俺「……見えた!」

船体を傾ける赤城の上空。そこでウォーロックと交戦するウィッチの姿を捉える。

――まさか……、坂本か!?

坂本が車椅子にストライカーを仕込んでいるのには気付いていた。

あの時は満足に体も動かせない奴が履いたところで何が出来る訳でもないと思い、放置していた。

焦る。半病人にウォーロックは荷が重すぎる。

……しかし、どうも機動が坂本のそれと異なる。

確かに動きは良い。だが、まだ荒削りの機動。

あまつさえ、ソイツは動きを停めたウォーロックに無防備にも近づいていく始末。

そこで、ようやく射程圏内。

俺「バカ野郎!!戦闘中に呆けてんじゃねえ!!」

ストライカーに搭載された機銃を掃射しつつ、サイドバッグから取り出したパンツァーファウストを発射。

轟音。

爆煙がウォーロックを包んでいる内に両者の間に突入、ウィッチを脇に抱えるようにして掻っ攫う。

芳佳「ひゃあ!?」

俺「バカ野郎テメェ死にてえのか!――ってなんだよ、坂本じゃなくて嬢ちゃんか」

坂本かと思ったウィッチは新人の嬢ちゃんだった。

芳佳「へ、え!?お、オレさん!?」

ウォーロックから少し距離をとった所で嬢ちゃんを解放。

芳佳「え?あれ、オレさんってあのマロニーって人の仲間で私たちを……」

俺「済まねえがその話は後だ。――まだ終わってねえ」

爆煙が晴れる。

――クソ、確かに直撃だったってのに。

ウォーロックに大した損傷は見受けられないず、未だ健在。

俺「嬢ちゃんは赤城から坂本とペリ公回収して離脱しろ。こいつはオレが仕留める」

芳佳「そんな!一人でなんて無茶です!私も――!」

俺「今まで一人でアイツと闘ってたオメエがいう台詞かっての。……それに、残弾なんか殆どねえだろう?」

芳佳「え……?あ、本当だ……」

苦笑する。その辺はまだまだ新兵か。

俺「もうじき赤城は沈む。援護なら甲板の奴らの退艦の手伝いと補給をしてからにしてくれ」

芳佳「でも、オレさんだけじゃ……!」

俺「……察してくれよ。アレは俺の責任でもあるんだ。ケジメくらい取らせてくれ」

芳佳「あ……」

嬢ちゃんは暫く逡巡していたが、

芳佳「分かりました。でも無理はしないでください、すぐに戻ります!」

俺「善処するよ」

嬢ちゃんが赤城へと向かう。

それを見届けると、静止したままのウォーロックと対峙。

俺「よお、待たせて悪かったな」

律儀にも待っていてくれたのだろうか。だとしたら、相当空気の読める(元)兵器だ。

――それにしても、まさか期待の新兵器とガチることになるなんてな。

今にして思えば、始まりからして胡散臭いオッサンの戯言を間に受けたのが悪かった。

――そして、皆を信じ切れずに己の立場を明かさなかった事か。

本当、自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。

俺「――さぁて、ケジメだなんだと聞こえはいいが、要は俺の八つ当たりだ。犬に噛まれたとでも思ってくれや」

俺「だがまぁ、テメェがネウロイになっちまった以上、落とされても文句はねえだろ?」

だから、

俺「ちょいと付き合ってもらうぜ!魔術師さんよォ!!」

吶喊する。




空に、白い尾を引く2つの姿がある。

1つは銀、もう1つは黒を纏っている。

俺「チッ……、やっぱ素の性能は劣るか……!」

銀色、バイクのような形をしたソレを駆る男が毒づく。

対するもう一方、黒色は、ただただ、己の推力と武装を持って敵を排除しようとする。

速度は黒が圧倒的に上回っている。

銀は追いつくことすらままならず、幾度も迫る黒の迎撃を繰り返す。

武装面でもその差は顕著だ。

あらゆる方向にビームをばら撒く一方に対し、もう一方は前方向への機銃のみ。

機銃はマトモに当たらず、ビームは魔力を乗せた槍で辛うじて防ぐ有様。

状況はどう考えても黒――ウォーロックが優勢。

だというのに、銀――ストライカーユニットを駆る男の顔には薄い笑みが浮かぶ。

俺「……確かに強力だ。数が揃ってマトモに動けば立派に主戦力だ」

それでも、

俺「だがまぁ、対抗する術が無い訳じゃねえ」

男は右手の槍を一度回して、

俺「さあて、攻守交替と行こうか……!」




――奴に付け入る部分は2つ。

それは、高出力のビームを発射する時は必ず人型に変形する事。そして――、

――そのビームには溜めがあるって事だ……!

速度差があり過ぎる為か、オーバーシュートさせるのは容易だ。

そして、小刻みな旋回動作を繰り返すことで、常にウォーロックに対して相対する位置を取る。

これで、大半の攻撃は槍で対応できる。

たまに撃ってくる拡散ビームが厄介だが、これも対処できない訳ではない。

故に相手は時折、魔力を乗せた槍でも軌道を逸らすのが不可能な、高出力のビームを放ってくる。

そこを狙う。

状況の推移は今のところ予想通り。

そろそろ来るであろうその時のために、サイドバッグから『取っておき』の槍を引き抜く。

――来たな……!

ウォーロックが人型に変形。そのままビームのチャージに掛かる。

アクセル全開。最大速度でウォーロックに突撃する。

今までと違って俺が回避する素振りを見せない為か、ウォーロックも発射をギリギリまで遅らせて必中を狙う。

最初で最後のワンチャンス。失敗は死と同義である。

ストライカーのギアをトップに叩き込み、ニーグリップを解いてシートの上に立つ。

立ち乗りの状態だ。

――まだだ、まだ撃ってくれるなよ……。

目標とする距離まであと数10m。

その間にも、ウォーロックが溜める光球は、その大きさを増していく。

ウォーロックとの距離が目標に達し、同時にウォーロックがビームを発射。

――今!

俺「おおおおおおおおおおおおおッ!!」

間髪入れずにストライカーを踏み台にして跳躍する。手には『取っておき』と普通の仕様の2本の槍が握られている。

眼下をビームが通り抜け、その光景に思わず怖気が立つ。

そして気付く。

――あれ?今のにストライカー巻き込まれてたらウォーロック落としても落下死じゃね?

蹴り出したときの反動でビームの下に逸れてることを願おう。

ウォーロックはまだビームを撃ち切っていない。その隙に、頭部兼胴体目指してトップアタック。

そこに、ウォーロックの防御障壁が展開。この先の進路に被るものだ。

俺「邪魔だ!」

両の手に携えた2本の槍の内、普通仕様に魔力を出来るだけ込めて投擲。

閃光の如く放たれたそれは障壁を貫くが、その先にある本体を穿つには至らない。

元より、先に投擲した槍が致命打になるとは思っていない。

だからこその2本目だ。

落下軌道の先に穂先を向け、運動エネルギーを貫徹力に。

目指すは肩と思しき部分の関節部。

耳障りな、金属同士の擦過音。

うまく突き刺さった槍をそのままに、ウォーロックの背後へと再跳躍。

最後の武器を何をする訳でもなく放棄し、無手である筈の手には細いピンが数本。

俺「芋潰しとパイナップルの差し入れだ!たらふく喰らっとけ!」

突き刺さった槍、その穂の近くは缶詰程度の大きさの円筒と果物に似た鉄塊が幾つも括り付けられており――、

爆発した。

ウォーロックはあっという間に火に包まれ、海中へと落下する。

何とか無事であったストライカーユニットを遠隔装置で誘導、再搭乗し、それを眺める。

俺「……流石に諸々10個も重ねりゃあ派手だな、オイ」

ともあれ、魔力を消耗した時の代替武器を作っておいて正解だった。

ビームを弾くのにそれなりに魔力を使っていたし、防御障壁も破らなければいけない。

あれが無かったら、海に沈んでいたのは自分の方だろう。

――いや、ビーム相手じゃ骨も残らねえか。

そんな下らない事を考えつつ、海上を見下ろす。

俺「――赤城も沈んだか」

流石に、ああもビームを食らってはダメコンも厳しかったのだろう。

と、基地の方角から見覚えのある機影。

……さて、どう説明したものか。




バルクホルン「……それで、その話を信じろと」

俺「信じてくれ、なんて言わん。今まで騙してたんだ、疑って掛かるのが自然さ」

肩をすくめる。

俺「とはいえ、ウォーロックは無事に落とせたんでな。拘束なり銃殺なり何でも好きに……」

そこで、眼下の異変に気づく。

ミーナ「……何れの処分が下るにしても、調書を取ってからです。基地まで同行を――」

俺「――クソ、あれじゃ足りなかったってのか」

ミーナ「え?」

坂本「それは――」

海面が泡立つ。まるで、何かデカイものが浮上するように。

エイラ「……まだ終わりじゃないみたいダナ」

エイラが引いたタロットは死神の正位置。

――意味は終末、破滅、終局、決着、死の予兆。

そして、ソレが姿を現した。

全長261.2m、全幅29.0m。

赤城を丸ごと乗っ取ったウォーロックは、その巨体を苦も無く上昇させていく。

坂本「な、なんだコレは!」

ミーナ「ウォーロックが赤城と融合している……!」

複合魔法……とでも言うのだろうか。坂本と中佐が固有魔法を組み合わせ、ソレを偵察する。

ミーナ「これでは手の出し様が無いわね……」

俺「はぁ……、最後の最後まで詰めが甘いとかどうしようもねぇな、俺」

機銃の残弾を確認。残り50発程度。

バルクホルン「おい貴様、何をするつもりだ!」

俺「何って……、落とすに決まってんだろ」

芳佳「そんな無茶です!」

残りの武装は槍が1本に槍の穂兼大型ナイフ3本、手榴弾が5個にパンツァーファウストが1本。

俺「無茶だろうが何だろうが俺は行くぜ。ここまで来たら最後までやらねーと」

俺「……別に付き合わせるつもりはねぇよ。これは俺の個人的なツケだからな」

残った武装の火力を考慮すると、外からの破壊は難しい。となれば――、

俺「坂本。アンタ赤城の内部構造知ってるよな?」

坂本「ああ」

俺「アレに乗り込むから、その魔眼でちょいと誘導頼めねぇかな」

ミーナ「待ちなさい!」

中佐の怒声。

ミーナ「勝手な行動は許しません。独断専行なんて以ての外です」

俺「オイオイ、俺は強襲部隊ウォーロックの隊員で、もうウィッチーズじゃあ……」

ミーナ「私は貴方の離隊を許可した覚えはありませんし、あの部隊はブリタニア空軍の管轄で連合軍とは関係ありません」

……って事は。

ミーナ「貴方は書類上はまだウィッチーズの隊員であり、私の指示に従う義務があります。はい、論破」

あるぇー?

ミーナ「――これより作戦を説明します。目標のコアは赤城の機関室の位置に存在、また、元が軍艦というだけあり
     外部からこれを撃墜するのは困難です」

バルクホルン「となると、やはり内部からか」

ミーナ「ええ。隊を内部突入班と、それを援護する班の2つに分けます」

坂本「赤城の構造は熟知している。私が――」

俺「却下だ」

ミーナ「駄目よ」

2人揃って反対する。

俺「折角拾った命なんだから少しは大事に扱え馬鹿野郎。遺される奴の気持ちくらい考えろっての」

坂本「む……」

芳佳「はい!私が行きます!」

リーネ「わ、私も」

ペリーヌ「赤城の構造なら私も多少は……」

俺「そんなに要らん。ペリ公は坂本の護衛でもしててくれ」

ペリーヌ「だ、誰がペリ公ですか!変な呼び方をしないで下さいまし!」

ぷんすかと怒るペリ公に坂本が言う。

坂本「ペリーヌ、すまんが頼む」

ペリーヌ「は、はい!少佐の為でしたら喜んで!」

……ふと、ペリーヌと坂本は使いよう、という言葉が浮かんだ。

ミーナ「では、突入班は俺さん、宮藤さん、リーネさんの3名。それ以外の隊員は彼らの援護とします」

了解。

各々が赤城へと向かい、攻撃を開始する。

芳佳「そういえばオレさん、インカムは……」

俺「――――あ」

ウォーロックをぶちのめすのに頭が一杯ですっかり忘れていた。

俺「……まぁ、どうにかなるだろ。嬢ちゃん方2人がいるから指示は受けられるし」

シャーリー「おいオレ」

俺「あ?――っと」

いつの間にか近くに来ていたシャーリーから、インカムを投げ渡される。

シャーリー「私の予備。後でちゃんと返せよ」

俺「お、おう……」

それだけ言って、シャーリーは行ってしまう。

ルッキーニ「ねーねーシャーリー、あれだけでいいのー?」

シャーリー「いいんだよ。ほら行くぞルッキーニ」

ルッキーニ「わわっ、待ってよシャーリー!」

リーネ「……オレさん。大尉にも何かしたんですね」

芳佳「え!?そうなんですか!?」

ミーナ「……俺さん。後でお話が」

シャーリー『中佐。それが終わったらソイツ貸してくれ。私も色々と言いたい事がある』

エイラ『修羅場ダナ』

エーリカ『祭りの予感!』

バルクホルン『おい、作戦行動中だぞ。私語は慎め』

…………。

アクセルON。

芳佳『あ、逃げた!』

――ちげーし逃げてねーし。戦術的撤退だし。

ちびっ子がぶち抜いた艦首。そこから内部へと侵入する。

芳佳『ま、待って下さいよー!』

嬢ちゃん方も遅れてついてくる。

俺「さて……」

ネウロイの内部に侵入するなど初めてだ。

俺「鬼が出るか蛇が出るか……」

隔壁をぶち抜く。



――――ビームが出た。


俺「――やっぱ中まで侵食されてやがったか!」

槍でビームを弾きつつ、機銃で発射口を潰す。

俺「うへー、手荒い歓迎だこと」

後ろから付いてきていた嬢ちゃん方は大丈夫だろうか。振り返って様子をみる。

芳佳「ご、ごめんなさーい……」

俺「おいおい冗談じゃねえぞ……」

2人はビームを回避した拍子に、武装を灼かれてしまっていた。

俺「……まあいいや。遅れないようにしっかり付いて来いよ?」

リーネ「は、はい」

武装を無くした2人を後ろに、奥を目指す。

後ろから撃たれるのを避ける為、ビームの発射口潰しは丁寧に。

隔壁が降りている場合は手持ちの手榴弾で爆破。

4枚目の隔壁を破った辺りだろうか。

俺「ストップ」

芳佳「え?」

リーネ「……どうかしたんですか?」

眼前には隔壁が開きっぱなしの通路。

その奥には最後のと思しき分厚い隔壁が見える。

俺「……今まで隔壁は全部閉まってたよな。なのにここだけ空いてて――」

通路の壁面を指す。

俺「しかもビームが飛んで来る気配もない。……胡散臭すぎる」

芳佳「それは……そうですけど」

リーネ「罠なんでしょうか?」

十中八九罠だろう。だが、

俺「……悩んでても仕方ないわな。俺が先行するから、2人は合図があったら来てくれ」

2人を通路の前に残し、前進。

いざという時にはストライカーを盾に出来るように、体を少し浮かせておく。

――何もねえな……。

時折、フェイントでアクセルを吹かしたりもするが、特に異常は見られない。

――考えすぎだったか?

通路の3分の2を通過。

異常なし。

最後の隔壁までおよそ10m。

ストライカーを停止させ、後ろの二人に向かって叫ぶ。

俺「おーい嬢ちゃん方、大丈夫そうだ。来ても――」

いいぞ、という言葉は最後まで言えなかった。

俺「――ッ!」

突如として轟音が響き、2人の姿を視認出来なくなる。

――壁が……!?

同時、前後左右の壁面から多数のビーム口。

俺「ああもう面倒臭えな!」

ストライカーを前方、隔壁側へ蹴り飛ばし、自身は後方へ跳躍。

芳佳『オレさん!どうしたんですか!?』

俺「うっせえちょっと黙ってろ!」

その着地点目がけて、ビームが殺到する。――その数、6本。

俺「ロートル殺すにはちょっと派手じゃねえの……っとぉ!」

腰のポーチから手榴弾を取り出し投擲。

狙うは前方、左右壁面に対称に位置するビーム口の間。

同時、槍の石突きで壁を打撃。

結果として落下軌道はずれ、ビームの交点の横に着地。

手榴弾が起爆。爆圧が2基のビーム口を潰す。

――残り4基!

立ち上がりざま、左足のナイフシースから抜いたナイフを前方にある最後の1基目がけてぶん投げる。

魔力を載せてはいるが煙で視界が悪いため、当たれば御の字という攻撃。

然して、背後にある無事な3基のビーム口が2射目を放っても、その1基は沈黙したまま。

どうやら、運良く当たってくれたらしい。

――おっしゃ!あと3基!

ビームを回避しつつ、距離を詰める。

右壁面にある一番近いビーム口を、すれ違い様に一閃。

そこへ、左斜め前方と、更にその先の天井にあるビーム口が3射目を発射。

――引き戻して再刺突は……間に合わねえな。

左足の爪先を内に捻り込むようにして一歩。

すると左肩が前に、右肩は後ろへと下がる。

そのまま右足を浮かせると、体は自然と反時計回りに旋回する。

ビームを躱した瞬間、なびいた髪が少々焼かれ、焦げ臭い。

旋回が終わると体はビーム口に対し背を向ける形となり、右手の槍は穂を前方に、石突きを背後に指す状態。

故に、石突きで刺突する。

先が鈍い為、穂を叩き込む程の威力は得られないが、速度は十分。

これで5基目。

――残り1基!

4射目を地を這うようにして回避、体を反転させて仕上げに掛かる。

5射目を首を傾けて回避。またも髪の焦げる臭い。

――いい加減縛るか切るか位はした方がいいかねぇ……。

直上の発射口向けて槍を突き出したのと、6射目は同時。

俺「ぜえええああああああああああッ!」

魔力を付与された切っ先は、発射されたビームごと発射口を穿ち、沈黙させる。

通路に静寂が戻る。

俺「……はぁ……、疲れる……」

芳佳『オレさん!オレさん!大丈夫ですか!?応答してください!』

――……そういえば分断されてたな。俺。

俺「聞こえてるよ。聞こえてるからちったあ落ち着け」

リーネ『あの、オレさんの所に行こうとしたら急にハッチが閉じてしまって……』

俺「おう、こっちでも確認した。……って、こりゃまた厄介な」

扉自体の厚さはそうではないが、

――なんつーか、密度が高いな。

破る難易度としては、背後にある最終隔壁と同等くらいか。

俺「……嬢ちゃん方、退路はどうなってる」

芳佳『後ろの扉は破れたままです。この扉だけが――』

俺「オーケー分かった。嬢ちゃんたちはここで退け」

芳佳『そんな!駄目です!』

俺「武装も何もねえくせに何言ってやがる。退路塞がれて手詰まりになる前にさっさと逃げろって」

リーネ『オレさんはどうするんですか?』

俺「最後の隔壁破ってコアを破壊する。それさえ壊せば退路は確保しなくてもいいからな」

俺「――まあ、何かあったら要請なり何なりするから心配すんな」

芳佳『……約束ですよ?』

俺「おう、約束だ」

通信を終え、最終隔壁の元へ。

俺「……あちゃー」

襲撃時に蹴り飛ばしたストライカー。

流れ弾にでも当たったのだろうか、後ろ4分の1が消し飛び、左のハンドルも途中から消失している。

幸い、エンジンに損傷はないようだが……。

俺「ここまで逝くと自走は無理だな……」

ストライカーを隔壁から少し離れた所まで移動させ、サイドバックから取り出したのはパンツァーファウスト。

俺「……これが最後の一本か」

魔力もそう残ってはいない。コアを破壊できる槍を放てるのは、恐らくあと一度だけ。

俺「破れてくれよ……?」

願いつつ、発射。

弾頭は狙いを過たず隔壁に命中。隔壁は奥、機関室側へと倒れていく。

――後はコアを破壊して終わりか。

機関室へと足を踏み入れる。

――へぇ、結構広いな。

一辺20m程だろうか。奥行はもっとあるかもしれない。

部屋の一番奥には3、4mはあろうかというコアが鎮座しており、ゆっくりと回転している。

そして――、

振動。今までとは比べ物にならない程、大きい。

俺「オーイ、何かスゲエ揺れたけど何かあったのかー?」

坂本『奴が進路を変えたんだ!このままでは市街地に被害が……!』

俺「市街地到達までの時間は」

ミーナ『……凡そ20分よ』

俺「了解だ。それまでにケリを付ける」

通信を切り、

俺「……だ、そうだぜ?黒いの」

コアの前に立つ黒い人型に言う。

俺「最近のネウロイは人の真似すんのが流行ってんのか?……ったく」

――しかも、よりにもよって俺の真似か。

背丈、体格はほぼ同じ。右の手には黒い槍が握られている。

俺「まあ、倒す事に変わりはねえ。――さっさと倒して、後ろのコアも破壊させてもらうぜ」

数度手の中で槍を回し、構える。

柄の後方一杯を握った右手を肩の高さに、切っ先は相手の鳩尾へ。

やや崩した上段の構え。

対するネウロイも、同様の構え。

――構えまで同じか。……イライラするな。

ここに到るまでの道中の動きをトレースしているのだろうか。

――何にせよ、急がねえと。

相手までの距離は約4m。ステップ1歩で射程に入る距離だ。

俺「――!」

だから、体を跳ね飛ばすようにして行った。

小細工は無し。一撃で仕留めに行く。

十分な加速と速度を持った切っ先が、ネウロイの胸部に向かう。

――貰った……!

相手の両足は地にべったりと付いたまま。

今からの回避運動は間に合わず、

――生半可な受けじゃ防げねえ!

ネウロイまで2m。

ネウロイが持つ槍の穂先が沈み――、

――……所詮は猿真似か。体捌きからしてなってねえ。

尋常ならざる速度で跳ね上がった穂がこちらの切っ先に触れ――、

――ハ、上から斜め下への突き込みだ。切っ先を跳ね上げようったってそう簡単には――。



2度の轟音と共に、意識が飛んだ。
最終更新:2013年02月07日 14:12