1945年2月16日。
ベルギカのサントロンでは厚い雲がしんしんと雪を降り積もらせ、周りは銀世界となっていた。
その雪の中、とある基地の一室に集まる4人のウィッチ。彼らは...

俺「誕生日おめでとう!ハイデマリー!」

パンッ パンッ

部屋に鳴り響くクラッカーの音。カラフルな紙吹雪が部屋中にばら撒かれていく。

ハインリーケ「おめでとう!」

いつもはツンデレな大尉も、今日は素直に祝ってくれるなぁと見ていると

ハインリーケ「・・・何ジロジロ見ているんだ。祝って何が悪い...」

俺「いやぁー今日は素直だなぁって」

ハインリーケ「なっ?!...//」

ハイデマリー「その・・・祝ってくださってありがとうございます。ハインリーケさん」

ハインリーケ「...これは単なる社交辞令であってだな...」ボソボソ

俺の前で顔を赤くしながら呟くハインリーケ大尉。右でその姿を楽しそうに見るハイデマリー。
そして左には・・・

ヘルミーナ「ささ、早くケーキを食べましょう。ね?」

ケーキナイフを持った中佐の姿があった。

俺「そうですね。お腹が減りました...」

ヘルミーナ「じゃあ4等分にしましょう・・・」

彼女は手馴れた手つきで、ケーキの台座を回しながら素早く4つの切れ込みを入れていく。

俺(ハイデマリーとハインリーケの教師とも言える人。どんな人だと思っていたが・・・)

俺(見た目は出来る人、だけど意外に明るい...)

ヘルミーナ「俺くん?お皿取ってくれるかしら?」

俺「は、はい」ガタッ

ゴンッ

ハインリーケ「ーーー!!」

ハインリーケ「...いきなり足を伸ばすな!」

俺「す、すまん・・・」

ヘルミーナ「・・・炬燵って不便ねぇ。暖かいから良いけど。」

ハイデマリー「お二人とも大丈夫ですか?」

俺「うん。何も問題ないよ」

ハインリーケ「少しはこっちの事を気遣え!」

俺「まぁ・・・炬燵だから仕方ないね」

ハインリーケ「...何か上手く良い含められた気がする...」ボソボソ

ブツブツ言いながらも炬燵から足を出さない大尉。やはり気に入っているようだ。

俺(やっぱり買っておいて良かったな。ここは一気に寒くなるし)

そう思いながら皿を取り、炬燵で温まる皆に配っていく。

ヘルミーナ「よーし。切り分けられたわ」

俺「・・・あのー」

座ると歪に4等分されたケーキの姿が。半分ずつ切れば良かったのに...

ハイデマリー「私はこの小さいので...」

ヘルミーナ「私はこれね」

小さいのと普通のが各自の皿に。残るのは極端に小さい物と大きい物の二つ。

ハインリーケ「ではこの大きな・・・」

ヘルミーナ「...フトルワヨ」

ハインリーケ「!?」

俺「あっハインリーケ大尉は小さいので良いんですねー」スッ

ハインリーケ「ああっ...」

俺「あーハインリーケ大尉はこっちの方が良いんですかぁー?」フルフル

皿に盛ったケーキを目の前で振ってみる。くやしそうな顔を浮かべる大尉。

ハインリーケ「・・・わらわはこっちで良い!」ガツッ

ヘルミーナ「...ふふふっ」

ハインリーケ「美味しい...」モグモグ

俺「...どうぞ。俺の分も食べて良いですよ」

ハインリーケ「だが・・・」

俺「昨日のネウロイ撃墜の横取りのお詫び、という事で」

ハインリーケ「...ありがとう」

俺「どういたしまして」

俺の皿を受け取り食べていく大尉。脇の二人も同じく食べ始めていた。

俺「・・・さてと」

炬燵から身を乗り出し、奥に置いてあった箱を引っ張り出す。
中には大量のミカン。そこから一つ手頃な物を探して皮を剥いた。

ハイデマリー「それは・・・オレンジですか?」

俺「ミカンだよ。炬燵と一緒に送ってもらったんだけど・・・」

ヘルミーナ「オレンジより皮が薄いのね」

俺「それ以外にも違いますよ。お一つどうぞ」

一つの房を渡してみる。不思議そうに口に含む中佐。

ヘルミーナ「・・・オレンジよりも甘くて、でも酸っぱい...」

俺「どうです?」

ヘルミーナ「...美味しいわ!」

ハイデマリー「私にもお一つ、頂けませんか?」

俺「どうぞどうぞ」

ハインリーケ「わらわも...」

俺「口の周りにクリーム付いてますよ。どうぞ」

ハインリーケ「!!...///」フキフキ

恥ずかしそうにミカンをとっていく大尉。
しばらく後、部屋に鳴り響いていたフォークの音は
ミカンを剥くかすかな音に代わっていた。

ハイデマリー「・・・美味しいな」モグモグ

ハインリーケ「・・・はい」モグモグ

俺「ミカンは軽く皮を揉むと剥きやすくなりますよ」

ハイデマリー「そうなんですか?」

俺「うん。理由はよく分からないけどね」

ハイデマリー「......」モニモニ

ハインリーケ「しかしこの白いのは何とかならないのか?苦いのだが...」

俺「確かに苦いですが、その中にも栄養分があります。なるべく食べた方が良いですよ」

ハインリーケ「そうなのか・・・」

ヘルミーナ「・・・俺くん。お茶を淹れたいのだけどやかんは無いかしら?」

俺「あー・・・今綺麗に洗って乾かしている途中です。取りに行きますよ」

ヘルミーナ「なら私も行くわ。丁度歩きたいと思っていたし」

俺「構いませんけど...」

俺とヘルミーナ中佐は二人を残し、部屋を後にする。
暖房が効いている部屋と比べて外は凍えるような寒さだ。その中を静かに歩いていく。

俺「やかんは医務室です。向かいましょう」

ヘルミーナ「医務室?」

俺「殺菌をする為に薬剤を借りていたんですよ...」

宿舎から渡り廊下を通って医務室へ。外では雪が止んだものの、日差しは一向に差して来ない。

ヘルミーナ「・・・貴方なら」

俺「?」

ヘルミーナ「うちのマリーを任せても良いかもしれないわね」

外を眺めながら静かに話し始める中佐。
滑走路を眺めるその表情はどこか寂しい感じがした。

俺「・・・俺はまだまだですよ」

ヘルミーナ「貴方のマリーを思う気持ちは本物。だから何も問題無いわ」

ヘルミーナ「それに腕前も...多分ナイトウィッチの中でも1、2位を争うだけの能力はあると思うの」

俺「1、2位?」

ヘルミーナ「...俺くんはマリーと戦う事になったら勝つ事が出来るのかしら?」

俺「さぁ・・・出来ないでしょうね。色んな意味で」

そうこうしている内に医務室まで着く。中ではドクターが暖炉にあたっていた。

ドクター「俺君。それに...」

ヘルミーナ「ヘルミーナ・レント。今日はマリーのお祝いで来ました」

ドクター「レントさんですか。こんにちは」

俺「あのやかん、もう使えます?」

ドクター「良いよ。また何かあったら言ってくれ。こう見えても薬品を扱うのは得意でね...」

俺「あ、ありがとうございましたっ」

何か危ない感じがしたので一目散に部屋まで帰ることに。
部屋に戻ると...

ハイデマリー「Zzz」

ハインリーケ「...Zzzz」

ヘルミーナ「あらあら。ちょっとの間に寝てしまったわね」

俺「甘いものを食べて炬燵の中に居たらコロッと寝ちゃいますよ・・・」

やかんに水と茶葉を入れてストーブの上に。
クツクツと水が温まる音を聞きながら、また俺と中佐は炬燵に入った。

ヘルミーナ「暖かさが染み渡るわね...」

俺「ええ・・・」

俺は手を伸ばし、机に突っ伏すハイデマリーの頭をゆっくり撫でてみた。

ハイデマリー「...ンン...Zzz」

ヘルミーナ「・・・二人とも、本当によく育ってくれたわ」

中佐の方を振り向くと、彼女も同じように寝ているハインリーケ大尉の頭を撫でていた。
俺と違ってワシャワシャしているが。

ヘルミーナ「貴方も知っての通り、二人とも性格に難があって...」

ヘルミーナ「でも二人とも、ウィッチになりたいという気持ちだけは強かったわ...」

俺「マリーは誰にも頼らないように強くなる為。ハインリーケ大尉は貴族の誇りにかけて。ですか」

ヘルミーナ「今思い返しても、この子達は本当に面白い子だったわ・・・」

ハインリーケ「...ウルサイ...Zzz」

俺「人を教える立場、というのはどういう感じですか?」

ヘルミーナ「どう、と言われても・・・上手く言えないわね」

ヘルミーナ「でもいずれ俺くんにも分かる時が来るわ。教える立場になる時が来るでしょう」

俺「俺は教えるのは苦手ですよ...」

ヘルミーナ「そう?さっきは上手く教えていた気がするんだけど」

俺「あれは...

ウゥゥゥゥゥゥ!!!

『只今本部より緊急入電!ベルギカ国境付近の上空に敵ネウロイ編隊を発見の報告!』

ハインリーケ「敵襲か!?」バサッ

ハイデマリー「...近いですね。すぐに抑えないと」ムクッ

ヘルミーナ「私はここで指揮を執るわ。貴方達で迎撃して頂戴!」

「了解!!・・・」バタンッ

ヘルミーナ「任せたわよ・・・ハインリーケ。マリー。それに俺くん...」


「大丈夫ですか?...」

俺「ん...」ウトウト

ハイデマリー「もう眠いのですね」

俺「マリー・・・今は?」

ハイデマリー「今と言われましても...22時ですよ?」

俺「ここは・・・ノイエカールスラントの・・・」

俺「さっきのは5年前の昔話か...」

ハイデマリー「本当に大丈夫ですか?水持ってきますね」

俺「ああ。ありがとう・・・」

彼女から水の入ったコップを貰い、ふと窓へと目線を向ける。
窓からは綺麗な星空が見えた。あの星座はオリオン座だろうか。

俺「ここは雪、降らないんだよな」

ハイデマリー「俺さん?」

俺「・・・いや、何でもないよ」

俺「...そろそろマリーの誕生日だよね。何か欲しいものある?」

ハイデマリー「欲しいものですか?......それは...」

ハイデマリー「俺さんとの・・・子供が・・・/////」

俺「ゴホッゴホッ...!!」

ハイデマリー「俺さん!?」

俺「...うん、ちょっと驚いただけ...」

俺「・・・今日は良いんだね?」

ハイデマリー「はい・・・その・・・」

ハイデマリー「・・・今日は一杯愛してくださいね///」
最終更新:2013年02月07日 13:52