隊員達はカールスラント奪還に向けて今日もネウロイと戦っていた

連日の戦闘に疲れが出ているのが解るが、扶桑の軍人にはそんな事は関係無い

管野「かかって来い!この管野直枝が相手だ!!」

彼女はネウロイの群れに突っ込んでいき、危険を感じさせつつもこれを撃破している

サーシャ「管野さんは……相変わらずですね。少しは俺君を見習ってほしいです…」

戦闘指揮官であるポクルイーシキンがポツリと漏らす。確かにここ最近の俺はロスマンの指導もあってか

戦闘技術は向上し、破壊するストライカーの数も少しは抑えられた為

通称をブレイクウィッチーズからデストロイウィッチーズに、なんて格上げも起こらずに済んだ

クルピン「でもカッコイイと思わない?デストロイウィッチーズって名前」

そう呑気に言うクルピンスキーも”攻撃は最大の防御”が信条だ。それが戦果に結びついている事も解るのだが…

サーシャ「貴方達の身に何かあったらどうするんですか…」

クルピン「大丈夫だよ。僕も二パ君も…勿論ナオちゃんもね。」

彼女がいつも怒るのは戦闘員の身を案じての事だとクルピンスキーは知っている。

だからこそ飄々と振る舞う。彼女に危険を感じさせない為に

サーシャ「だったら良いのですが…ストライカーの破損にはくれぐれも注意して下さいね」

そして彼女が最後にこう言う事も解っている。了解、と応え戦闘を継続する

俺「くまさん!次はどうするの?」

俺が尋ねる。ポクルイーシキンには怒られさえしなければ彼女の性格から、俺が懐くことは十分考えられた

頼りにされているのは嬉しいのだが、その所為で下原によく接近される様になったのは偶然ではないだろう。

サーシャ「そうね……二パさんがちょっと二人から離れているから、援護してあげて」

俺「了解!!」



      *  *  *  *  *



二パ「全くコイツらは戦っても戦ってもスグ湧いてきやがって…」

二パの眼前には小型ネウロイの群れ

見るからに不機嫌な彼女は、怒りをぶつける様にネウロイにあたっていた

二パ「出撃する度にストライカー破壊、説教、正座。…なんだよコレ!いい加減にしろよ!!」

どうやら原因はネウロイでは無いらしいが…

二パ「今日こそまとめて倒してやる!!」

特攻。怒りに身を任せた勝算など度外視の行動だ

二パ「悪運なんてもう言わせないからな!今日で……!」

順調に戦果を挙げている折、不意に目に入る赤い閃光。咄嗟にシールドを張る

二パ「(危ない所だった…)けど、残念だったな!」

攻撃の終わりを見計らい反撃。そこで急速に冷めた頭が彼女に今の状況を理解させた。

周りに群がるネウロイ、ネウロイ、ネウロイ…。逃げ場が無い。

冷や汗が頬を伝う。容赦なく襲い来るネウロイ達の攻撃……避けきれない

どうすれば此処から抜けられる?

再びシールドを展開し防御しながら彼女は考え………とその時、後ろからキィィィンと無機質な音が聞こえた

頭だけ振り向く。ネウロイの一点が赤く輝いている。二パは其のネウロイがどこか笑っているようにも見えた

二パ「……へへ…ゴメンみん「「「「「キィィィイィィィィイィイイイイ!!」」」」」」

最後の独白もネウロイの叫びに消えていく

ネウロイの攻撃は二パの体を確実に、確実に飲み込もうとしていた。

二パは自身の最期を感じる中、確かに耳にした。何処かで鳴る銃声とコアが破壊された音を

二パ(ま、私にはもう関係無いけど…)

そういえば何故か周りの風景が先程より青くなっていたが、もうどうでも良かった。

目を閉じる。体に襲い掛かる衝撃






二パ(何か…変だぞ?)

熱くない、痛くない。何より正面から撃たれたはずのビームなのに、衝撃が……横から?

不思議に思い目を開ける…其処に俺が居た

俺「あっ、お姉ちゃん!大丈夫?」

俺は目を開けた二パが気絶したか何かだと思っていたのだろう

二パ「お前が…何でここに?」

俺「えっとね、くまさんがお姉ちゃんの所に行けって言ったから!」

二パ「そっか、大尉が私を……」

俺「うん!だから残りも一緒にやっつけよ?」

その言葉で顔に影が落ちる

二パ「…いや、遠慮するよ」

俺「何で?」

どうしてそんな事を言っているのか解らないという表情の俺

二パ「お前も今まで見ただろ?私が何回も離脱するトコ。きっと今日も絶対そうなる…さっきので確信したんだ。

   きっと私の近くだとお前も巻き込まれちゃうよ。だから…私は一人で良い」

胸の痛みを堪えながら説明する。早くこの場から立ち去りたかった

俺「一人より二人の方が良いってせんせーが言ってたよ?」

二パ「私は一人で良いんだよ!!………私は運が悪い。ツイてないんだよ…」

きっとコイツも私の事を迷惑だと思っていて、同情の念からそんな事を言ったんだ。…卑屈になる自分に腹が立つ。

しかしそんな二パの考えはお門違いだった

俺「何がついてないの?お姉ちゃんには皆がちゃんとついてるよ?」

二パ「…へ? お前何言って…」

俺「今は僕もついてるよ?ついてないなんてウソだよ!」

俺の明後日の方向の答えに呆然とした

二パ「(何カン違いしてんだコイツ…)…はは」

俺「?」

二パ「あは…あっははははは!!お前、バカだな!ははは!」

俺「??」

二パ「それは無いだろ…ぶふっ。…あーもう無理、腹痛い…っは」

俺「何で笑ってるの?可笑しい事あったっけ?」

二パ「…お前だよ」

俺「え!?何で!?」

本気で困惑している。訳が分からず自分が何をしたか必死で思い出している

二パ「…嘘だよ。只の思い出し笑いだから」

俺「お姉ちゃんも僕にウソついた!はくしゃくもだよ!!」

二パ「(ホントココは子供だな…)そう怒んなって。それより、行くぞ?」

俺「う、うん!」

その言葉で俺は平静に戻り、二人は進行する。途中二パがぼそっと呟いた

二パ「ありがとう……俺」

俺「? お姉ちゃん何か言った?」

二パ「いや、何でもない(最初は変態だと思ったけど、結構良い奴だな…)」



クルピン「…で、話は終わったの?」
二パ「うわぁぁぁ!?」

俺「あ!はくしゃくだ!どうしたの?」

クルピン「ちょっと二人のやり取りが気になってね」

二パ「伯爵、まさかさっきの…」

クルピン「ありがt
二パ「俺、早く行くぞ!!!」

俺「お姉ちゃん、顔赤いよ?大丈夫?」

二パ「…ウルサイ!!」

クルピン「まぁまぁ別に減るもんじゃ無いし。…それよりナオちゃんがまだ戦闘中だよ。多分、アレがラストだ」

急に雰囲気を一変させる。それがどういう場面なのか解らないほど二パは勘が鈍くない

二パ「…解った」

気を引き締めて管野の援護に向かう

クルピン「あ、そうだ二パ君。さっきのはね、二人の声がインカム越しに聞こえてきたからなんだよ」

二パ「? それがどうした?」

クルピン「…御愁傷様だってことだね」

やれやれと言わんばかりのクルピンスキーに、二パはを首傾げるばかりだった


――場所は変わって待機組

ラル「…なんとか無事だったようだな」

ロスマン「全く二パさんは…」

ジョゼ「でも、無事で良かったです!」

安堵の表情を浮かべる隊員達……一名を除いて

下原「ちょっとお茶を淹れてきます。みんな疲れているだろうし…」

ラル「そうだな。用意してやってくれ」

にこやかにその場を離れる下原。ジョゼだけがその意図を感じ取っていた


――再び戦闘組

管野「…っち、弾切れかよ」

使えなくなった武器を投げ捨てる。しかし目から闘志が消えた訳では無い

管野「オレが諦めたとでも思ってんのか?だとしたら、相当なカン違いだな」

勝ち誇ったように周りを飛び交うネウロイに文字通り飛び掛かる

管野「沈めぇぇぇ!!」

扶桑刀を構え、一閃。コアごと両断されるネウロイ。そして次々と撃破されてゆく黒色の物体

どこから力が湧いているのであろうか。やはり扶桑魂とは理解し難い。

クルピン「ボクら…要らないんじゃない?」

二パ「…そうだな」

俺「フソウソードだ!カッコイイ!!」

二人はそんな事を考えていた

管野「…ようやく親玉のお出ましか」

管野が視線を向ける先には戦闘機ほどの大きさのネウロイ

管野「もう少し大きい方が良かったんだが…いいぜ、来いよ」

ネウロイがその言葉に反応したかは解らないが、ビームと共に戦闘が始まった

クルピン「…っと。さすがにあの大きさは加勢が要るね。行くよ」

三人も援護に向かう



管野「やっぱそう簡単には勝たせてくれねぇか…」

折れた刀を見て思わず声が漏れる

管野「なら、コレで終わりにしてやる!!」

剣を捨て、拳を握りシールドを纏わせる。やはり突撃

ネウロイは迎撃するかのようにビームを撃ち込もうとするが…

管野「…何だネウロイのヤツ、急に………二パと伯爵!? 援護なんて必要ねぇって…」

俺「ね、ねぇ…」

不意に目の前に俺が現れる。

管野「…お前か。別に今日も怒って無ぇよ」

管野は俺が戦闘スタイルを変えた辺りから認識を改めたようで、現に怒鳴ることも減っていた

俺「あの……さっきのもう一回やってよ!!フソウソードでズバーって!!」

管野「…は?」

俺「カッコ良かったから、また見たいの!ねぇ、見せてよ!」

ポカンとした管野の顔は数秒で元に戻る

管野「…いいぜ」

俺「ホント?」

少し気が高揚しているようだった

管野「でも刀じゃねぇ、もっとカッコイイ奴をな」

俺「何なのソレ!?」

管野「まぁ見てろ」

突っ込む。上で注意を引き付けている二人が叫ぶ

二パ「オイ管野!何してんだ!!」

クルピン「コイツはボク達に任せて!」

しかし止まらない。止まる気など無い

管野「うおぉぉおぉぉぉおぉおお!!」

拳を振りかぶり、接近。気付いたネウロイが迎撃に入るがもう遅い

管野はチラ、と俺の方を振り返った

ワクワクしながら待つその顔には管野が被弾する事など全く頭に無いようだった

管野(お前はガキかよ…)

向き直る。拳を突き立てる

管野(けど、悪い気はしねぇな)

一息に振り抜く

管野「砕け散れぇぇぇぇ!!」


辺りにパキィィィィンという音と白い破片だけが残った

クルピン「…あれ?やっつけちゃった?」

二パ「どうなってんだよ…?うわぁぁぁ!」

クルピン「! 二パ君!!」

慌てて二パを助けに行く。どうやらここに来てトラブルの様だ

管野「…二パのヤツ、またか…」

仲間の不運を嘆きつつ、俺の所に戻る

管野「…どうだ?」

俺「す、すごい!!何アレ!?ねぇ、もう一回!もう一回だけ!!」

管野(コイツ…やっぱガキだな。ま、いいや)

興奮する俺にまた今度な、と伝え二人はクルピンスキーたちと合流する


      *  *  *  *  *  *  *


管野「終わったぞ」

クルピン「いやぁ最後の最後に二パ君がやっちゃって…」

二パ「あ、あれは防ぎようが無いだろ!」

反論するもポクルイーシキンのお説教が始まる

サーシャ「いいえ、トラブルなら尚更普段のチェックが甘いという事です。

     それを、防ぎようが無いなんて言葉で片付けるのは二パさんが…」

そこに下原が割り込んでくる

下原「みなさん、お疲れ様でした。どうです?お茶でも」

差し出されたのは紅茶。冷めたら台無しだと訴えられ、話は中断する



ラル「ご苦労だったな」

カップ片手にラルが言う。労いの言葉に反応は様々だ

ロスマン「俺君は最初に比べたら成長したわね」

感慨深い表情を浮かべているロスマン。褒められていると解り、照れ笑いの俺

サーシャ「全くその通りです。それに比べてあなた達はいつも危なっかしくて…」

二パ「今日は誰もユニットを壊してないからな!正座も無しだ!」

サーシャ「いえ、二パさんはこれからストライカーの扱いについて私とゆっくりお話でもしましょう」

決定事項のように言うポクルイーシキンに対し、カップの中身を一気に飲み干して言葉を並べようとする二パ

二パ「それは……ふぁぁ…?」

しかし床に倒れ込んでしまう

ジョゼ「に、二パさん!!」

駆け寄る。よくよく見ると、寝息を立てているだけだった。

下原「きっと二パさんは疲れていたんですよ。大尉、私でよければ代わりにお話を聞きましょうか?」

その表情にポクルイーシキンは見覚えがある。アノ時の顔だ

サーシャ「……いえ。それよりも早く二パさんを…」

下原「…それでは、寝かせてきます」

後ろを向き歩き出す。ジョゼとポクルイーシキンは同じことを考えていた

(二パさん、どうか無事で…)

心の中で合掌。既に下原は姿を消していた

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下原(二パさんにまでこんな事……最近の私…何かヘンだ……)

腕の中で眠る二パを見つめていると、そんな考えが下原の頭をよぎったが、すぐに違う感情が脳を支配したのだった
最終更新:2013年02月04日 14:57