これは、夢か。
現実だってんなら、これは夢だな。
俺は女を好きになったこともないし、男ならなおさらだ。
そんな俺が、小さな女の子と挙式を挙げてるなんて、いい夢だ。
最高に、くだらない夢だ。


夢なら、の話だが、な。



兵A「大尉、起きてください、大尉」

輸送機の中で、俺は目を覚ました。いやはや、最悪の寝心地だな、ここは。

俺「……ああ、もう到着か…」

兵A「いえ、基地はまだですが、そろそろウィッチとの合流地点ですので。それにしても、あの第501統合戦闘航空団からスカウトですか…流石です、大尉」

さっき会ったばかりの男にお世辞が言えるなんて、扶桑の軍人はかなり鍛えられてるぜ。

だがな、すまない。俺は君に2つ、いや、3つほど嘘をついている。

1つは、俺の階級が大尉でないこと。
2つ目は、そもそも軍属のウィッチではないこと。
最後に、俺はスカウトされたから参加するんじゃない。

金をもらったから、参加するんだよ。

何を隠そう、俺はネウロイ専門の賞金稼ぎだ。

世間様に知られることはねえが、世界中どこだろうと、どんな国家の要請だろうと、それなりの金を積まれればネウロイを撃墜する。

いつからこんな仕事をしてるのかは覚えてねえが、強いて言うなら気付けば、だ。

ストライカーユニットはどっかの基地から強奪したものだし、相棒の名も知れないライフルと拳銃もどっかからかっぱらってきた記憶がある。

仕事の内容としては、正体がばれないようにマントを装着して、戦闘区域の外からネウロイを一撃で狙い撃つ。

で、ウィッチがこちらに気づく前にすたこらさっさって寸法だ。

相当な距離から狙撃するんだが、俺の魔法があれば、まあ問題ない。

極秘裏にネウロイを倒すんだ、そりゃあ大層な金額がもらえる。

だがしかし、何分ギャンブル好きは治らないんだよな。あっという間に、すっちまう。

金がなくなれば、またどこぞの困っている連中に話を持ちかけて、適当にネウロイを始末して金を稼ぐ。

もし表ざたになれば自国のウィッチからの信用を失いかねない行動だが、そうでもしなきゃ倒せないやつ、ってのもいるもんで。

もちろん、俺はそれに見合う実力者だ。自分で言うのもなんだが。

おかげで仕事はなくならないし、一定の金が舞い込んでくる。

こういった人間だから、俺は誰とも組もうなんて考えたことがない。

そんな俺が、今回、第501統合戦闘航空団こと『ストライクウィッチーズ』に参加するなんて依頼を扶桑皇国軍の上層部から請け負ったのには、れっきとした理由がある。

それは、莫大な報酬金だ。

依頼の内容は、補充兵として『ストライクウィッチーズ』に参加。

適当に任務をこなし、解散と同時に本国へ帰還。こんな依頼は初めてだが、できない依頼じゃない。

要するに、素性を隠して、扶桑皇国の軍人として解散までそこで過ごすってわけ。

ネウロイは倒さなくちゃいけないし、正体がばれてはならない等の約束事もあるが、そんなものが全部どうでもよくなるくらい、報酬金は莫大だ。

なんせ4つのゼロの下にゼロが更に3つ、4つ、いや、5つもあるんだぜ。

当分遊び呆けたって、お釣りがくる。

一応変な目で見られないように下調べはしてるんだが、世界中からトップエースが集められたなんてのは、どうでもいい。

そこにいる人物がどんな連中かなんてのも、どうでもいい。

稼いで、帰る。それだけなんだからな。

さて、兵Aの報告によると、そろそろ合流地点のはずだ。

あくまでこれからの俺は、ちょっとくだけた感じの、しかし扶桑皇国の誇り高い軍人だ。

くれぐれもばれないように……ん?




俺「おい、なんか聞こえねーか?」

兵A「…?いえ、なにも……」

俺「いいや、確かに聞こえる。この音は…ああ、よーく聞きなれた音だ」

まるで、空間を裂くような音。

これが聞こえた時、どうすりゃいいのか、よく知ってる。

俺「――来るぞ」

兵A「え?」

俺が兵Aと顔を見合わせた瞬間、輸送機の半分が吹っ飛んだ。

赤い光とともに、哀れな兵Aの上半身とともに。ついでに、パイロットの体とともに。

一方で、こっちは無傷だ。
常日頃からの行いが生死を分けるとは聞いたが、ここまでとはな。

諸君、来世じゃ良い事をするように心がけとけ。

南無阿弥陀仏と言って、ポケットの中の飴玉を海に投げた。

供養はこんなもんでいいか。

さて、そろそろ俺も脱出しねえと、輸送機と一緒にお陀仏しちまう。

数時間の付き合いにしては愛着がわいてたんだが、心中を持ちかけられたりなんかしたら、そりゃあ困るってもんだ。

手元にあったライフルと拳銃を持ち、ズボンにナイフを挟み、俺はストライカーユニットを装着する。

他の荷物、特に葉巻なんかは名残惜しいが、後で調達するとしよう。




俺「そんじゃま、いきますかっと!」

体を宙に投げだすとともに、輸送機は爆散した。

一方で俺はというと、見ての通り、傷一つなく空中でぴんぴんしてる。

ほら、俺、鍛えてるからよ。

太陽の光を遮るように俺の前に現れたのは、予想通り、ネウロイだ。

それも目測だけで相当でかいことが分かるぐらい、でかい。

どこぞの要塞級とまでは言わないが、かなりの大きさはあるんじゃなかろうか。

確かに、普通に戦うんなら数人のウィッチが必要だろうな。だが、しかし、だ。

俺「ホント、同情するぜ。今日のお前はツイてねー…うおわッ!!」

あんにゃろ、しゃべってる途中に撃ってきやがった。

しかも一発じゃねえ、何十発もだ。シールドを張れればいいんだが、生憎、俺も歳でね。

今年、二十歳になったんだよ。

おかげで魔力は一気に減退、シールドは張れなくなっちまった。

ま、そんなのは欠片も問題ないんだかな。なぜかって、そりゃあ、避けられるからさ。

ちょっと左に動けば、ビームが掠める事無く通り過ぎてゆく。

すこーし上昇してやれば、今度は真下を通り過ぎてゆく。

ネウロイが苛立つなんて話は聞いたことがないが、俺から見れば、明らかに苛立ってるように見える。

あれがもう少し利口なら、焦れば焦るほど、俺に攻撃が当たらなくなるって事に気づけたろうに。

撃って、かわして、撃って、かわして。

シールドが張れないってのが苦にならなくなったのはつい最近の話なんだが、張れなくなって間もない頃の俺でも、これなら余裕だな。

さて、攻撃も少し止んできたし、さっさと済ませるか。

使っているライフルの名前は知らないんだが、スコープを覗きはしない。

何故かって、そりゃあ、そんな事をしなくても弾丸は当たるからさ。

銃を構えて、引き金に指を乗せて、あとは『固有魔法』を発動するだけだ。

俺の固有魔法は、『魔弾』。

『魔眼』とよく間違えられるが、それは大間違いだ。

両目は赤くなるが、コアなんか見えっこない。

俺の銃に込められた弾丸はライフルに5発、拳銃に2発。

そのうちランダムに選ばれた5発が威力が上昇しただけの弾丸、1発が相手の弱点に当たる弾丸になる。

残りの1発は、撃たない。その名の通り、『魔弾』だからな。

単純に言えば、『撃った弾丸が確実に相手の弱点に命中する』魔法だ。

ここだけ聞けばかなり強力な固有魔法だが、全部が当たりの時もあれば、全部はずれの時もある。

体調やテンション、やる気、その他諸々にかなり左右される能力だし、普段はほとんど使わない。

魔力もごっそり持ってかれるし、ギャンブルじみた魔法だ。

だが、今は違う。

朝飯はしっかり食った。莫大な報酬金を前にしてテンションとやる気も最高潮。

俺の両目が変色し、最初の1発が大当たりだということを知らせる。




俺「…ホント、運が悪かったな、お前」

そして。

放たれた弾丸は、ネウロイに吸い込まれるように飛んでゆき、そのコアを撃ちぬいた。

あっという間にネウロイの体は雪のようになり、四散。

いつも思うんだが、これ以上に綺麗な風景ってのは、ちょっと想像がつかねえわ。

舞い落ちるこれにあたっても少々まずいと聞いたんだが、当たった事がないから分からねえんだよな。

この風景の中で死ねるんなら、それもいいんじゃないか。

そういえば、俺はいつからこんな仕事をしてたのか、やはり思い出せない。

それとは全然関係ないんだが、俺みたいな奴を統合戦闘航空団なんかに組み込んで、どうするつもりなんだろうか。

金に目が眩んで、まったく聞こうともしなかった。

馬鹿か、俺は。いや、馬鹿だからこんな仕事をしてるのか。

どれくらい、その場で立ち尽くしてたんだろうか。

遠くから、何かが近づいてくる音が聞こえる。

プロペラの音だ。つまり、戦闘機かウィッチか、ってことになる。

数は11、視界に映るのは女性ばかり。つまり、ウィッチってことになる。

なら、その正体もだいたい予想がつくというものだ。

ストライクウィッチーズ。

噂のストライクウィッチーズってことで、間違いなさそうだ。特に先頭をきってる女性、あの赤っぽい髪の人が、確か。

俺「あー、アンタらがストライクウィッチーズ…で、アンタ……もとい、あなたが隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐ですよね?」

ミーナ「え、ええ…ということは、貴方が?」

俺「そういうことです。とりあえず、こんな状況で自己紹介もなんですから、基地まで案内してもらっていいですか?」

自分の敬語を、これほど気持ち悪いと思ったことはない。

しかし、敬語もなんだが訝しげな眼で見られるのも、我慢しなければならない。

世界の平和の為じゃない。これからの人生をバラ色に変えるお金の為に、だ。




さて、お仕事、始めますか。
最終更新:2013年02月07日 14:47