前回までのあらすじ!
アレッシアさんと温泉旅行に出かける事になったお父さん。犬扱いされたり、ババアにいじられたりしながらも、2人はなんとか目的地のポンペイへと到着する。
一方その頃、501のみんなと私はチェスに興じていた。
アンナ「……身の程はわきまえることだね」
父「大きなお世話だッ!!」
――駅前――
アレッシア「ふー……着きましたね」
父「ええ。えーっと、まずはタクシーで……」
アレッシア「結構遠いんでしたっけ?」
父「ええ、山の近くらしいです。でも遠いって言っても、車で10分もかかりはしませんよ」
アレッシア「へえ……あ、お父さん、あそこ。タクシー乗り場ですよ」
父「お、丁度いい。じゃ、行きましょうか。アレッシアさん」
アレッシア「ふふ、分かりました」
運転手「ふ~ん……ふ~ん……ふんふ~ん……♪」
父「すまない」
運転手「ん?」
アレッシア「この住所の温泉まで、お願いできますか?」
運転手「えーっと……ああ、あの温泉ね。分かったよ。乗りな」
アレッシア「ありがとうございます」
運転手「でもよう、あの温泉、たしかペットは……」
父「……もういちいち指摘するのも疲れた」
運転手「…………え?」
アレッシア「まあ、普通の人はそうですから……あ、じゃあお願いします、運転手さん。ほら、お父さん、早く」
運転手「え? お父…………え?」
父「……どうしたんだ、早く出してくれ」
運転手「えっあっハイ」ブロロロロ…
運転手(……疲れてんのかな。ま、いいや)
――ローマ市内――
ゲルト「なんだ、まだ2時間しか経っていないじゃないか。クリスは長い入院生活を娯楽もなくただただ寂しく過ごしているんだぞ。
そんな妹に与えられるだけの娯楽を与えてやることが、姉の務めだとは思わないのか?」
整備兵1「は、はぁ……すみません、俺1人っ子なんで……」
ゲルト「まあ待て。ええと、絵本だろ、ジグゾーパズルに積み木、あとミニカーに着せ替え人形……そうだ、扶桑人形も買って行こう。
見ろ、この"日具摩"だの"璃母瑠哲句"だのいう扶桑人形、自由自在にポーズが取れるんだぞ!」キラキラ
整備兵1(……もし妹さんが不良になったりしたら、立ち直れないな、こりゃ……)
――ポンペイ、温泉街入り口――
アレッシア「それじゃ、ありがとうございました」
運転手「ああ。いい旅を。ワン――ああいや、親父さんもね」
父「ああ。ありがとう」
ブロロロロ…
アレッシア「えーっと、この山道を登ったところですよね」
父「ええ。まあ、そんなにキツイ道でもなさそうだ……よかったですよ。
あ、アレッシアさん。そろそろお昼ですけど、お腹はまだ……」
アレッシア「え? ……あ、そう言えば少し……」
父「なら、どっかで食べていきましょう。……あ! ほら、あそこのラーメン屋! 昼前だから2人分ぐらいは……」
アレッシア「えっ、で、でも……何だか……悪いですよ」
父「悪い? 悪いって……何がです?」
アレッシア「だ、だって……お父さんは」
父「――! あっ……」
アレッシア「…………」
父「…………」
アレッシア「……その、私、まだ大丈夫ですよ。旅館に着いてからでも十分……」
父「す、すみません……」
アレッシア「もう……謝らないでください。なんだか……」
父「は、はい……」
タッタッタッタ…
父「ん?」
少年「おーい、コローっ!」
犬「!」タッタッタッタ
少年「ハハハ……よーし、次はあっちだ! それっ」ポーイ
犬「!!」バッ!
アレッシア「……可愛いですね」
父「……ええ。全く」
アレッシア「……昔ね」
父「え?」
アレッシア「犬飼ってた事があるんです。白くって、フワフワで……私が大人になる前に、死んじゃったけど」
父「……なんて犬だったんです?」
アレッシア「……マルコです。マルコ・ポーロの、マルコ」
父「……いい名前だ」
アレッシア「ふふ……ありがとうございます」
父(……犬、か……)
――501基地・食堂――
坂本「」プスプス…
ペリーヌ「そんな馬鹿なわたくしがそんな馬鹿な」ブツブツ
宮藤「え、えーと、ここに打ったらこうだから……こ、ここ?」カチッ
≪チェックメイト≫カリリリッ
宮藤「あーっ! 負けちゃった!」
シャーリー「凄いな……これでもうみんな負かしちゃったよ」
私「眠いからってやってくれなかった子もいたけど……それでもまあ、これでほぼ全員かしらね」
サーニャ「う~ん……」スースー
エーリカ「くかーっ……」グーグー
シャーリー「えーっと、後は……」
ミーナ「あら? どうしたの、みんなして」
私「あ、中佐」
ミーナ「あら……チェス? 懐かしいわね。これでも昔、結構やってたのよ」
私「へえ……それじゃあ、どうですか? 一局」
≪さぁ、来い!≫ウィーンカリカリッ
――温泉街――
アレッシア「えーっと……ここで、いいんですよね?」
父「ええ、そのはずですが……」
<ロマーニャの秘湯・ポンペイ草津温泉>
父(……まさか扶桑風の旅館とはな)
アレッシア「すごいですね……これ、扶桑のホテルなんでしょう? ほら、あのクラゲが逆さになったみたいなマーク」
父「え、ええ。ま、そんなもんです。……多分」
スタスタスタ…
女将「お待ちしておりました。お2人でご予約の、コルチ様ですね?」
アレッシア「はい。でも、すごいんですね……ここ。私、てっきりパルテノン神殿みたいな感じかと思ってたんですけど」
女将「ほほほ、がっかりなされましたでしょう?」
アレッシア「いえ、そんな。質素で素敵ですわ、とっても」
女将「これはこれは、ありがとうございます。ウチの人、扶桑かぶれでねぇ、ここのテーマも『扶桑の温泉街の再現』なんですよ」
父「扶桑の『志摩ヒスパニア村』みたいなもんか」
アレッシア「? なんなんですか、それ?」
父「扶桑なのにヒスパニアっていう、妙ちくりんなテーマパークらしいですよ」
女将「ほほほ……」
父「……あれ?」
アレッシア「どうかしましたか、お父さん?」
父「いえ……今まで、俺が喋った途端に誰も彼もが顔色を変えましたけど……この女将さん、眉ひとつ動かしてません」
アレッシア「まぁ……プロ精神の旺盛な方なのね」
女将「」
父「……あ、違う! これ立ったまんま気絶してるんだ!」
アレッシア「えっ!?」
――旅館内・ロビー――
従業員「ホントすみません! お客様にこんなご迷惑を……」
アレッシア「いえ、いいんですよ。見たところ、脈も正常ですし、息も乱れていません。ただ気を失っているだけですわ。
しばらくごゆっくり休ませてあげてください」
女将「」クカーッ…
従業員「ホント、ありがとうございました。あなたがお医者様で良かった……母ちゃ、あ、いえ、女将さん、もうすっかり歳で。
それなのに無理するから……」
父「へえ、息子さんかい、あんた」
従業員「!!??」
父「……そーだよ、それが正常だ」
従業員「あ、えーっと……あ! じゃ、じゃあ、お部屋の方にご案内しますね!」アタフタ
アレッシア「あ、はい」
父「わん!」
父「……鳴きマネ。似てるだろ?」
従業員「……は、はは……」(母ちゃん……俺やっぱこの仕事向いてないわ……)
――2階・椎茸の間――
従業員「こちらのお部屋です」
アレッシア「わぁ……いいお部屋! ね、見て見てお父さん! ほら、山が見えますよ」
父「ええ、いい景色です。部屋も落ち着いた和室で……でも、部屋の名前はもうちょっと何とかならなかったのか」
従業員「父ちゃ――オーナーの趣味でして」
父「あ、そう……」
従業員「ご夕食は6時からでよろしいですか?」
アレッシア「あ、はい。お願いします」
従業員「かしこまりました……あ! えーと、その……」
アレッシア「はい?」
父「?」
従業員「お2人分で、よろしいんですよね……?」
アレッシア「あ……」
父「…………いえ、1人分で。お願いします」
アレッシア「!!」
従業員「あ……そうですか。すみません。分かりました。それでは、また6時にお持ちします。
お風呂は4時からとなっておりますので、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
父「ありがとうございます」
従業員「それでは」スタスタ
シーン……
アレッシア「……あ、あの」
父「あ、そうだ! 長旅でお疲れでしょう、アレッシアさん!」
アレッシア「え?」
父「お昼も軽食で済まさせてしまったことだし……どうぞごゆっくり、お昼寝でもなさったらいかがです? 俺はその辺を散歩でもしときますから」
アレッシア「え、いや……でも」
父「ああ、ご心配なく。飯までには戻ってきますよ。それに風呂も……あ、入れなかったか、ハハ」
アレッシア「…………」
父「…………」
アレッシア「……それじゃあ、お言葉に甘えて。少しお昼寝でもしようかしら」
父「ええ、それがいいと思いますよ。……それじゃあ」スタスタ
アレッシア「あ、はい……」
父「…………」スタスタ
アレッシア「……無理、してるのかな……」
アレッシア(……別に、いいのに。一緒にご飯、食べられなくても)
アレッシア(私は……ただ……)
アレッシア(……いてくれる……だけで……)
アレッシア「……すぅ……」スー、スー…
――廊下――
父(……くそっ、何を悩んでいるんだ、俺は)
父(何が不満なんだ。飯を食えなくたって、外見が犬だからって……機械だからって、アレッシアさんは、俺に変わらず接してくれる)
父(それの、何が……)
『機械は機械。人には慣れない。分かってるでしょう?』
父「……くそっ、勝手に人の想像に出てきやがって」
父(……埒が明かない。しばらく、どこかで頭を冷やそう)
――1階、ロビー――
父「で、降りてきたはいいものの……」トコトコ
父「……やること、ないな」トコトコ
幼女「! ね、パパ! わんちゃん! わんちゃんいる!」
青年「ぐかーっ……」ムニャムニャ
幼女「パパ! ねぇパパー!」
父(……疲れるのが父親ってのは、どこの家庭でも変わらんらしいな)
ドミニカ「なぁ、風呂って何時からだっけ?」
ジェーン「えーっと……あ、5時からだって」
ドミニカ「長いな……どうしよう」
父(……風呂、か)
父(入ったって、別に意味無いしなァ……水、苦手だし。
でも、もし……アレッシアさんと入れたら……)
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アレッシア『ふぅ……いい湯ですね、お父さん……』
父『ええ、全く……それに、あの月も、あの雲も。……本当に綺麗だ』
アレッシア『……ええ。本当に』
父『……アレッシアさん』
アレッシア『なんですか? お父さん』
父『……"月が綺麗ですね"』
アレッシア『! ……はい。私も……そう思いますわ』
父『…………ありがとう』
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父「なーんてな! なーんてな! うわははははは……あっ」
ジェーン「…………」ポカン
ドミニカ「…………」ジーッ
父「…………」
父「……わ、わん」
ドミニカ「……なんだ、ただの犬か」
ジェーン「えっ」
父(……あ、危なかった……上手くごまかせたな)フィーッ
父(だが、ロビーに居づらくなってしまったな……戻るか)テコテコテコ…
ジェーン「……ねぇ、大将」
ドミニカ「ん?」
ジェーン「さっきの声さ……あれって」
ドミニカ「ああ、流暢なロマーニャ語だったな」
ジェーン「いやその、そうじゃなくって」
――2階、椎茸の間――
父(……結局戻ってきてしまった)
父(……どうする、散歩するなんて言っておいてすぐ戻ってきたら……なんか、すげえ恥ずかしい)
父(なんて言おう……『いやあすみません、アレッシアさんが気になっちゃって!』……いや、駄目だな。俺のイメージじゃない。
えーと……じゃあ『いやあ、狭い旅館ですなぁ』……これも駄目だな。ネガティブなイメージでは駄目だ)
父(……『すみません、やっぱり戻ってきちゃいまして』……うん、これで行こう)ガラッ!
父「すいませんアレッシアさん、やっぱり戻――あれ?」
アレッシア「……くーっ……くーっ……」
父「……なんだ、お休み中か……やっぱり、疲れてたんだな」
アレッシア「……う~ん……」ブルルッ
父「!…………えーと、押し入れ押し入れ……」ガラッ
父「毛布は……これか。それっ、と」ガシッ、ズルズル
父「…………」ファサッ
アレッシア「……すーっ……」
父「……せっかくの旅行なんです。風邪でも引いちゃ……大変ですからね」
アレッシア「……ふふっ……すーっ……」
――501基地・食堂――
ミーナ「はい、チェックメイト」
≪くっ……!≫
シャーリー「え……あ……」ポカーン
エイラ「す、すげえ……隊長」
私「な、難易度HARDが余裕で……!?」
ミーナ「……ふぅ、結構盛り上がるわね。私教授、もっと上の難易度は無いの?」
私「えっ!? そ、そりゃあることにはありますけど……とんでもないですよ? チェス世界チャンピオンの遥か上を行くぐらいのレベルで……」
ミーナ「ふふ、それぐらいじゃないと面白くないわ。さ、早く!」
私「は、はい……それじゃ、難易度・EXTREAM…!」
≪……どちらかが死に、どちらかが生きる。生き残った者が跡を継ぐ≫ウゥィィーン
≪生き残った者が、ボスの称号を受け継ぐ……≫カリカリリィ
ミーナ「……謹んで、受け継がせていただくわ」ゴゴゴゴゴ
シャーリー「なにこいつらこわい」
私「……これは闘いよ。大いなる闘い。人とAI、その限界と可能性を賭けた……!!」
シャーリー「は、はぁ……」ポカーン
――旅館2階、椎茸の間――
アレッシア「……う~ん……」ムクッ
アレッシア「……何時かしら、今……えーと、時計時計……」ファサッ
アレッシア「……あら?」
(毛布……? なんで……あ)
父「…………」シーン
アレッシア(……そっか。お父さんが……ふふっ)
アレッシア「ありがとう、お父さん」
父「…………」シーン
アレッシア(……? 寝てる……のかしら?)サワッ
父「…………」シーン
アレッシア(!!! つ、冷たい!? い、いや、
ロボットなんだから当たり前か……え!? これ……どうしたらいいの!?)アタフタ
父「…………」シーン
アレッシア「お、お父さん! お父さん!! 大丈夫ですか!? お父さん!!」ユサユサ
父「…………」ガクガク
アレッシア(ど、どうしよう……どこか壊れちゃったのかしら!? そんな……!!)オロオロ
アレッシア「く、首の脈は!! ……な、無い!? あ、でもロボットだし……あれ? だったらどうしたら……!!」イジリイジリ
――カチッ
父「――!!!」ピキョーン!!
アレッシア「きゃっ!?」
父「……? あれ、タイマーよりも早いな……あ、アレッシアさん。おはようございます」
アレッシア「え、え……?」ポカーン
最終更新:2013年02月07日 14:26