D.H.N俺 第3話「ネウロイは水が苦手」







―早朝―海岸



ふと目を覚ます。

昨日から色々とあって疲れたため夕食をとった後、割り当てられた部屋にてすぐに睡眠にはいったのだ。
昨晩の晩ご飯はとてもおいしかったのだが、なんとなしに思い出せない。



俺「……まぁいいか。今日も食べられることだし思い出す必要はないか」



それにしても俺の名前がこんなにも渡っているとは本当に驚いた。

ウィッチってのは基本的に"お勤め年数"が少ないので結構世代的に入れ替わりがあったりするからこの頃のウィッチは知らないと思っていた。



ベッドから立ち上がり、いそいそと衣服を着始める。
軍属ではないためなんとなくこういう服が自由に切れるところはいいことだ。

ロングコートの袖に腕を通すと同時に海岸の方で大きな水しぶきと水音が上がったのが聞こえた。



俺「ん?坂本……?」



音の聞こえた方を窓越しに覗くと、海岸に一人フソウソードをもった坂本がいる。



俺「ちょっと、いってみるか」









―海岸



坂本「ふぅ……。今日も朝日が気持ちいいな」



毎朝の鍛錬は欠かさない、それが私の流儀。
とかなんとか心の中でつぶやいてそうな坂本の後ろから声をかけた。



俺「気持ちのいい朝だな、おはよう、坂本。さっきのはなんだ?」

坂本「おはよう、俺。さっきのは扶桑に伝わる奥義・烈風斬というものでな」

俺「レップウザン?」

坂本「ああ、扶桑ではウィッチ中大火力を誇る必殺技なんだぞ」

俺「そりゃ面白いな。刀だけで、どういう原理を使って大火力を実現しているかが気になるな」

坂本「それは教えることができんぞ。なんていったって"扶桑に伝わる奥義"だからな」

俺「ま、教えることができないのはそれだけじゃないかもしれないが、な。羨ましいもんだ」


坂本「む……。俺だって必殺技みたいなものがあっただろう」

俺「右腕のやつか?」

坂本「そうだ。あれもかなりの火力に見えたが」


俺「あれはパワーアクチュエーターで大幅に筋力みたいなものを増強して、大気エーテルから変換した超大魔法力を使って魔法フィールドを発生させることによって、ネウロイの装甲を無効化しつつ致死的攻撃を食らわせることを可能にしたってだけだ。さらにそれに加え、各部のネウロイ装甲を解放して高エネルギーを溜めることで超強力な破壊力を持つ攻撃ができるってわけさ。他にも色々使い方はあるが」






……?


俺がそう話すと坂本は刀を持ったまま呆けていた。



頭にはてなマークでも浮かんでいるような感じで、おそらくであるが、何一つ理解を示してくれていないようだ。
まぁそれは普通の人の反応としては当たり前なのだが。






俺「無理に理解しなくていいぞ。この技術はとあるモンスター研究者がつくり出したものだからな。雰囲気でも伝わればいい」

坂本「い、いやわかっているぞ?難しい話だから理解するのに時間がかかっただけだ」

俺「無理をするなって……」

坂本「私だって20歳だぞ?それぐらい多少なりとも理解できるさ」




よくわからない意地をはる子だ。
たぶん、俺の秘密を明かしてくれたのに理解がさっぱり追いつかないことが失礼とか恥ずかしいとか思っているんじゃないだろうか。




俺「まぁいいさ。そろそろごはんだ、いかないか?」

坂本「ああ、私もいこう。お腹がすいて力がでないからな」

俺「そうそう、よく食べてよく寝てよく訓練しないとな」

坂本「近頃リベリオンではダイエットというのをやっている人もいるそうだが私には理解出来ないな」

俺「俺も理解出来ないな。坂本はスタイルもいいし、肌もきれいだからする必要ない」

坂本「なっ///あまりからかうな」

俺「いや、十分魅力的だと思うぞ。扶桑人は謙虚だからよくそう言うが……」

坂本「いやいや私はそんな大層なものじゃないぞ!どっちかっていうとミーナやシャーリーの方が女性的だろう!」

俺「比べるものじゃない、それぞれの魅力があるってだけだ。そんなにやけに否定するなよ、坂本は美人だよ」

坂本「む、む……むぅ……///」




坂本はなぜか耳まで赤くして俺の後をついてきていた。


扶桑人は直接的にほめられることに慣れていないそうだから、率直にそういうことを言われるのは恥ずかしいそうである。

リベリアンの俺からすれば、至って普通に思ったことを言葉に出しただけなのだが、これが文化の違いなのだろうと思った。





それからぽてぽてと基地に向かって歩き、いい香りが漂う食堂へと脚を運んだ。











―食堂



食卓上には輝かしい朝御飯の数々が並んでいた。
扶桑料理だ。




俺「ご飯に味噌汁に焼き魚、さらには卵焼きに納豆とは……腹が唸るな」

宮藤「えへへっ、俺さんが扶桑料理が好きっていってくれたんで慣れてもらうためにも今日は扶桑料理にしました!」

俺「その御心に感謝する、宮藤」



その宮藤の隣でビショップが若干残念そうにしていた。
どうかしたのか、と聞くとちょっと落ち込みがてらにつぶやく。



リーネ「うぅ……ブリタニアの朝ご飯もおいしいんですよ……?」ボソッ

俺「……?ああ、なんだ昨日俺が口走ったことをまだ抱えてたのか」

リーネ「ごめんなさい……」



どうやらそういうことらしい。
実に繊細な少女だ、たかが俺が言ったことを真に受けて真剣に悩んでいるとは驚きだ。

たぶん、そのせいでブリタニア料理を食べてくれないのでは、と思ってしまったのだろう。




俺「俺が言ったのは全般的な話だ。ビショップが作るなら俺はおいしくいただくだけだ」

宮藤「私もリーネちゃんが作った料理ならなんでもおいしいよ」

俺「だからまぁ、今度作ってくれると非常にうれしい」

リーネ「芳佳ちゃん……俺さん……。わ、わかりました、今度お作りいたしますね!」

俺「ああ、楽しみにしているよ」

リーネ「あ、あと私のことはリーネでいいですよ。みんなもそう呼んでくれていますし」

俺「おう、よろしくなリーネ」





そんなこんなで会話をしていると食堂の席はすでに全部が埋まっていた。



相変わらず眠そうなハルトマン、それと対照的な朝からきっちりしたバルクホルン。

もう一人眠そうなリトヴャクだったか、その少女がそこでねないように体を支えるユーティライネン。

いい運動をしてお腹をすかせている坂本に、楽しそうに挨拶し会話をするヴィルケとクロステルマン。

じゃれあっている見てて微笑ましいほど仲の良いシャーリーとルッキーニ。



全員そろったようだ。


坂本「そろったようだから、いただくか」




いただきます、という坂本の元気な扶桑式食前挨拶で朝食が始まった。
豪勢な朝食に俺は止まることなく口にいれ咀嚼し、うまいうまいと言いつつ大量に食べたのだった。




こうやって食卓を囲むことも何年ぶりだろうか。



うむ、おいしい。









午前は色々と基地案内を宮藤、リーネがしてくれたおかげで時間も暇も潰すことができた。
なにやら隊員たちの話も交えながらの案内は意外と面白かったと思うと同時に、問題が起き過ぎだろうとは思っていた。

その後二人はクロステルマンと合流しともに飛行訓練へ。
俺は部屋に戻り掃除をした後、訓練を見に顔をだした。







―庭園





午後は基地内で訓練があった。
再結成されたはいいものの、宮藤・リーネ・クロステルマンの三人は一時戦線を離れていたため体力が低下していたようだ。



坂本「お前たち、しっかり走らないか!!その程度か!」



バテバテのぽてぽて走りの三人に対し、坂本の厳しい声が響き渡る。



宮藤「ひぃ……はぁ……はぁ……もう無理です~……」バタン

リーネ「うひゃぁ……」バタッ


それに続き。


ペリーヌ「もう、無理ですわ……」パタリ





坂本「お前たち……だらしないぞ!」

俺「無理も無いさ。戦線を離れていたんだろう?」

バルクホルン「俺、最前線じゃあその程度で済まされないぞ。午前の飛行訓練だって不出来だったのだからな」

俺「ふむ……まぁ基礎からやり直しだな」

坂本「はぁ……どうやらそのようだ」



ため息をつくふたりを見て、へばっている三人を見て、俺は苦笑いを顔に写した。



俺「何かいい方法でもあるのか?」

坂本「ああ、ちょっとな。三人とも、お前たちは基礎からやり直しだ!」


ペリーヌ「は、はい!!」
宮藤「はいぃ!」
リーネ「は、はいっ」


坂本「いたっては、三人ともあるところに訓練に向かってもらう!そこで訓練を受け、試験に合格するまで帰ってくるな!以上!」



それに対しさらに返事をへばりながらも元気よく返事をする三人。
なかなかに気概のある子たちだ。



坂本「ついてはアンナ・フェラーラ氏の元へと向かってもらおう」

俺「……ああ、あのばあさんね」

坂本「知っているのか?」

俺「もちろんだ。新人シゴキとしては有名なばあさんだからな。うっとしいったらありゃしないぜ」

坂本「む、非常に同意だ。しかしあまりそれを宮藤たちの前で言うのは……」

俺「む、すまない。まぁ三人とも楽しんできてくれ」

リーネ「え、えっとそんなに厳しいんですか?」

バルクホルン「身を持って体験してこい。それがいい」

宮藤「そんなぁ~、せめてどんな人かくらいは」



俺「まぁ宮藤の料理が食べれなくなることは残念だが」

バルクホルン「そうだな。一週間位を想定しておくか」

坂本「ふっ、その程度で済めばいいんだがな」

ペリーヌ「い、一体どんな訓練ですの……」





坂本・バルクホルン・俺の三人によるからかいにも似た脅しに恐々とする三人は見ていて面白かった。
まぁあながちハズレでもないが困ったところなのだが……。


俺としては、ぜひ頑張ってほしい、三人で。
三人で。











その後三人は荷物をまとめてすぐにアンナばあさんのところへ出発。
俺はその後姿を見送りながらエールを送った後、いそいそと浴場へと脚を運んだ。


実は二日前から風呂にはいっていなかった。
汗はコア埋込み手術の際あまりでないようにはしてあるらしいのだが、やはり気になるものは気になる。




俺「まぁ戦場じゃあそうも言ってられないんだが……」



脱衣所で服を脱ぎ、ばしゃりと風呂に肩まで浸かった。
お湯の暖かさが体中に染み渡り、気分を落ち着かせてくれる。



「おーい、なんで入ってきてるんだー?」



ふと声がかかる。
ああ、ちょっとした疲れで脳が幻聴を覚えているのだな、と思いさらにリラックスする。



「おれー、おーい、おれー。おーい」



まだ声が聞こえる、俺はそんなに疲れていたのか。
それに俺はここに入る前に一応確認はしたが誰もはいっていないようだったはずだ。





「おい、俺!」バシャ

俺「うぷっ!誰だ!人がせっかくリラックスしてるってのに」

シャーリー「あたしだよ。ってなんで入ってきてるんだ?先にはいってただろー」

俺「いや、それは俺のセリフだ。脱衣所確認時には誰もいなくて服も置かれてなかったぞ」

シャーリー「ああ、それは専従の係人が洗濯するっていうんで一緒に頼んだんだよ」

俺「ってことは替えの服が来る間に俺が来たってわけか……」

シャーリー「一瞬驚いたぞ、なんのためらいもなく普通にはいってきたんだからな~」

俺「ああ、悪かった、あとから入ることにするさ」バシャ

シャーリー「いいっていいって、かまわないぞ」

俺「いやさすがにここをみられたら不味いからな」

シャーリー「誰もし来やないって。それともヒーローは意外と小心者なのか?」ニヤニヤ

俺「おいおい、ずいぶんと煽りが下手だな。いいだろう、見つかっても知らないからな」

シャーリー「あははっ、それでかまわないよ」






俺は遠慮せずにもう一度湯に浸かった。
湯気で隠れて少し見えないもののシャーリーはどうやら俺の横から15mほど離れた場所で漬かっているようだ。




俺「は~……効く」

シャーリー「年寄りかーって少佐につっこまれるぞ」

俺「もう年寄りでもなんでもいいさ。それに俺は本来は25歳だしな」

シャーリー「……へ?」

俺「本来は25歳だ。コアを埋め込んだ際は21歳、それからコアの影響で姿はあまり変わらないようになってるのさ」

シャーリー「色々他にも言いたいが、22歳って言ってなかったか?」

俺「コアを埋めこまれた翌日に誕生日だったもんでな。だから一応22歳っていうことで自己紹介したわけだ」

シャーリー「なんかずっりーな、歳とらないなんてさ~」




俺「……そうでもないさ。人間味を感じられない」

シャーリー「ん~、でも大抵の女性はあまり歳を取りたくないって思ってるぞ。特にウィッチは」

俺「こんなものないほうがいい。こんなものを使うのは愚かな者だけだ」

シャーリー「でも俺はそれを使ってるじゃないか」

俺「……馬鹿な私情さ。ただ、人間じゃない感覚ってのは、恐ろしく醜い」




ぼそりと浴場にかすかに響く声で語りかける。
浴槽の湯と同様に波紋が心の中にも広がった。




シャーリー「そんなもんなのかな……。そういえば人間じゃないって言ってたけど、私の中じゃあ俺は人間さ」

俺「なぜだ?心臓もない、死にもしない、病気にもならない、人類の敵のネウロイの力を持ってるのに」

シャーリー「あたしの中じゃあ、人間の定義なんてそんなもんじゃないからな」

俺「よくわからないんだが」

シャーリー「俺は人間ってこと。それだけでいいじゃないか。あたしのなかじゃあ今でも俺はリベリオンのヒーローさ」

俺「はっ……ガランドと同じことを言いやがる」



シャーリー「でもなんでそんなコアなんか埋め込む真似なんてしたんだ~?」

俺「それは……まぁいつか話す時がきたら話すさ」

シャーリー「その理由って何人かは知ってるのか?」

俺「いや、俺と俺を作った研究者だけだ」

シャーリー「じゃああたしが第三者では一番乗りだな!リベリオンで一番速い!!」

俺「ははっ、おいおい、どれだけ明るいんだよ。つまらない話だぜ?」

シャーリー「最速っていう響きがいいのもあるけど、個人的に聞きたいのもあるしな!待ってるぞ」

俺「……ああ、いつかな」





湯気を通して見える霞んだシャーリーの笑顔を見ていると、なぜか知らぬ間に心の中の波紋は消え失せていた。

こうやって明るく振る舞われると、安心してしまうのはやはり俺が未だにコアを埋め込んだことを後悔しているからだろう。


だが、いつかは……。









シャーリー「そういえばさ、ネウロイって水苦手じゃないか?」

俺「そうだな」

シャーリー「一体どんな感じなんだろうか知りたくないか?」

俺「……ここでネウロイ化しろと?」

シャーリー「もちろん!」

俺「なぜだ?」

シャーリー「探究心だよ、俺君!」

俺「まぁ俺もやったことないから試してみるか」

シャーリー「お~、サービス精神旺盛!」

俺「よし、人体拡張反応コア、アクセス、アクセス完了……TRANCEFORM.......NEUROI」




この前の戦闘時と同様に、心臓が紅い光を放つと同時に黒が全身を覆い始めた。
いつもと同じように心臓から頭・両腕・腹・脚部・足の先とすべてを満たしていく。





そのはずだったのだが。

感じたのは、ものすごいしびれであった。

まさに電流が流れたような感覚(そんなことは今まで経験したことないが)




俺「ぐぅぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
シャーリー「あわわわ!お、俺ぇぇぇぇぇぇぇっ」



俺はたまらずその痛みと痺れのせいで、大きな唸り声を漏らしてしまった。
と、数秒後に脱衣所の扉が開く音。

さらにその数秒後、浴場の扉が開く音が聞こえたのだった。






入ってきたのは後ろで髪を二つに分けた少女。
なにやら浴場のそばを通りがかったらしい。




どうやら人間がベースのネウロイでも、やはり温度に関わらず水が苦手らしい。

おかげで大変な目に合うことになったのは、今度話しをしたいところだ。







後に下った処分は、謹慎三日間だった。








第3話「ネウロイは水が苦手」終わり
最終更新:2013年02月06日 23:02