前回までのあらすじ!
アレッシアさんと温泉旅行に来たお父さん。女将を気絶させたり、なんだか気まずい雰囲気になったり前途多難な旅行であった。
そんな折、お父さんはなぜかアレッシアさんに毛布をかけたきり動かなくなるが……
父「……? あれ、タイマーよりも早いな……あ、アレッシアさん。おはようございます」ピキョーン
アレッシア「え、え……?」ポカーン


――数分後――

アレッシア「しょ、省電力モード?」

父「ええ。内部の油圧式タイマーをセットして、時間が来たら自動で主電源をオンにする機能です。まぁ、早く言えば睡眠ですね。
別にエネルギーが少なくなってるわけじゃなかったんですが、なにせ退屈で……飯が来る6時ぐらいをメドにタイマーを入れておいたんです」

アレッシア「……も、もう!! やめてください!! びっくりしちゃったじゃないですか!!」

父「えっ!? あ、ああ……すみません……」ショボン

アレッシア「……ほんとう、どうしようかと思ったんですよ……壊れちゃったかも、って……」ハァー…

父「も、申し訳ない……」ショボーン

アレッシア「…………」(……あ、ちょっと言い過ぎちゃったかな……)

父「…………」(……き、嫌われた……完全に嫌われた……あああああ……)


コン、コン

アレッシア「? はい」

従業員「コルチ様、お夕食をお持ちいたしました」スッ

アレッシア「あら、ありがとうございます」

従業員「何か御用がありましたら、ご遠慮なくフロントへお申し付けください。それでは」スタスタスタ…

アレッシア「わぁ……本当に豪華なお料理……見て下さいお父さん! ほら、エビが丸ごと……!」

父「え、ええ……美味しそうですね、全く……」

アレッシア「…………」

父「…………」ショボン

アレッシア「……ねぇ、お父さん」

父「はい?」

アレッシア「……私、静かに食べるの、なんだか苦手で……何か、お話していただけませんか?」

父「? 俺の……話ですか?」

アレッシア「ええ。聞きたいんです、お父さんのお話。お父さんから見たみんなの事とか、私さんのこととか……それになりより、お父さんのことも」

父「――!! は、はい! 勿論! いくらでもお話して差し上げますとも、ええ!」

アレッシア「……ふふっ、お願いします」(……よかった。元気になってくれて)

――――――――――――――――――――――――――――――
父「それでですね、その時私の奴が……」

アレッシア「えっ? ほ、ほんとに……?」

父「ええ、中佐のズボンにネウロイが入ったところを偶然見て……」

――――――――――――――――――――――――――――――

父「……で、聞いてみたんですよ。なんだって俺は犬型なのかって」

アレッシア「そ、そしたら?」

父「『犬の舌の動きを再現したかった』だとかぬかしやがったんですよ! なんだよそれ、って感じでしたね!」

アレッシア「まぁ……ふふっ」

――――――――――――――――――――――――――――――

父「……エレンが死んだ時のあいつの顔は、今でも忘れられません。あの、この世の全てを失ったみたいな顔は……」

アレッシア「……いい、お母さんだったんですね」

父「……あいつの母であり、そして俺の母でもありましたから。開発者、という意味ですけど」

アレッシア「……お母さん、か……」


アレッシア「……ふぅ、ごちそうさまでした」

父(……美味しそうに食べるもんだよなァ……)

アレッシア「お父さんのお話のお陰で、とっても楽しい夕食でしたわ。……ありがとうございます、お父さん」

父「! い、いえそんな……ハハ……」テレテレ

アレッシア「でもお父さん、やっぱり私さんが心配なんですね。さっきの話、ほとんど私さんのお話でしたよ?」

父「えっ……ま、まあそりゃ、俺だってあいつの誕生に立ち会って、今日までを見て来たんだ……そりゃ、可愛いですよ。まるで実の娘みたいに」

アレッシア「……やっぱり、大事に思ってらっしゃるんですね」

父「……ええ。約束、しましたから」

アレッシア「……お母さんと?」

父「『私を頼む』……それが遺言でした。最期まで……あいつの身を案じていましたよ。だから……」

アレッシア「……その気持ち、きっと私さんにも伝わっていますよ」

父「伝わってますかね?」

アレッシア「勿論ですよ。人って、大事にされた記憶は絶対に忘れないんです。ただ、それが当たり前すぎて……なかなか感謝を口に出来ないだけ」

父「……だと、いいんですがね……」

アレッシア「……あら? もうこんな時間……お風呂入ろうかしら――あ」

父「……! あ、いえ。気にしないでください。俺は俺で、適当に時間を潰してますよ」

アレッシア「……すみません」

父「はは……謝らないでください。大丈夫ですよ。ロビーには色々暇つぶしになりそうな物もありましたし。それに……」

アレッシア「?」

父「……待つってのも、結構楽しいもんです」

アレッシア「……ふふっ、ありがとうございます……」

父「……それじゃあ、ロビーで待ってます。ゆっくり浸かってきてください」

アレッシア「ええ。上がったらロビーに行きますから、一緒に戻りましょう」

父「! は、はい! そ、それじゃ!」タタタッ

アレッシア「……ふふっ、ほんと、機械だなんて思えないな……」



――1階・露天風呂――

アレッシア「……とは言ったものの、お父さん、大丈夫かな……」カポーン…

アレッシア「……上がったら、ブラッシングでもしてあげよっと」

アレッシア「……懐かしいわね……マルコ……」



――同時刻・ロビー――

父(……とは言ったものの、やっぱり暇だな……)

父(新聞は普段は絶対読まないような広告欄の隅々まで読んじゃったし……あとは……)

カコン! カコーン! パコォォン!!

父(……ん?)

ドミニカ「それっ! たぁっ! サーッ!!」カコーン!!

ジェーン「わぁぁぁっ!!!」スカッ!

ドミニカ「……さて、これで私が5連勝だな」

ジェーン「うう……大将、強すぎだって……!!」

ドミニカ「中々面白いな、この扶桑式温泉ピンポン……さて、もう一戦行くぞ、ジェーン」

ジェーン「も、もういい……私、パス……誰か代わって……」

ドミニカ「なんだ、お前が降りたら誰もやってくれな――」

父「…………よし、いいだろう」

ドミニカ「……ん?」



――数十分後・更衣室――

アレッシア「ふー……いいお湯だったわ……」ホカホカ

アレッシア「動きやすくっていいわね、このユカタってパジャマ……」

アレッシア「お父さん、退屈しちゃってるわね、きっと……早く行ってあげなくちゃ」スタスタ



――ロビー――

アレッシア「お父さーん、上がりましたよ……あら?」

ドミニカ「ふん! とぉっ! たぁっ!! それぇっ!!!」カンポンカンポン

父「とぁっ! そりゃっ! うらっ! どらああっ!!!」コンパンコンパン

ジェーン「た、玉が見えない……あ、大将ー! ワンちゃーん! どっちもがんばれーっ!」

ドミニカ「……ハァ、ハァ……やるじゃないか、ワン公……! ていっ!」パン!

父「ハハ、お嬢さんとは踏んできた場数が違うんだよ……せいやっ!」パン!

ジェーン(……口でラケット咥えてるのに、どうやって喋ってるんだろ?)

アレッシア「……ふふっ」

アレッシア「なぁんだ……心配する事、なかったわね」



――501基地、食堂――

≪亡命では無い。自分に忠を尽くした……お前はどうだ? 国に忠を尽くすか、それとも私に忠を尽くすか≫ウィーンカリカリッ

ミーナ「……忠、ね」カチッ

≪国か、恩師か? 任務か、思想か? 組織への誓いか? 人への情か?≫ウィンカリリッ

ミーナ「さぁ、ね……でも、思想だけ、情だけを信じていても、戦いには勝てない。共に戦う仲間、守るべき人々、そして何より、自分……」カチッ

≪……自分に忠を尽くす、か≫ウィーン…

ミーナ「自分にも、かしらね……国を、世界を、人々を守るなんて、自分一人で出来るわけがないわ。だから、私はこの部隊を……隊員の皆を信じている。
それが、隊長としての責務だと信じているわ」


シャーリー「……なぁ、まだ終わらないのか?」ヒソヒソ

私「もう夜よ……とんでもない長期戦ね」ヒソヒソ

宮藤「ミーナ中佐ぁー、晩ごはん、できましたよー?」

ミーナ「あ、後で頂くわ。ごめんなさい、宮藤さん」

ゲルト「おーい、帰ったぞー」ガチャッ

整備兵1「…………」ゲッソリ



――旅館、2階・椎茸の間――

父「ふぅ……結局、決着は着かずか……」

アレッシア「お父さん、ピンポンお上手なんですね、びっくりしちゃいました」

父「いえ、それほどでも……ボールをよく見て、打ち返せばいいだけですから……」

アレッシア「……ふぁ~あ……」

父「もう、お休みになられますか?」

アレッシア「ええっと……あら、もうこんな時間なんですね……眠いはずだわ。そうですね、明日も早いですし。お父さんは、まだ眠ら――あ、タイマーはセットしないんですか?」

父「え……あ、ええ。もう少ししたら入れますよ。だから、どうぞお気になさらず。ごゆっくりお休みになって下さい」

アレッシア「……そうですか? ありがとうございます、お父さん」

父「いえ。それでは……おやすみなさい」

アレッシア「はい。おやすみなさい……」


 リーン、リーン…
             スイーッチョン、コロコロコロ……


父(……山の近くだからか、随分……虫の声が綺麗だな)

父(それに……いい月だ。ぼうっと、青白くって……)

アレッシア「……すぅ……すぅ……」

父(……寝つき、いいんだな……それとも、よっぽど疲れてたのか……)

父(……思えば、今日は……アレッシアさんに迷惑かけっぱなしだったな)

父(いろいろ気を遣わせてしまって……さっきの夕飯だって、きっと気を遣って引き止めてくれたんだ)

父(……俺は、今日という1日は楽しかった。言葉では言い表せないぐらいに。だが……アレッシアさんは、どうなんだろうか?)

父(そもそも俺は……彼女にとって、どんな存在なんだ?)

アレッシア「……ぅ……ん……」

父「――!」

アレッシア「……ん……すーっ……すーっ……」

父(……なんだ。起こしてしまったのかと……)

アレッシア「……どう……して……」

父「……?」

アレッシア「……どうし……て……しんじゃったの…………?」


アレッシア「……マルコ……」


父「…………」


『犬飼ってた事があるんです。白くって、フワフワで……私が大人になる前に、死んじゃったけど』

『……マルコです。マルコ・ポーロの、マルコ』


父「……そうか」

父(……そうか、そうか。最初から……)

父「……所詮」

父(所詮、俺は……)



父(……ただの、犬コロか……)



アレッシア「くぅ……すぅ……」

父(……分かっていた…分かっていたさ)

父(いくら、人間っぽくあろうとしても……いくら、言葉を重ねても……)

父(……俺は、人間にはなれない。誰も、人間とは見てくれない)

父(…………分かっていたよ。最初から……)

父「……でも……でも……!」


リーン、リーン…
          コロコロコロ…リーン、リーン……


父(……なぁ、エレン……どうしてだ?)



父「……どうして、機械は……俺は、涙を流せないんだ……?」


アレッシア「……ぅ、うーん……お父、さん……?」

父「! あ、アレッシアさん! す、すみません……起こしてしまって……」

アレッシア「いえ……なんだか、寝付けなくって……」

父「……そう、ですか? さっきは……すぐに眠っておられましたが……」

アレッシア「……それに、ちょっと……思い出したんです」

父「――! ……何を……ですか……?」

アレッシア「……えっと、ですね……」

父「…………」

アレッシア「お父さんに、ブラシをかけてあげること。やろうと思ってたのに、すっかり忘れちゃってて」

父「……へ?」

アレッシア「……ほら、お父さん、お風呂に入ってなかったでしょう? いくら機械って言っても、やっぱり、動いてるだけでホコリとか溜まってきちゃうんじゃないかしら、って思って……」

父「あ……え、ええ……」

アレッシア「ほら、それに……今日、とっても楽しかったから。だから、こんなことで釣り合うとは思えないけど……せめてもの、お礼をと思って。
……すみません、差しでがましいようでしたら……」

父「あ……いえ、そんな……そりゃ、やっていただけるなら……こんなに嬉しいことはありませんけど……」

アレッシア「……よかった。やっと、お父さんにお礼ができるわ。今日1日…私、お父さんにわがままばかりで……。
……それじゃあ、こっちにいらして下さい、お父さん」

父「は、はい……」(……とんでもない。我儘を言ったのは……こっちの方だ。単なる機械のくせに……旅行なんて……)


リーン、リーン…… コロコロコロ…

アレッシア「お父さんの毛並みって、すごくつやつやしてるんですね」

父「……ええ。合成繊維ですからね……ただの人工物、まがい物ですよ」

アレッシア「……私はこの毛並み……好きですけど」 

父「……犬の毛並みが、ですか?」

アレッシア「え?」

父「! あ、いえ……何でも」

アレッシア「……ねぇ、お父さん」

父「…………」

アレッシア「……こんな事言うと、きっと軽蔑されてしまうでしょうけど……言わせて下さい」

父「…………」

アレッシア「……私ね、昔、犬を飼ってたんです」

父「……マルコ、でしょう?」

アレッシア「……ええ。白くてフワフワの毛並みの、とっても可愛い犬……ちょうど、お父さんみたいな」

父「……光栄ですね」

アレッシア「……初めて、基地の裏庭でお父さんと会った時……マルコが生き返ったのかと思いましたわ。そして、それからも、今回の旅行でも……。
お父さんの一挙一動を見る度に、私の頭の片隅には、マルコの姿がちらつきました」

父「……」

アレッシア「……でも、マルコは……喋れませんでした」

父「……!」

アレッシア「話す事も、列車に乗る事も。旅館に泊まる事も……こうして、胸の内を明かすのも。
みんな、みーんな、お父さんと出会ったからこそ出来たこと……お父さんとこの旅行に行かなければ、きっと、ずっと出来なかった……」

父「……」

アレッシア「……たぶん、人は誰の代わりにもなれないし……誰の代わりもいないんですよ。
マルコは、マルコしかいなかったし……お父さんは、お父さんしかいないんです。たとえ、姿形が私達とは違っても。たとえ……機械であっても」

父「…………」

アレッシア「……お父さんは、お父さんにしかできないことを……お父さんだからこそ、できたことを……私に、たくさんくれたんですよ。
……ごめんなさい。……ありがとう。お父さん……」ギュッ…

父「!? あ、あ、アレッシアさん!?」(だ……抱きつかれて……!!)

アレッシア「お父さん……お父さんは、犬なんかじゃありません。ただの機械なんかでもありません。
……物知りで、照れ屋で、寂しがり屋な……世界でただ1人の……お父さんなんですよ……」

父「……アレッシア……さん……」


リーン……リーン……
                 サァァァァ…………


アレッシア「……ねぇ、お父さん」

父「……どうしたんです、アレッシアさん」

アレッシア「……月、綺麗ですね……」

父「……ええ。本当に。……そう思います」

アレッシア「……聞こえますか? なんだか……雨みたいな音が……」

父「……不思議ですね。月は……あんなに、澄んで見えるのに」

サァァァァ……

父(……ん?)

アレッシア「……すぅ……すぅ……」

父(……寝てしまった、か。……あれ? ――!! だ、だ、だ……抱きかかえられたまま……!!??)

アレッシア「……んっ……」

父(!! い、いかん……下手に動くと、起こしてしまう)

アレッシア「……くぅ……」

父「……ほっ」


父(……犬でも無い、機械でもない……"お父さん"……か)

父(…………あぁ……)


父(……あったかいなァ……人って……)


リーン……リーン……
                サァァァァ……ッ


――翌朝、旅館・玄関――

アレッシア「どうも、お世話になりました」

女将「ほほ……またのお越しを、お待ちしておりますよ」

父「ええ、いつかまた……」

女将「…………」

父「…………」

女将「……ええ、是非とも、いらしてくださいな」ブルブル

父(の、乗りきったッ!)

ドミニカ「……ん? あ、あのワン公……」

ジェーン「え? ……あ、ほんとだ。もう帰るみたいだね」

ドミニカ「久々の好敵手だった。……いつか、決着をつけたいものだな。……おーい! ワン公ー!!」

父「ん? あいつは……」

ドミニカ「次は、私が勝つからなぁー!!」

父「……ハッハッハ、やってみろ、やれるもんならなぁー!!」



――温泉街、下り坂――

アレッシア「……いい天気ですね」

父「ええ……」

アレッシア「ゆうべ、雨が降ってたから心配だったけど……晴れてよかったわ」

父「ハハ……」(……結局、夜明けまでずっとあのままだったな)


少年「コロ、コローっ!」タッタッタッタッタ

アレッシア「……あら? あの男の子って……」

ハッハッハッハッハッ…

父「……?」クルッ

犬「ハッハッハッハッハッ」パタパタ

父「……よう」

犬「ワン!」

父「……長生きしてやれよ?」

犬「クゥン?」

少年「おーい! こっちだってー!」

犬「ワォン!」ダダダダダッ!

アレッシア「…………」

父「……行きましょうか」

アレッシア「……ええ。行きましょう」



――501基地、食堂――

≪……私はお前を育てた≫ウィーン…

ミーナ「……ええ」

≪お前を愛し、武器を与え、技術を教え、知恵を授けた≫カリリリッ…

ミーナ(……武器は貰ってないと思うけど……)

≪……もう私から与える物は、何もない……。あとは私の命を、お前が奪え……自分の手で≫カリッ…

ミーナ「……ボス。ありがとう……“チェックメイト”」カチッ

≪――――――≫

私「う、うそ……勝ったの? 難易度……EXTREAMに!?」

ミーナ「……んっ……」バタッ

宮藤「! ち、中佐!」

シャーリー「……無理もない。徹夜でやってたらしいからな……」

私「……人間ってすごい」

ミーナ「……くー……くー……」



――列車内――

ドデスカデン、ドデスカデン…

アレッシア「よかった……この列車に間に合って」

父「この調子だと……基地に着くのは昼過ぎになりそうですね」

アレッシア「……あ、お土産、どこにしまいましたっけ?」

父「ああ、俺の鞄に入ってますよ。温泉まんじゅう」

アレッシア「……あれ、どのあたりが温泉なんですかね?」

父「……売ってる場所、じゃありませんか?」

アレッシア「……やっぱり?」

父「……たぶん」

アレッシア「……ふふっ」

父「……ハハハ……」


幼女「ね、ねパパー、さっきママにやってた“ドゲザ”っていうの、もっかいやってー」

青年「ちょ! ちょっと待ってシェリー! ここじゃ駄目だ! ここじゃ!」

女性「……そうよ、シェリー。あとでいくらでも見れるわ。パパはこれから毎日、私とシェリーにドゲザすることになるんだから」

青年「!!?」


アレッシア「……よかった」

父「?」

アレッシア「……ほら、あのご家族」

父「……ああ……」

アレッシア「……ねぇ、お父さん」

父「え?」

アレッシア「……お父さんにとって、私さんが私さん1人しかいないように……私さんのお父さんも、お父さん1人しかいないんですよ」

父「…………」

アレッシア「……私さんにとっての幸せが何なのかは、私には分かりませんけど……
でも、お父さんがそばにいることが幸せじゃないなんて、そんなことは絶対にないはずです」

父「……私……」

アレッシア「……自分はどうあるべきか、なんて考えなくても、お父さんはそのままで十分……その、素敵だと思いますよ」

父「!!」

アレッシア「だから……その……上手く言えませんけど、そのままで……自然体なままで、私さんに接してあげたらいいんじゃありませんか?
飾らずに互いの本心をぶつけられる……そんな相手がいるのって、とっても幸せなはずですから」

父「…………アレッシアさん……」

アレッシア「あっ……す、すみません、偉そうなことを……」

父「いえ、そんな……」

アレッシア「…………」

父「…………アレッシアさん」

アレッシア「……はい」

父「……この旅行に……アレッシアさんと行けてよかった。……ありがとう」

アレッシア「……こちらこそ。本当に……楽しい旅行でしたよ。……ありがとう、お父さん」

ガタンゴトン… ガタンゴトン…



――昼過ぎ、501基地、玄関――

シャーリー「……おっ、あの車かな……あ、違った。あ! あれかな……」

私「…ねぇ、シャーリー。別にいいじゃない、出迎えなんて……」

シャーリー「なーに言ってんだよ。迎えてあげた方が、アレッシアさんもお父さんも絶対喜ぶって」

私「……まぁ、そりゃそうかもしれないけど……」

シャーリー「……! あ、あれだ!」

ブロロロロ…キキッ! ガチャッ…

アレッシア「ふぅ……ただいま、シャーリーさん、私さん」

父「いやー、たった一日出てただけなのに……なんだか懐かしく感じるなァ」

私「…………」

父「! …………ただいま」

私「……おかえり。……楽しかった?」

父「……ああ。すごくな」

私「そう……良かったわね」

父「……さ、基地の皆に挨拶したら……すぐ仕事に掛るぞ。俺がいなくて、どうせいろいろ溜まってるんだろ?」

私「? ……なによ、ずいぶんやる気じゃない?」

父「バカ言え、俺はいつだってこんな調子さ」

私「……フフッ、はいはい、そうでしたね……」

シャーリー「なぁ、お父さん。お土産……何?」

父「おお、ちゃーんと買ってきたぞ! 本場の温泉まんじゅうだ!」

シャーリー「ま、マンジュウ?」

父「美味いぜぇー? ま、俺は食った事ないんだけど……」

シャーリー「おいおい、なんだかご機嫌だな……何かいい事あったのか?」

父「……ああ」

アレッシア「……」ニコッ


父「……本当に、いい旅だったよ」



第8話、おわり
最終更新:2013年02月07日 14:27