…」ゴクゴク…
俺「そんなに飲むと明日にさわりますよ?」
いらんこ中隊の居室から出て少し探した所でハルカは見つかった
下駄箱などが並ぶ昇降口の端っこでちんまりと膝を曲げて座りバーボンに口をつけている
ハルカ「ごほ!」
俺「慣れないなら止めた方が」
ハルカ「放って置いてください…どうせ私なんてまだお子様で、ビューリング少尉のほうがいいんだわぁ…」
俺「そういう関係じゃないと思いますが…」
ハルカ「でも…でもぉぉ、くしゅっ!」
俺「そこは冷たいですからね、とりあえず移動しましょう?」
ハルカ「んん…あたっ!痛いぃ…」
ハルカは慣れない酒でふらふらとしながら立ち上がろうとしたが立ち上がれずに地面にお尻をつける
俺「どれだけ飲んだんですか…とりあえず移動しますよ?失礼します」
自分では立ち上がれないと判断した俺はハルカをお姫様抱っこのように持ち上げハルカは身を縮こませる
バーボンは放さなかったが…
ハルカ「ああ…こうやって人気の無い場所に連れて行かれて食べられるんだわ」
俺「それはもう止めてくださいと言ったでしょう、調理室の横の準備室に行くだけですよお水もありますし」
ハルカ「せめて図書室がいいです」
俺「ん?迫水一等飛行兵曹がお望みならそちらにしますが…」
ハルカ「せめて食べられるなら人気の無い場所で食べてくださいぃぃ…」
俺「…怒りますよ?いい加減にしないと本当に食べちゃいますよ?」
ハルカ「少尉にいらないって言われたんです…わたしはもう…うぅぅぅ」
俺(酔っ払ってるなぁ…確かに人気の多い場所でこの姿を晒すのはちょっとマズイか、そろそろ夕食だしな)
俺「はぁ…とりあえずご希望の図書館にしましょう」
ミッケリ臨時空軍基地 図書館
俺「水持ってきましたよ、ってまだ飲んでる」
本が立ち並ぶ図書室として昔使われた室内で椅子に座りハルカは未だにバーボンに口をつけている
バーボンの中身は既に1/3まで減っていた
ハルカ「いいじゃないですかぁ…」
俺「だめです、水を飲んで落ち着いてください」
ハルカ「うう…」チビチビ…
既にハルカの目は真っ赤だがまだ涙を流しながらもチビチビと水を飲む
そんな姿に俺は普通にしてればなぁと心の底から残念そうに思う
ハルカ「わたしどうしましょう、智子少尉にいらないって言われたら…居場所がありません…」
俺「少尉もあのルーデル大尉とかいう奴に喧嘩を売られてたからあんな事言ったんだと思うけど」
ハルカ「わたしは本当に敵に弾も当てられない『いらんこ』なんです…少尉の言ってる事は合ってるんです!」
俺(この後に及んで穴吹少尉を庇うのか…)
ハルカ「そんな私が智子少尉の列機、いえ同じ中隊である事自体が奇跡なんです…本当は一緒に飛べるはずが無いんです」
俺「穴吹少尉ってそんなに凄いのですか?」
ハルカ「ええ!扶桑海事変の映画『扶桑海の閃光』に映る少尉はとても美しく私の心は躍りました
智子少尉と同じ空を飛んだ時の空中戦もまるで芸術のようで…とても強くて凛々しくて…」
俺「実戦では穴吹少尉を見た事が無いんですがそんなに凄いんですか」
ハルカ「それはもう!列機のわたしが言うのですから間違いありません!いえ…列機でした」
俺「…明日も列機でしょう?」
ハルカ「いえ…私はもう要らないって言われて…智子少尉の後ろを飛ぶ資格はありません、
それどころか同じ中隊にだって…どうすれば、うぅぅ…」
俺(無限ループになりそうな予感だ…)
「話は聞きましたわ!」
俺「うぉおおぉ!?」
背後の扉がいきなりバーン!と開き甲高い声とともに現れたのは第一中隊隊長のミカ・アホネン大尉
アホネン「それだったら私のところにいらっしゃい」
ハルカ「アホネンたいい…?」
俺「いや、それは一存で決められる事なのk」
アホネン「貴方はお黙りなさい!可愛い子をずっと泣かせているなんて男性として失格ね」
俺(そ、そういう経験無いんですいません…)ガーン
アホネン「居場所が無いなら私が用意するわ、いらっしゃいハルカさん 私が全身全霊を持って
慰めてあげるわ」
ハルカ「あ、アホネンだいいぃぃ…わたしは、智子少尉の所にぃ…」
俺「って大尉、ハルカを返して…」
アホネン「もう離しませんよ、私の可愛い『い も う と』 おほ、おほほほほほ!」
半ば強引に引っ張られるようにハルカはアホネンに引っ張られる
その行動力と速度は凄まじく、男性失格というワードからのショックから立ち直り
振り向いた俺にはもう図書室のドアを閉めて遠くへ走り去り始めていた
俺「…どうしよう?」
甲高い笑い声がドップラー効果とともに小さくなっていく
半ば放心状態で居ると図書館の扉が再び開く
俺「っ!さこみ…」
ルーデル「この部隊はずいぶん賑やかそうだな」
ハルカが戻って着たのではないかと思ったがその期待は打ち砕かれ
俺としては以外な客人だった
俺「…ルーデル大尉?」
ルーデル「少し付き合ってもらうぞ」
俺「…?了解」
ミッケリ臨時空軍基地 裏庭
ルーデル「この辺で良いか」
俺「この辺りって、外ですよ大尉殿…」ガタガタガタ
スオムスの白夜の下でゆっくりと雪が降る中俺とルーデルは多少距離を置いて歩みを止める
ルーデル「生憎名前を聞きそびれてな、もう一度自己紹介をしてもらおうかと思ってな」
俺「はぁ…私はカールスラント空軍所属の俺軍曹です」
ルーデル「原隊はどこだ?」
俺「第27戦闘航空団です」
ルーデル「そうか…」
それだけ聞いてルーデルは腰から9mm拳銃を取り出し俺に銃口を向ける
俺「っ!?これはどういう…」
ルーデル「仲間を守る為だよ、軍曹」
俺「仲間を守る為に銃を向ける?理解できません」
ルーデル「俺軍曹はカールスラント人では無いそうだな」
俺「っ…」
外だというのに風の音も無く短く静寂が流れる
ルーデル「否定はしないのだな」
俺「…」
ルーデル「前線部隊での噂は本当だったのだな、カールスラント人ではない男のウィッチが
空を飛んでいる噂は」
ルーデル「…カールスラント人ではない貴校が何故カールスラントの軍服を纏う?
通常であればスパイ容疑をかけられて牢屋暮らしだと思うが」
それだけ言われても俺は沈黙したまま立っている
ルーデル「だが」
ルーデルは俺に向けていた拳銃を再び腰のホルダーに戻す
ルーデル「本当にスパイであればこんな所(スオムス)には来ないだろう、それに」
俺「なんですか?」
ルーデル「軍曹は嘘が苦手なようだ、はっきりと顔に出る」
俺「…これも芝居かもしれませんよ?」
ルーデル「それならば私の負けだ、俺軍曹!」
俺「なんでしょうか?」
ルーデル「軍曹が変な動きをすれば貴校をためらい無く撃つ、それだけは忘れるな」
俺「了解、肝に銘じて起きます」
俺の返答を聞いたルーデルはなおも厳しい表情をしながらも爆撃中隊にあてられた
テントへと足を向けた
俺「味方に銃を向けられるなんて思ってもみなかったな…」
続く
最終更新:2013年02月04日 14:52