『1944年8月20日 オレ軍曹の手記』

いやいや、しょっぴかれた時はどうなるかとも思ったが、あのオッサンめ、

無理矢理連れてきて何を言い出すのかと思えば、「私の部下となれ」だと。

いきなり過ぎて笑っちまったよ。

無論、鼻で笑って帰ろうとしたんだが、

「断ればテムズ川に身元不明の遺体が浮かぶ事になる」

だってよ。

恫喝だろ、常識的に考えて。

まあ、仕方無しに話を聞いてみた所、ウォーロック計画ってのがオッサンの目的で、

完成の暁にはウィッチなんぞ戦場から必要無くなるらしい。

そんな兵器が出来れば、戦場で死ぬ奴も減るのだろうか。


悔しい話だが、少し惹かれちまったのは事実だ。

数ヵ月後には試作機の完成も控えているという。

興味も湧いたし、今暫く軍に身を置く事とした。

オレの任務は、配属先にいる反対派の指揮官の監視(既にオッサンの動きを調べられているフシがあるそうだ)。

要するに内偵だ。

回りくどい任務ってのはどうも好かないが、どの道選択肢は無いから仕方ない。

経歴は偽造、装備も向こうが揃えるらしい。

配属先は最前線の空軍基地。

……そういえば、俺に飛行脚の適正ってあったっけか。終ぞ確かめる機会なんて無かったが……。

ま、考えるのは上の仕事で、実働は下っ端だ。俺が気にすることじゃないか。




既に目的を無くした身だ。せいぜい、走狗らしく振舞うとしますかね。


『1944年8月21日 ブリタニアのとあるゴシップ紙』

「留置所内で謎の失踪!?」

同月20日の早朝、留置所内で拘束中の、とある男性が失踪したという情報を入手した。当記事はその第1報である。

警察は取材に対し、

「留置所内で失踪など有り得ない話であるし、そういった人物が収容されていた事実すら無い」

と否定するが、

「(失踪したとされる人物に)似た風貌の男性が警察に連行されるのを2~3日前に見た」

という複数の証言もあり、隠蔽ではないかとの声も挙がっている。

また、「黒塗りの車に気を失った男性が乗せられるのを見た」という人物もおり、更に上位の

大規模な組織による関与が疑われ――


『1944年9月1日 戦闘記録』

本日午前11時、基地の東150km地点にネウロイの襲撃を確認。

ヴィルケ中佐、リトヴャク中尉、ユーティライネン少尉、ビショップ軍曹、宮藤軍曹を本部待機とし、残る6人を迎撃に。

脚は遅いが異常とも言える程装甲が厚い、との報告を受け、リトヴャク中尉とユーティライネン少尉両名を応援として向かわせた。

応援と先発隊が合流後、新たなネウロイの反応を確認。方角は基地南西、距離100km。

移動速度から先発隊が迎撃に当たっているネウロイと同タイプと判断。残る戦力で足止めに向かう。

先発隊からの撃墜の報告も無い以上、現状の戦力で対応するしかなかったが、撃墜、足止めの両方法においても

戦力不足は明らかであり、苦戦する。

しかしながら、ブリタニア本国からの応援により之の撃墜に成功。残る一機も撃墜の報告を受ける。

なお、当迎撃においての損害は軽微であり、今後の作戦行動に支障をきたすものではない。


『1944年9月1日 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐の手記』

本日、ブリタニアから新たなウィッチが派遣された。――しかも男性。

銀色の、見たこともない形状のストライカー(まるでバイクのような)に乗った彼は加勢する旨を告げ、単身で突撃を掛けた。

彼の回避機動から全くの新兵で無い事は推測できた。……が、戦法は無茶としか言い様がない。

ストライカーを乗り捨ててまで(勿論、一撃与えた後に回収していたが)肉弾戦を挑むのは、見ているこちらの肝が冷えた。

彼の槍を使った技は、自らの魔力をネウロイの内部で炸裂させているようで、

美緒のような刀による切断とはまた違った系統と思われる。

そして、あんな派手な戦法を取るウィッチならば、少しは名が知れていもおかしくはない。

――だが、彼の経歴といえば全くの平凡。

激戦区に配置されていた訳でも、後方で安穏としていた訳でもない、平均をやや上回る程度のスコア。

そんな兵士が、命を投げ出すような戦法を取れるだろうか? ……どうも腑に落ちない。

そもそも、最近兵員の補充を行ったこの部隊に対して更に兵員を追加する必要性があるのだろうか。



予てから進めている調査に、彼の素性についても加える必要がありそうだ。


『1944年9月1日 オレ軍曹の手記』

配属初日にネウロイの襲撃とは、オレもツイてないね。

飛行型の相手は初めてだったが、皮が厚いだけの鈍亀。アレじゃ陸戦型と大して変わらんな。

『ササッと近づいて槍刺して流し込んだ魔力を炸裂させるだけの簡単なお仕事です』ってな感じで、半分程抉り取ってやった。

コアの破壊までは至らなかったが、流石はエース部隊。乱入者の俺に然程驚きもせずにコアを撃ち抜いてくれた。

退屈極まりない相手だったが、サンドバッグとしちゃ上等だったか。


ああ、勿論基地の連中には警戒されまくりだった。 特に堅物っぽいカールスラントの嬢ちゃんは露骨に不快感示してたし。

それこそ、迂闊に話しかけようもんなら、こう、ゴキャっとされそうなくらい。おっかねえ嬢ちゃんだぜ、全く。


……さて、久方ぶりの実戦で分かったことを2つ。シールドと攻撃だ。

流石に22にもなればシールドなんぞ紙同然だが、魔力乗せた槍で軌道を逸らせば何とかなるからまだ良い。

問題は攻撃だ。

今回はネウロイの上に飛び乗って直接槍を叩き込んでやった、――要は陸の時と同じだったんだが、

あれは相手が単機だったから出来たようなもんだし、あんな曲芸が今後も通用するとも限らない。

ストライカーの再回収だって、装甲服に内蔵された無線でこっちに誘導してるだけで、誘導中はストライカー、俺共々無防備。

相手が編隊を組んでいたら、そこを狙われてお終い。


空中に足場を作れる固有魔法とかあれば話は別なんだがなぁ……。

肉弾戦は相手が最後の1機になるまで温存したほうが良さそうだ。


それにしても、ブリタニアの技術者ってのは実際に使った時の事は考えないのか?

「途中で乗り捨てるかもしれないから誘導装置つけろ」とか無理言った俺も俺だが、ポン付の加減速の調整すら出来ない

誘導装置じゃ『自分のストライカーに轢かれる』なんてお笑い草もあり得るわけで、

これが死因なんぞになったりしたら死んでも死にきれん。



あーあ、どっかに腕の良い技術者でもいないもんかね、ホント。切実に。
最終更新:2013年02月07日 14:11