自らの身体を引き寄せる重力により、更なる加速を得る。
文字通りの稲妻と化した俺は、現段階で可能な最高速度を叩き出し、一気に降下していく。
敵がビームを放ってこない以上、あの触手が届く範囲に踏み入らなければ何の危険もありはしない。
問題は敵の射程に踏み込んでから。この速度での機体制御は始めての経験だ。
訓練でもこのような速度を出せたことはなかったし、まだ危険だという理由でロスマンもサーシャも許可を出したことはなかった。
訓練なしの本番など、危険以外の何物でもない。
だが人生が……殊更戦いの中を歩むものであるのなら、常に準備不足の連続であることは重々承知していた。
その中で、実現可能な攻略法を見出すことこそが、戦う者の最重要要素と考えている。
そして遂に、敵の間合いへと侵入した。
ネウロイの反応は速かった。俺が上空で待ち構えてきた時点で既に迎撃の準備を整えていたのだろう。
迎え撃つために伸ばされた触手は振るわれることはなく、槍の穂先の如く硬質化するや最短距離を突き進む。
鞭のように振るったのでは捕えきれぬと判断しての攻撃だろう。
アドラー《シールドはどうする?》
俺「必要ない。寧ろ、ここで攻撃を防御して体勢を崩す方が問題だ」
ここで機体制御を失えば、もはや後はニパ共々嬲り殺しにされるだけ。
最悪、自分まで捕えられ、味方の足を引っ張りかねない。それだけはお断りだ。
既にそういう攻撃が来るだろうことは何となしに予測していた。ならば、回避は容易い。
ほんの僅かに両脚を開き、空気抵抗によって軌道を僅かに曲げた。
槍の先端と俺が交差する……!
文字通り、紙一重の回避。
常人ならばまず不可能。新人ならば大きく回避をしてしまうのは必定。天才であっても命の危機に無意識にシールドを張っていたであろう現実。
その全てを覆す、死を恐れぬ暗兵である彼ならではの回避であった。
右肩の一部を削ぎ落とされたが、出血も軽く、致命傷には程遠い。
恐れることなく、落下を続ける。目標地点まであと僅か。そこに辿り着けさえすれば、この死闘は俺の勝利で幕は閉じるだろう。
しかし、それを簡単に許す敵は存在しない。
射程限界まで伸ばした槍の形状が再び変化する。
触手から槍へと変化したそれは、今度は茨のように無数の棘を発生させた。
根元から自分に向かって生える茨を確認するや、躊躇なく引き金を引く。
自らの行く手を遮る茨にMG42の7.92mm弾が容赦なく突き刺さり、粉微塵に破砕する。
生まれた煙幕を抜け、ようやくニパの表情が確認できる距離にまで近づいたその時、一本の茨が右脚のストライカーを半ばまで破壊された。
アドラーと俺の意志により、壊れたストライカーは間髪入れずに脱ぎ捨てられ、制御を失った魔法力と共に爆発する。
敵の猛攻を防ぎ切り、俺は最後の仕上げに入る。
俺「アドラー、カタヤイネン! シールドを張れッ……!!」
アドラー《――承知!》
ニパ「う、うわあああぁぁぁぁッ!!!」
アドラーは主の命令で、ニパの使い魔は主の悲鳴と命を守るためにシールドを展開した。
凄まじい激突音を発し、二つのシールドが相互に干渉しあう。
激突によって生じた衝撃と今まで俺が生み出した推進力を魔法力によって相殺していく。
最終的にお互いへのダメージがないままに、シールドは限界を迎えて砕け散り、この世から消え去った。
俺は残った左脚のストライカーも脱ぎ去り、ネウロイの上へと着地する。
両脚がネウロイへと飲み込まれていくが、彼に焦りは存在しない。
この状況において、望んでいたのは四肢のどれかが使用可能な状態でニパの元へと辿り着くことが重要なのだ。
ネウロイは津波のように液体を波打たせ、二人を飲み込もうとしたが……
俺「――――手遅れだ。負けて死ね」
腰から上半身へと伝えられた力は、滞りなく掌へと向かい、必殺の掌底がニパの腹部へと振り下ろされる。
人質や人を盾として使用した際、もっとも安全なのは人質のすぐ後ろだ。
己がネウロイである以上、真っ先に敵対するのはまだうら若いウィッチである。そんな少女達が仲間を見捨てる決断など、即座に下せる筈もない。
ならば、相手が攻撃系の魔法を有していた場合、身体の奥深くに配置しておくよりも、人質のすぐ後ろの方がむしろ安全と言えよう。
その人間に近すぎる思考、人の内心や判断を知っているかのような行動は、今回に限って裏目に出た。
見事、敵の思考と性質を読み切った俺の掌底は、ニパに一切のダメージを与えることなく衝撃をコアへ伝え、完砕する。
確かな手応えに勝利を確信すると同時に、ネウロイの装甲が沸騰するかのようにボコボコと泡立つ。
次の瞬間には弾け、粒子レベルにまで細かく砕けたのか、光の霧となって拡散した。
ニパ「……嘘? やったの!?」
俺「みたいだな。…………あー、やっぱりストライカー履いてないよな。吸収されたのかな?」
ニパ「え? どうしてそんな……」
俺「いや、俺達、今堕ちてるから」
ニパ「…………?」
そういえば、先程から何か奇妙な浮遊感を感じるような……?
耳から聞こえる風切り音を出来るだけ無視して、自身の足元を見ると何故か下方向に空があった。
再び俺の顔に視線を向ければ、両腕を組んで、うむと頷いた。多分、自分の表情を見て、内心を察したのだろう。
状況把握終了、説明を開始。
ついさっき空戦ネウロイを倒し、幸いにも破片によるダメージを受けなかったが、今度はストライカーがない状態で上空300mに投げ出される羽目になった。説明を終了する。
ニパ「な、なに冷静に頷いてるんだよ!?」
俺「下は湖だ、死ぬこたぁねえよ。全力でシールド張れ、ガンバ!」
ニパ「ふ、ふふ、ふ、……ふざけんなぁぁぁ!!!!」
俺「あ、アドラーは身体から出ていけ、お前と同調するのは気持ち悪い。…………ふん!」
アドラー「ちょ、おま!? シールド展開しようと思ったのに、なにしとんじゃぁぁぁぁ!!」
怒鳴るニパを無視し、俺はアドラーを身体から追い出すが、自らの使い魔にも怒鳴られてしまう。
結局、ストライカーユニットも何の媒体も持たぬ二人が空を飛べるわけもなく、真っ逆さまに湖へと落下していく。
うわぁぁぁぁ、とニパは今日何度目になるか分からない絶叫を上げる。
それを気にも留めず、俺は両腕をピンと伸ばし、振れる面積を減らすことで着水の衝撃を軽減する気のようだ。
そして、着水の瞬間が訪れた。
すんでのところでシールドを張ったニパは衝撃こそ軽減したが、落下の勢いまでは殺し切れず、湖深くまで潜っていった。
突然、全身を包み込んだ身を切るような冷たい水にパニックになりかけるが、それでも彼女は水面へと向かう。
息を大きく吸い込いこんでいたかったせいで、血中の酸素が急激に減っていくのが自覚できた。
ニパ「――――ぶはぁッ!? げっほ、げほっ……」
息が続かなくなる寸前、彼女は水上に顔を出すことに成功した。
呼吸を再開すると同時に、文句の一つも言ってやろうと周囲を俺を見回すが、まだ上がってきていない。
もしかしたら、と最悪の予感が頭を過ぎるが、あの男のことだ、もう水辺にまで泳いでいるだろうと不安を掻き消すように決め、一先ず水辺にまで泳ぎだす。
水温は10℃以上はあるだろうが、このまま水の中に居続ければ、いずれにしても体力を奪われ、溺れかねない。
水の中、身体を縛り付けるような衣服の重さを引きずりながら、何とか水辺にまで辿り着く。
ニパ「…………おい! どこだよ、俺! どっかにいるんだろ!? 隠れてないで出てこいよッ!!」
湖畔は静寂に満ちていた。
余りに静かな、人の気配など一切しない静寂に耐え切れず、悲鳴じみた声を上げる。
返答は当然のように返ってこない。自分の声が、綺麗な水面に跳ね返るだけだった。
ニパ「嘘……? そんな、…………まさか、」
最悪の予感とは、自分の不幸に引きずられ、俺が何らかの理由で溺れているかもしれないというものだ。
例えば、着水にミスがあり、身体を怪我して湖の底に沈んでいるとか。
例えば、湖底で何かに引っかかり、水上へと浮上できずに窒息しているとか。
考え始めればキリがない不安に、動かさなければならない身体から力が抜け、そのままバシャリとへたり込む。
本来、彼女が追うべき責任ではない。幸運も不幸も、人がもたらすものではないのだから。
しかし、彼女の不幸は度が過ぎていた。生きているのに疲れてしまうほどに、追い込まれている。
それが絶望となって膝を折り、動こうという気力すら奪い去る。
知らず、涙を流がれていた。
自らの使い魔が心配するかのようにその顔を摺り寄せてくるが、それを気に留める余裕すらない。ただただ、悲しみと絶望に押し潰されて啜り泣く。
俺「ぼごぼごぼごぼご――――――ぶへぁッ!? ぶほぁ、げふ、げふん!? …………あー、死ぬかと思った」
突然、数m先に気泡が生じたかと思えば、水面が盛り上がり、俺が現れた。どういう訳か、肩に自分のストライカーユニットの片方を担いでいる。
その光景を茫然と眺めるニパ。どうやら、急展開に次ぐ急展開と安堵が思考を奪い去っているようだ。
俺「何そんなとこに座ってんだ。風邪引くだろ、さっさと上がるぞ」
ニパ「…………うぐぅ!? ちょ、ちょっと待って!!?」
泣いているのに気がつかなかった俺は、そのまま擦れ違い様に掴んで引きずっていく。
何とか俺の手から逃れ、自分の脚で立ち上がる。もう、悲しみも絶望も空の彼方へ消えていた。
俺「何だ、自分で歩けるのか。じゃあ初めから自分で歩けよ」
ニパ「いやいやいやッ! それよりなんで生きてるんだよ!?」
俺「え? ……俺、死んでた方がよかったの?」
ニパ「そうじゃなくて! ……ああ、もう!?」
少なからずショックを受けているのか、少しだけ沈んだ声で返す俺に、ニパは混乱の余りに髪を掻き毟る。
俺の弁によれば、始めはそのまま水上に向かうつもりだったのだが、
湖底にて、捨てた筈のストライカーをたまたま発見して、それを担いで底を歩いてきたなので随分時間がかかってしまったそうだ。
エンジンを積んだストライカーなど使い物にならないが、それでも使える部品はあるかもしれない。
そうすればストライカーを壊したことを熊さんに怒られないかもしれない、という打算があったのは秘密である。もっとも、それは徒労に終わるのだが。
ニパ「……………………………」
俺「それで終わりか? だったら速く行こう。落ちてる時にロッジらしきものが見えた。人はいないだろうが、身体を乾かすくらいできるだろ」
ニパ「――、った、…………」
俺「……はぁ?」
ニパ「……、ぅう、よか、った。……生き、てて、……良かった」
俺「ちょ、ちょっと、泣かないでくれる?」
安堵からしゃくりを上げて泣くニパに、俺はどうしていいのか分からなくなって青ざめる。
この少年、生まれてこの方、同年代の女の子との触れ合いなど皆無に等しいので、こうなった時の扱いがまるで分からないのだ。
何度も拭っても流れてくる涙にもう嫌気が差して、ただ泣くことにした。
その様子に、肩にストライカーの片割れを担いだまま、暫くの間あたふたしていた俺は何とか落ち着きを取り戻した。
自分も修行の余りの厳しさに泣き出してしまったことがある。その時、一体自分はどうして慰められただろう。
思い出したくもない幼かった自分の記憶を掘りおこすことに腐心し、何とか一つだけ頭の片隅に残っていた記憶を思い出す。
はあ、と溜息を吐き、俺は何も言わず、ニパの頭を掴んで自分の胸板に押し付ける。
何時だったか。一人泣いていた自分に老婆が何も言わずに抱き締め、頭を撫でられたことがある。あれは随分、落ち着いたものだ。
抗う気はないのか、ニパは静かに額を押し付けられたまま嗚咽を漏らすだけだった。
冬の冷気に寒さを覚えた頃、ようやく自分を取り戻す。
酷く、恥ずかしいところを見られてしまった。年頃であろうがなかろうが、自分の泣く姿を見られていい気分はしないだろう。
だが、嫌な気分はしない。気恥ずかしさだけが残るだけだ。
お互いがかなり恥ずかしいことをして、されていることに気付いた頃、ニパの後頭部にポタポタと何か生暖かい液体が垂れていることに気が付いた。
なんだろう、と何かが当たる感触に手を当ててみれば、手についたのは粘度を帯びた真っ赤な血液だった。
ニパ「俺、け――――ひゃあああ!?」
俺「落ち着きねーな、お前。後、人の顔見て叫ぶのはやめろ。地味に傷つく」
流れた血が下心からくる鼻血まだよかったかもしれないが、生憎と現実は違っていた。
彼女が悲鳴を上げるのも無理はない。顔を上げた瞬間、半分が血塗れの顔を見れば。
ニパ「え!? なんでぇ!? さっきまで怪我なんて……」
俺「してたよ。お前、落ち着きないから気付いてなかったんじゃないか?」
ニパ「で、でも、どこで……?」
俺「………………浅かったんだ。思ったよりも浅かったんだ」
綺麗に着水した俺は、そのまま勢いが止まると同時に水上に出る予定だったが、俺の落ちた場所は水深が浅かった。
不幸にも湖底に激突。額が裂けてしまったのである。
今までニパが気付かなかったのも無理はない。
水中ならそうそう血で汚れることなどないし、何より彼女は取り乱していたのだから。
俺「さっさと処置したいんだ。速く行こう」
ニパ「……大丈夫なの?」
俺「足取りもしっかりしてるだろ? 頭蓋骨にも脳にもダメージはない。吐き気もしないし、単なる裂傷さ」
痛みなど慣れ切ってしまっているのか表情に変化はない。何か言いたげだったニパを気にせず、俺は再び歩き出す。
暫く歩くと、彼の言うとおりロッジが建っていた。
周囲の景色に溶け込むような造りは持ち主のこだわりが感じられる。恐らく、避暑のために建てられたのだろう。
湖畔にストライカーを立て、ロッジへと向かう。
中の気配を探るが、当然人の気配はない。あるのは虫か鼠の気配だけ。
何らかの罠が仕掛けられた形跡もなかった。正真正銘、一般人の所有物件であるようだ。
安全を確認すると、躊躇なくドアを蹴破り、中へと入る。
やはり何年も使われていないらしく、あらゆる場所に埃が積もっていた。しかし、迎えが来るまで問題なく休めるだろう。
俺「悪いが、タオルか何か探してきてくれないか。オレは火でも起こしておく」
ニパ「でも、いいのかな……?」
俺「緊急事態だ。お前も風邪なんて引きたくないだろ。……ああ、お前のサインでも残しておいたらどうだ。そうすりゃ家主も喜ぶだろ」
入ってすぐがリビングとキッチンが一体となっていた。
テーブルが一つに椅子が四つ。かなり大きめの暖炉。ご丁寧に水道まである。この規模の湖だ、近くの水源からパイプでも引いてあるのだろう。
ニパがロッジの奥へと消えていくのを確認し、俺も行動を開始する。
保存状態のいい薪を探し、暖炉に火をつけ、更に水道の蛇口を捻って水を出しっぱなしの状態にしておく。そして服の上下を脱いで暖炉の傍に紐を貼って吊るす。
アドラー「……おおう、褌姿とな」
俺「来たか。ドア、閉めておけよ。寒い」
アドラー「むう、無茶を言うのう」
開けっ放しの扉から入ってきた黒鷲に難題を押し付け、自らは椅子に座る。
褌一丁の姿を気にせず、ジャケットの内側から取り出していた折り畳まれた皮製の袋をテーブルの上で広げる。
中には様々な大きさの針や糸、鏡、ピンセットらしき医療器具が入っていた。
俺「やっぱり薬は軒並みダメになってるな。麻酔無しだが、仕方がないか」
愚痴を漏らし、曲がった針に糸を通して額と右肩の傷口を縫いだした。
ジョゼと別れ、陸戦ネウロイを倒した後も、こうして自分で傷を縫った。最低限、傷の手当くらいはできねば戦場で生きていけない。
特に裂傷は筋肉の圧力で捲れてくる可能性がある。傷口を消毒しておきたかったが、ないものねだりはできない以上、さっさと塞いでしまうのが吉だろう。
俺「……ぐ、ぁッ!」
アドラー「おう……見ているだけで眩暈がしてきそうだわい」
俺「……黙っ、てろ、気が散る」
洩れる呻きを噛み殺し、激痛に耐えながら傷に針を刺して糸を通す。
昔、この痛みが嫌で傷をそのままにしておいたことがあるが、その後に酷い後悔に襲われた。
一週間ほど経った頃、傷口に蛆が湧き、蠢く度に麻酔無しの縫合以上の痛みで動けなくなったことがあった。それに比べればこの程度マシな方だ。
傷跡は残るだろう手早いが雑な縫い方で、ものの10分程度で処置は終わる。流石に手慣れたものだった。
最後に糸を切ると、どっと押し寄せてきた疲労に椅子の背もたれに上半身を預ける。叶うのならこのまま寝てしまいたいが、まだまだやることはある。
ニパ「俺、使えそうなのシーツしかなかっ……って、何だよ! その恰好!!」
俺「ん? あのままの恰好だったら風邪引くだろうが。それよりお前も、さっさと脱げよ」
ニパ「……ッ?!?!」
痛みで自分がとんでもない科白を口にしているのに気付かず、俺は薪と藁を抱えて外へと出た。
肌を刺す冷気に吐き出す息が白く染まっていく。こんな恰好で外に出るような真似などしたくなかったが、そうもいかない。
定時連絡を入れなければ、502JFWかどこかの部隊が異常を察知するだろう。その時、狼煙の一つでも上げてれば、発見も容易な筈だ。
ストライカーの横に狼煙を上げ、ロッジの中へと戻った。
現在は11月の半ば。この地域で雪が降らない当たり、今年は暖冬らしい。
今日は流石に雪が降るかもしれない、と思いながら壊れたドアを閉め、椅子をつっかえ棒替わりに置いておく。これで風も入ってはこないだろう。
冷えた身体を温めようと暖炉の方に身体を向けると自分の予想していたものとは別のものが視界に飛び込んできた。
俺「……………………」
ニパ「あ、あんまりジロジロ見るなよ」
俺「……………………」
ニパ「だ、だから見るなって! わたしだって恥ずかしいんだよ…………」
俺が見てしまったのは、ニパの下着姿だった。
濡れた服を先の紐に引っ掛けていただろうか。両腕を上げ、横からその年齢以上の豊満な胸を強調する恰好だ。
北欧人特有の処女雪のように白い肌と薄い水色のブラとズボン。服の上からは分からなかった嫌に括れたウエストと艶めかしい脚。
どんなに性に疎い少年であっても興奮せずにはいられない姿だろう。
余りの衝撃に思考停止した俺が、自分の下着姿を視姦していると勘違いししたニパは、顔を真っ赤に染め上げてその場に蹲った。
だが、それは逆効果だった。隠した筈の胸が両腕からはみだし、卑猥の一言である。
残念ながら衝撃から立ち直っていない彼はその姿を認識できていない。
しかし、次第に思考能力を取り戻し、彼女と同じく頬が赤く染まると両手で顔を隠すことで視界にいれないようにする。
完全に視界を塞いでいる当たり、誠実ではあったものの初心で奥手な少年だ。
俺「お、おま、おあえ、お前、なんて格好してるんだよ!?」
ニパ「だって、脱げって言ったのは……」
俺「だ、だだだだだからって、それはないだろ! シーツ持ってきたんだから使えよ!?」
思考停止から立ち直った俺が一番最初にしたのは、ニパから目を背けたままシーツを全力で投げつけることだった。
最終更新:2013年02月06日 23:19