――路地裏――

俺「……で、こいつは確かにこの店に来たんだな?」

エイラ「ああ、2日ぐらい前だったかな。変わった客だったから、よく覚えてるぞ」

俺「そうか……分かった、ありがとう。じゃあな」

エイラ「待て」

俺「? なんだよ、これから一旦家に帰るんだ」

エイラ「俺、お前占いは信じるか?」

俺「……いい結果なら、な」

エイラ「なら、信じろ。今日は、なにかお菓子を買って帰った方がいい」

俺「菓子ぃ? ……買うと、どうなるってんだよ」

エイラ「サーニャの笑顔が見られるはずだ」

俺「……なら、お前が買ってやった方がいいんじゃないか? 保護者だろ、占い師さんよ」

エイラ「いいや、なぜかお前が菓子を買うとサーニャが喜ぶという結果が出た。ま、信じてみろって。いや、信じろ」

俺(……相変わらず、頭の中サーニャちゃんのことしかないんだな)

エイラ「ああ、それから、サーニャは飴とか甘いものが好きだかんな。辛いのは駄目だぞ」

俺「そいつも占いか?」

エイラ「いいや、単なるアドバイスだ」

俺「……肝に銘じておこう。……じゃあな」

エイラ「ああ、仕事頑張れよー。……何の仕事か全然知らないけど」



――学校、正門前――

宮藤「ふー、終わった終わった……」

宮藤(明日から冬休みか……うう、宿題多いなぁ……どうしよう)

宮藤(……あ、そういえば、もうすぐクリスマスだ)

宮藤(俺さん、なにかくれるかなぁ……ふふっ)

サーニャ「あ、芳佳ちゃん……」

宮藤「? あれ、サーニャちゃん。どうしたの?」

サーニャ「……芳佳ちゃん、今日、芳佳ちゃんのお家に遊びに行ってもいい?」

宮藤「え? あ、うん。もちろん大丈夫だけど……エイラさんは?」

サーニャ「エイラ、今日は仕事が遅くなりそうだからって……それで、1人で待つのは嫌だろうから、誰かの家に行かせてもらえって」

宮藤「そうなんだ……うん! じゃ、一緒に遊ぼう!」

サーニャ「ありがとう……芳佳ちゃん」



――俺と宮藤の家――

宮藤「ただいまー」ガラガラ

サーニャ「おじゃまします」

シーン…

宮藤「……? 俺さん、まだ帰ってないのかな」

サーニャ「……俺さん、元気?」

宮藤「うん、今日も朝早くからお仕事に行ってたけど……でも、何の仕事してるんだろう?」

サーニャ「? 芳佳ちゃん、知らないの?」

宮藤「聞いてもはぐらかされて、教えてくれないんだ。サーニャちゃん、何か知ってる?」

サーニャ「エイラが、よく人を探してるって言ってたわ。ときどきエイラのところに聞きに来るって」

宮藤「ふーん……あ、ごめんね、玄関で待たせちゃった。さ、上がって」



――街のバイク屋――

シャーリー「チョコ入りマシュマロ?」

俺「ああ、美味そうだろー。そこの菓子屋で買ったんだ。芳佳たちへの土産だよ」

ルッキーニ「いいなー、あたしも欲しい! ね、ねシャーリー! 買って買って!」

シャーリー「ハハ、分かった分かった。仕事が終わったらな」

ルッキーニ「絶対だよ! ぜーったい!」

俺「相変わらず元気だなぁ、お前ら」

シャーリー「お前こそ。……あ、そうだ。この前の盗難車の件だけど」

俺「ああ、気にするな。あれも仕事のうちさ」

シャーリー「ありがとうな。修理を頼まれてたバイクが盗まれた時は、どうしようかと思ったけど……お前に頼んで良かったよ」

俺「ま、持ち主から貰うもんは貰ったし、もう大丈夫さ。……それじゃあな」

シャーリー「ああ、宮藤によろしく」

ルッキーニ「じゃーねー、俺!」バイバーイ

俺「ああ、またな」(……道草食っちまったな。さて、帰るか)



――俺の家――

サーニャ「……ねぇ、芳佳ちゃん」パチン

宮藤「え?」パチン

サーニャ「もうすぐクリスマスね」パチン

宮藤「うん。今年は何が貰えるかなぁ」ワクワク

サーニャ「芳佳ちゃん、サンタさんから何か貰ったことあるの?」

宮藤「実家にいたころは、お母さんやおばあちゃんが贈り物をしてくれたんだ。……小さい頃は、お父さんがサンタさんになってくれてたらしいけど」

サーニャ「……お父さんって、確か……」

宮藤「……うん。今も、どこにいるのか分かんないんだ。一回俺さんに聞いてみたことがあるんだけど……俺さんも、答えてくれなくって」パチッ

サーニャ「……ごめんね」

宮藤「え? あ、いや……いいよ、大丈夫。あ、そうだ、サーニャちゃんは? もしかして本物のサンタさんが!?」

サーニャ「……サンタさんがっていうか……エイラが」パチッ

宮藤「エイラさん?」

サーニャ「毎年、夜私が寝てるのを見計らってプレゼントを置いていくの。私、夜型だから本当は起きてるんだけど……」

宮藤「うん」パチッ

サーニャ「それでも、次の日の朝に『よかったなサーニャ、サンタさんはホントにいるんだぞ』って言うから……知ってるなんて言えなくて」

宮藤「そっか……やっぱり、今年もエイラさんなのかな?」

サーニャ「……たぶん。……あ、王手」パチッ

宮藤「あっ! ど、どうしよう……」

サーニャ「……ふふっ」


ガラガラガラッ

俺「うーい、ただいまっぽー」

宮藤「あ、おかえりなさーい!」

サーニャ「あ、お、お邪魔してます……俺さん」

俺「!! さ、サーニャちゃん!? ほ、ホントに来てた……占いすげえ」

サーニャ「?」

俺「ああ、いや、何でもないんだ。いらっしゃい。丁度お菓子を買って来たんだ、ごちそうするよ」

宮藤「お菓子? どんなのですか?」

俺「これこれ」スッ

宮藤「あ! マシュマロだ!」

俺「しかもチョコ入りだぜー、凄いだろ!」

サーニャ「そ、そんな……すみません……」

俺「遠慮すんなって、お客さんなんだから。……じゃ、芳佳。俺手洗ってくるから、サーニャちゃんにマシュマロ出してあげてくれ。
食べたかったら2人で食べてていいぞ」

宮藤「いいんですか?」

サーニャ「あ、あの……」

俺「ん?」

サーニャ「ま、待ってますから、俺さんも……よかったら……その、一緒に……」

俺「……そっか。分かった。すぐに手洗ってくるよ。3人で食おう」

サーニャ「……はい」

宮藤(……? サーニャちゃん、どうしたんだろう……顔が赤いけど)


サーニャ「……ねぇ、芳佳ちゃん」

宮藤「え?」

サーニャ「……エイラが言ってたんだけど、クリスマスイブって、好きな人と一緒に過ごす夜なんですって」

宮藤「へぇー、そうなんだ。私そういうの全然知らなかったなぁ……」

サーニャ「……俺さん、イブはどうするのかしら」

宮藤「? 俺さん?」

サーニャ「……っ!! あ、ち、ちが……ごめん、忘れて!」カァァァッ

宮藤「え? どうしたの? えーっと……あ、そうだ。俺さん、前に確か言ってたよ、クリスマスイブの事」

サーニャ「え? な、なんて……?」

宮藤「『イブに騒ぐのは本来の風習と違って嫌だから、24日はグータラする』って」

サーニャ「……そう」シュン

宮藤(……もしかして……)


俺「おーし、お待たせ。洗ってきたぜ。皿も持ってきたし、さ、食べようか」

宮藤「あ、おかえりなさーい」

サーニャ「ありがとうございます……」 

俺「いいっていいって。正直、俺が食いたかったってのもあるし。それーっと」ポロポロポロ

宮藤「……あ、そうだ。俺さん」

俺「ん?」

宮藤「俺さん、クリスマスイブは何か予定とかあるんですか?」

サーニャ(……!!)

俺「イブ? ああ、最近は大きな仕事も無いし……グータラするよ。……って、この前も言わなかったか?」

宮藤「それじゃあ、25日は?」

俺「ダラダラするかな」

サーニャ「…………」シュン

宮藤「あ、えっと……それじゃあ、誰かから誘いがあったら?」

俺「誘いが? ……そうだな、そりゃ、その時にならなけりゃ分かんないけど……でもまあ、できるだけ要望があるなら叶えなくちゃな、とは思う」

サーニャ「……!」

俺「ま、別にクリスマスイブだろうが正月だろうが、一緒に過ごすなんて、一年中いつだって出来るさ。
わざわざ『イブだから』って特別扱いしなくても、『一緒にいて』って頼まれたら付き合うよ。……って、何の話なんだ?」

宮藤「あ、いえ……何でも」

サーニャ「…………」ホッ


俺「……あ、そうだ。マシュマロだけじゃ足りないだろ? この前買ってきた飴の残りがあったから、持ってくるよ」

サーニャ「あ、いえそんな……」

俺「お構いなく。……っていうか、むしろ俺が食いたいんだ。それじゃ、ちょっと待っててくれ」タタタッ

サーニャ「…………」

宮藤「……ね、サーニャちゃん」

サーニャ「……?」

宮藤「……クリスマスイブも、家に来ない? みんなでパーティーしようよ」

サーニャ「え……! い、いいの?」

宮藤「うん! 私も賑やかな方が好きだし。……それに」

サーニャ「……?」

トタタタタ…

俺「あったあった! 見ろ、このハッカ飴! ハロウィンに食ったのが思いのほか美味くてさ、ついたくさん……」

宮藤「もう、だからって一瓶も買わないでくださいよー」

宮藤(……私だって、俺さんと一緒にいたいし……なんて、言えないか)

サーニャ「……? 芳佳ちゃん、これって、飴?」

宮藤「うん、でもちょっとスーッっとするんだ」

俺「さ、食おう。さぁさぁ食おう!」キラキラ

宮藤「はいはい」


おわり
最終更新:2013年02月15日 12:35