ドーム付近海上

俺「……」

ドームに開けられた穴を抜け、脱出

俺「……すまない、セルヴィス」

彼女に渡されたネックレスを首にかけ、ケースの部分を握る

<ドォォォン!

背後で砲弾の炸裂音がし、

<キィィィン!パァーン!!

ドームが爆発した

俺「ぐフッ!」グラッ

爆風に巻き込まれ体勢を崩してしまう

ただでさえ海面が近いというのに

爆風に乗せてドームの破片も飛んでくる

何とか回避しようと機体を操るが

俺「がぁっ!」ピシャ

破片の一つが背中を掠める

それで完璧にバランスを崩した

赤目の視界の中央には、CAUTIONとPULL UPの警告表示が出る

俺「くそっ!上がれ!」グラグラ

<ボフゥッ!

俺「なっ!?」

ユニットが破片を吸い込み、エンジンが火を噴いた

ガタガタと激しく揺れ、空の水平を保てなくなる

黒煙が濃くなり、速度と高度がドンドン落ちる

もうどうしようもない

俺「うわぁぁぁっ!」

<ドバァーン!

全身を海面に叩きつけられ、

俺「ゴボァ……ン~!?ンン!!」

這い上がる暇もなく、

俺「ン……」コポコポ…

意識が飛んだ

その意識が飛ぶ一瞬前、エイラの声が、聞こえたような気がした………







 数時間後 基地 医務室前廊下

ウィッチ隊によってなんとか救出された俺は、すぐに緊急搬送された

今、女医のアレッシアさんと、医学の心得がある宮藤とエーリカが治療を行っている

エイラ「……」

医務室前の廊下で、エイラはここ数時間ずっと待っていた

<ガチャ

エイラ「!!」

医務室のドアが開き、アレッシアさんが出てきた

エイラ「俺の容態は…?」

アレッシア「一応は大丈夫、宮藤軍曹とハルトマン中尉の手伝いのおかげよ。でも、まだ油断はできないわ」

エイラ「……」

そこまでひどいのか

その時、アレッシアさんが手を、ポンとエイラの肩に置いた

アレッシア「こういうときこそ、そばに居てあげなさい」

それだけ言って、廊下突き当りの洗面所へ向かった

エイラ「……」

一瞬ためらったが、意を決して中へ入る

<ガチャ

エーリカ「エイラ?」

宮藤「エイラさん」

エイラ「……俺は?」

ゆっくりと、ベッドのほうに近づく

エーリカ「寝てるよ。今はとりあえず安定してる」

宮藤「後は点滴と、俺さん本人の回復力次第です」

エイラ「二人とも、ありがとう」

深く礼をし、感謝の言葉を述べる

エーリカ「お礼ならアレッシアさんに言ってよ。私たち二人だけじゃ、何もできなかった」

エイラ「アレッシアさんは、二人のおかげだと言ってたゾ」

宮藤「私たちは、お手伝いをしただけですよ」

笑ってそういうが、その笑顔の後ろには疲労の色が見え隠れしていた

俺「…スゥ……スゥ……」

視線を俺へと移す。規則正しい寝息を立て、眠っている

確かに、一応は安定しているようだ

俺「………ん」ピクッ

エーリカ「あ」

宮藤「俺さん……?」

その俺の顔が、ほんのわずかにゆがむ。目を覚ましたのだろうか?

エイラ「俺?」

ほんの少しの期待を込め、俺のほうへ身を乗り出す


その時――



俺「……ゴボォァッ!」ピシャッ



エイラ「ひっ…!」ビクッ

俺の口から鮮血があふれた

あふれた血は、身を乗り出していたエイラの服にかかり、水色の軍服を赤く染めた

俺「ゲホォッガハァッ」

俺は目を見開き、咳き込む。息を吸おうとするが、喉に血が詰まってうまくいかない

エーリカ「宮藤っ!」

宮藤「はい!」

腰を抜かしたエイラが呆然としている間に、二人はすばやく反応

俺「ガハァッカハッ!」

エーリカは俺を横向きにし、喉に溜まった血を吐き出させ、気道を確保する

宮藤は治癒魔法を使い、必死に治療する。しかし、なぜか効果がない

エイラ(一体…何が、どうなって……)

素人のエイラには何がなんだか分からない

宮藤「は、ハルトマンさん!」



エーリカ「わかってる!肺から出血してる…止血しないと……俺が死んじゃう!」



エイラ「ッ!?」

俺が死に掛けている。二人の慌てようからして、冗談ではない

エイラ「あ……あぁ……」

不意に突きつけられた恋人の死

ウィッチといえどまだ若いエイラには、酷だった様だ

以前も、彼の死に直面したことがあるが、あの時は今のように、本人が苦しむ姿を見たわけではない

愛しの人がもがき苦しみ、命の灯火が消えかけているところを目の当りにして、かなり混乱している

全身の血の気が引き、周りの音が段々遠くなる

目には大粒の涙が浮かび、それは頬を伝って床へ落ちる

エーリカ「エイラ!座り込んでる暇があるならアレッシアさん呼んで来て!」

エイラ「あ、え……」

自分の名前、エーリカの指示。すべて耳から頭に入り、理解はした

だが、体が言うことを聞かない。俺の血で汚れた服と手を見つめ、恐怖と不安で震えることしかできない

宮藤「エイラさん!しっかりしてください!俺さんを死なせたいんですか!?」

エイラ「!?」

体に、電流が走った

エーリカ「今ここから離れられるのはエイラしかいないの。アレッシアさんを呼んできて!」

エイラ「……ぁぁ……ああ!」

恐怖と不安を振り払い、立ち上がって走り出す

バァン!と乱暴にドアを開け、廊下突き当りの洗面所へ走る

歯はガチガチと音を立てて振るえ、心臓はありえない速度で鼓動していた

それでも必死に走り、半ば転がるようにして洗面所へ入る

エイラ「アレッシアさんっ!!」






――それからまた数時間後……



<ガチャ

一同「!?」

硬く閉ざされていた扉が、ようやく開かれた

中からは、ゴム手袋と処置衣を血で汚したアレッシアさんと、エーリカの肩を借りて歩いている宮藤だった

ミーナ「アレッシアさん、俺さんの容態は」

中佐が質問する。ここにいる501全隊員とマルセイユ大尉、エフィの13人全員の疑問だ

アレッシア「肺からの出血は止まりました。容態は比較的安定しています、が…」

エイラ「…が、何なんだよ…俺に何があったんだよ!」

サーニャ「エイラ…」

ネウ子「エイラ姉さん…」

アレッシア「……出血量が多すぎて、輸血が必要です」

坂本「輸血?」

バルクホルン「ハルトマン、お前、O型だったよな?使えるんじゃ」

エーリカ「私も、そう思ったんだけど…」

アレッシア「……彼の血は、AB型のRh-。とても希少な血で、輸血できる血種が限られてるんです」

サーニャ「そんな…」

シャーリー「輸血できなかったら、どうなるんだ……」

アレッシア「…………言わせないでください」

エイラ「……」

皆、黙り込んでしまう

AB型というだけでも比較的珍しいのに、さらにRh-ときた。単純計算で二千人に一人の確立だ

アレッシア「輸血の機材はあるのに……」

男性兵士たちに聞いて回るか?いや、だが、自分の血液型を把握していないものも多いだろう。一人一人検査してたら間に合わない

詰んだ。手の施しようがない

エイラ「……」

サーニャ「……」

ネウ子「……」

バルクホルン「……」

重く暗い、悲しい沈黙を破ったのは、



マルセイユ「私の血は使えないか?」



腕まくりをし、前に出てきた、マルセイユ大尉だった

ミーナ「大尉?」

アレッシア「二千人に一人…二千五百人に一人とも言われてるのよ。そう簡単には…」

マルセイユ「機材はあるんだろう?いいから、調べてくれ」

エイラ「……大尉…」

アレッシア「……こっちよ」






数十分後、マルセイユ大尉の腕と、俺の腕は、間に機材を挟んでカテーテルで繋がれていた

輸血者の負担は大きくなるが、一度に大量の血を輸血できる

アレッシア「奇跡です。まさか同じ血液型だなんて…」

ミーナ「とにかく……良かった」

坂本「……ああ」

心電図のピッピッという音が鳴り響く

俺が横になっているベッドを挟んで、マルセイユ大尉とエイラが座っていた

エイラ「……あんたが居てくれてよかったよ、大尉」

マルセイユ「味方を見捨てるわけには行かないからな」

まったく……自信家より先に死んでどうする

エイラ「……」ギュッ

カテーテルの繋がってないほうの手を握る

マルセイユ「彼のことが…好きなんだな」

エイラ「ああ…本人に面向かってはなかなか言えないけど、愛してる…///」

マルセイユ「青春か…彼とはどこで知り合ったんだ?」

エイラ「あ、えっと、その…」

マルセイユ「?」

まずい…俺と知り合った経緯を話すには、俺が異世界人であることも話さないといけない

エイラ(俺には口止めされてるし…どうしよう)

その時、エイラが握っている俺の手がわずかに動いた

エイラ「俺?」

マルセイユ「起きたのか?」

二人して覗き込むようにして立ち上がる

俺「………っ」

エイラ「俺、大丈夫か?」

俺「……――っ!!」ガバッ

<ガッ!

マルセイユ「なっ!?」

いきなり半身を起こし、両手でマルセイユの襟首をつかんだ

俺「……妹をどこにやった」

マルセイユ「は?」

俺「エフィをどこにやったと聞いてるんだ!?」

マルセイユ「がっあっ!」ガクガク

襟首をつかんだまま前後に揺さぶる。マルセイユの首がしまってしまう

エイラ「俺!どうしたんだよ!落ち着けって!」

俺をマルセイユから引き離そうとする

俺「だぁっ!」

<ブチッピー!ピー!

心電図などにつなげられていたケーブルが抜け、輸血用のカテーテルも俺が自ら引き抜く

<ピッ

ベッドの上に、少しだけ鮮血が舞った

エイラ「アレッシアさん!」

俺「離せ!くそがっ!南基地はどうなったんだ!?俺の仲間はぁっ!?」

ベッドに必死に押さえつけるが、俺と私では腕力に差がありすぎる。もがく俺を抑えきれない

マルセイユ「一体何が…」

注射針の痕を手で押さえながら、マルセイユが一歩後ずさる

俺「エフィィィッ!!どこだぁっ!?セルヴィスゥゥッ!!」

エイラ「せ、セルヴィス?」

聞き慣れない名前に、思わず聞き返してしまう

その時気づいた。俺の赤目が付いたり消えたりしている

エイラ「俺!一体どうしたんだよ!」

アレッシア「錯乱状態よ!ここがどこで、あなたが誰だか分かってない!」

エイラ「えっ!?」

きっと、彼の視界には、かつての記憶がフラッシュバックしているのだろう

まるで、壊れたビデオテープを巻き戻すみたいに

アレッシア「大尉!鎮静剤を取って!青いキャップよ」

マルセイユ「っ!」

今まで呆然と見ていた大尉がハッっとし、ベッド脇の机に置かれた青いキャップの注射器を手渡す

アレッシア「しっかり押さえて!」

エイラ「分かった!」

アレッシアさんが歯で注射のキャップを外す

俺「おい!よせ!止めろ!触るなっ!」ジタバタ

アレッシア「っ!」ブスッ

俺「あぅっ!」

俺の太ももに勢い良くぶっ刺し、そのまま鎮静剤を押し込む

俺「あっ……あぅ……」

点滅していた赤目は消え、元の黒目に戻る

その黒目が段々虚ろになっていき、抵抗もしなくなった

アレッシア「……今はまだ寝てなさい」

目を開けたまま寝る俺のまぶたを、アレッシアさんが手で閉じさせる

アレッシア「また何かあったらすぐ呼んで。中佐に報告して来るわ」

エイラ「…分かった」

空になった注射器をゴミ箱に捨て、アレッシアさんは医務室を後にした

俺「……」

まったく動かず、死人のように眠る俺

力なくベッドの上に投げ出された腕には、バーコードの入れ墨がされていた

エイラ「……」

マルセイユ「……彼に何があった」

エイラ「……私から聞くより、あいつに見せてもらったほうが早い」

マルセイユ「?」

医務室の入り口のほうへ振り返る

そこには……


ネウ子「俺兄さん……」


アレッシアさんと入れ替わりで入ってきたエフィがいた




===




――夢を見ていた。向こうにいた頃の夢


――エフィと出会った後、コナーの部隊に入る前


――具体的には2027年の1月。俺が13歳と5ヶ月のときだ


――T-800の量産が進み、同時にプラズマライフルの生産も開始。人類と機械の戦闘が激化していた頃


――その日は、南基地が爆破された日でもあった



エフィ「俺兄さん!」タッタッタ

俺「ん?どうしたエフィ?」

新しく配属された南基地、上官の部屋から戻る途中、エフィが駆け寄ってきた

エフィ「その……道に、迷っちゃって///」

俺「ハハッ、去年までいた車両基地よりだいぶ広いからな」

そのまま、エフィの手を引いて自分たちの場所へ向かう

一般兵に部屋は与えられず、柱や壁の周りを自分のテリトリーにするのが普通だった

俺たちは、出入り口近くの柱の回りをテリトリーにしていた

俺「何か目印でもつけるか?」

エフィ「大丈夫、覚えた」

俺「……また迷ったら目印つけようか」

エフィ「むー///」

俺「そう拗ねるなよ」ナデナデ

エフィの左後頭部を優しく撫でる。エフィが一番好きな撫でられ方だ

エフィ「///」ニパー

うん、うれしそうだ

一般兵「相変わらず仲いいなぁ、御兄妹」

俺「会う度に言われてる気がする」

一般兵「会う度に言ってる気がする」

俺・一「……」

俺・一「へへへへっ」

抵抗軍の日常なんてこんなもんです

エフィ「……ふぁぁ…ムニャ」

俺「眠いか?」

エフィ「うん………」

俺「今日はもう、毛布かぶって寝ろ」

エフィ「俺兄さんは?」

俺「俺はまだやることがある。すぐに終わらせて戻ってくるよ」

エフィ「……分かった」

一般兵「御暑いこって」

俺「」ギロッ

一般兵「おっと、俺は弾薬庫に行って来るよ」

俺「おう」

手を振って分かれる

エフィが眠い目をこすりながら、モゾモゾと移動し、毛布の中にもぐる

すぐ眠りにつき、規則正しい寝息を立て始めた

寝付きと寝起きがよくないと、ここじゃやっていけない

その時だった

<ズキッ!?

俺「あっ…あぅ…」

後頭部に鈍器で叩かれたような痛みが走る

<キィィン!

俺「ガッ…」

今度は電流を流したような痛み

あまりの痛さに、意識が朦朧とし始め、

視界が赤に染まる

俺「あ…」フラッ

ドサッ、と地面に倒れ、

俺「……」ムクッ

それを巻き戻すように音も無く立ち上がる

立ち上がった俺の目は、

俺「…」キィン

赤く染まっていた




 武器・弾薬集積庫

<ガチャ

一般兵「お?どうした俺?弾薬が足りなくなったか」

俺「……」スタスタ

一般兵「お前の武器はAKだったよな?確かこのあたりに…」

彼が棚の中を漁っているうちに、俺は脇まで近づき、

俺「……」スッ

無言で腰のグロックを抜き、

一般兵「おい……?」

俺「……」スチャ

<ダァン!

一般兵「がぁ…」ドサッ

脳天に一発ぶち込む

彼が最後に見たのは、暗闇に浮かぶ二つの赤目だった

俺「……」スタスタ

倒れた彼の横を通り過ぎ、爆薬のスペースへ向かう

棚に置かれたものの一つ。『テルミット』を手に取る

焼夷弾などに用いられるもので、T-800を焼却処分するのに重宝されていた

そのテルミットの容器に、プラスチック爆弾の代表格、C-4を取り付ける

取り付けたC-4に雷管を差込、無線操作の起爆装置に繋ぐ

それらを弾薬庫の中央に置き、起爆装置の電源を入れておく

起爆するための無線を腰に引っ掛け、弾薬庫を後にする

C-4が爆発、テルミットに引火、周りの弾薬も巻き込み大爆発を起こしたら、

この基地は、跡形もなくなるだろうな




 廊下

俺「……」スタスタ

無言で出口へ向かう

その途中、グロックのマガジンを交換する

このグロックは45口径モデルだった気がする

出口まであと少し。外に出て、ある程度距離をとったあと、起爆スイッチを押す。やることはそれだけだ

そのときだった

エフィ「…俺兄さん?」

俺「あ…」ブォン

不意に赤目が消える

エフィ「外に、行くの…?」

あくびをかみ殺し、眠い目をこすり、エフィが問いかけてきた



この辺りからの記憶はかなり曖昧だ

脳にインプットされた偽の記憶と、チップに記録された物とが混ざり、真実が分からなくなっている



俺「…偵察が任務が下されたんだ。いっしょに来るか?」

腰を下ろし、目線をエフィに合わせる

エフィ「いい、の…?」

俺「基地の周りをぐるっと見て回るだけだ。すぐに終わる」

エフィ「……行く」

俺「よし、行こう」

エフィの手を取り立ち上がり、地上へ繋がっている梯子を上る



外に出た後、市街地方面を見て回った

俺「…」ブォン

再び赤目が起動する

エフィに悟られぬよう、後ろで無線機を手にし、

<カチッ

スイッチを押した



<ドォォォン!!



エフィ「っ!?」

ビクッ、と体を震わせ、俺に抱きついてくる

俺「あ……あぁ…」

エフィ「俺兄さん…」

俺「…大丈夫、大丈夫だ……とにかくここを離れよう」



確か、この辺りからチップの洗脳が解けたんだったと思う。あの時は、あの爆発が自分がやったものだとは分からなかった

帰る場所を失った俺たち二人は、そのまま崩壊寸前のビルが並ぶ市街地へ向かった

比較的原形をとどめているビルの一つに入り、野宿することにした

<パチパチ

元はクローゼットだったものを火にくべ、暖をとる

あまり大きな火は出さない。敵に気づかれる

その火を囲み、俺たち二人は床に座って休んでいた

エフィ「……ん」

火があるとはいえ、1月の寒い時期だ。エフィが凍えて体を丸める

俺「……おいで」

正気を取り戻している俺が手招きする

エフィ「…」トテトテ

座っている俺の股の間に座らせる

俺「…」ギュッ

そのままかかえるように抱きしめる

エフィ「?」

俺「こうやって、他人の体温を感じてる内はな、自分を見失わないんだ…」

孤独ほど怖いものはない。スカイネット刑務所に入れられたときに実感した

エフィ「……」モゾモゾ

俺「?」

エフィが俺の腕の中で動き、

エフィ「……」ピトッギュー

向かい合う形になって、顔を俺の胸にうずめた

俺「…」ナデナデ

いつものように左後頭部を撫でる

エフィ「これから、どう、するの?」

俺「…南に、ロスに戻ろうと思う…コナーの居る基地が近くにあるはずだ」

エフィ「歩く?」

俺「歩きだろうな。動くバイクが手に入れば良いが…」

エフィ「……」

俺「置いてったりはしないよ…ずっと一緒だ」ギュッ

エフィ「…」ギュー

結局その日はそのまま寝てしまった


コナーの基地に辿り着いたのは、確か二日後だった

俺はそこで直属部隊に配属になり、今使っているプラズマライフルを受領した

それから二年後の、2029年8月。タイムマシーン捜索に出た俺は、帰らぬ人となった…ことにされている

…………あのときのグロック、どこにやったっけ?




===




 501基地 医務室

俺「…………っ」

ゆっくりと目を開ける

若干ぼやけた視界の先、見慣れた顔が俺を覗き込んでいるのが見えた

エイラ「……私が分かるか?」

柔らかい笑みを浮かべて、優しい声で問いかける

俺「……ああ、エイラ」

だんだん視界と記憶がはっきりしてきた

確か、海に叩きつけられて、そのまま…

……体のあちこちがいてぇ

俺「ん?」

左腕に違和感がある…なんだ?点滴?

いや違う。何かに包まれてるような……包帯?じゃないな、熱を持ってる

そう、ちょうど人肌ぐらいの温度…………人肌?

マルセイユ「あ……///」

大尉がぱっと離れる。同時に左腕の違和感も消えた

腕の違和感の正体は大尉の手だった

彼女は、腕のバーコードの刻まれた部位を握っていた

俺「……帰ったと思ってましたよ」

マルセイユ「…ここに残らなきゃいけなくなったからな」

俺「?」

エイラ「血、だよ。大尉の血を俺に輸血したんだ」

俺「……ありがとう」

マルセイユ「…見過ごせなかっただけだ」

プイッ、とそっぽを向いてしまう

俺(あれ?もしかしてこの人…)

ネウ子「……」

俺「…エフィ」

視界の端にエフィが映る

ネウ子「……ごめんなさい」

俺「……話した…いや、見せたのか?」

ネウ子「…」コク

俺「…どの辺りを?」

ネウ子「姉さん、たちの、知ってる、ことと…自信家は、早く死ぬ、の、辺り…」

俺「……そうか」

マルセイユ「……」

俺「…大尉、あなたにはひどいことを言った。申し訳ない」

マルセイユ「…いや、私も調子に乗りすぎた……お前がああ言った理由も、今なら分かる」

相変わらすそっぽを向いたままだ

俺「大尉、自分はあなたを自信家だといった。でも、違ったみたいです」

マルセイユ「?」

俺「あなたはただ、わがままな子供ってだけなんですよ」フフッ

マルセイユ「なっ!?子供とは何だ!あんたより年上だぞ!///」

俺「そういうところを子供っぽいっていうんですよ」

マルセイユ「~~~っ!!///」

ネウ子「…………フフッ」

俺「?」

エイラ「?」

ネウ子「フフフッ…ハハッ」

エフィが笑ってる。ほんのちょっと我慢しながら笑ってる

なんだかその姿が滑稽で、

俺「……ハハッ」

エイラ「……フフッ…フフ~ン」プルプル

マルセイユ「……フッ」

俺たちまで笑ってしまった





 夜

アレッシアさん、宮藤の治療の甲斐あり、俺はだいぶ回復した

だが怪我が怪我なので、まだ安静にしているようにとのこと

エイラ「お前の生命力には毎度驚かされるよ」

俺「抵抗軍兵士のバイタリティはゴキブリ並みだ」

エイラ「ゴキブリって…」

立派な食料でもあるぞ。できれば二度と食いたくないが、状況が状況なら食うだろうな

エイラ「で、さ……一つ、いいか?」

俺「ん?なんだ?」



エイラ「……セルヴィスって、誰…?」



俺「!?」

今一瞬、エイラの目から光が消え、背後になんか渦巻くものが見えた気がする

俺「誰って……というか、その名前をどこで?」

まずはそれを聞かねば

エイラ「……寝言…そう、寝言で言ってたんだ」

なんか歯切れが悪いが、まぁいい

俺「………ドームの中にいた、人型ネウロイの名前だ」

エイラ「は?」

まさに、は?といった感じの顔をするエイラ……何を想像していたのだろう

チャラン、と首元から彼女のくれたネックレスを取り出す

円筒状のケース。万年筆よりちょっと太いくらいの太さで、人差し指くらいの長さだ

ケースの中には、ソーダをギリギリ色が分かるくらいまで薄めたような液体が入っていた

エイラ「それは?」

俺「セルヴィスがくれたものだ…死に際に俺に託した」

エイラ「死に際って……そうか、艦砲射撃で…」

俺「俺を中に呼んだのも、外に出してくれたのも、セルヴィスだ……あいつは俺に何かを伝えようとした」

エイラ「何か?」

俺「それが分からないんだ。渡されたのはこれだけだ」

エイラ「……」

彼女は、『いずれ、必要になる』と言ってた…何に使うんだ?

だが、そんなことよりも……

俺「……俺は、あいつを救えたはずなんだ」

エイラ「え?」

俺「あの艦砲射撃から、守ってやれたはずなんだ……信じないと思うが、あいつ、死ぬ直前、泣いてたんだ」

痛みに耐え、苦しみで顔を歪め、目に溜めていた涙…

俺「あいつは、死を覚悟で俺に何かを託した……その何かが分からない……何のためにあいつが死んでいったのか……さっぱり……」

エイラ「俺」スッ

俺「!?」

いつの間にか、俺の目からは、涙が流れていた

同じ涙でも、彼女があの時流したものとは、まったくの別物だ

目尻に溜まったその涙を、エイラが手でぬぐってくれた

エイラは、母親のような優しい笑みを浮かべたあと、

エイラ「……」ギュッ

俺「!」

優しく、それでいて強く、俺を抱きしめた。抱きしめてくれた

エイラ「俺、一人で抱え込んじゃダメだ……自分でエフィに言ってただろ?」

俺「……でも、セルヴィスは…」

エイラ「二人で……ううん、エフィと私と俺の三人で、彼女が伝えようとしたことの答えを探そう」

俺「三人で……」

エイラ「うん…三人ならできるさ」

俺「……そうだな、一人じゃ、無理そうだ」

まだ若干痺れが残る腕を動かし、エイラの背中に手を回す

孤独ほど怖いものはないからな

体全体で、エイラの体温、存在を感じる

俺「エイラ……」

エイラ「俺……」

こうしていると、すごく落ち着く


…………これ以上のコトに進まないのが二人なのです

俺「エイラ……お前とエフィだけは、俺が守ってみせる」

エイラ「サーニャは守ってくれないのか?」

俺「お前が守れ。俺はサポートだ」

エイラ「じゃあ私は、俺がエフィを守るのをサポートしようかな」

俺「……できるのか?」

エイラ「やってみせるさ」

俺「………ありがとう」ニコッ

エイラ「ナンテコトナイッテ」ニッ

結局その日はそのまま、二人いっしょに医務室のベッドで寝た

翌朝、アレッシアさんが抱き合って寝る俺らを写真に撮ったのは、別の話なんじゃないかな?




 ―次回予告

 ネウ子「……なぜ、そんなことを」


 俺「ネウロイでも夢を見るのか…」


 エイラ「……――れ………―俺!」


 ミーナ「持てるすべての戦力を用い、ヴェネツィアの巣を叩きます」


 ネウ子「キュッ?」


 坂本「――っ 私はまだ戦える!!」


 俺「なんで………なんでぇぇぇっ!!」
最終更新:2013年02月15日 12:49