青天の霹靂。
霹靂とは古くは神解け――即ち、雷を指し示す。
言葉の意味は、青い空にも拘らず突如として雷が落ちるような衝撃的、或いは天地を揺るがすような大事件が起きることだ。


俺「……………………おい」

アドラー「何かな、我が主」


俺の人生において、そのような事態に陥ったことは少ない。
そもそも、大抵の事象は覚悟の上であったし、何よりも歩む人生が過酷であることは、耳にタコが出来るほど身内に聞かされていた。

だが……


俺「なんだ、これは……」

アドラー「ふむ。どうやら、ニパと身体が入れ替わったようじゃの」


朝起きたら、依頼人と身体が入れ替わるような事態、一体誰に予測できよう。

つーか、何これ? 何なのコレ?
股間にある筈のものがなくて、胸にない筈のものがあるのって、こんなに違和感があるの?
ねぇ、ちょっと、教えてよ。偉大な暗兵の先達たち。お願いだから答えてよ。


俺「おい。本編の設定上、魔法力の相性が良い奴しか入れ替えできなかったんじゃなかったけぇ、アァドラァーくぅん?」

アドラー「番外編の都合上、そのような設定はなくなった!」

俺「ふざけんなぁぁぁぁッッッ!!!!」


おいぃぃぃッ! 何なんだそれはぁぁぁぁッ!
設定ってもんは、そうほいほい変えちゃいけないもんだろうがよぉ!


アドラー「何を言うか、設定なぞ往々にして変わるものよ! お前がネタで多様するジョジョでもそうじゃろうが!」

俺「大人は嘘を言うんじゃねぇ、間違いを犯すだけなんだよぉッ! つーか、この間裏切ったばかりだってのにまた裏切りか、貴様ァァァ!」

アドラー「いや、待て主よ。これは裏切りではない、言うなれば必然じゃ」

俺「………………何だと?」


急に神妙な顔つきになるアドラーに合わせ、俺もある程度冷静になる。
まさか、新しい敵か何かか。それともニパの命に係わる危険自体が発生したのか。
だとするならば、ニパには悪いが少々の不自由には耐えて貰わねば……


アドラー「言わば、これは需要と供給のバランスを保つため。スレ住人の意向。――ようは民意じゃ。そしてネタ拾いよ」

俺「」

アドラー「しからば、儂はちょっくら出かけてくるからのー。せいぜい楽しむがよいわ、ふはははははーッ!!」ガシャーン

俺「……逃がすかぁッ! って、ニパの身体でナイフなんて持ってるわけねぇ!!」


窓ガラスを突き破って、アドラーは何処かへ飛翔していった。どう考えても当分戻ってくることはないだろう。
くそがぁぁッ! あの糞鷲! 訳の分からん理由で、目的もなく遊び半分でこんな真似するか普通!


ニパ「うわぁぁぁん! 俺ぇぇー!!」ドバーン

俺「おお、ドアがぶち破られたーッ! 俺だと!? じゃなかった、ニパか?!」

ニパ「ふ、ぐぅ……、ひッ、……お、おれぇ゛、か、身体が………ふぅぅぅッ!」

俺(…………自分の泣き顔って、マジで気持ち悪いな)

ニパ「な、何なんだよ、これぇ……どうなっ、って、窓がッ!!」

俺「……………………………………なんか、ごめん」


これは、俺とニパに巻き起こった、青天の霹靂と言うべき記録である。







――談話室



クルピンスキー「いやー、アドラーもやるねぇ。こんな真似、文字通り彼にしかできないよ」

ニパ(俺)「本来、設定上こんな真似も出来ないはずだがな。クソ、民意だの何だの訳の分からないことを囀りやがって……!」

俺(ニパ)「うぅぅ、どうしてこんな……」

ニパ(俺)「俺の顔で泣くな。気持ち悪い」

伯爵「ちょっと、言い過ぎだよ。もうちょっと優しくしてあげなきゃダメでしょ」

管野「どうやら、本当に入れ替わってやがるみたいだな……」

サーシャ「全く、一体何が目的で……」

下原「やだ、泣いてる俺さんも、不貞腐れたニパさんも可愛い…………」

ジョゼ「下原さん、落ち着いてください。涎たれてますよ」フキフキ


ラル「何故だ。身体が入れ替わる展開は、ヒロインたるこの私がなるべきでは……」

ロスマン「なりたかったの? 今のニパさんと同じ状態に?」

ラル「いや、本編に期待しておく」キリッ


ラル「まあ、アドラーも悪気はあっただろうが、明確な裏切り行為というほどでもないだろう」

ニパ(俺)「十分裏切りに値するわ。見つけ次第、元に戻させて殺す」

ラル「駄目だ。何の為に先の裏切りをお咎めなしで済ませたと思っているんだ。まあ、娯楽を提供してくれた訳でもあるからな」

ニパ(俺)「最後の一言で本音出てんぞ、おい! 冗談じゃない、捜索隊でも何でもいいから奴を探し出してくれ!」

ロスマン「分かってるわ。こんなことで軍の部隊を使うのもどうかと思ったけれど、ウィッチの使い魔が逃げたということで近隣部隊にも呼びかけておいたから」

サーシャ「アドラーについて詳しく知っている人間は私達以外にいないので、二人とも入れ替わってしまったことに気付かれないようにしないでくださいね」

ニパ(俺)「…………分かった。何とかやってみる」

俺(ニパ)「そんな! 無理だよ、私に俺の真似なんて……」

ニパ(俺)「別にテキトーで構わないよ。お前に俺の何から何まで真似ろなんて、酷なこと言わないから安心しろ」

俺(ニパ)「で、でも……」

ニパ(俺)「今回の件は、アドラーの所為ではあるが、主人である俺の落ち度でもあるからな。そもそも、俺が評判なんて気にするように見えるか?」

クルピンスキー「見えないよねぇ。唯一重要なのは、僕達の為なら火の中水の中ってところかな。純粋に嬉しくはあるけれど、仲間としては心配だよ」

ニパ(俺)「知らんね。こっちは暗兵、依頼人の為なら命なんて惜しくない」

ラル「はあ、全くそこだけは変わらんな。まあいい、そこは此方が巧くやるさ。お前に何を言っても無駄だからな」

ニパ(俺)「理解が速くて助かる。今は身体が大事な依頼人のものだ。無茶も愚行もしないよ」


ラル「よし、その言葉を聞いて安心した。念の為、哨戒と出撃のシフトを変更しておこう。すまない、ロスマン、大尉、手伝ってくれ」

ロスマン「了解よ。サーシャさんは整備班に掛け合ってくれるかしら?」

サーシャ「分かりました。とりあえず、整備班長と話し合ってどの程度変更が可能か聞いてみます」


バタン、と部屋のドアが閉められ、三人が部屋を後にする。


クルピンスキー「さて、お堅い三人が行ったと・こ・ろ・で……」スーッ

ニパ(俺)「ひぁッ!? い、いきなり背中に指を滑らせるな! 何するんだ!」バッ

クルピンスキー「むふふ、感度良好。流石はニパ君の身体だね」ワキワキ

ニパ(俺)「人が手を出せないからって、……ちょ、止めろ! 胸を……んんッ!///」ビクッ

管野「」

俺(ニパ)「」

ジョゼ「はわわ……///」

下原「きゃー! 駄目ですよ、大尉! そんな昼間から!/////(副音声:もっとです! もっとやっちゃってください!)」チラッ、チラッ

クルピンスキー「胸だけで根を上げちゃダメだよー? 女の子の身体にはまだまだいっぱい感じるところがあるんだから、さ」ソロー

ニパ(俺)「い、……ぅ、や、だ。ひぃ、止め……/////」プルプル


管野「なにやってんだ、この馬鹿伯爵ーッ!」ガッシ!

俺(ニパ)「私の身体ーッ!!」ボカッ!

クルピンスキー「僕は死んだ。スイーツ(笑)」ドッサァ


ニパ(俺)「はぁ……、はぁ……、やばい、やばい、やばい。なんだこれ、なんなんだこの身体」クテー

ジョゼ「あ、あの、大丈夫、ですか……?」オソルオソル

下原「………………残念」ショボン

ニパ(俺)「そう思うんならすぐに助けてくれよ!? つーか下原、なんだその感想ッ!!」


クルピンスキー「いたた。……酷いなぁ、二人とも。僕はちょっと、女の子の身体というものをだね」スク

管野「だからって、あんな///」

俺(ニパ)「そうだよ! うぅ、ぅぅ、いくらなんでも酷い、こんなのってないよ!」ゴゴゴゴゴ

下原「ちょ、ニパさん! 落ち着いて!」アタフタ

ニパ(俺)「ばッ!? 俺の身体で魔法力なんて使ったら……!」ガバッ!

俺(ニパ)「うわーーーーーーん、ごふッ!!!」ドカーーーーーン


ジョゼ「ニパさんが飛んで……!」

管野「天井に突き刺さったぁぁぁッ!?!?」


ニパ(俺)「おおおおおおお、ニパァァァッ! 大丈夫かぁぁぁッ!?」

クルピンスキー「これが噂のハンサムエスケープ……いや、やってるのはニパ君だからキューティエスケープだね!」

ニパ(俺)「言ってる場合か! 速く助けるぞ、肩車だ!」

クルピンスキー「こういう時も下なんだ。一応、ニパ君の身体なんだけどなぁ」ヨイショ

ニパ(俺)「うぉぉ。馬鹿な、伯爵如きの体重を重く感じるだとぉッ!?」プルプル

クルピンスキー「うーん、喜んでいいのか微妙なラインだよ、その台詞」

管野「おい、馬鹿やってないで速く助けてやれよ」

クルピンスキー「分かってるよ、ナオちゃん。…………あ、手でそんな触り方しちゃダメだよ、んん、そんなところ頭で擦っちゃ、あッ!/////」

ニパ(俺)「両手は足首持って固定してるだけですけどぉぉ!? 頭も擦りつけてNEEE!!!」

クルピンスキー「じゃあ、僕の太腿で顔を挟んであげよう。ほら、男の子には天国みたいだろう?」ムニムニ

ニパ(俺)「むぐぐぐぐぅ。苦しいだけだ、止めろ! 仮に今が男にとって天国のような状況だろうが、俺には楽しんでる精神的な余裕はねぇんだよぉ!!」

クルピンスキー「ほほう。元に戻った時に色々やってあげようかな」ニヤニヤ


何とか苦心して天井から俺(ニパ)を引き抜いた全員は、彼女をソファに寝かせることに成功した。


俺(ニパ)「」

下原「…………白目を剥いて気絶してますね。あ、血が!」

ニパ(俺)「……自分の間抜け面を見る羽目になるとはな。ジョゼ、悪いが“直して”くれないか」

ジョゼ「はい! 任せてください!」パアアアアッ


管野「しかし、俺も抵抗しろよ。ニパが混乱しちまったじゃねーか」

ニパ(俺)「いや、伯爵も一応、依頼人の一人だし、手が上げにくいっていうか、なぁ?」

クルピンスキー「一応は酷いなぁ。僕だって、皆と同じくらい君を気にかけてるんだぜ?」アハハ

管野「……反省なしか。おい、俺、次に伯爵が変な真似したらぶん殴っていいぞ。この様子だと身体能力はニパのままみたいだから死ぬこたぁねぇだろ」ハア

クルピンスキー「」

ニパ(俺)「マジか。よぉし、身体に傷は残らないが死ぬほど痛い打撃って奴をお見舞いしてやるよ」バキ、ゴキッ!

管野「流石に見てらんねーわ、ありゃあ」




――十分後



ジョゼ「はふぅ……///」

下原「ああ、ジョゼさんが大変なことに。ここは服を脱がせて……」ジュル

管野「上着だけでいいだろがッ」チョップッ!

下原「あたッ! ……はーい」チェッ


俺(ニパ)「……ごめん。俺の身体、傷付けちゃって」ズーン

ニパ(俺)「気にするな。あんなの掠り傷の内にも入らないさ(俺も同性に自分の身体を弄られるのはなぁ……)」

クルピンスキー「ははは、まあいいじゃない。治癒魔法のお陰で傷も残らず治った訳だしさ」


ニパ(俺)「そうだな。…………誰が正座解いていいっつった!! アンタはそのままだッ!!」ガアァッ!!


クルピンスキー「ひぃッ……。何も、怒鳴ることはないじゃないか」

俺(ニパ)「ヴァルトルート・クルピンスキー大尉はそのまま正座で反省しててください」白い目で

クルピンスキー「いや、あの、ニパ君? 何で急にフルネームで呼んだの?」

俺(ニパ)「ヴァルトルート・クルピンスキー大尉はそのまま正座で反省しててください」汚物を見るような目で

クルピンスキー「ひ、酷い。……俺、何とか言ってあげてよ」

ニパ(俺)「クソッ! 俺達がこんな目にあってるのも、あの腐れ使い魔の所為だッ!!」

クルピンスキー「まさかのスルーッ!?」

管野「そんだけふざけりゃ、スルーもされるわ」


俺(ニパ)「どうしよう。もし、ずっとこのままだったら……」グスッ

ニパ(俺)「安心しろ。アドラーもそこまであくどい奴じゃない。すぐ元に戻るさ」

ジョゼ「そうですよ。鷲さんも、この前のことも反省してますから。……ふぅ、大分楽になりました」ヨイショ

ニパ(俺)「……クク、お前等の顔を立てて一度は大目に見てやればこの仕打ちか。やっぱり、殺しとくべきだったなぁ」ニコァ…

俺(ニパ)「」

下原「ひッ……!」

管野「うわぁ、何だあの悪人面。中身が変わるとこうも変わるもんか」ドンビキ

クルピンスキー「心は形を作り、形は心を整えるって言うからね。僕達が歯止めしないと、俺は基本悪人で外道だし」

管野「その言葉、本当はもっと良い意味で使われる筈なんだけどな」ハア


ニパ(俺)「許さねぇ……あのクソ鷲、絶対に許さねぇ……、見つけ次第、八つ裂きにしてやる……!」ニタァ

ジョゼ「お、俺さん、駄目です! ニパさんの顔でそんな凶悪な顔をしちゃ、ビジュアル的に駄目ですから!」アワワ

俺(ニパ)「私、あんな顔できるんだ……」アハハ

クルピンスキー「ニパ君の精神パルスが反転! 精神汚染です!」

管野「……アンタは、面白がってないで少しは心配してやれよ。あと反省しろ」


下原「ほ、ほら、俺さん。見てください、私とジョゼさんで作ったアドラーさんの人形ですよ! これを見て、心を落ち着けてください!」

ニパ(俺)「……ああ、よく出来てるな。デフォルメされてて、こういうのを可愛いっていうんだろうな」

ジョゼ(お、落ち着いて、くれた……?)

下原(ニパさんの顔であの顔は、ダメ絶対!)

ニパ(俺)「ところで、ジャガーと熊の人形も作れるか?」

ジョゼ「え、ええ。出来ますけど……」

ニパ(俺)「くく、奴の腹から内臓を引きずり出して、人形詰め込んで、イーグル、ジャガー、ベアーで生きたゲッター1にしてやる……!」

管野「発想が怖ぇんだよ! そもそもゲッターってなんだ!?」

クルピンスキー「ナオちゃん、ゲッターを信じるんだッ!!」

管野「ああああああ、なんだこの空間んんんんッ!!」


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最終更新:2013年02月06日 23:29