○ミッケリ臨時空軍基地・保健室 2月1日 深夜前

 俺はベットの丸椅子の前で、後頭部に手を当て困った顔をしている

俺「え~っと…」

 視線の先には、青の軍服を着たまま、ベットから上半身を起こしたエルマ・レイヴォネン『元』隊長
 彼女は両手でクリーム色のブラを両手で持ち、俺に背を向けて、顔を真っ赤にしていた

エルマ「うぅ、ぐす…」

 俺は両手を膝の上に乗せて、少し前に上半身を倒す

俺「と、とりあえず落ち着いてください。エルマ中尉」

エルマ「もうお嫁に、いけないですぅぅぅ…」

 ぐすぐすとエルマの嗚咽が、保健室の静寂の中に紛れる

俺(どうしてこうなったんだっけか…)



                      • 回想------------
○ミッケリ臨時空軍基地・廊下 2月1日 朝

 窓が吹雪きでがたがたと音を鳴らしながらも、鈍い光を取り入れてる廊下

 俺は何冊も重ねられた本を両手で持って、廊下をよたよたと歩いている

俺「何冊、本持ってんだよ、ウルスラの奴」

エルマ「あ、俺軍曹。ちょうど良かったです~」

俺「はい?」

 背後からの声に、俺は重ねられた本の脇から顔を覗かせる
 そこにはエルマ中尉が、黒のクリップボードを持って立っていた

エルマ「忙しかったですか?」

 俺は よっと と言いながらエルマに対して横を向いて、顔だけを彼女に向ける

俺「忙しくは無いですね、なんせ出撃ないですし」

 エルマは苦笑いをしながら、窓の外を見る

エルマ「この吹雪ですからね~」

俺「ウルスラも怪我してるし、智子少尉もあんなんだから丁度良いって言えば
 そうなんですけどね」

 エルマは持っていたクリップボードを胸元に寄せて、グッと握り、俺を見る

エルマ「その事に関して、俺軍曹にお話がありまして」

俺「どっちの事です?」

エルマ「智子少尉の事です」

俺「まあ、機械化歩兵をやめるなんて言う位ですからね」

エルマ「はい、智子少尉は使っていたストライカーに相当強い思い入れがある様で…」

俺「片方壊れちゃったんでしたっけか…」

 そう言って俯く二人
 数秒の静寂の後、エルマはバッっと顔を上げて俺を見る

エルマ「そ、それでですね! わたし、ずっと思ってた事を実行する時かなって思ったんです」

 エルマの言葉に俺も顔を上げる

俺「思ってた事?」

エルマ「はい、智子少尉を義勇軍独立飛行中隊の中隊長に推薦しようと思います」

俺「ん~…あんまり変わりないような」

 そこまで言って、エルマが泣きそうな表情をしていたので、俺はしまったという顔をする

エルマ「そ、そうですよね。実質智子少尉が中隊長みたいな物ですから…」

俺「え~っと、正式に中隊長になれば、隊に良い影響はあると思いますよ! 穴吹少尉も元気になる…ハズ」

 エルマはがばっと顔を上げる

エルマ「俺軍曹もそう思いますか!」

俺「は、はい…」

エルマ「皆さんに聞いて回って、後は俺軍曹だけだったので。本当はもうハッキネン少佐に推薦
 しちゃったので、断られたら、どうしようかと思っちゃいました…」

俺「別に気にしなくていいですよ」

 エルマは、ほっとした顔になる

エルマ「呼び止めてすいません。私はこれからまた、ハッキネン少佐のところに行きますね。あ…」

俺「どうしました?」

エルマ「ユーティライネン軍曹が、寂しそうにしてましたよ?」

俺「エイラが?」

エルマ「はい。寂しそうというか、つまらなそうというか…」

俺「何でだろ?」

エルマ「多分ですが最近、俺軍曹がウルスラ曹長のお世話してるので、構ってもらえないのが原因ではないでしょうか?」

 俺は、持っている何冊も重ねられた本に額を当て、俯きながらため息を吐く

俺「はぁ、あいつは子供か。 あ…子供か」

 俺の呟きを聞いて、エルマは笑顔になる

エルマ「ふふふ、ユーティライネン軍曹と同期なんですし、元気付けてあげてください。
 わたしも頑張りますから!」

 エルマは力こぶを作ろうと、右腕を上げて手を握る
 力こぶは全く見えないが

俺「りょーかい、時間見て相手しますから。それじゃあこれで」

エルマ「はい~」






○ミッケリ臨時空軍基地・校庭 2月1日 夕方過ぎ

 風は無く、雪がしんしんと降っており、薄暗くなっている校庭
 エイラは、使い魔の黒狐の耳と尻尾を出し、膝を折り曲げて、不機嫌そうに校庭に
ちょこんと座っている

エイラ「むぅぅぅ…」

 エイラの視線の先には、俺が彼女と同じく、狼の灰色の耳と尻尾を出して
巨剣ツヴァイハンダーで素振りをしていた

俺「996…998…999…あれ、数飛んだ?もう十回すれば確実に1000回行くか」

 エイラは尻尾をぴくりともさせず、新雪に垂らしている

エイラ「なあオレー…」

俺「992、995、あれ、もう一回数えなおして…」

エイラ「オ~レ~」

俺「なんだ、さっきから?」

 俺は素振りをやめて、ツヴァイハンダーを新雪に突き刺し、エイラに振り向く

エイラ「休みなのにどこか行かないノカ?」

俺「特に用は無いしな、ウルスラの面倒もあるし」

 エイラはますます不機嫌そうな顔になって、俺を見る

エイラ「ムゥゥゥ…」

 俺は何か思いついたような顔をして、小さく呟く

俺「ん、そういえばエルマ中尉…」

エイラ「どうしたんダ?」

 俺は首を振り

俺「いや、なんでもない。そうだな、街に行ってみるか?」

 エイラは弾かれたように立ち上がり、黒狐の尻尾をパタパタと振りだす

エイラ「ホントか!」

俺「そうだな、ん?」

 俺は校舎の方から、車の排気音が響き、そちらを向く
 エイラも俺に釣られたように音のする方向を向いた

 二人の視線の先には使い込まれた一台のカールスラントフォードが
新雪の上を走っている

エイラ「誰か出かけるノカ?」

 そのカールスラントフォードの運転席には扶桑の技師、糸川が乗っており
その助手席には窓脇に肘をついた智子が乗っていた

俺「はぁ…こんな夜中にデートとは、羨ましい限りだ」

エイラ「デ、デートなのか!」

俺「多分、な。 俺もそんな相手居ればいいけど」

 その俺の言葉に、エイラは尻尾を先ほどよりも激しく振りながら、何か言おうと
俺を向き、俯くように地面に視線を向けては、俺を向きを数回繰り返す

 そんな様子を俺は見ることも無く、視線は校門を抜けようとする
カールスラントフォードに向けられていた

俺「さてと、もう一台くらいなら使えるだろうからさっさと手続きして…」

 俺は歩き出そうとすると、少し慌てたような排気音を出して、もう一台のボロボロの
カールスラントフォードが出てくる

 運転席にはアホネン大尉、助手席には膝に手を置いているように見えるハルカが乗っていた

 先ほどよりも激しい排気音にエイラは、そちらの方を向きながら車に、指を刺す

エイラ「あれもデートナノカ?」

 俺は呆れたような眼差しで、ハルカ達を乗せた車を見て、ため息を吐く

俺「違う…と思いたいが、そうじゃないとも思いたいな」

エイラ「どういう事ダ?」

俺「わからんで良い、しかし困ったな。使える車無いぞ?」

 エイラは黒狐の尻尾をだらりと垂らす

エイラ「ま、街に行けないノカ?」

俺「そういう事になるな」

エイラ「そんなァ~」

 俺は、少しだけ涙目になっているエイラに背を向けて、新雪に突き刺していた
ツヴァイハンダーを引き抜く

俺「自由に使える車は先客順だ、次の休みに行くか
 汗だくだからシャワーも浴びたい」

 エイラは、急に何か思いついたようににやけた笑顔になる

エイラ「そんな時はサウナダゾ!」






○ミッケリ臨時空軍基地・テントサウナ内 2月1日 夜

 更衣室とサウナルームを挟む木の壁越しから、エイラの声が聞こえる

エイラ「入ってイイゾー」

俺「はいよ」

 俺はタオル一枚で下半身を隠し、木製のドアを開けた

 部屋の中は木材に囲われており、円状の金属の筒が延びるストーブに、
黒い石が山積みになっており、白い蒸気を放っていた

俺「うわ、結構本格的だな。そっち行ってもいいか?」

 ストーブに近い所に座り、少し顔を赤くしているエイラは、裸の肩を露出させ、
頭と肩から下にタオルを巻いている

エイラ「い、イイゾ」

 俺は人一人分のスペースを開けて、肩に力を入れて手を膝の上に乗せているエイラの隣に座る

俺「はぁー、ずっとシャワーだったから、こういうのも、何か生き返るなぁ」

エイラ「ソ、ソウダロ!」

俺「ん? 何そんなに赤くなってるんだ?」

 エイラは、俺の方に顔を向けて手を振る

エイラ「赤くなってないンダナ!」

俺「そうか? まあ驚きだよな~、スオムスじゃ男女一緒にサウナに入るなんてさ」

エイラ「ソ、ソソソ、ソウダナ!」

俺「熱でもあるのか? ずいぶん真っ赤だけど」

エイラ「熱いカラダロ、きにすんな…」

俺「そ、そう…」

 二人の間の静寂が訪れる

 二人の肩から玉のような汗が流れ出した頃、エイラは落ち着きを取り戻したのか、俺を見ている

エイラ「俺って結構おっきいよな」

 俺は、驚いたようにエイラに振り向き、下半身を隠していたタオルをがばっと手で押さえる格好になる

俺「な、何がだ!」

エイラ「体が、さ。 思ってたよりもずっと大きいゾ」

 俺は安堵の息をつき、猫背になる

俺「思ってたよりも、ってのは余計だ。それにエイラがまだ小さいだけだろ」

エイラ「わ、私はちゃんと成長シテルゾ!」

 エイラは、タオルの上から成長が見られそうで、見られない胸を張る

俺「…どこが?」

エイラ「カミツイテヤロウカ?」

俺「こんな蒸し暑い所で、格闘戦はカンベンしてくれ」

 エイラはそっぽを向いて、「私だって…」とブツブツ一人で呟き始めた

俺「まあそこは冗談だとして、もう少し身長が伸びればそうは思わなくなるさ」

 俺の言葉に、エイラは呟くのをやめて、振り向く

エイラ「そういう物ナノカ?」

俺「追いつけばそう感じるさ、多分な」

エイラ「多分カヨ…」

 エイラは怪訝そうな顔をして、俺を見ていたが、やがて視線をストーブに移し、両足をぷらぷらさせ始める

エイラ「なあオレ?」

俺「なんだ?」

エイラ「もし私の身長がもう少し伸びたらさ」

 エイラは、俺へ身を乗り出すように振り向く

エイラ「私の事をもう少し」

 そこまで言って、サウナ室の木製のドアが開き、エイラの言葉はそれに遮られる

 俺は開いたドアの方向を振り向く

俺「ん? あ、エルマ中尉」

 そこにはエルマ・レイヴォネン中尉が左手にタオルを持って立っていた

エルマ「え? お、俺中尉?どうして…え? 裸、え?」

 エルマは混乱したような顔で、俺とエイラを見て、自分の半身だけをタオルで隠した己の裸体を見て

エルマ「あふぅぅぅ~…」

 そのまま後ろへと倒れ、気絶する

 俺は立ち上がり、慌てた顔でエルマのところに寄る

俺「え、エルマ中尉! 大丈…うお」

 エルマのところに慌てて歩み寄った俺の視界に、左手が更衣室の床にタオルと共に置かれ、
それ以外の布が取り払われた彼女の体が一瞬だけ移る

 俺は、顔を真っ赤にして体を180度回転させる

俺「やわらかそうな…じゃない! エ~イ~ラ~?」

 ビクっと肩を一度震わせたエイラは、ギギギギギという擬音が聞こえそうなほど、ぎこちなく顔を俺とは反対側に向ける

俺「スオムスは男女一緒にサウナ入るんだよな? そうだよな?」

 エイラは、貼り付けた笑顔と一緒に、俺の方へ顔を向ける

エイラ「アハハハハハ…」

俺「笑って誤魔化すな! どうすんだこれ…」

 俺は両肩を、後ろを見ないように落とした






○ミッケリ臨時空軍基地・保健室 2月1日 夜

 電灯の明かりのジジジ、という音が静かに響く保健室

 ベットでシーツをかけられ寝ていたエルマは、唸り声を上げながら
上半身を起こし、きょろきょろとあたりを見回す

エルマ「うぅ~ん…? ここは何処でしょう?」

 ガラガラガラ

 保健室の引き戸が開く音がして、仕切りのカーテンからエイラが顔を覗かせる

エイラ「あ、エルマ中尉が気がついたゾ」

俺「誰が原因だと思ってるんだよ」

エイラ「オレだろ?」

俺「98%はエイラが原因だ」

 エイラに続いて、水の入ったコップを持った俺が、仕切りのカーテンから姿を
表し、エルマの寝ていたベットの隣の椅子に座る

俺「気分は大丈夫ですか? とりあえず飲んでください」

エルマ「は、はい」

 エルマは何が起きたか分からないという顔で、俺から水を両手で受け取り、
それをチビチビと飲み始める

エルマ「私はどうして保健室にいるのでしょうか?」

俺「え゛…それは~、その~…」

エイラ「それはダn」

 そこまで言おうとして、俺はエイラの口を両手で塞ぐ
 彼女はモガー、モガーと何かを訴えている
 俺は引きつった笑顔を、エルマに向けた

俺「ととと、とりあえず気分が大丈夫そうで良かったです…」

エルマ「ご迷惑をお掛けしてしまって…あれ?」

 急にソワソワしはじめ、顔をほんのりと朱色に染めるエルマ

俺「やっぱ気分が悪いですか?」

 エルマは、自分の胸あたりに、軍服の上からシーツを手繰り寄せて隠すようにして
 ぎこちない笑顔を浮かべる

エルマ「い、いえ、そうじゃなくてですね」

俺「軍医さん呼んだほうが」

エルマ「あ、あははは。 そ、そこまでじゃないですよー!」

俺「そうですか?」

 俺は頭の上に「?」が付きそうな顔をして、エイラの口を開放する

 エイラはなにやら、ポケットをごそごそし始め、何かを取り出し
エルマと俺の間に突き出す

エイラ「エルマ中尉、これの付け方が分からなかったんダケド」

 エイラの手には、クリーム色のブラジャーが握られていた
                      • 回想終わり-----------






○ミッケリ臨時空軍基地・保健室 深夜

 ベットの仕切りのカーテンの奥から、エイラの声が聞こえる

エイラ「もう良いゾー」

 それを合図に俺は、エルマとエイラの居る仕切りのカーテンの中に入って、エルマの隣に座る

 俺は、エルマに座りながら頭を下げる

俺「すいませんでした」

エルマ「だ、大丈夫ですよ~。 大体の事情はユーティライネン軍曹から聞きましたから」

俺「俺がこいつの嘘を見抜けないばっかりに…」

エルマ「着替えさせてくれたのもユーティライネン軍曹ですし…気にしてませんから」

 そう言いながらも、再び顔を赤らめるエルマ

 俺はしぶしぶ顔を上げる

エイラ「オレ、元気ダセッテ」

俺「誰が原因だ、誰が」

 エイラに振り向き、恨めしい目で見る俺に、エルマは両手のひらを突き出す

エルマ「ケンカはダメですよー」 

俺「は、はい…」

エルマ「でもユーティライネン軍曹には罰をあげないとダメですかね~?」

 エイラは、意外そうに驚く表情をする

エイラ「な、ナンダッテ!」

 エルマは、含みのある笑いをしながら、軍服のポケットから、手のひらに乗りそうな大きさの、お菓子の箱を取り出す

エルマ「うふふふふ、嘘をつく子にはコレ、あげませんよ~?」

 エイラは、はっとした顔をする

エイラ「サ、サルミアッキ! 街に無かったのに何処で…」

エルマ「スオムスからの補給で、ユーティライネン軍曹が欲しいかなと思って頼んでおいたのが来たんですけど、どうしましょう?」

 エイラは体全体を小さく震わせ、おろおろとするが、視線だけはサルミアッキに釘付けだった

エイラ「も、もう嘘付かないから、エルマちゅうぃぃぃぃ」

エルマ「仕方ありませんねぇ、はい」

 エルマは、涙目になって懇願するエイラに、笑顔でサルミアッキを渡す

エイラ「ありがとう、エルマ中尉!」

 サルミアッキを受け取ったエイラは、嬉しそうな顔で早速中身を取り出し、口に頬張る
 それを見て、俺は不思議そうにエイラを見ている

俺「さるみあっき? 何かのお菓子なのか?」

エイラ「食べルカ?」

 そう言ってエイラは、箱から一粒、ひし形をした四角形の黒い粒状のサルミアッキを俺の手に乗せる
 俺はそれを口に含む

俺「なんだこれ? グミっぽい触感が…むぐぅ!」

 俺は口を押さえながら涙目になる
 その様子をエルマは、ベットから笑顔で見ている

エルマ「サルミアッキ、美味しいですねぇ、私も食べようかしら」

 エルマは、ポケットから再びサルミアッキの箱をもう一つ取り出して
 サルミアッキを口に頬張り、右頬に手を当てて、ご満悦な笑顔になる
 俺はまだ、口に手を当てたまま、涙目になり震えていた

エルマ「あ、俺軍曹、口に合いませんでしたか?」

俺「い、いいえ…独特の味に驚いただけですので、うぷ」

エルマ「そうですか~。喜んでもらえて嬉しいです! 俺軍曹の分もあるのでどうぞ~」

 エルマはポケットから三度サルミアッキの箱を出して、それを俺に差し出す

俺「そ、それは…いえ、あ、ありがとうございます…エルマ中尉」

 俺は、笑顔のエルマ中尉が差し出すサルミアッキを、震える両手で受け取った

 俺が涙目になりながら、何とか口の中にあるサルミアッキを完食し、保健室の蛇口から出る水をコップ一杯
飲み、一息ついた所で、エルマが咳払いをして真剣な顔になり切り出す

エルマ「明日正式な発表があるのですが、4日後に大規模なスラッセンの大攻勢計画が発表されます」

エイラ「大攻勢…」

俺「ついに反撃か、どうしたエイラ?」

 俺はエイラの方を振り向くと、彼女は俯いて膝に両手を置いて、そこが震えていた

俺「緊張してるのか?」

 エイラは、ばっと俺の方を向く

エイラ「ち、違うんだ…ナ」

 振り向いたと思ったら、再び俯く

 俺は、エイラの頭に手をポンっと置いて、数回撫でる

俺「大丈夫だって、初陣だって器用にこなしたお前だ。やられねぇよ」

 エイラは撫でられたまま、俺の方を再び見る

エイラ「だってそれは…」

俺「それでも心配な時は」

 俺は、撫でて乗せたままの手を、ポンポンと2度エイラの頭に乗せ、その手を引く

俺「なんとか守ってやるよ」

 そう言われたエイラは、じっと見つめてくれる俺の目を見て、ニッ と笑う

エイラ「巻き添えで墜ちそうダナ」

俺「なんだとぉ!」

エイラ「キャー、アハハハハ」

 俺が両手を手をあげて、エイラが笑顔で頭を両手で押さえている
 そんなやり取りを見ていたエルマは、笑い始める

エルマ「ふふふふふ。なんだかお二人、兄妹みたいですねぇ」

 俺とエイラは、シンクロするようにエルマに顔を同時に向け
 エイラが疑問を浮かべた顔で、俺に指を刺す

エイラ「コイツが兄ちゃん?」

 俺は、エイラと同じような表情で、彼女に指を刺す

俺「こいつが弟?」

 エイラが、拳を作った両手を上げて、色素の薄い短髪を揺らしながら、怒ったように立ち上がる

エイラ「弟ってなんだオトウトッテー!」

俺「いや、エイラは妹ってより弟だろ、ってイダダダダ! 噛み付くなー!」

エイラ「ガルルルル!」

 エイラが俺の言葉の途中で飛び出して、背後から首にまとわり付いてあまがみをする

エルマ「仲が良いって良いですねぇ」

 しんしんと雪が降るのが窓から見える夜の保健室で、笑い声と悲鳴がしばらく途絶えなかった


続く
最終更新:2013年02月04日 14:54