宮藤「とりっく・おあ・とりーと!」バーン
俺「……? どうしたんだ、ビニール袋被って」
宮藤「え? 俺さん、知らないんですか? ハロウィンですよ、ハロウィン!」
俺「ヘロイン? ああ、昔見たことあるな……なんだ芳佳、そーいうお薬は体に悪いぞ? そーいうのじゃなくてな、アンパンっていうんだけど、プラモデルの接着剤をビニールに入れてスッ、と……」
宮藤「その危ないお薬じゃなくて、ハロウィンですよ! リーネちゃんが教えてくれたんです。
毎年10月31日は、ハロウィンっていうお祭りなんですって」
俺「へぇ……どんな祭りなんだ?」
宮藤「えーっと、みんなでお化けとかの恰好して……」
俺「ああ」
宮藤「……えっと……それから……」
俺「なんだ、知らないのか」
宮藤「えっと、あ、そうだ! たしか、誰かにイタズラするんです。それでイタズラされた人は、お菓子をあげる決まりになってるんですって!」
俺「……随分ヘンテコな祭りだな」
宮藤「リーネちゃんに聞いただけで、実は私も詳しくは……」
俺「……じゃあ、その、アレだ、芳佳はその湯布院がやりたいわけだな?」
宮藤「ハロウィンです。だって、なんだか楽しそうだし」
俺「ふぅん……そうか。分かった。いいよ、俺も暇だし。いっちょやるか」
宮藤「ホントですか? やったぁ!」
俺「どーせお菓子が食いたいんだろー? ……えーっと、まずは仮装だったよな、どーしよ」
宮藤「……あ、毛布とかどうですか?」
俺「毛布? 毛布でどうするんだよ?」
宮藤「ほら、お化けってよく白い布みたいなの被ってるじゃないですか。あんな感じで……」
俺「あー、なるほどね……お、あったあった。それっと」ファサッ
俺「どうよ? お化けっぽい?」
宮藤「……えーっと、あ、う~ん……」
俺「……ああ、そうだな。すげーアホっぽいな。分かってるよ」
宮藤「え! あ、いや、そうじゃなくって!」
俺「……単なる引きこもりみたいに見えるもんな。分かってる分かってる」ズーン
宮藤「……! あ、そうだ俺さん! お菓子! お菓子食べましょうよ! せっかくお化けの格好したんだし!」
俺「お菓子? ……ああ、そう言えばこの前買ってきたやつがあったな……じゃ、食うか」ゴソゴソ
宮藤「はい!」(えへへ……どんなのだろ、ペロペロキャンディーとかかな? 一度食べてみたいなぁ、あれ……)
俺「はい、酢昆布」ツーン
宮藤「……えーっ……」
俺「? なんだよ、酢昆布美味いだろ」
宮藤「い、いや、そうなんですけど……せっかくなら、飴とかがいいかなー、って……」
俺「飴? ああ、あるよ。なんだよー早く言えよなー」ゴソゴソ
宮藤「ほ、ほんとですか!? やったぁ――」
俺「はい、ハッカ飴」コローン
宮藤「…………」
俺「美味いんだよなァ、これ。スースーしてさ」コロコロ
宮藤「……そうですね」アムッ
俺「……あ」コロコロ
宮藤「?」コロコロ
俺「忘れてた。イタズラしなきゃいけないんだっけ?」
宮藤「あー……そう言えば」
俺「イタズラ……イタズラね。……あ! よし芳佳! 俺は今日は気分がいい! お小遣いをあげよう!」
宮藤「えっ? ほ、ほんとですか!?」
俺「ああ! しかも諭吉だぞ諭吉! ほら、これ!」ピラッ
宮藤「わーい! ありがとう俺さ――」
俺「……」スーッ
宮藤「……? どうして腕を上にあげるんですか? 取れませんよー」
俺「はい、"上ーげた"」
宮藤「…………」
俺「…………すまん、魔が差した。いやほら、イタズラってことで一つ……」
宮藤「……うっ……ひぐっ……」
俺「えっ」
宮藤「ううっ……うぇぇぇん……! 俺さんのいじわるぅぅ……!!」ウワーン
俺「うぉっ! ち、ちょ、ちょっと待て待て! 分かった、悪かった! 万札は流石に無理だけど、ほら、千円! だからホラ、もう泣くな!!」
宮藤「え! いいんですか? わーいっ!」ケロッ
俺「!?」
宮藤「……えへへ、嘘泣きですよ、嘘泣き。……これも、イタズラに入りますよね?」
俺「……ククッ、ったくよぉ……」
テレビ『世界を救いにでも来たつもりか? だがもう手遅れだよ』
テレビ『悪いな……俺はただの賞金稼ぎさ。この世界がどうなろうが、知ったこっちゃねぇ。
俺はただ、お前に借りを返しに来ただけさ』
テレビ『脅しだと思うか? ホントにやるぜ……』
宮藤「……ねぇ、俺さん」モグモグ
俺「ん?」レロレロ
宮藤「ハロウィンっていっても、いつも通りご飯食べて、いつも通りお風呂入って、いつも通りだらだらして……結局、普通の日と変わりませんでしたね」モグモグ
俺「……だよなぁ。結局、イベントってそういう物なのかもな」
宮藤「……おいしいですね、酢昆布」
俺「だろ?」
テレビ『……俺が生きてきた中で、お前といた時だけが、現実のように感じられる。
最後にお前と会えて、よかったよ……』サァァーッ…
俺「……」レロレロ
ピンポーン!
俺「…ったく、誰だよ。こっからのエンディングが好きなのに」スタスタ
宮藤「あ、出ましょうか?」
俺「いや、いいよ。俺が出る。……はーい、どちらさまで……」ガララッ
ゲルト「お菓子をやるから宮藤にイタズラさせてくれ」キリッ
俺「…………」ピシャッ!
ゲルト「ああっ! おい! 俺ぇ!!」
俺「……ったく」スタスタ
宮藤「あ、誰だったんですか?」
俺「ハロウィンに取り憑かれた化け物だよ」
宮藤「……?」
テレビ『ザロガアッストーゥ♪ ザファザアッフォール♪ ザファザアッフォー ザファーザアンフォー アワフォーリン♪ イントゥザファイア♪』テレレレーン
俺「……あーあ、ちょっと見過ごしちまった……」
宮藤「もう一回見た事あるんでしょう?」
俺「いい映画は何回でも見たいもんなんだよ」
宮藤「そういうもんですか」
俺「そういうもんさ」
宮藤「……あ、俺さん!」
俺「ん? どしたよ?」
宮藤「これ、言うの忘れてました。……ハッピー、ハロウィン」
俺「……こちらこそ。ハッピー、ハロウィン」
おわり
最終更新:2013年02月15日 12:35