── 数日後

俺「ふわぁぁ……ねみぃ」

大きな欠伸をしながら基地内を歩く。宮藤を探しているのだが、何やら見当たらない。
そういえば、今日は訓練してる姿も見てないな。

俺「せっかく整備兵から良いおっぱいを借りたのに……」

坂本「……真っ昼間から何を言っているんだ、お前は」

俺「うわぁ! もっさん!?」

聞かれてたか?

坂本「お前も男だからな。そういうことに興味を持つなとは言わないが、こんな往来で昼間からそんなことを言うのはどうかと思うぞ」

聞かれてた!

坂本「まあ良い。煩悩が浮かぶのなら、元気なのだろう? 俺、少し付き合え」

俺「えっ」

坂本「訓練だ!」

俺「」




俺「嫌だ! ちゃんと自分のメニューはこなしてる! なのに何故さらに訓練しなくちゃいけないんだよ!」

坂本「わっはっはっ! 良いではなか。訓練は大事だぞ。死なないためにもな!」

俺「縁起でもないこと言うな!」ダッ

脱兎の如く逃げ出す。

坂本「わっはっはっ! 逃がさん!」ダッ

俺「うわぁ! 追ってくるなよ!」

坂本「わっはっはっはっはっはっ!」

俺「怖っ!」





俺「はぁ…はぁ……」

別に興奮してるわけじゃないぞ。走って疲れてるだけだ。

俺「とりあえず、まいたか」

大きく息を吐く。さて、宮藤はどこかなー。

エーリカ「あ、俺ー!」

俺「げっ、エーリカ!?」

前方に黒い悪魔を確認。笑顔で駆け寄ってくる。
逃げ──。

エーリカ「俺ぇ!」ズダン!

悪魔が飛んできた。ズダン! なんて力強く地面を蹴り抜いちゃってまあ……。

俺「ぐふっ!」

頭が、鳩尾に……。

エーリカ「しっしっし。逃がさないよー」

俺「……う、うん。逃げないから今度からは止めてね」




俺「あのねぇエーリカ。本来は可愛い女の子に飛びつかれるというものは至福であってしかるべきなのだよ。わかるかい?」

エーリカ「私は可愛い?」

俺「いや、そういうことじゃなくて……」

エーリカ「?」ニコッ

俺「くっ」

いかん、このままではいいように籠絡されてしまう。

俺「正に悪魔だな……」

エーリカ「ん~?」ニコニコ

俺「なんだ、天使か」

天使なら仕方ないな。





俺「で、何の用だよ。俺は今宮藤探してんだよ」

エーリカ「宮藤ならしばらくいないよー」

俺「え、何故?」

エーリカ「何かどっかで特訓してるんだって。基礎から鍛え直すとかって少佐がいってたもん」

つまり合宿? なにそれ楽しそう。
扱く相手がいないからもっさんも暇してたのか。もう見つからないようにしないと……。

エーリカ「そんなことよりも俺、凄いんだよ! 狐が、尻尾が3本ある狐が!」

俺「狐? あー」

エーリカ「うん?」

俺「それ知ってるわ」

エーリカ「ほんと!?」






俺「まあちょうど良い機会か……おい、居るんだろ?」

俺の呼びかけに応えるように、ふわりと物陰からその姿を現したのは金色の毛並みが美しい3本尻尾の狐。

狐「……」

俺「紹介しよう。俺の使い魔で狐の陽子ちゃんです!」

エーリカ「え」

俺「陽子ちゃんはこう見えて超凄いんだぜ。何せ、俺達の何百倍も生きて」

狐「っ」ガブッ

俺「痛い!」

狐「ぬしよ、れでぃの年を軽々しく口にするのはどうかと思うのじゃが」

俺「噛みながら喋るなんて、器用ですね」

狐「……」グッ

俺「俺が悪かったので足から口を放してください。痛いです」

エーリカ「喋った!?」

俺「どうだ、凄いだろ」フフン

狐「何故ぬしが偉そうにする」




エーリカ「す、凄いよ俺! 尻尾が3本ある狐なんて、どこで見つけたの!?」

俺「見つけたというか……まあいろいろあってな」

エーリカ「いろいろ?」

俺「あれは、俺が魔力に目覚めた年の冬のことだった。俺はその頃、上手く魔力制御ができなくてな……」

エーリカ「長い。早送りしてよー」

俺「そんなわけで陽子ちゃんと契約することになったのさ!」

エーリカ「し過ぎ!」

俺「しろって言うから……」

エーリカ「じゃあ巻きも」

坂本「わっはっはっはっは! 俺ぇ! 見つけたぞ!」

俺「げぇ! もっさん!?」

まだ捜してたのかよ!? すげぇ汗だくになってやがる……





坂本「さあ俺、一緒に訓練をしようじゃないか。そうだ、久しぶりに剣の手合わせをしよう! きっと気持ち良いぞ?」ハァハァ

俺「お、落ち着けよ少佐殿……俺はほら、今からエーリカと用事が」

坂本「何を言っている。ハルトマンなどどこにも居ないではないか」

俺「えぇっ!?」

また居なくなってやがる! いったいどうなってんだ!? 逃げたな……

俺「よ、陽子ちゃん……」

狐「ん?」

俺「後は任せたぁ!」ダッ

三十六計逃げるに如かず!

狐「なぁ!?」

坂本「……」

狐「くっ……」チラリ

坂本「……」ニヤリ

狐「ふ、ふん。残念だが、妾に訓練は不要だぞ、坂本」

坂本「……わかっている。だが、久しぶりの再会なんだ。少し付き合ってもらおう」




── ハンガー内

俺「ぜぇ……ぜぇ……」

疲れた。もうこれが訓練な気がしてきた。

シャーリー「お? 俺じゃないか」

俺「な、なんだ。シャーリーか」

シャーリー「何してるんだ? こんなところで」

俺「いや……もっさん少佐から逃げていたらいつの間にか」

シャーリー「ははは、なんだそれ。まあ良いや、俺、ちょっと付き合えよ」

俺「いいけど、訓練はごめんだぞ」

シャーリー「はは、違う違う。お前のストライカーなんだけどさ」

俺「紫ちゃんがどうかした?」

シャーリー「少しチューンしないか?」

俺「ふむ……?」

シャーリー「ほら、前の勝負の時だって曲がれなくて困っただろ?」

俺「まあ確かに、今より性能が良くなるならそれもやぶさかではないが……誰がやるんだ? 俺は最低限の知識しかないからとてもじゃないができないぞ?」




シャーリー「それはわた」

整備兵「話は聞かせてもらったぞ!」

シャーリー「しが──って、え?」

俺「お?」

整備兵「俺よぉ、水臭いじゃないかー。そんなことだったら真っ先に俺に言えよな」

俺「いや、まあ無理してする必要もな」

整備兵「良い! みなまで言うな! わかってるさ、愛しの紫ちゃんが他人の手で弄られるのが嫌だって言うんだろう?」

俺「いや、そんなこと言ったら整備してもらってる時点で」

整備兵「うんうん。ウィッチにとってストライカーは相棒、いや、恋人と言っても過言じゃないもんな。だから、名前なんてつけてるんだろう?」

俺「いやいや、だからそういうことじゃなくて」

整備兵「安心しろ、俺が全部教えてやるからさ! ほら、行くぞ」ガシッ

俺「え、いや、待てよ。話を聞」

整備兵「では大尉、失礼します! うはは、楽しみだなー」

俺「ああああああああああ」ズルズル

シャーリー「……人の話を聞かない奴だったなー。私が弄くり回したかったのに……まあいいか。私は私のマーリンでも弄ろう」







整備兵「それで、いったいどんなふうに改良したいんだ?」

俺「……あのねぇ、友。俺は別に無理してチューンしたいわけじゃ」

友「建前は良いんだよ! エロ本を貸し借りする仲だろう?」

俺「はぁ……じゃあとりあえず、旋回性能を上げたい。できれば、トップスピードを下げないままで」

友「ふむふむ?」

俺「欲を言えば、俊敏性も欲しい。敵の攻撃に当たらないためのな……ともかく、今よりも性能が下がらなければ良い」

友「がはは、結構注文があるじゃねぇか! 良いぜ、1から10まで全部教えてやるよ」

俺「別にお前がやってくれても良いんだけど」

友「まあそういうなよ、ストライカーに詳しくなっといても損はないぜ?」

俺「はぁ……はいはい。わかった。わかりましたよ」





────

狐「で、話とは何だ?」

坂本「俺のシールドについてだ。あいつに直接聞いてもろくに答えてはくれないだろうからな」

狐「……」

坂本「やはり、駄目なのか?」

狐「その問いには、昔答えたはずだ」

坂本「だが、もしかしたら、ということもある。魔力減衰は始まっていないのだろう?」

狐「あやつのシールドの脆弱性は先天性のものじゃ。魔力減衰の有無は関係ない。じゃが……あやつももう18だ。減衰がいつ始まってもおかしくはないのぅ」

坂本「……」

狐「坂本、この事は他言無用じゃぞ」

坂本「しかし……」

狐「妾はあやつの頼みを無下にはできん」




坂本「それで俺が危険に晒される可能性があるとしてもか」

狐「ああ」

坂本「……わかった。だが、もしもの時はみんなに話す」

狐「うむ、それで構わん。もっとも、あやつがまともに被弾するような事があれば死ぬかもしれないがの」

坂本「陽子!」

狐「……案ずるな。シールドだって全く使えないわけではない。光線の余波を防ぐぐらいならできる」

坂本「だが、直撃には……」

狐「固有魔法を使えば、たとえ0でも1000になる」

坂本「だが俺は、普段は防御の上昇に全く能力を使っていないではないか!」

狐「当然じゃ。俺は当たらないために能力を使っておる。もしも当たったら、などと後ろ向きな考えはあやつには無い」





狐「それよりも……シールドを使えないのは坂本、ぬしもだろう?」

坂本「っ!?」

狐「あやつの心配をする前に、自分の心配をすることじゃな」

坂本「わ、私はっ! 私は、まだ戦える……」

狐「ぬしの実力と決意を疑いはしない。俺の心配をしてくれていることも礼を言おう。じゃがな、坂本」

狐「俺の足を引っ張ることは許さん。ましてや、それが原因であやつの身に危険が及んでみろ。妾は────」





狐「ぬしを空から引きずり落ろし、その喉を喰い千切る」
最終更新:2013年02月15日 12:28