―501基地ハンガー、整備区画―

俺「こっちの配線を取り替えて…」

俺はハンガーの一角で複雑な配線と格闘していた

なぜ整備兵みたいなことをしているのかというと、

―同日の午前中―

俺たちは割り当てられた部屋(一部屋)で一晩過ごした。もちろん拳銃等の武器は取り上げられている

朝食の時間には少し早く、寝直すには遅い時間に、501の隊長、ミーナ中佐に呼び出された

名前を聞かれた後、所属、兵科、ここの来た経緯、フェンリルとオスプレイの詳細、等々を聴取された

特に隠す必要もないので、全部馬鹿正直に答えた。もちろん、次元を超えたらしいことも

次元うんぬんの話は友が代わりにしてくれたが、専門用語満載なのでミーナ中佐はもちろん、同席した坂本少佐、バルクホルン大尉もよくわかっていないようだ

友「――と、まぁ、簡単に言うと、俺たちは異世界の人間です」

一同「…」

そりゃ沈黙するわ

坂本「…信じるか?ミーナ」

ミーナ「信じるしかないでしょう」

バルクホルン「ちょっと待ってくれ!そんなあっさり信じてしまっていいのか!?」

至極まっとうな意見である

ミーナ「だったら彼らが乗ってきた飛行機は?」

バルクホルン「それは…」

坂本「俺が脱ぎ捨てたふぇんりるとやらは?サーニャの報告は聞いただろう?」

バルクホルン「…グゥ」

ミーナ「ところで3人とも。戦闘以外で何か秀でたものはある?」

なぜそんなことを聞く?と一瞬思ったが、素直に答えることにした

パイロット「自分は、航空機の操縦、ですかね」

友「医療関係のことなら任せてください」

俺「整備等の、工兵に関係したことなら」

ん~、と、手をあごに当てながらミーナ中佐はしばらく思案

何か思いついたようで、飛び切りの笑顔で、

ミーナ「3人とも、ここで働いてみない?」

と言い放った


ミーナ「と、言うわけで、本日付で本基地に配属になった…」

俺「基地警備兼、整備兵の俺です。原隊では中尉でしたが、階級はあまり気にしません」

友「基地警備兼、医者の友です。同じく階級は気にしません」

パイロット「操縦士兼、射撃教官を務めるパイロットです。って、俺だけ警備じゃないの…?」

坂本「の3人だ。みんな仲良くしてやってくれ」
ワーオトコノヒトダー、ヨロシクー、ガヤガヤ

朝食の際、俺たち3人は隊の皆さんとご対面した

ミーナ中佐、坂本少佐、バルクホルン大尉たち数名とはすでに会っているが、ほかにも結構人が居た

その中に、昨日のサーニャさんとエイラさんの姿は見えなかった

友「あの、中佐」ヒソヒソ

ミーナ「なにかしら?」ヒソヒソ

友「本来自分らはここに居ちゃ行けないんじゃ…男ですし」ヒソヒソ

ミーナ「あなたたちは一応危険人物扱いよ。スパイの可能性もあるから、私たちの管理下で生活してもらいます」ヒソヒソ

坂本「なにヒソヒソと内緒話してるんだ?」

ミーナ・友「「いえ、なにも」」

坂本「?」

ミーナ「あとで俺さんとパイロットさんにも話しておいて」ヒソヒソ

友「了解」ヒソヒソ

その後、身体検査も兼ねた健康診断を行い、俺は整備課へ、友は医務室、パイロットは射撃訓練場に向かった
整備兵の方々は皆良い人で、身元のわからん俺を快く迎え入れてくれた
ウィッチたちの履く、現代の空飛ぶ箒、ストライカーユニットの整備。それが俺たち整備兵の仕事だ
ユニットについての資料をもらい、そいつとにらめっこしつつ、先輩の手を借りて整備をしていく

ちなみに、俺の整備の評価は、

整備隊長「君ホントに新人?どっかでストライカー弄った経験あるんじゃない?」

だそうだ

腕を見込まれた俺は、赤の十字星に黒猫のマークが描かれたユニット――サーニャのユニットだ――の整備を任せれた
魔導エンジンとやらの詳しい構造・原理はわからんが、機体のクロスチェックと配線交換ぐらいはできる
で、
俺「こっちの配線を取り替えて…」
最初に戻るわけだ

俺(この機体は高高度高速型なのか)

手元の資料と照らし合わせながら作業する。今回は先輩の手助けなしだ

俺(高高度での安定性…いや、低高度での機動性…)

一通りクロスチェックと痛んだ配線の交換をし、特に異常は見られなかったので、性能の向上を行う

俺(哨戒飛行が主…長時間飛行に耐えられるように…)

整備隊長「お前ってさぁ。リトヴャク中尉のこと好きだろ」

俺「ハイッ!?」

突然何を言い出すんだこの人は

整備隊長「いや、リトヴャク中尉のユニットを任された時の顔といい、今の整備の異常な丁寧さといい、明らかに意識しているだろ」

…あれ?そんなあからさまだった?

整備隊長「だった。あ、別にほかのユニットの整備が雑ってわけじゃないぞ」

俺「…」

確かに、意識してないといえばうそになるが、好きかと聞かれたら…正直わからん

彼女の手助けをしたい、という思いはあるが、それが恋心につながるかは…?

とりあえず、航続距離を少し伸ばす改造を施すことにしよう


―夜、ハンガーの一角―

俺「これで最後、っと」

ミーナ中佐に頼んでハンガーの一角を借り、フェンリルの組み立てを行うことにした

オスプレイからフェンリルのパーツの入った箱を出してくる

俺「まさか見つからなかったとはな」

俺がハンガーで配線と格闘している間に行われた、フェンリルの回収作戦。落下地点周辺を探したが、見つからなかったらしい

こうなると予備パーツを使ってフェンリルを一から作ることになる

溶接しなければならないところはすでにしてあるが、

俺「この量は…時間がかかるぞ」

積み上げられた箱の数に、思わずため息が出る

俺「細かいパーツが多いんだからもう…はぁ」

俺「友たちに頼んで手伝ってもらうか…」

サーニャ「俺…さん?」

俺「あ、サーニャさん。どうしたの?」

サーニャ「これから夜間哨戒で。あと、さんはいりません。私のほうが年下ですから」

俺「あ、そう…気をつけてな、サーニャ」

サーニャ「はい」ニコッ

ああもう、かわいいなぁ!

…いや待て、相手は自分より8歳ぐらい年下だぞ?俺にロリ属性はないはず…はず

サーニャは自分のユニットを装着し、発信準備に入る

サーニャ「…?」

俺「ん?どうした?」

サーニャ「なんか、いつもと違う感じがして」

俺「あ、わかる?配線をいじって、航続距離を伸ばしたんだ」

サーニャ「そうなんですか…」チラッ

俺「あれ?お気に召さなかった?」

サーニャ「いえ、すごくうれしいんですが…その…ほっぺにオイルが」チラッ

俺「え?」

サーニャ「動かないで…」スッ、ゴシゴシ

俺「え、あ、ちょっと!?」

サーニャは発進ユニットの手すりにかけてあったタオルを取り、俺の顔を拭き始めた

俺(いや、その、悪い気はしないけど、えと、その…エェェ?)

なんというか、むずがゆい

サーニャ「はい、きれいになりました」ニコッ

俺「あ、ありがとう…///」

なんか、お礼言ってばっかりだな

サーニャ「それじゃあ、行って来ます」

俺「うん、行ってらっしゃい…//」

ユニットの固定がはずれ、サーニャは夜の空へと飛んでいった

俺「…寝よう」

今日はもう良いや…

俺(M134の予備があってよかった。あれを主装備にして…)

考え事をしながら部屋に戻る途中

俺「…あ」

あることに気づいた

俺「弾…」

M134の弾薬は、この時代には存在しない

―執務室―
坂本「ミーナ、話って何だ?」

ミーナ「…友さんのことについてよ」

坂本「友?あぁ、俺の部下か」

ミーナ「ええ。それで、検査の結果が出たの」

坂本「検査?健康診断のことか?」

ミーナ「それもだけど、魔力検査のことよ」

坂本「!…で、どうだった」

ミーナ「俺さんは陸戦ウィッチに相当するものを、友さんは飛行するにも十分な魔力を持っていたわ」

坂本「…どうするつもりだ」

ミーナ「今は少しでも戦力がほしいときよ。2人を部隊にウィッチとして招き入れる」

坂本「友には明日ストライカーを履かせてみるか」

ミーナ「そうね。俺さんは、フェンリルの完成を待って決めましょう」

坂本「もう遅い。部屋に戻ろう」

ミーナ「ええ」

坂本「…ところでパイロットは?」

ミーナ「なんてことの無い、極普通の人だったわ」
最終更新:2013年02月07日 15:32