エイラさんの誤解は何とか解け、俺はいつもどおりハンガーに居た

今日はちょっと騒がしい。イェーガー大尉がユニットのエンジンテストを行っている

シャーリー「よしよし、今日も絶好調だなぁ、あたしのマーリンエンジンは」

すげぇ轟音だが、ジェットエンジンに比べりゃどうってことはない

ただ…

バルクホルン「シャーロット・イェーガー大尉!そんな格好で何をやっている!?」

下着姿なんだよね、イェーガー大尉

シャーリー「何って、エンジンテストだけど?」

バルクホルン「そうじゃない!何だその格好は!?今は戦闘待機中だぞ!」

ギャーギャーワーワー

パイロット「お~い、あっちでなんかやってるぞ…」

友「興味ねぇ…あぢ~」

パイロット「イェーガー大尉とルッキーニちゃんとハルトマン中尉が下着姿だといったら…?」

友「…俺はエイラ中尉一筋だ。それにしても暑い…」

2人とも、作業着の上を脱いでタンクトップ姿で寝そべってる

シャーリー「暑いんだからいいだろ~?ほれ、あっちにも」

友「ほえ?」

パイロット「お呼び?」

バルクホルン「お前たちまで!く~っ!お前らそれでも軍人か!?」

友「医者ですけど?」パイロット「しがない操縦士ですけど?」

シャーリー「あっははは!」

…いい加減仕事しよう

俺「コラお前ら。寝てないで作業しろ」

友・パイロット「「エー」」

俺「…終わったら酒でも飲もうかと思ったが、お前らにはやらん」

友・パイロット「「なぬっ!?」」

俺「欲しかったらフェンリルを大急ぎで作る!」

パンッ!っと手を叩き、2人を作業に戻させる


シャーリー「扱い慣れてるな」

俺「まぁな」

エーリカ「そういや、俺は上脱いでないね」

俺「へ?」

…脱がなきゃいけないの?

ルッキーニ「脱がしちゃおう!」エーリカ「おー!」

ルッキーニとハルトマンが飛び掛ってきて、俺の上を無理やり脱がせようとする

俺「ちょ!ばっ!やめ!」

ルッキ・エーリカ「「そぉい!」」

抵抗むなしく、上着は脱がされ、友たちと同じタンクトップ姿となった

シャーゲル「「…!」」

大尉2人がこっちを凝視している

俺「…なんですか?」

シャーリー「いや、お前、その肩の傷…」


―数年前のアフガン某所―

俺と伍長に向けて飛んできたRPGは、酔っ払ったうなぎのような起動を描いた

RPGはハンヴィーに直撃、俺たちは爆風に巻き込まれ、伍長は死亡。俺は全身に傷を負った

イェーガー大尉の言っている肩の傷というのは、飛んできたハンヴィーの破片が刺さったときの傷だ



俺「…昔ちょっとありましてね」

バルクホルン「ちょっとって…普通の傷じゃない!一体―」

俺は、指輪を通したネックレスを大尉たちに見せる

俺「越えられたくない一線なんですよ…何も聞かないでください」

バルクホルン「…わかった(あれって…)」

シャーリー「ほらルッキーニ、俺に謝って(指輪だな)」

恋人がらみでなんかあったんだろう。2人とも、それ以上は何も詮索しないことにした


坂本「ほう、これがカールスラントの最新型か」

少し離れたところで、中佐と少佐が話している

ミーナ「正確には試作機ね。Me262V1。ジェットストライカーよ」

俺「ジェットだと?」

気になる単語が聞こえ、そっちのほうに近寄る

エーリカ「ジェット?」

ミーナ「ハルトマン中尉!」

バルクホルン「こらハルトマン!服を着ろ服を!…ん?何だこれは?」

エーリカ「ジェットストライカーだって」

…あ、あれ?スルー?

坂本「私は気づいとるぞ」

…ありがとう少佐


その後、大尉コンビが言い争ったり、Me262対P-51勝負したりしたけど、割愛

で、時は流れてその日の夜…

俺「…ん~」

友「…見覚えのあるエンジンだな」

Me262を簡易分解して、内部構造を覗いている。ホントは許可取らないといけないんだけど

傍らには酒が鎮座されている。男二人、ハンガーでむなしく晩酌というわけだ

俺も友も、それなりに酔いが回っている

俺「ああ、フェンリルに積まれてるエンジンによく似てる」

友「フェンリルのを真似たって言うのか?でもどうやって」グビグビ

俺「海に落っことしたのがあるだろう」チミッ

友「プハァ あれか…俺たちが探しにいく前に誰かが拾って、そこからこいつを作った」

俺「おそらくな」

どこの誰がどうやって作ったのか知らんが、こいつは欠陥機だ

このまま飛ばすと…

サーニャ「俺さんに、友さん?」

俺「あ、サーニャにエイラさん。これから夜間哨戒?」

サーニャ「はい」ニコッ

エイラ「…酒臭いゾ」キッ

うわ、すげぇ睨まれてる

友「飲むか?」ヒック

俺「未成年に飲ませるなよ」グビッ

友のやつ、本格的に酔ってきてるな

…そういう俺も、ちょっと足がおぼつかないが

俺「2人のユニットの用意はできてるよ」

サーニャ「ありがとうございます。いつもご苦労様です」

俺「なぁに、仕事だからさ」

平然を装ってるけど、内心ちょっとドキドキしてる

意識しているわけでもないわけでもない…ほら、あれあれ、あれだよたぶん、うん

顔が熱いのはさっき飲んだ酒のせいだ。うん


サーニャ「あの、俺さん」

俺「ん?」

サーニャ「えと、その…元の世界に帰りたくはないんですか?」

友「あれ?話したっけ?」ヒック

エイラ「…中佐から聞いたんダ。異世界から来たっテ」

サーニャ「…どうなんですか?」

俺「…向こうに未練がないって言えば、嘘になるよ」

友「俺もだぁ…」グビグビ、プハァ、ヒック

俺「…友、ほどほどにな」

サーニャ「じゃあ…」

俺「いや、今は帰るつもりはないよ。帰る方法もわからんし」

サーニャ「そうですか…
     俺さんたちの居た世界って、どんなところなんですか?」

俺「こっちとさほど変わらないよ」
  大きく違うのは、ネウロイやウィッチが存在しないこと。人間同士が争ってることかな」

エイラ「人間同士が…」

サーニャ「争ってる…」

俺「そうだ。俺も大勢の人間を殺した」

エイラーニャ「「…」」

俺「その代わり、大事な人を失ったけど」チャラ

酔いが回ってるのか、言うつもりのないことを口にする

サーニャ「指輪?」

俺「隊に恋人がいてね。プロポーズする前に戦死した」

エイラーニャ「「!?」」

俺「昔の話だ。そんな顔しないでくれ」

サーニャ「でも…」

シュンと音が出そうな顔をしている

俺「ほ~ら、せっかくのかわいい顔が台無しだぞ?」ヒック

サーニャ「え…///」

俺「あ…///」

…酔った勢いですごいこと言った気がする…全部酒のせいにしよう、そうしよう

エイラ「ムー…サーニャ、さっさと行くぞ」ズイズイ

サーニャ「え?ちょっとエイラ?」

友「(怒ってるエイラさんもかわぇぇ)」ヒック

俺「あ、えっと…気をつけてな!//」

サーニャ「あ、はい!//」

エイラさんはそのままサーニャを引きずるようにして空に上がっていった


俺「…さて、俺らも仕事しよう」

友「エー、ネムイー」ヒック

俺「これを聴きながら作業するつもりだったが、お前は寝るのか」カチッ

友「ん?ラジオ?」

ラジオ『…ザザ…ストライクウィッチーズ、スターライトストリーム!』

友「ぅお!?」

一気に友の顔から赤みが消える。酔い醒めるのはえぇ

俺「エイラーニャのラジオ番組だ」

友「…オー」ワクワク

友のやつ、やる気が出たのか、ラジオが終わるまでに右腕を完成させた

ラジオの放送中、エイラさんはかわいいなぁ、的な事を連呼してたのが少し気になった

俺「…脅しのネタにでも使うか」

そんなことを考えつつ、俺も部屋に戻った

ラジオのサーニャ、ちょっと声が裏返ってた…


―翌日―

俺「なに!バルクホルン大尉が墜ちた!?」

朝、ハンガーで2人を迎えた後、フェンリルの左腕を作っていたとき、そんな話を聞かされた

中佐に聞いた話だと、墜落の原因はあのジェットストライカーにあるようだ

自分に整備させてくれと頼んだが、フェンリルの完成が優先、と蹴られてしまった

サーニャ「バルクホルンさん、大丈夫かな…」

夜、夜間哨戒にいく前の2人と話していた

エイラさんは嫌がったが、パイロットからもらったサルミアッキをあげたら釣れた

俺「原因はあのストライカー。中をいじれればいいんだが、」

エイラ「あれじゃあ、ナ」

ストライカーは発進ユニットに鎖でがっちり固定されていた

サーニャ「あの、フェンリル?でしたっけ?それはどうなってますか?」

俺「ん?あれか?もう歩けるところまでは完成したよ」

エイラ「ナニ!?本当カ!?」

俺「ああ、でもエンジン積んでないからまだ飛べない」

エイラ「な、なんダ」ホッ

俺「…今ホッとしただろユーティライネン中尉?」ジトー

エイラ「し、してないゾ!」

俺「ホントかぁ?」

エイラ「ホ、ホントだっテ~」アセアセ

サーニャ「ムー…エイラ、そろそろ行こ」ズイズイ

エイラ「え?でもまだ「(サーニャ)いいから!」―ちょ、ちょっと!?」

珍しくサーニャが怒ってる?昨日とは逆で、サーニャがエイラさんを引きずって滑走を始める

俺「2人とも気をつけろよ!あと、ラジオ楽しみにしてるから!」

エイラ「なっ!///」

サーニャ「…///」

…あ、今こけそうになった

俺「大丈夫、かな?」

若干フラフラしつつも、2機は夜の空へ上がっていった

今夜のラジオは、どこかたどたどしいというか噛み噛みだったのは言うまでもない
最終更新:2013年02月07日 15:32