数日後、基地ハンガー

俺「ん?」

自分のストライカーの調子でも見ようとハンガーに行ったら、異臭が鼻についた

この臭い、どっかで嗅いだ事があるような…とりあえず、臭いの発生源へと向かう

俺「整備兵、この臭いはいったい…」

整備兵「ああ、こいつですよ」スッ

そういって頑丈そうなバケツに入った、エメラルドとサファイアの中間のような色をした液体を差し出してくる

俺「くせぇ…こいつは?」

整備兵「使用済みの魔導エンジン洗浄液です。私も最初は臭いと思いましたが、もう慣れました」

俺「人間の慣れってコワイ…あ!」

思い出した。フェイズドプラズマライフルの弾薬(燃料)として使われてるプラズマガスの臭いだ

こいつがあれば、プラズマライフルの弾薬の問題を解消できるかもしれない

臭いが似てるってだけで、撃てるかどうかはわからんが、やってみる価値はある

俺「なぁ、こいつをもらえないかな?」

整備兵「? いいですよ、どうせ処分するものですし」

俺「アリガトな」タッタッタ


 射撃訓練場

俺「誰もいない…まぁちょうどいいか」

持ち出したプラズマライフルのマガジンにガスを入れ、プルバップ式の銃本体に挿す

ショットガンと同じポンプアクションで初弾分のガスを装填する

元々T-800用に作られた武器なので、人間、特に俺のような成長途中の男子には大きいし重い

でも、その重さで反動が相殺されるので、一長一短と言ったところか

俺「スゥ…フゥ」<テュン!ドグァーン!

いつもより少し明るい光弾が発射され、的が爆発四散した

俺「!?」

とりあえず使用済み洗浄液ガス…洗ガスでいいか…で撃てることはわかった

ただ、洗ガスを使うと出力が必要以上に出てしまうみたいだ

俺「出力調整が必要か…面倒だな」

とりあえずいつ出撃しても大丈夫なようにはしておくか、などと思っていたとき、後ろから足音が聞こえた

振り返ると、よく見知った顔が視界に入った

俺「エイラ?」

エイラ「よ、よう、俺」

顔が引きつっとるぞ

俺「どうした?お前も訓練か?」

エイラ「あ、ああ、ソウナンダナ」

エ・俺「…」

俺「…やらないの?」

エイラ「ウェ!?ああ、やるさ、やるとも」ソソクサ

…どうしたんだ?

その後、エイラは射撃位置、俺は隣のワークスペースでプラズマライフルを簡易分解して調整する

<ダダダダガチャガチャ…ダダダダダガチャコンガシャガシャ

エ・俺(会話がない!)ドーン!

俺(ホントにどうしたんだエイラは?何か最近おかしいと言うか挙動不審というか…)

トランスポーターを落とした日以来、エイラは俺と微妙な距離を保っている

タメ語許可が下りたので、距離が縮まったと思っていたけど…ホントに何なんだ?

…まぁ、うろたえてるエイラもかわい…ゲフンゲフン

俺(俺も最近おかしいよな…エイラに対してその…かわいいだとかなんだとか。前はそんな、強く意識してなかったのに)

エイラ(ぅぅ、サーニャ、やっぱりムリダナ…)


 回想 昨晩、基地周辺上空

エイラ「サーニャ、眠くないか?」

サーニャ「私は平気よ…」

面倒なので一言で説明。夜間哨戒なう

エイラ「今日も無事終わったナ~」

サーニャ「…エイラ、悩み事があるなら相談して。私も力になるから」

エイラ「ど、どうしたんダ急に…?」

サーニャ「エイラ、最近いっつもボーっとしてて上の空で…今日も夜間哨戒に遅刻しそうになった。いつもは遅れないのに…」

エイラ「…」

サーニャ「俺さんの、こと?」

エイラ「!」ビクッ!

サーニャ「やっぱり…一人で抱え込まないで話して、エイラ」

エイラ「…実はその、あいつと…俺と、顔を合わせづらくて…」

サーニャ「?」キョトン

エイラ「ホラ、前の任務でいろいろあったって話したじゃないカ。あれ以来その…意識しちゃって///」カァァ

サーニャ「…」

エイラ「あいつ、意外といい奴なんだゾ?戦闘のときは頼りになるし…普段は結構気を使ってくれて…」

サーニャ「エイラは、俺さんのことが好きなの?」

エイラ「!?///ナ、ナンデそうなるんダヨ!あ、あいつはそんなんじゃ…」

サーニャ「じゃあ、嫌いなの?」

エイラ「嫌いじゃないけど…二択なんて卑怯じゃないか…」

サーニャ「俺さんと、仲良くなりたい?」

エイラ「そりゃ…ナ」

サーニャ「だったら…」

エイラ「?」

サーニャ「今度のお休みに、俺さんと一緒に街に行ってみたら?」


 第二話 Witch and Wizard. Girl and Boy.


エイラ(サーニャの言うとおり街に誘うことにしたけど…そ、それって、で、デート、だよ、ナ…?///)ダダダ

エイラ(い、いや!これはあくまでこの気まずい状況を打破するためのもので、いわば仲直りの儀式!?)ダダダダ

エイラ(でもどう話を切り出そう…休みは明日なのに…)ダダダダダ

エイラ(次いつ俺と同じ日に休みが入るかわかんないし…ああもう!どうしたらいいんだよ!?)ダダダダダダ

俺「お~い?ぜんぜん当たってないぞ?ついでに銃口が段々こっち向いてきてるような気がするんだけどぉ?」

エイラ「ウェィ!?」ダァン!

俺「(ヒュン!)うぉい!?バッカ、あぶねぇだろ!?」

銃弾の一発が、俺の顔のすぐ横を通り過ぎる

エイラ「え?ああ!ゴメン!」アワワ

俺「はぁぁ、まぁいいか。ところでエイラ、話があるんだが」

エイラ「ナ、ナンダ?」

俺「明日、街に行かないか?」


基地から一番近い街に向かうバス車中、エイラと俺は終始無言だった

エ・俺「…」

外出許可はあっさりおり、エイラの当初の予定とは少し違うが、二人で街に行くことになった

俺の目的は服を買うこと。こっちに来る時に着ていた野戦服以外の私服を買おうとしているのだ

エイラにはその付き添い兼道案内を頼んだんだ。それがデートまがいのものだと俺は気づいていない

ちなみに、今俺が着ているのは整備兵から借りた服で、外を出歩いても平気な格好である

エイラ「俺はどんな服が欲しいんダ?」

俺「そうだな、戦闘時にも使えて、こうして外に出るときにも着れるのがいいな」

エイラ「そうか」

俺・エ「…」

小さな話題が生まれては消え沈黙、生まれては消え沈黙しているうちに、目的地の町に着いた

俺「服屋はどっちだ?」

エイラ「あっちダ」

俺「あっちか」

エ・俺「…」テクテク

俺・エ(…気まずいなぁ)

<イラッシャセー

エイラ「服屋なう」

俺「おーいっぱいあるな」

エイラ「ホントダナ…おっ、これなんてどうだ?」

つ 革ジャン&サングラス

俺「…お前は俺を何だと思ってるんだ?」

エイラ「冗談ナンダナ。実は男物の服って触ったことなくて…」

俺「? じゃあ何でついてきたんだ?無理する必要はなかったのに」

エイラ「そ、それは…///」

俺「?」

なぜか赤くなってサングラスのつるを弄ってる…かわいい

店員「何かお探しですかー?」

俺「ああ、はい。外出着にも使える動きやすい服を。落ち着いた色がいいです」

店員「少々お待ちくださいー」

若い店員だな。あと結構キレイ

エイラ「…サーニャタスケテ…ブツブツ」

最近いっつもこうだな。いい加減聞いてみるか

俺「…エイラ、何怒ってるんだ?俺が悪かったら謝るから」

エイラ「エ?私は怒ってないゾ?」

俺「え?じゃあ今までの気まずい空気は何…?」

エイラ「えっと、その…」

 説明中

俺「ほー、で、街に誘うタイミングをうかがってて挙動不審だったと」

エイラ「うん…///」

俺はエイラの頭にポンッと手を置き、撫でる

俺「バカだなー、普通に誘ってくれればよかったのに。俺はOKしたよ?」ナデナデ

エイラ「バ、バカとはナンダ!こっちがどれだけ悩んで…って撫でるナー!///」

俺「ハハハっ」ナデナデ

店員「あのー、よろしいですかー?」

俺「あ!すいません…///」

店員「いえ、仲がよろしいんですねー。それより、これなんてどうでしょうー」

そういって差し出してきたのは、白のワイシャツと黒っぽい緑のジャケット、同じ色・材質の長ズボンに革のベルトだ

エイラ「オ、なかなか良いんじゃないカ?」

俺「そう?」

店員「試着室はあちらですー」

そのまま流されるようにして試着してみた。どれもサイズぴったり。この店員ベテランだな

俺「どうかな?」

店員「お似合いですよー、軍人さんにはぴったりー」

あ、やっぱ軍人ってバレてたか

エイラ「俺!俺!これも着てみてくれ!」

どこからかエイラが服を引っ張ってきた。薄茶色のロングコートと前だけにつばがある耳にタレのついた帽子

俺(明らかに作者の趣味だ…これ絶対あのモトラド乗りの旅人だ)

エイラ「メタ発言禁止!」

俺「…どったの?」

エイラ「言わなきゃいけない気がしたんダナ」

店員「お値段こんな感じですー」

電卓に表示された値段は、高くもなく安くもなく、身の丈にあった額だった

俺「よし、これにしよう。エイラ、俺は精算してくるから外で待っててくれ」

エイラ「わかった」テクテクガチャンバタン

店員「着て帰られますかー?」

俺「ええ。財布財布…」

店員「…あの女の子、彼女ですかー?」

俺「な!?違う!そんなんじゃ///」

店員「違うんですかー。でもお似合いですよー。はたから見ればデート中のカップルですよー」

俺「で、デート?カップル?///」

言われて気づいた、確かにそう見えるかもしれない

俺「あのですね、私たちは軍人同士で、お互い恋愛にうつつを抜かしてる暇なんか」

店員「それってー、あの子と恋人関係になりたいって言ってるようなものですよー」

俺「///」

店員「そんな初心なあなたにこれをプレゼントー」スッ

レジの棚から取り出したのは、ポーチが二つついたベルト―エイラのそれと色違い―だった

店員「それのお代はいりません。ぜひ付けていってください。あの子とおそろいですよー」

俺「…ありがとう」

店員「またお越しくださいー」

暑いので帽子とコートはもらった紙袋に入れ、俺は店を後にする


エイラ「まだかナー」

店の前のショーウィンドウにもたれかかって俺を待つ

ドンッ! エイラ「あいたっ」

男A「おい!いてぇじゃねぇか!」

男B「お前目ぇついてんのか?」

チンピラが…

エイラ「お前らがぶつかって来たんダロー」

男A「何だとゴラァ!」

エイラ(面倒だナァ)

男B「ここじゃなんだ、ちょっと裏路地まで行こうや」ガシッ

エイラ「オイ!離せ!」

男B「いやだね。おいA!手伝え!」

男A「」チーン

一人が道端に音もなく倒れた。目にハイライトがない。ジャケット姿の少年が倒れた男を小突く

俺「ほう、こいつはAという名前なのか。なかなか殴りがいのあるやつだったぞ?」ニコッ★

男B「ひっ…!」

エイラ「俺!」

俺「その子を離せ。道端に死体を二つも並べたくない」

赤目を発動させ、男を睨む

男B「お、おお、覚えてろぉぉ!」スタコラサッサ

俺「まぁ殺しちゃいないけど。もう少し真面目な人間になれよ~」

エイラ「アリガトナ、俺」

俺「なぁに、良いって。怪我はないよな?」

エイラ「ウン!(似合ってるナァ、この服)」

これでバイクがあれば完璧…ゲホゲホ

俺「悪いがバイクの免許は持ってないんだ」

エイラ「心を読まないでくれ」

俺「声に出てたぞ。まぁ、免許がないってだけで運転はできるがな」

モトターミネーター(バイク型ターミネーター)をハックして乗り回してたあの頃が懐かしい

エイラ「そうなのカ。ナァ、そろそろお昼にしないカ?」

狙ったように俺の腹が鳴る

俺「そうだな、そうしよう」

エイラ「いい店を知ってるんダ!こっちこっち!」タッタッタ

俺「お、おい!引っ張るなって!」

エイラ「~♪」

その後も、街や店を見て回り、基地の皆へのお土産なんかを買ったりした

シャーリーさんが足蹴に通うと言うバイク用品店でゴーグルも買った…エイラに買わされたのだが

エイラは終始ご機嫌で、事あるごとに笑顔を見せてくれた

どこか幼さの残るその笑顔に、俺は疲れや不安が吹っ飛ぶのを感じた


 夕方

俺「今日は楽しかったな」

エイラ「そうダナ。その服は気に入ったカ?」

俺「ああとっても。もう一着買っときゃよかったかな」

エイラ「今度来た時買えばいいサ」

俺「今度はロンドンに行ってみたいな」

エイラ「それもいいナ。そのときは、ふ、二人で行こうナ!//」

俺「おう、約束だ」

基地方面行きのバスに乗り、街をあとにする。バスは空いていた

しばらくバスに揺られていると、肩にエイラが寄りかかってきた

エイラ「スゥ…スゥ…」

俺「寝ちまったか」

軍人と言う肩書きこそあるが、中身はやはり少女、か…

自分もエイラのほうに寄りかかり、目を瞑る

また明日から、銃を持って空を飛ぶ毎日が始まる

せめて、せめて今日だけは、一人の少女と、一人の少年で居たかった
最終更新:2013年02月15日 12:42