俺「ふんふ~ん、と♪」

廊下をふらふらと歩く。 今日も良い天気だ。その陽気に自然と気持ちも晴れる。もっとも、それで大尉がおかしくなってしまった件がなくなるわけではないのだけれど

「――だと!?」

俺「ん?」

今の声は……? 何やら荒っぽい声だったが……。 いけないと思いつつも、声が聞こえてきたドアに耳を当てる。

「――が――――けど――い?」

「――いな――――は――も――い」

俺「よく聞こえないな」

てか、この部屋何の部屋だっけ?

俺「……隊長の執務室じゃん」

つまり、今のは何か大事な話? 気になるけど、聞くのは不味いかな……。

宮藤「俺さん! 見つけましたよ!」

エイラ「オマエ! 自室療養のはずだろ! こんなところで何やってんだよ!」

俺「む、見つかった!?」

なら、逃げる!

エイラ「オイ! 待て!」





バルクホルン「ん? おい中尉、廊下は走るな。危ないだろう」

俺「ひっ、大尉!?」

バルクホルン「? 何を脅えているんだ」

バルクホルン「流石に少し、悲しいのだが……」

俺「え、いや、だって、ん……?」

俺「大尉、昨日言ってた俺が弟で妹がどうとかって話は……」

バルクホルン「中尉が私の弟? ……寝ぼけるのも大概にしとけ、中尉」

スタスタスタ

俺「……あれ?」

エイラ「俺、やっと捕まえた……」ゼェゼェ

エイラ「……どうした?」

俺「いや、何か大尉が……普通だった」

エイラ「エ……まあ、それなら安心して妹を迎えられるんじゃないか?」

俺「そうではあるのだけど……なんか、釈然としないというか」

エイラ「アレを見た私も、その気持はわからないでもナイ。でも、何もないならそれで良いんじゃないか?」





俺「……う~ん」

エイラ「まあ深く考えるなヨ。ほら、部屋に戻るぞ」

エイラ「あ、その前に、ミーナ隊長に妹のこと相談してこいよ」

――――
―― ミーナの執務室

ミーナ「え、休暇?」

俺「ええ。妹が来るようなので、できればそれに合わせて休みを頂きたいんです」

ミーナ「そうね……うん。良いんじゃないかしら。病み上がりだしね」

ミーナ「せっかくだから、妹さんと一緒にゆっくり羽を伸ばしてきなさい」

俺「良いんですか!? ありがとうございます!」

トントン ガチャ

坂本「ミーナ、例の試作機が届いたようだ」

ミーナ「ええ、今行くわ」

俺「試作機?」






坂本「ん、俺?」

俺「や、もっさん。おはー」

ミーナ「ええ、カールスラントから届いた新型機よ」

俺「へぇ~……新型、ねぇ」

坂本「……俺、少し話がある」

俺「ん?」

坂本「ミーナ、すまないが先に行っててくれるか? 私もすぐに行く」

ミーナ「……」

ミーナ「ええ、わかったわ。ああ、俺さん。ストライカーの件だけど、とりあえず予備のもので良いかしら? いくつかあるから、時間がある時に確認しておいてくれる?」

俺「わかりました。ありがとうございます」

ミーナ「それじゃ、俺さん。妹さんと仲良くね」

坂本「妹?」

俺「ああ。言ってなかったか? 今度妹が来るからさ、それに合わせて休みをちょろっと」

俺「それで、話ってなんだ?」





坂本「これは、あくまで私の予想なのだがな、俺……お前、まだ何か隠してないか?」

俺「何の話?」

坂本「お前がシールドを張れないのは本当に先天性のものなのか? それに、そのことを隠したかったのは何故だ」

俺「……心配してくれてるのか? 優しいな、もっさんは」

坂本「はぐらかすのは無しだ。お前が望むなら、他言はしない」

俺「……本当に何もないよ?」

坂本「俺、私は信用できないか」

俺「そんなことはない。もっさんには昔世話になったし――」

坂本「なら……!」

俺「……」

俺「守りたいものがある」

俺「シールドが張れないとバレたら、もう戦わせてもらえなくなると思った。そうなったら、それはもう守れない。だから隠した」

坂本「……守りたいもの?」

俺「償いと、誓い……なんてのは、綺麗事かな。俺はさ、もっさん……本当なら殺されても仕方ないぐらいのことをしているんだよ」

坂本「何を言っている?」

俺「秘密の話さ。俺の、秘密……」






俺「俺の経歴を詳しく調べればわかる。提出した書類には、わざと載せられてないことがあるんだよ」

俺「でも、知られるのは正直、怖いな……きっとみんな俺に失望する」

坂本「どういうことだ……?」

俺「そのままの意味だよ。でも、今度妹が来るんだ。それまでは……みんなと笑うことを許して欲しい」

俺「もう隠し事はない。じゃあな」スタスタスタ

坂本「……俺」

俺「……」ピタリ

坂本「お前に昔、何かがあった。そういうことなんだな?」

坂本「わかった。このことは、しばらく私の胸の中にしまっておこう」

俺「……」

坂本「もしお前が、お前のいうような人物なら……調べなくても自ずと露呈していくだろう」

俺「……悠長だな。自覚してれば隠すのは簡単だ。何かが起きてからじゃ遅いんだぜ?」

坂本「必要だと思えばその前に調べるさ。だがな俺、私はこれでもお前を信頼しているんだ。だから、今は私の目に映っているお前を信じたい」

俺「……ありがとう、もっさん。その気持ちは凄く嬉しい。でも……」

俺「でもそれは、当事者じゃないから言える言葉だ」





―― 外

狐「……何故あんなことを話した?」

俺「何でかな……どうせばれるなら、早いうちに自分から言った方が傷が浅く済むと思ったのかもしれない」

俺「でも……逆効果だったかな。もっさんの信頼が怖い。泣きそうなぐらい嬉しかったのに、同時にその信頼がなくなった時のことを考えてしまう」

狐「……」

俺「……本当は、受け入れて欲しかったのかもしれない。もっさんにエイラ、宮藤にエーリカ……ここのみんなは俺を何の疑いもなく信頼してくれてる。そんな良い奴ばかりだ」

俺「だから少し……期待した。馬鹿みたいだよな。今は後悔しかないよ」

俺「たぶん俺は、優しい言葉をかけて欲しかっただけなんだ……」

狐「……ぬしよ。妾は」

エイラ「俺!」

俺「……エイラ?」

エイラ「部屋に戻れって言ったダロ! セッカクワタシガ……」

俺「え?」

エイラ「な、何でもナイ!」

エイラ「ん? 狐もいたのか。何話してたンだ?」





俺「何でもないよ。ただの世間話」

俺「しっかしお前も暇だねー。俺の世話なんかやいて楽しい? 前はリトヴャク中尉にべったりだったのにさ」

エイラ「ナンダヨ。迷惑なのか……?」

俺「そうは言わないけどさ」

エイラ「オマエには……これでも感謝してるンだゾ」

エイラ「だから、少しでもお礼をしようと思って……」

俺「そんなこと、気にしなくて良いんだぜ。あれは、俺がしたいからそうしただけだし」

エイラ「ウルサイ。そレなら、私だって私がしたいからしてるだけだ」

俺「ふむ……?」

エイラ「ともかく、私に何かして欲しいことがあったら言えヨ」

エイラ「ア、でもサーニャとの仲を取り持つとかは駄目ダカラな! サーニャには手出すなよ! 良いか! 絶対だゾ!」

俺「はいはい……ん?」

空を誰か飛んでるな……。片方は見慣れない真っ赤なストライカーを履いている。

俺「あれは、何をしているんだ?」

エイラ「何か、ジェットストライカーとかいう新型のストライカーが届いたラシイ。その試験を兼ねて大尉とシャーリーが勝負してる」





俺「ふぅん。あれが新型ってやつか。すげぇなー」

ジェット、ね。正直想像以上だな……。

俺「ちょっと、履いてみたいな」

エイラ「大尉が相当気に入ってるみたいだから、たぶんムリダナ」

俺「大尉が? まあいいや。ちょっと行ってみようぜ」

エイラ「……仕方ないナ。狐も一緒に……って、いなくなってる」

俺「……行こうか」

―― ハンガー

エイラ「サーニャ!」

サーニャ「……エイラ」

サーニャ「良かった。ちゃんと見つかったのね」

俺「何が?」

エイラ「オマエだよ!」

俺「え、俺?」





エイラ「良いか! オマエ、あんまりサーニャに心配かけるなヨ!」

サーニャ「……そんなこと言って、一番心配してるのはエイラでしょう」クスクス

エイラ「うわわ、サーニャぁ!」

サーニャ「ふふ、俺さん、改めてお礼を言わせてください。エイラを助けてくれて、ありがとうございます」

俺「ああ、いや……どういたしまして。風邪はもう良いのかい?」

サーニャ「はい。おかげさまでもう……ご迷惑をおかけしました」

俺「そっか。それは良かった」

シャーリー「お! 俺じゃないかー。はは、お前も見物に来たのか?」

俺「まぁな。療養中で暇だし……で、どうなのよ。アレ」

シャーリー「ジェットストライカーか? 正直凄いよ。まぁ私も簡単に負けるつもりはないけどな!」

バルクホルン「……ふん。負け惜しみにしか聞こえないぞ、大尉」

俺「で、次は何の勝負すんの?」

宮藤「その前に俺さん、朝ご飯をどうぞ」

俺「おー、ありがとう。あ、宮藤ー後で俺の部屋来いよ。良いおっぱいが手に入ったんだ」コソコソ

宮藤「本当ですか? 行きます行きます」コソコソ

俺藤「「ふへへ」」




ペリーヌ「今度は何ですの?」

リーネ「搭載量勝負だそうです。重い物をどれだけ持てるかって」

ペリーヌ「それよりシャーリーさんは、胸の搭載量を減らした方がよろしいんじゃなくって?」

俺「ははは、クロステルマン中尉はおかしなことをいうなー。おっぱいを減らす? 正気の沙汰じゃないぜ……はっ! まさか、自分がまな板だからってそれに嫉妬してるってのか!?」

ペリーヌ「まなっ……!?」

宮藤「そんな!? どんなおっぱいにも価値がある! そうですよね!?」

俺「そうともさ! 中尉の無乳にだって巨乳と同じだけの価値がある! 洗濯板にしかならない!? そんなことを言う奴がいたら、俺がその戯言をぶちこぶべらっ!」

宮藤「俺さん!?」

ペリーヌ「いったいなんですの!? 急に出てきて私を侮辱して!」

宮藤「違うんです! 俺さんはただ、シャーリーさんのおっぱいもペリーヌさんのおっぱいも、両方が素晴らしいってことを言いたかっただけなんです!」

ペリーヌ「な、何言ってますの!? 破廉恥で」

俺「そう! 中尉のおっぱいも素晴らしい! たとえ、揉めないとしても!」

ペリーヌ「……あなたたちの気持ちはよくわかりましたわ」

宮藤「じゃ、じゃあ……」パァァァ

ペリーヌ「」ニコッ





エイラ「……何やってんだアイツラ」シニナサイ!

サーニャ「ふふ、良かったねエイラ」ウワワ、ペリーヌサンヤメテクダサイ!

エイラ「エ?」ギャァァァア!

サーニャ「俺さんが元気になって」オ、オレサァァァン!?

エイラ「うぇェッ!? な、何言ってんダヨサーニャ! わ、私は別に……その、お、お礼! 命を助けてもらったお礼に心配してるダケダ!」

サーニャ「……うん。そうだよね」クスクス

エイラ「そ、ソウダゾ。私はサーニャがいれば……ゴニョゴニョ」

サーニャ「……クス」

俺「はぁ……はぁ……」ボロボロ

エイラ「オイ俺、バカやってるだけなら部屋に戻って休んでろヨ」

俺「いや、そんなことよりびっくりした。俺の幻想が打ち砕かれた。クロステルマン中尉のこと、口調からお淑やかなお嬢様系だとおもってたら、ビリビリ眼鏡娘だった」

エイラ「オシトヤカ? ツンツン眼鏡には似合わない言葉ダナ」

ペリーヌ「エイラさぁん! 聞こえてますわよ! それから俺中尉! あなたさっきから失礼なことばかり」

俺「あわわ! こ、こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻らせてもらうからな!」

ペリーヌ「ちょっと、話はまだ……!」





── 自室

俺「さて……陽子ちゃん」

狐「……」

俺「昨日のこと、考えてくれた?」

狐「どちらの話じゃ」

俺「俺強化計画」

狐「……結論から言うと、可能かもしれん」

俺「ほんとか?」

狐「坂本の烈風丸が光線を斬れるのは、おそらく魔法力が込められた刀身、或いはそこから吐き出されている坂本の魔法力による力が大きいはずじゃ」

狐「ぬしが能力を使っている時、ぬしの刀は魔法力に包まれておる。ならば、その魔力でできた刃ならば坂本と同じようにネウロイの光線を弾くことができるかもしれん」

俺「やっぱり? 俺の思った通りだぜ」

狐「じゃが……その包んだ魔力がネウロイの光線よりも強くなければ危険じゃ。普段、回避に能力を振っているぬしにそれだけの余裕があるのか?」

俺「ふむ……攻撃に1割振っただけじゃ無理?」

狐「妾は反対じゃ」

俺「そっか。どうしたものかね……」





俺「尻尾2本……その状態で能力振ったら何分持つ?」

狐「それは、妾と繋がるだけでなく、固有魔法も"それに合わせて"使うということか?」

俺「うん」

狐「……繋がるだけなら一晩。固有魔法も合わせるなら……2時間といったところじゃろう。それも、魔力が全快している状態で、じゃ」

俺「短っ! 極端に下がり過ぎじゃね!?」

狐「当然じゃ! 妾と魔力を共有するだけじゃない。10しかないものを無理矢理20に増やすのと同義なんじゃぞ!?」

狐「本来なら不可能なことをしておるんじゃ。それを自覚しろ!」

俺「む……はぁーあ、強くなれないもんかねぇ。隠された力! とか戦闘民族の血! とか卍☆解! とかあれば良いのに……」

狐「くくっ、そうじゃの。戦闘民族の血が流れてれば、死にかけたことで強くなれたかもしれんのにのぅ」

俺「ははは、何だそりゃ。そうだったら最高だったね」

トントン ガチャ

俺「お?」

宮藤「俺さん、私です。お昼ご飯持って来ましたよー」

俺「おー、ありがとう。言ってくれれば俺が行ったのに、わざわざすまんねぇ」

宮藤「良いんですよー。それでですね、俺さん、でゅふ、その……おっぱい、おっぱいを見せていただいても良いですか?」ジュルリ





俺「はは……そういうことか。ちょっと待ってな」ガサガサ

宮藤「はい!」

俺「……」ニヤリ

宮藤「……」ニヤリ

俺藤「「でゅふふ」」

エイラーニャ「「」」ドンビキ

俺「ほわぁっ!?」

宮藤「わわっ、エイラさんにサーニャちゃん!?」

エイラ「な、何してんだよオマエラ……」

サーニャ「芳佳ちゃん、それ……」

宮藤「あわわ、な、何でもないですよ!?」ササッ

エイラ「」ジトー

俺「う、ぇえっとぉ……」

エーリカ「お困りのようだね」フゥー

俺「ひあぁっ!?」ビクン





俺「おまっ、いつの間にここに? てか、何で部屋の中に!?」

エーリカ「にしし、これ、宮藤の本とこっそり取り替えなよ」

そう言って彼女が取り出したのは、ウィッチについて特集されたゴシップ誌。なるほど、エロくは無いが表紙に女性がデカデカと描かれている点はよく似ている。俺はそれを受け取ると、それとなく宮藤に近寄り、後ろ手に隠されたエロ本とゴシップ誌とを取り替え

宮藤「」グッ

ん? 取り替

宮藤「」ググッ

取り

俺「」ググ

宮藤「」グググッ

俺「いや、放せよ!?」

この状況でエロ本死守してどうすんだよ!?

エイラ「ン? やっぱりオマエ、何か隠してるダロ!」

俺「そ、そんなことないでゴザルヨ!」

サーニャ「……ござる?」

エイラ「ヨ?」




俺「くっ、来い宮藤!」ダキカカエ

宮藤「わわ、俺さん!?」

俺「敏捷5、速度5!」

エイラ「俺!?」

俺「ふはは、また会おう! 天使達よ!」

エーリカ「あ! 待って!」ガシッ

俺「いぃっ!?」

ビタン

俺「ってぇ……宮藤、無事か?」

俺「こらエーリカ! 人の足を掴むのは危ないから止めなさい!」

サーニャ「……あの」

頭上からのか細い声。見上げると、まず目に入ったのは艶やかな黒色をしたストッキング パンツ?。そして、それに包まれた形の良いヒップと脚線の絶妙なライン。黒色の下からうっすらと浮かび上がる肌色はとても扇情的で、同時に美しくもあった。

俺「」ゴクリ

エイラ「っ!?」

エイラ「死ネっ!」





ギャアアアァァアアァア
サーニャヲソンナメデミンナァァァァァ!
オレサァァァァン!?

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最終更新:2013年02月15日 12:30