ある晴れた日の昼。ネウロイの攻撃もなく、急降下爆撃部隊も一時の休息を楽しんでいるそのさなか・・・

ルーデル「・・・よし、やるか」

調理室とカールスラント語で書かれたプレートがぶら下がる部屋の中にある厨房でハンナ・U・ルーデルがいつもの軍服の上にエプロンを纏い仁王立ちをしていた。


なぜそのようなことをしているのか?それは話を少し前に戻さなければいけない。


~~一昨日~~

ルーデル「ウム・・・」

アーデルハイド「どうしました大尉?」

急降下爆撃の任務を終えたルーデル一行は基地へと帰還していたところ・・・ルーデルが唸っているのを副隊長のアーデルハイドは見逃さなかった。
ルーデルはそんな部下の声にああ、と答え思っていたことを伝える。

ルーデル「いや・・・なに、俺のことについてなのだがな・・・」

アーデルハイド「(ああ、なるほどだから・・・)」

アーデルハイドはふうと呆れたようにため息を吐く。最近ルーデルが悩んでいる理由・・・それは彼女の専属整備士である俺軍曹についてだ。

俺はかなりのお節介焼きだ。整備に妥協は許さないのは勿論、ルーデル初めとしたウィッチはもちろん基地内の整備士やらの仕事や身の回りの世話を進んでする変わった男だ。
ルーデルはそんないつも世話になっていて・・・かつなぜか最近一緒にいると落ち着く俺に何かお礼をしたいと思っていた。
そのことをルーデルがアーデルハイドに告げると、

アーデルハイド「まあ・・・確かに彼には色々とお世話になっていますからね・・・
確かに何かしらのお礼をしたほうがいいかもしれませんね」

なるほどと思いながら頷いた。アーデルハイドも何度も俺に世話になった身だ、なにかしらの礼をしたいと思っていた・・・が、

アーデルハイド「(私達全員でやるより・・・ルーデル大尉一人にやってもらったほうがいいかもしれないわね)」

アーデルハイドはルーデルが俺に大して何かしらの感情を抱いているとわかっていた。それを知ったアーデルハイドとしてはどうにかして二人をくっつけたいものだが・・・

ルーデル「何かいい案はないだろうか?アーデルハイド」

アーデルハイド「う~ん・・・あっ」

ルーデルの問いかけに、頭を捻らすアーデルハイド・・・そのとき、天啓が閃いた。

アーデルハイド「料理を作る・・・などはどうでしょうか?」

ルーデル「・・・料理?」

アーデルハイドの言葉に、ルーデルは怪訝な顔になる。アーデルハイドはええ、と答え続ける。

アーデルハイド「聞いた話なのですが、何でも扶桑では女性が男性に手料理を作ることがあるらしいのでが、男性にとってその女性の手料理とは最高のお礼だ・・・という話を聞いたことがあります」

まあどこかしら違うとは思うが、細かいところは割愛させてもらおう。
ルーデルはアーデルハイドの言葉にウムと頷いた・・・だが、

ルーデル「まあ料理を作るのは別に構わんのだが・・・アーデルハイド一つ大きな問題点がある・・・私は料理ができんのだ」

アーデルハイド「・・・はい?」

ルーデルの言葉にアーデルハイドは素っ頓狂な声を上げる。いまこの隊長なんていった?という気分なのだろう。
ルーデルは恥ずかしそうにソッポを向く。

ルーデル「・・・私は人生のほとんどを戦場に費やしていたのでな。料理らしい料理を作ったことがないのだ」

ルーデルの言葉を聞きアーデルハイドはああ、と頷く。
ウィッチの中には過酷な訓練の間に料理の勉強をするものもいるが、ルーデルのように戦場に集中しすぎて航空機動の練習に時間を費やす人間も多くいる。
まあ、さすがに軍人はそれなりの調理ができるようにと教えられたが・・・ルーデルができるのはよくてふかし芋か野生の生き物を素焼きにしたものだろう。アーデルハイドはう~む、と悩んだような声をだし、

アーデルハイド「まあ・・・確かにそればかりはどうにもなりませんが・・・ようは心が篭っていればいいのではないでしょうか?」

ルーデル「心・・・?」

ええ、とアーデルハイドが続ける。

アーデルハイド「見た目がどんなのでも、大尉が一生懸命作った料理なら俺も喜ぶと思いますよ?」

ルーデル「ん・・・そうか?」

そうですとも、とアーデルハイドが答える。そしてしばらくウムウム、と頷き

ルーデル「よし、なら作ってみよう」

ルーデルは料理を作ること決意した。




~~そして現在~~

ルーデル「さて・・・始めるとするか」

ルーデルは早速料理に取り掛かることにした。因みに俺は現在ルーデルのおつかいということで街まで向かっている。帰ってくるのは夕方頃だろう。
ルーデルとしては俺が帰ってくる前に料理を終わらせたいと思っていた。
そしてルーデルが作ろうとしている料理は

ルーデル「うむ・・・“肉じゃが”・・・か」

そう肉じゃがである。扶桑の代表料理の一つでもあるこの料理を今回作ろうとしているのである。

ルーデル「どれそれでは早速作るとするか」

そういってルーデルはまずジャガイモを手に持った・・・が、

~~五分後~~

ルーデル「くっ・・・なかなか難しいな・・・」

始めて五分・・・ジャガイモの皮を剥いていたルーデルは苦戦した。思っていた以上にうまく剥けず、しかもほとんど身を剥いてしまっているのだ。

ルーデル「くっ・・・・イッ」

ルーデルの指に痛みが走る。何事かと思い見てみると、指から血が出ていた。

ルーデル「刃物の扱いには慣れてたと思ったのだがな・・・」

そう言いつつ、ルーデルは救急箱の中にある絆創膏を取り出して指に貼る。そして、また剥き出すも

ルーデル「ッ」

二回目

ルーデル「ッ」

三回目

何度も指を切ってしまった。それでもルーデルは何度も続ける。


~~三十分後~~

ルーデル「やっと全部剥けたか・・・」

野菜を一通り剥いたルーデルはここだけで疲れてきてしまった。指はほとんど絆創膏で覆われていて、なにやら指かどうかわからなくなってきた。
だが、ここで止めるわけにはいかない。

ルーデル「次はーーーー」

ルーデルはその後もレシピを見ながら料理を続けた。



~~しばらくして~~

俺「ふう、ただいまっと」

営舎に入りながら、俺はう~んと伸びをする。その手にはルーデルに頼まれたとされる書籍が入っていた・・・因みに本の内容は秘密である。
渡してからお茶でも飲もうかと思った俺は、ルーデルの部屋えと向かおうとした・・・そのとき、

俺「・・・ん?」

スンスン、と匂いを嗅ぐとなにやらいい匂いがしてきた。
どこからするのかと思い近くに調理室があるのに気付き覗いてみると、

俺「・・・ルーデル大尉?」

俺の目に飛び込んできたのは机にうつ伏せになって寝ているルーデルだった。
なぜこのようなところで寝ているのかと思い、不思議に思い辺りを見てみると

俺「これは・・・?」

俺の目にコンロに寸胴鍋が乗っかっているのが見えた。どうやらいい匂いの正体はそこから来ているらしい。
俺は寸胴鍋の蓋を開け中を覗いてみると、

俺「肉じゃが・・・なんでだ?」

肉じゃがが入っていた。よく見ると野菜や肉がいびつに切られているのが見てわかる。

ルーデル「ん・・・お、俺!?」

俺「あ、ルーデル大尉。どうも」

ルーデルが起き上がると目の前には俺がいた。窓の外を見るとすでに夕暮れで辺りは夕日色に染まっているところを見ると、どうやら帰って来たばかりなのだろう。そして俺が立っている前には・・・

俺「これは・・・ルーデル大尉が?」

ルーデル「あ、ああ・・・そうだ」

俺の言葉にルーデルは顔を若干紅く染め俯く。やはり恥ずかしい物があるのだろう、しかも指は絆創膏だらけ・・・確かに恥ずかしい。

俺「でもなんでまた肉じゃがを?」

ルーデル「そ、それはだな・・・その、お前のためにだな」

俺のため?と俺が首を捻る。なぜだろうかと思ったが、ルーデルが日頃のお礼ということで
作ってくれたと言うと聞き、

俺「そうですか・・・ありがとうございます。ルーデル大尉」

ニコリと微笑む。別に俺はこのようなことをしなくてもいいのに、と思っていたが折角の人の好意・・・しかも女性からの好意を無下にするのは俺のポリシーに反する。
俺は小皿とお玉を手に持ち、

俺「少し、頂いてもよろしいでしょうか?」

ルーデル「あ、ああ・・・いいぞ」

ルーデルは緊張したように答える。やはり、心配なのだろう。俺は肉じゃがを少し小皿に乗せそして箸をとり、

俺「・・・」

パクリ、と食べる。そしてしばらく噛み続け・・・飲み込む。

ルーデル「どうだ・・・?」

心配気味に聞いてくるルーデルに対して、俺は

俺「とても美味しいですよルーデル大尉」

ニコリと笑い、パクパクとさらに食べる。形こそ歪だが、普通に上手い。俺はパクリパクリと食べ続ける。
ルーデルはほっと息をつく。安心したのだろう、ふうと椅子に深く腰掛ける・・・が、そこに俺が二百五十キロ爆弾を投下する。

俺「いやはや、ルーデル大尉は扶桑でいい嫁さんになれますね」

ルーデル「よ、・・・!!」

嫁と聞き、ルーデルの顔がさらに真っ赤に染まる。そして、頭の中で俺とーーー

ルーデル「~~~~ッ」

ぷシューと音が出るくらい真っ赤に染まっていた。だが、俺はそれに気付かずにパクパクと肉じゃがを上手そうに食べていた。



後日、ルーデルは「私が嫁・・・」とブツブツと呟くところを色々な人間に目撃されていたとか・・・。
最終更新:2013年02月15日 12:52