あの後、顔合わせを終えた俺は与えられた自室で一息ついていた。運び込んだ荷物をバラしながら、配置を考える。
とりあえず、日用品などをベッドに並べていくことにした。
歯ブラシに煙草、タオルに服……それからエロ本っと。とりあえずこのエロ本は見つからないようにしなければ。
この女所帯で見つかったらヤバイし……だが、これがなければそのうち理性が崩壊しかねないからなー。
エロ本を手に部屋の中を見回す。隠せそうな場所はっと……。

それにしても、と思う。この隊の人達はみんな濃い。
もっさんは訓練訓練うるさいし、宮藤はスク水だし、ミーナ隊長は笑顔なのに怖いし、ハルトマン中尉は人懐っこいにもほどがあるし、バルクホルン大尉は敵意むき出しだし、おっぱもといイェーガー大尉はおっぱいだし、ルッキーニ少尉は虫を近づけてくるし、ビショップ曹長はおっぱいが大きいし、クロステルマン中尉はツンツンしてるし、リトヴャク中尉は愛らしいし、ユーティライネン中尉はめんどくさい。
これからやっていけるのだろうか。全員と有効的な関係を築ければ良いのだが……。

宮藤「俺さん、良いですか?」

俺「ああ、宮藤か? 開いてるぞ」

宮藤「はい。失礼します」

ドアが開いていく。その時、自分の手が握っているものに改めて気づいた。

俺「あ!?」

しまった。まだ隠してない! たった今「見つからないように気をつけよう」と誓ったばかりなのに!




俺「ま、待て宮藤!」

宮藤「はい?」

遅かった。すでにドアは開け放たれている。そして、宮藤の視線は俺の手に注がれていた。
俺は天を仰ぎながら、空いてる方の手で目を覆う。

俺「あー宮藤? その、これはだなー」

どう言い訳したものか……。

宮藤「……」

俺「宮藤?」

返事がない。やはり、ショックだったのだろうか……。

宮藤「………………っぱい」

俺「え?」

今こいつ、なんて言った? まさかとは思うが……。
そこでやっと俺に気付いたかのように、彼女は慌てて頭を振った。

宮藤「な、何でもないです!」

言いながら、視線は俺の手から離れない。
ちなみに、このエロ本の表紙は豊満な胸をもった女性がその胸を大胆にアピールしながら扇情的なポーズを取っているというものだ。

俺「ふむ……」



俺「……見たい?」

宮藤「はい!」

元気良く即答してから、彼女はしまったという顔をした。

俺「ははは、正直な奴だなー」

良いぜ。俺は笑う。

俺「黙っててくれるなら、貸してやっても良いんだよ?」

宮藤「……」ゴクリ

俺「なー宮藤、お前も好きなんだろう? おっぱい」

俺「何もおかしいことじゃないさ。だって、おっぱいには夢がつまっているんだから」

宮藤「お、おっぱい……」

俺「あーそうだ。おっぱいさ」

俺は宮藤の前でパラパラとエロ本を素早くめくる。
彼女はふらふらと手を伸ばすが、俺は本を閉じてそれを彼女から遠ざけた。

宮藤「あ、あぁ……」

俺「見たいだろう? 」



俺「俺がこんなものを持っているということを黙ってる、それだけでお前はこれをじっくり見ることが出来るんだぜ?」

俺「それだけじゃない。今後、俺がこういうものを新しく入手した時は、それを共有してやっても良い」

宮藤「共有……?」ゴクリ

俺「ああ。むしろ、普段はお前が持っていても良いぜ? 俺が見たい間だけ渡してくれれば良い」

俺「つまり、俺が見たいと言わない間は、お前がそれ、いや、おっぱいを独占できるのさ」

宮藤「ど、独占……」

俺「お前はただ黙ってるだけで良いいんだぜ? な? 悪い取引じゃないだろう?」

葛藤が彼女の瞳を流れていく。俺は根気強く彼女の返答を待った。そして……

宮藤「わかりました」

彼女は頬を染め、目を血走らせながら頷いたのだった。
こうして俺は、部隊での立場とエロ本の隠し場所、そしておっぱいを語り合える同士を得たのだった。



俺「それで、何の用だったんだ?」

俺はエロ本の束を紙袋に詰めながら尋ねる。
満足そうにほくほくとしていた彼女はそこでやっと当初の目的を思い出したのか、慌てたように俺の腕を引いた。

宮藤「ご、ご飯の時間です! 急がないと誰か来るかも……」

俺「何!? それは不味い!」

少女の目の前でエロ本を袋詰めしてるところなど見られたら一貫の終わりだ!

俺「これは後だ! 早く行くぞ!」

宮藤「は、はい!」

風を切るようにして2人で飛び出す。ドアを閉めたところで、廊下の奥からバルクホルン大尉が歩いてくるのが見えた。

宮藤「バルクホルンさん、すみません、遅くなって……」

宮藤が申し訳なそうに頭を下げる。

俺「大尉すみません。疲れてたのか、寝てしまっていて」

彼女は数瞬の間俺を値踏みするように見ていたが、小さく鼻を鳴らすと背を向けて歩き出した。

バルクホルン「……せっかくの夕飯が冷める。早くしろ」

俺と宮藤はほぼ同時に安堵の息を吐いていた。




── 食堂

俺「すみません、遅くなりました」

ミーナ「いえ、大丈夫です。俺中尉は、その席でお願いします。さあ、冷めないうちにいただきましょう」

示された席に座ると、みんな一緒に手を合わせ、食事を始める。

俺「これは……!」

エーリカ「美味しいでしょ? 宮藤とリーネが作ったんだよー」

俺「ああ、これは上手いな! これだけでもここに来た甲斐があると思えるほどだ」

宮藤「そ、そんな……褒めすぎですよ」テレテレ

宮藤は照れくさそうに笑い、ビショップ曹長も嬉しそうに微笑した。少しは警戒心を解いてくれただろうか。

エーリカ「で、ねー俺! さっき言ってた何とかって必殺技いつ見せてくれるの?」

俺「え、まあいつでも構いませんけど、地味ですよ?」

シャーリー「なんだ? 私も見たいなそれ!」

ルッキーニ「シャーリーが見るなら私もー!」




俺「あー、何なら今見せましょうか?」

シャーリー「できるのか!?」

俺「まあちょっとしたレベルなら……この箸で」

チラリとミーナ隊長を見やる。彼女は渋い顔をした後、ため息と共に頷いた。
食事の席でこういったことをして良いものかとの懸念があったが、一応許可はおりた。

俺「では……」

俺は立ち上がると、デザートにと置いてあったオレンジの切り身を手に取った。

俺「あ、念のため頭は低くお願いしますね」

言ってオレンジを真上へと投げる。箸を固く握り締めると、俺は真上へと強く箸を振り抜いた。
オレンジの皿を用意するのと同時に2つになったオレンジの切り身がポトリポトリと落ちてくる。
回りからは感嘆の声。

俺「はい、こんな感じです」

綺麗に真っ二つになったオレンジを見せるようにして、テーブルへと置く。

エーリカ「……地味」

俺「だから言ったでしょう?」

エーリカ「むぅ……どうせならもっと凄いの切ってよ!」

俺「えー……」




坂本「……おい、俺。天井を見てみろ」

もっさんのこめかみにうっすらと青筋が浮かんでるような……。嫌な予感はするものの、見ないわけにはいかない。恐る恐る天井を仰ぎ見る。

俺「Oh……」

天井に小さいが、はっきりとした傷が……すっぱりと割れ目ができていた。割れ目か……ゴクリ

ミーナ「俺さん?」

俺「はっ……あー、いや、その、」

冷や汗をかきながらハルトマン中尉を見る。って居ねぇぇぇぇぇ! しかも、しっかり完食してやがる。続いておっぱ、あ、いや、イェーガー大尉を見るが、目を合わせてくれない!
最後に恐る恐るミーナ隊長を見る。笑っていた。笑っているけど

俺「こわっ!」

ミーナ「はい?」

俺「あ、すみませんでしたぁ!」

坂本「俺は食後、私と来るように」

俺「え」

ミーナ「不満が?」

俺「無いです」




坂本「さて、俺、来い」

俺「……はい」

去り際に皆が同情的な目で見ているのがわかった。おいおい、何されるんだよ……

俺「もっさん少佐」

坂本「なんだ」

俺「これからいったい何を……」

不安な俺とは対象的に、彼女は清々しいまでの笑顔で言った。

坂本「訓練だ!」

俺「え、何それ意味分かんない」

坂本「ほぅ……」



俺「うぅ……」

俺はよろよろと廊下を歩く。時刻は深夜。体はガタガタ。
もっさんの訓練を受けた結果がこれだよ。いや、あれは罰なのだろう。そう、正に地獄だった……。

俺「もう寝よう」

力無く自室のドアを開ける。

エーリカ「あ、俺、おかえりー」

俺「」

俺は無言でドアを閉めた。目頭を指で押さえて大きく息を吐く。
あれ、おかしいな……幻覚が見えた。どうやら訓練で相当参っているらしい。はは、今夜はぐっすり寝れそうだな。
再びドアを開ける。

エーリカ「おー、俺ー」

俺「」

俺はその場で力なくくずおれた。

俺「なんでここに居るんですかぁぁぁぁぁ……」





エーリカ「いやー、少佐に連れてかれたから、大丈夫かなーと思って」

俺「大丈夫じゃないです。疲れてるので早く帰ってください」

エーリカ「あららー? そんなこと言って良いのかなー? 私は俺の秘密を知っちゃったんだけどなー」

ははは、こやつ何を言ってやがる。
俺は苦笑交じりに顔を上げた。

俺「」

ハルトマン中尉は確かに俺の秘密を握っていた。そう、宮藤に預けるはずだった"お宝"だ。

俺「あ、あ、あ、」

パクパクと口が動くが言葉がでない。
最悪だ。よりにもよって、一番口が軽そうなのに見つかってしまった。

エーリカ「ふふふー」

彼女は怪しく笑う。エーリカマジ天使! なんて言葉があるが、今の彼女はむしろその逆。「黒い悪魔」その異名そのままに見えた。

俺「な、何が望みです……?」

エーリカ「うーん、どうしようかなー」




エーリカ「とりあえず、敬語は止めて、私のことはエーリカで良いよ。階級も一緒でしょ?」

俺「……わかった。それで?」

エーリカ「まずは、トゥルーデと仲良くなってもらおうかな!」

あら、意外。彼女はもっと私利私欲のための命令をしてくると思っていたが。ちょっと勝手な印象を持ちすぎたかな?

エーリカ「もう、トゥルーデがイライラしちゃってさー。ほら、ここって女所帯でしょ? トゥルーデったら君のこと警戒しっぱなし。あんなんじゃそのうち倒れちゃうよー」

俺「まあ俺だって皆とは有効的な関係を築きたいとは思ってるけどさ……」

あの人、敵意むき出しじゃん。正直怖いわ。

エーリカ「大丈夫だよ。トゥルーデはただ、君のことを信頼できてないだけだから」

俺「なんだ? つまり、大尉の信頼を勝ち取れ! ってことか?」

それが出来れば苦労はしないよ!

エーリカ「む、嫌なの? だったら……」

俺「やります! 仲良くなります!」

この悪魔め……。

エーリカ「良かった」ニコッ

ちくしょう、可愛い!
最終更新:2013年02月15日 12:27