<ルチアナ私室.昼>

俺「...これはフェル隊長宛、これは赤ズボン隊宛」

フェル「サインサイン・・・」カキカキ

マルチナ「ハンコハンコ~」ペタペタ

ルチアナ「ペラペラ...」

俺達は今、赤ズボン隊宛に送られた始末書、報告書、お便りなどの事務処理を行っていた。
元々はルチアナ一人に任せっきりだったようだが、俺が手伝う姿を見て二人も手伝うようになってくれたのだ。

俺「・・・これで今日の仕事は終わりです」

マルチナ「ふぇぇ...お腹へったよ~」

フェル「4人でやるとペースも速いわね。やっぱり俺さんのお陰かしら?」

俺「皆が力を合わせた結果ですよ」

フェル「上手く言ったわね。まぁ確かにそうなのだけど...」

フェル「丁度小腹も空いてきたし、皆でお菓子なんてどう?」

ルチアナ「私は服の勉強で忙しいので...」

俺「資料をまとめたいので...」

フェル「・・・少しは休みなさいよ?じゃあ私達はこれで・・・」

マルチナ「ゴーゴー!」

楽しそうに部屋から出て行く二人。俺は今までの書類をまとめ、レポート用紙を取り出す。

ルチアナ「前のネウロイの報告書ですか?」

俺「いや、レーダーの周波数による索敵能力の違いについて書かなきゃいけないんだ」

俺「簡単に言うと...

短波長だと索敵範囲が狭く、解像度が上がる。長波長だと索敵範囲が伸び、解像度が下がる。
敵を真っ先に見つける為の対空レーダーには長波長が、敵に照準を合わせる為の射撃用レーダーには短波長が使われる・・・

俺「って感じなんだ」

ルチアナ「なるほど・・・勉強になります」

服の図を書きながら俺の話を聞いていたルチアナ。少し首を傾けて何かを考え始めた。

ルチアナ「なら広い波長のレーダーを使えれば良いんじゃないでしょうか?」

俺「・・・技術面ではそこまで進んでいない」

ルチアナ「なら、当分ナイトウィッチの職は無くならないでしょうね」

俺「後の勤め先を探す時間が増えて嬉しいよ」

ナイトウィッチの持つ探索能力は恐らく俺の世界での長距離用レーダーと同等以上の性能だろう。
この世界でそれが実現するまでは後数十年、航空機搭載型IRSTの開発も30年以上は掛かる。
それまではナイトウィッチは無くならない。それからもウィッチ自体の存在は無くならないと俺は思っている。

俺「結局女の子が戦う世界は変わらないな...」

ルチアナ「俺さん?」

俺「何でも無いさ。さっさと終わらせよう」

ルチアナ「...そうですね」

俺は最初の書き出しを書き始める・・・が思わず彼女の手元に視線が移る。
何かシャツの図面っぽいが...聞いてみることに。

俺「何を作っているんだ?」

ルチアナ「これですか?・・・これは・・・」

ルチアナ「・・・・・・俺さんは何色が好きですか?」

論点を変えられた。まぁ答えたくないのなら無理に聞く事も無い。

俺「黒か白が良いな。派手な色は嫌いだよ」

ルチアナ「ありがとうございます」

図面に書き込まれる『黒か白』の文字・・・楽しみに待っておこう。

ルチアナ「・・・さっき世界は変わらないと仰いましたよね?向こうの世界でも戦いがあったのですか?」

俺「んー・・・また長話になるよ?」

ルチアナ「構いません。私も興味がありますので」

俺「では・・・まずは世界の国名の違いから...」


俺「...で、1945年8月15日に日本の無条件降伏を受けて戦争は終わった。終わり」

俺「全体での死者は6000万人以上。これを機に世界は大きく変わっていく...という感じだ」

ルチアナ「・・・好奇心でつい聞いてしまい、申し訳ないです」

俺「謝らなくて良いよ。これも歴史の流れなんだからさ」

俺「この世界もネウロイの存在で人類存亡の危機に立たされているんだ。でも・・・」

俺「人類がこうやって皆で手を取り合って戦っているって、とっても良い事じゃないかと俺は思う」

俺「俺がこの統合戦闘航空団に入ろうと思ったのも...こうやって手を取り合っていくのが面白そうだったからなんだ」

ルチアナ「私達はこの世界を守る事が...」

俺「出来るよ。ウィッチに不可能は無いって扶桑のナイトウィッチの知り合いの上司の部下の友達の親の...」

ルチアナ「・・・ふふっ。確かにそうです。私達に不可能はありません」

暗かった顔が明るくなる。やっぱり彼女には微笑んでほしい。その方が可愛い...いや、どの表情でも可愛いけどな。

俺「ゴホッ...久しぶりに喋り過ぎて喉が痛くなったよ」

ルチアナ「分かりました。お茶にしましょう」

俺「・・・え?」

彼女は席を立つと机の下から大きな箱を取り出す。中にはポッドと粉末コーヒー、乾パン、固形燃料を使う小型コンロが入っていた。

ルチアナ「余った軍事物資から貰っておいたんです。カールスラント軍製なので味はそれなりに保証できると思います」

俺「リベリオン軍じゃなくて安心だ」

ルチアナ「レーションの悪口はそこまでです。カップはこれを...」

ルチアナ「・・・マッチ、どこでしょう...」ガサガサ

俺「大丈夫。俺が点けるよ」

固形燃料に手をかざして集中する。軽い破裂音と共に火が点いた。

ルチアナ「便利で羨ましいです・・・」

俺「君には俺の出来ない事が何でも出来るじゃないか。運動が出来て裁縫と料理、事務も得意だし...」

ルチアナ「ですが・・・」

ポッドがコンロに置かれる。火力は強い。すぐに沸くだろう。

ルチアナ「それは誰にでも出来る特技です。俺さんの持つ能力は俺さん以外には誰も出来ません」

俺「特技の特殊さは持つ人の価値を上げるだろう。だが持つ人自体の社交性や人望を上げる事には繋がらない」

ルチアナ「なら・・・俺さんには私はどう見えます?」

俺「...君は自分に自信を持って良い。男なら嫁に欲しいくらい素晴らしい人だ」

スタイルも良いよと言おうと思ったが...白けそうなので言わない事に。

ルチアナ「違うんです!・・・その・・・俺さんは私の事、どう思っているんですか?」

ここは思いっきり言う方が良いんだろうか。今まで彼女に抱いていた事を俺は素直に言う。

俺「・・・・・・ルチアナの事は好きだよ」

ルチアナ「えっ...」

俺「最初会った時から可愛い子だと思ってた。一緒に戦ったりして...もっと一緒に居たいと思ったんだ」

俺「前の夜間哨戒の誘いはそういった意味もあったんだけど・・・あの時は君がオーケーしてくれて嬉しかったよ」

俺「だから今、逆に返すよ・・・君は俺の事、どう思っている?」

思い切って言った人生初の告白。ポットから湯気が出る音以外何も聞こえない。
俺は乾パンを摘んで指で回しながら、顔を俯かせる彼女の答えを待った。

ルチアナ「...きです」

ルチアナ「俺さんの事、好きです」

その言葉を聞き思わず緊張が抜けていく。俺は乾パンを口に放り込むとカップに湯を注いだ。

俺「・・・断られるかなって身構えしていたよ」

同じく彼女のカップにも湯を注いでいく。部屋に漂うコーヒーの香り。俺を見てルチアナが急に不思議そうに見つめる。

ルチアナ「・・・本当に好きなんですよね?」

俺「・・・こうでもしないと心が色々と一杯なんだ。さぁ飲もう」

ルチアナ「私も今そんな感じです・・・頂きます」

とりあえずコーヒーで気分を静める事に。二人で一気にカップの中身を飲み干した。

俺「......流石カールスラント軍人、コーヒーも素晴らしく苦い」

ルチアナ「...ちょっとキツイですね」

俺「・・・フフフフフフフ....」

ルチアナ「どうしたんですか?」

俺「・・・いやぁ・・・告白ってこんなに怖い物なんだってね」

俺「ヘタしたら仲が気まずくなる...本当に博打だよ。怖かった」

ルチアナ「でも・・・言ってしまうと気が楽になりました」

やっぱり彼女も怖かったんだろう。俺は締めに確認の意味で問いただす。

俺「・・・本当に俺で良いのか?」

ルチアナ「・・・・・・良いんです。私は俺さんが好きなんです。それ以上の理由は有りませんし必要ないでしょう」

こうやって他人に必要とされる...俺が今まで求めていたものをやっと手に入れられたんだ。
思わず涙が出てきそうになるのを俺は笑顔で誤魔化し、はっきりと言った。

俺「ありがとう。そして好きだよ。ルチアナ」

俺は机から乗り出し、彼女の唇へとキスをする。彼女は何も抵抗せずに俺を受け入れてくれた。

ルチアナ「んっ......苦いですね...」

俺「・・・一応聞くけど始めて?」

ルチアナ「はい・・・これがファーストキスです」

俺「もう一度、良い?」

ルチアナ「ええ、どうぞ...」

もう一度乗り出しキスをする。間近に見える真っ赤に染まったルチアナの顔。

俺「...やっぱり苦いね。でも・・・悪くはない」

乗り出したまま彼女の頭に手を置き、ゆっくりと撫でていく。
何度か撫でていると彼女が顔を上げてきた。真っ赤なままだ。

ルチアナ「その...そろそろ時間では無いでしょうか」

ふと窓の方を見る。赤く染まった夕日が視線に入ると同時に頬に柔らかい感触が。

ルチアナ「っ......後もう一回で、おあいこです」

俺「....そうだな。君の気が済むまでやってくれ」

最初とは別の頬にキス。ちょっと恥ずかしいんだろう。どちらにせよ嬉しいことには変わりない。

ルチアナ「・・・行きましょう。二人で」

俺「一緒にね」

レポートは終わってない。だが書く時間はいくらでもあるだろう。
俺達は一緒に手を繋ぎ、二人きりの夜間哨戒へと赴くのであった...
最終更新:2013年02月07日 13:55