俺「珍しいな、ウィスキーか」
俺は呟いた。
ミーナ「お嫌いではないと伺ったので。たまには良いかと思いまして」
そう言いながらミーナは身をかがめて、
運んできたトレーをテーブルの上にそっと置いた。
長方形のトレーには丸い氷の入ったグラスに
ミネラルウォーターとソーダ水の小ビンが一本ずつ。
シングルモルトのベビーボトルの脇には、
金色の包み紙のチョコレート8粒とミックスナッツを盛った
四角い小皿が添えられていた。
俺「いただこう。ミーナ中佐もどうかね?」
ミーナ「いえ、私はこれで。…明日も早いので」
俺「そうか…」
チョコレートを一粒つまんだ俺は、
そそくさと立ち去ろうとするミーナの背中に
声をかけた。
俺「ミーナ中佐、」
ミーナがドアの前で立ち止まる。
俺「チョコレートをありがとう」
ミーナ「……いえ」
一拍おいて後ろ姿のまま短くそう答える彼女の表情が
俺には容易に想像できた。
ミーナ「おやすみなさい、俺大佐」
俺「ああ、おやすみ」
耳だけを真っ赤に火照らせて、
ミーナは静かに退出していった。
俺は手にしたチョコレートの包装紙を剥がすと
正方形の薄いチョコレートを口に含んだ。
歯を立てて噛んでしまわずにそっと、舌の上に乗せる。
そうして時間をかけて溶かしながら、
控えめで遠回しな方法で彼女がくれた、
ビターチョコレートの甘さと苦みを味わった。
この穏やかな日々ができるだけ長く続く様にと
心の内で願いながら。
愛おしむかの様に、ゆっくりと…
最終更新:2013年02月15日 12:38