気付いたら朝だった。おかしい。体の節々が痛む。頭も痛い。記憶も飛んでいる。

俺「……陽子ちゃん」

狐「昨日のことなら、ドアの外におる奴に聞け」

俺「?」

ガチャ

エーリカ「にへへ、バレてたか」

俺「エーリカ?」

エーリカ「説明してあげるよ」





かいつまんで話すと、つまりこういうことらしい。エロ本見つかりそうになる。逃げようとする。転ぶ。リトヴャク中尉の下半身凝視。エイラに殺られる。エーリカがその後のフォロー。

俺「ふむ……それは、世話をかけたな。ありがとう」

エーリカ「気にしないで。トゥルーデと仲良くなって、荷を降ろしてくれた俺には私も感謝してるしね」ニコッ

俺「まあそもそも大尉が荷を持つことになったのは、俺が原因だしな。それにしてもお前、何か優しいな。さては天使か?」

エーリカ「にしし、これで俺は私に弱みを握られただけでなく、借りまでできちゃったね?」ニコリ

なんだ、悪魔か……。

俺「……冗談だろ?」

エーリカ「……」ニコッ

俺「この悪魔めっ……!」

エーリカ「え?」

俺「あ、うそうそ! エーリカマジ天使!」

俺「嘘だって!」

俺「ホントだよ! EMT! EMT! ね?」

俺「えっ、え……? ちょ、それ……正気? もう料理はす待て待て待て! 止めっ、ぅぷ……お願い、待」

俺「っ!?」





エーリカ「どう? 美味しい?」

俺「」ガクッ

宮藤「ハルトマンさん!」

エーリカ「宮藤?」

エーリカ「どうしたの? そんなに慌てて」

宮藤「バルクホルンさんが!」

エーリカ「え……?」

俺「……」

────
── ハンガー

目の前には渦中の真っ赤なストライカー。話によると、大尉はこれで魔力を激しく消耗して墜落したらしいが……。

俺「陽子ちゃん、どう思う?」

狐「……妾に機械のことはわからん」

俺「ふむ……まあ良いか」

俺にはどうしようもないし。それよりもまずは……。

俺「余ってるっていう予備のストライカーはどこだろう」





友「よお俺、無事で何よりだ。しかししぶといなー、お前」

俺「友か。久しぶりだな」

俺「調度良い。予備のストライカーってのを見せてくれないか?」

友「予備? ああ、お前のストライカー海の藻屑になったもんな」

友「こっちだ。来い」

────
友「お前にお勧めなのはやっぱりこれだな。零式艦上戦闘脚」

俺「ふむ……」

友「不満か? 確かに防御力は低いが、運動性といい活動時間といい、被弾数0を謳うお前にはぴったりだと思うがな」

友「まあ他にもあるぜ? Bf109なんかも」

俺「いや……零式で良い。それからこれ、俺用に改造してくれよ。俺もできるだけ手伝うからさ」

友「ほぉ……要望は? 前に言ったこと以外で何かあるのか?」

俺「そうだな……例えば、膨大な魔法力に耐えられるストライカーを作るってのもできるのか……?」

友「……どういうことだ?」





俺「──って感じなんだけど」

友「……」

俺「どうよ」

エイラ「俺!」

俺「ん、エイラ?」

友「行ってやれ。さっきのことは、少し考えてみるからよ」

俺「わかった。よろしくな」

────
俺「よおエイラ、リトヴャク中尉は一緒じゃないのか?」

エイラ「サーニャは今寝てる。それよりオマエ、昨日の事……」

俺「ん、ああ。安心しろ。残念ながら覚えてない」

エイラ「……本当ダロウナ?」

俺「ああ。何をしたのかわからんがお前……せっかくのリトヴャク中尉のローアングルビューを記憶できなていない俺の悲しみがわかる?」

エイラ「……」ギロリ

エイラ「サーニャをそんな目で見んなァ!」

俺「冗談だからそんなデカイ声だすなよ。びっくりするだろ」





エイラ「まったく……何度も言うケドナ、間違ってもサーニャには手を出すなよ! 出したらいくらオマエでも許さないからナ!」

俺「わかったわかった。安心しろ……って、サイレン?」

エイラ「……ネウロイ。良いか! オマエは部屋にいろヨ!」タタタ

俺「……ふむ」

────
── エーリカ&バルクホルンの部屋

俺「大尉」

バルクホルン「……中尉か。何の用だ。お前も自室待機のはずだろう」

俺「せっかくなのでお話しようと思いまして」

バルクホルン「……」

俺「……ん?」

大尉の耳……あれは、インカム?

バルクホルン「何だ。話があるなら早くしろ」

俺「……ジェットストライカー、あれ凄いらしいですね」

バルクホルン「……」





俺「でも大尉、あのストライカー……もう使うべきじゃない。魔力切れで倒れるなんて初歩的なミス……大尉がそれをしてしまうだけの欠陥があるということでしょう?」

バルクホルン「……不甲斐ない姿を見せてしまったな。だが、問題ない。これは私が未熟だっただけだ」

俺「まあ、俺が言ったからって素直に聞いてくれるとは思ってませんでしたけど……大尉に何かあれば、隊長もエーリカも、ここの皆はきっと凄く心配しますよ。わかってるでしょう? それでもまだそんなこと言うんですか?」

バルクホルン「……そういうことにしておいてくれ」

バルクホルン「あれは、素晴らしい機体だ。できるだけ早く実用化されるべきだと私は考えている。そのためには……っ!?」

俺「……!」

バルクホルン「何のつもりだ、中尉」

俺「みんなに何かありましたか? そのインカム……みんなと繋がってますね?」

バルクホルン「だとしたらどうする。こんなことをしている状況ではないだろう!」

俺「大尉、あなたは飛べるような状態じゃない。ここにいるべきだ。もしまた落ちたら……」

バルクホルン「……」

俺「速度5、敏捷5」キィィン

バルクホルン「何のつもりだ。中尉」

俺「乱暴はしませんよ。ただ……大尉よりも先に出て、敵を倒してくるだけです!」ダッ

バルクホルン「くっ、待て! 中尉!」





── ハンガー

俺「っ」ゼェゼェ

固有魔法を使うと思ったより体に響くな……まだ全快じゃないってことか?

俺「でもっ!」

友と一緒に引っ張り出した零式艦上戦闘脚に向かう。

宮藤「俺さん!? 何してるんですか!」

俺「俺も出る。みんながピンチなんだろ?」

エイラ「俺ぇ! やっと見つけた! お前、ドウシテ部屋にいないんダヨ! いい加減にシロ!」

俺「ごめん。でも、皆が危ないなら俺は戦いたい」

エイラ「宮藤達が行くから大丈夫ダ! だから」

俺「ええい、うるさい! こうしてる間も皆は危ないし、大尉も来ちゃうだろ!」

エイラ「馬鹿、止めろ! オマエは病み上がりなんだぞ!?」

バルクホルン「そうだ。お前は寝ていろ、中尉」

俺「ほらぁ……」

バルクホルン「私が飛ぶ」





俺「大尉、駄目です」

バルクホルン「だったらどうする。これしかあいつを救う方法はない!」

大尉はそう言いながらジェットストライカーにまかれた鎖を千切ろうとしている。かといって、俺が飛ぼうとしても怒られるし……。
何か、別に方法は……。

リーネ「命令違反です! 大尉!」

宮藤「駄目ですよ! まだ体力が──」

俺「大尉、ストップ!」

バルクホルン「くどい!」

俺「待て待て! 俺に案がある!」

エイラ「ホントか?」

俺「ああ、あれを使う」

エイラ「あれ?」

宮藤「あれって……」

バルクホルン「BK-5型速射砲……?」





バルクホルン「おい中尉、本当に大丈夫なんだろうな!」

俺「良いから黙って指示通りに構えて、トリガーだけください」グイッ

バルクホルン「うひゃあ! 中尉! どこを触っている!?」

俺「ごちそうさ今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょう!?」

エイラ「ゴチ!? オイ、オマエ何してんだ!?」

俺「銃構えてんだ!」

ちなみに今の姿勢は、BK-5の底面を地面に置き、大尉と俺を中心にで構え、エイラが補助するという状況だ。密着してるせいか正直いろいろオイシイと言わざるを得ない。だが、今はそれをじっくり堪能する暇はない。

俺「……攻撃範囲10」

固有魔法の発動と共にBK-5型速射砲に魔力が流れ込み、同時に自分の視力が一気にクリアになる。
『攻撃範囲』の上昇は何も刀が伸びたり、射程が長くなったりするだけじゃない。射程距離の上昇に合わせた視力の強化も同時に行われる。射程が伸びただけ、遠くに届くだけでは『攻撃範囲』が上昇したことにはならないからだ。

俺「もう少し上、左……ストップ」

俺「3カウントで撃ちます。大尉、エイラ、しっかり支えてくださいよ」

俺「3」 「2」 「1」

引き金を引く。大きな反動と爆音。吐き出された弾丸がネウロイに直撃する……かに見えた。

俺「っ、外した!?」

バルクホルン「何っ」





俺「分裂!? 大尉、右上3度修正」

バルクホルン「くっ、人使いが荒い」ググッ

俺「撃ちます!」ズドン

バルクホルン「ぐっ」

俺「っ……仕留めた! 次、左下に15度……そこ、撃ちます!」ズドン ズドン

バルクホルン「っ! ……やったのか?」

俺「なんとか……もう降ろして良いですよ」

バルクホルン「そうか。ふぅ……」

俺「しかし反動すげぇなこれ、体ガタガタだよ。大尉がいなかったら……大尉、ありがとうございます。体大丈夫ですか?」

バルクホルン「ああ……私こそ、お前がいなければ──」フラッ

俺「大尉!?」ガシッ

俺「宮藤! 大尉が!」カクン

俺「お?」フラリ

やべぇ、力入んねぇ。支えられない。倒れ──

エイラ「まったく……無茶し過ぎだ。お前も、大尉もナ」ガシッ







────
──

俺「」シャリシャリ

バルクホルン「」シャリシャリ

俺と大尉は今、黙々と芋の皮を剥いていた。

ミーナ「まったく、あなた達は本当に無茶ばかりして!」

シャーリー「でも、おかげでネウロイを倒せたんだ。少しは多めに見てくれよ」

ミーナ「規則は規則です!」

俺「あの、俺も大尉もストライカー使ったりはしてな」

ミーナ「」ギロリ

俺「いえ、すみません」

坂本「しかし、バルクホルンが命令違反をするのは初めてじゃないか?」

ウルスラ「皆さん、お騒がせしました」

坂本「なんでお前が謝る?」

シャーリー「ハルトマンは悪く無いだろ」





ウルスラ「いえ、私は──」

俺「何だ。眼鏡でイメチェンか?」

ウルスラ「いえ、これはずっと」

バルクホルン「……妹だ」

俺「……」

バルクホルン「何だその顔は」

俺「……」マタタイイガナンカイイダシタヨ

俺「大尉って、妹系が好きなんですか?」

バルクホルン「何の話だ?」

エーリカ「私の妹だよ」

ウルスラ「姉様、お久しぶりです」

俺「」

坂本「」

シャーリー「」

俺本ーリー「「「えぇっ!?」」」






ウルスラ「バルクホルン大尉、この度はご迷惑をおかけしてすみませんでした。どうやらジェットストライカーには、致命的な欠陥があったようです」

俺「……」シャリシャリ

バルクホルン「ああ、試作機にトラブルは付き物だ。気にするな」

俺「……」シャリシャリ

ウルスラ「ありがとうございます。この子は本国に持って帰ります。状態も良いので、すぐにでも研究できそうです」

俺「……」シャリシャリ

バルクホルン「ああ、完成を楽しみにしている」

俺「……」シャリシャリ

シャーリー「そのためだけにわざわざ来たのか?」

俺「大尉も芋剥いてくださいよ!」

エイラ「良いからオマエは黙ってイモ剥いてろヨ」

俺「冷たいな……何か怒ってんの?」

エイラ「……怒ってナイ」

俺「?」





サーニャ「エイラは心配してるんです。俺さんがちゃんと休んでくれないから」

エイラ「うわわ、サーニャ、おい……!」

サーニャ「……」プイ

エイラ「うぁ……ち、違うゾ。その……」アワアワ

俺「……お前、お礼なんて気にしなくて良いんだよ。そんな構われたらなー、惚れるぞ? 俺は」

エイラ「なァっ!? お、おおお前、何言ってんだヨ!?」

俺「良いか! 俺はなぁ、美少女に構われたらコロッと落ちるようなdt野郎なんです!」

サーニャ「ぇ……」

エイラ「な、なぁっ……!?」パクパク

エーリカ「ふぅん?」

ミーナ「は……?」

坂本「……」フム

バルクホルン「……」シャリシャリ

狐「何を言っとるんじゃ、ぬしは……」ヤレヤレ





俺「おー陽子ちゃん」

狐「今のはこいつの戯言じゃ。聞き流せ」

俺「おいおい陽子ちゃんそりゃ」

狐「」ガブリ

俺「痛い!」

俺「えっ……え? 何で噛むの?」

エイラ「……オマエが、バカだからじゃないカ?」

俺「失礼だなお前!」

バルクホルン「ところで中尉……」

俺「はい?」

バルクホルン「くっ……ふふ」

バルクホルン「"私たち"の妹が来るのは、いつだったかな?」

俺「……」ハ?

エイラ「……」ン?

俺イラ「「えッ!?」」
最終更新:2013年02月15日 12:30