宮藤「ゆうやーけこやけーのー、あかとーんーぼー……」

俺「お、赤とんぼか」

宮藤「ええ。ほら、あそこに飛んでるのが見えて」

俺「ああ……もう夏も終わりだな……」

宮藤「はい…」


カナカナカナカナ…
ミーンミンミンミーン…


俺「……ん? ヒグラシも鳴いてんのか」

宮藤「ミンミンゼミもいますね!」

俺「……なんかこう……不思議な気分になるな」

宮藤「え?」

俺「赤とんぼが飛び始めて、秋が来たかと思えば、蝉もまだ鳴いてて夏も終わってない。
夏と秋が混じって、だんだんと秋になっていく……俺はこの季節が一番好きだな」

宮藤「わ……俺さんが詩的なことを言ってる……」

俺「…なんだよ、そんなに無味乾燥な人間に見えたか?」

宮藤「え! あ、いやその、そ、そういう意味じゃなくって……」

俺「……ま、そうかもな。普段は一日中部屋でごろごろしてるし。季節感なんてあったもんじゃない生活だ」

宮藤「海とか行ったりしなかったんですか?」

俺「……年を取ると、そういうイベントが…その、何だ、どうもかったるくなってくるんだよ」

宮藤「そんなぁ……」

俺「虫取り、冒険、午後のスイカ、プール……友達。
昔っから一人が好きでね……気がついたら、こんな大人になってたよ」

宮藤「…俺さん、友達いなかったんですか? こんなに優しい人なのに……」

俺「……1人が好きだったんだ。もちろん、今は違うけど」

宮藤「……寂しくなかったんですか?」

俺「…気の合う奴が、なかなかいなくてね……転校を頻繁にしてたせいかな、どうも人間関係が希薄になって…」

宮藤「……い、今は……!」

俺「……ん?」

宮藤「い、今は私がいますからね!」

俺「……ああ、ありがとう。いい奴だな、お前は……」

カナカナカナカナ…

俺「ミンミンゼミが聞えなくなったな……」

宮藤「眠っちゃったんでしょうか?」

俺「さぁてね、夏も終わりだし……死んじゃったのかもな」

宮藤「…………」

俺「冗談だよ冗談」


カナカナカナカナ…


俺「……夕陽、綺麗だな」

宮藤「……そう、ですね…」

俺「……そうだ、言い忘れてた」

宮藤「え?」

俺「…歳を取ると、確かに特別な行事は億劫になる。……でもな、その代わり、かどうかは分からんが……、
こういう何気ない日常をずっと続けていくことが、すごく幸せに感じられるんだ……」

宮藤「……ふふ。晩ご飯、何にしますか、俺さん?」

俺「……カレーが食べたいなぁ、こんな夕方は……」

宮藤「…あ、すみません、ジャガイモ切らしてたな…」

俺「……買いに行くか?」

宮藤「……はい!」


おわり
最終更新:2013年02月15日 12:34