とある日。急降下爆撃部隊の隊長を努めるハンナ・U・ルーデル大尉は・・・
俺「いや~、今日はいい天気ですねルーデル大尉」
ルーデル「ああ、そうだな」
専属整備士の俺軍曹と共に町まで買い物に来ていた。
~~一時間ほど前~~
ルーデル「買出し?」
俺「ええ、そうです」
ズズッと俺は淹れたコーヒーを啜る。しかし苦かったのか若干顔を顰めて机の上に置き、目の前でコーヒーを啜るルーデルに向き合う。
俺「実は少しばかり備品のいくつか足りなくてですね・・・近くにある町まで行けば十分揃えられるんですよ。それで回りは忙しいですし、自分はもう仕事が終わっていますから・・・」
ルーデル「買出しに名乗り出た・・・と」
ええ、と俺が答える。ルーデルはそんな俺に呆れたような視線を向ける。相変わらず人のために働く男だ、と。
だが、ルーデルとしては正直俺が出るのは困る。おそらく俺のことだから早朝にルーデルの愛機であるシュツーカの整備はもう済んでいるだろう。だが、いざとなったときに整備をする人間がいなくなる・・・まあ、他の
整備士に頼んでもいいのだが・・・俺が整備した機体じゃないと安心できないのだ。
すると俺はああそうだ、と呟き。
俺「いっそのことルーデル大尉もどうです?一緒に買い物にいきませんか?」
俺が提案する。だが、
ルーデル「何を馬鹿なことを言っているのだ。もし急に任務が入ったらどうするつもりだ?」
即座に却下する。確かに町に出ている間にネウロイが現れてしまったらルーデルは戦えない。それを危惧しての発言だった・・・が、
アーデルハイド「いいではありませんか大尉」
ひょこりと一人の女性・・・急降下爆撃部隊の副隊長を務めるアーデルハイドだった。どうやら入り口の前で聞いていたらしい。
アーデルハイドはそのままコツコツと部屋の中へと入っていき、ルーデルに次げた。
アーデルハイド「一緒にいったらどうですか?大尉。大尉は最近休暇を取っていなかったでしょう?」
ルーデル「だがなアーデルハイド。私とて航空機動歩兵だ。たとえネウロイが攻めてこなくとも待機をしているのは重要ではないか?」
アーデルハイド「それでしたらご安心を。その間は私達が任務を行います・・・それとも大尉は私達だけでは不安ですか?」
ルーデル「いや、そんなわけない。むしろ安心できるが・・・」
うぐ、とルーデルは言い詰まる。いや、不安ではない。かなり長い間共に飛んでいた仲間だ、自分ひとり抜けたとしても問題はないだろう。
ルーデルの言葉にアーデルハイドはニコリと笑い、
アーデルハイド「それでは俺軍曹と共に買出しをお願いいたします」
~~そして現在にいたる~~
ルーデル「(やれやれ・・・アーデルハイドにも困ったものだ・・・まあ、おかげで俺と二人っきりになれたのは礼を言うべきだろうが・・・)」
ルーデルは横で鼻歌を歌いながら運転する俺のことをチラリと見る。なぜだかわからないが、一緒にいると安心する相手・・・もしこれが俺ではなかったら間違いなくルーデルはこないだろうし、来たとしてもまったく喋らなかったろう。
とにかく落ち着くということでルーデルは椅子に深く腰掛ける。そんなことをしていると、
俺「お、大尉。見えましたよ」
しばらく走り目的地である街が見えてきた。ルーデルもチラリと改めてみると、街が見えるのは確かだ。
~~街中~~
俺「え~と次は・・・」
俺は片手で紙の入れ物(テレビなんかで見る溢れてるやつ)を抱えながらもう片方の手で持っている紙を見て次に何を買うか探す。
ルーデル「・・・多くないか?一旦戻って置いてきたほうがいいのではないか?」
その俺の後ろを歩いていたルーデルは今にも溢れそうになっている紙袋を見ながら俺に言う。だが、俺はそれにハハハと笑い答える。
俺「いやいや、俺だって男の子ですよ?これぐらいの荷物楽勝ですよ楽勝」
そうか、とルーデルは答える。そして改めてチラリと俺の腕を見る。普段から整備をしているのもあるせいか、腕はそれなりに太い。稽古もしているからかその太さにも拍手が掛かっている。
俺「?どうしました大尉?俺の腕になんかついてますか?」
俺はルーデルの視線に気付いたのか、ルーデルのほうへと向き聞く。ルーデルは慌てたように前を向き、
ルーデル「な、なんでもない。それより早く買い物の続きをするぞ」
スタスタと歩いていくルーデルに俺は慌ててその後についていく。
~~とある店~~
俺「ここで最後ですね」
しばらく買い物を続けた俺とルーデル。そして遂に最後の店に来た。どうやらコーヒー豆を使う店なのか、コーヒー豆が詰まった麻袋が置かれていたりする。
ルーデルはほう、と声をだし匂いを吸う。
俺「すみませんがルーデル大尉。コーヒーでも飲んで待ってていただけますか?ちょっと主人と話がありまして・・・」
ルーデル「ん、ああわかった。そうさせてもらおうか」
どうやらここの店ではコーヒーを飲むこともできるらしい。俺はニコリと笑い、店のオーナーらしき人に注文をした。オーナーは近くにいたウェイトレスに淹れたコーヒーを渡して俺と何か話をし始める。
ウェイトレス「どうぞ。ミルクと砂糖はどういたしますか?」
ルーデル「いや、いらない。すまないな」
ウェイトレスの女性はコトリとコーヒーカップを置きニコリと笑いその場を離れていった。ルーデルは出されたコーヒーを一度匂いを楽しみ、一口飲む。
ルーデル「(ほう・・・中々美味いではないか・・・)」
まさかこんなに美味いコーヒーを淹れる店があるとは・・・と思ったルーデルはさらに一口啜る。
俺「はい・・・それではこれが代金です」
オーナー「はい確かに・・・いやはやにしても君も中々すみにおけないねぇ。あんな別嬪さん連れて歩くなんて」
俺「止めてくださいよオーナー。第一俺とルーデル大尉じゃ月とスッポン・・・あ、砂粒に月のようなものですからね」
オーナー「まあウィッチは高嶺の花だからねぇ・・・ま、がんばんなよいろいろと」
俺「はいはい、どうも。それではまた町に着たときに寄らせてもらいますよ」
俺はオーナーと話し終え、そのままルーデルの元へと歩いていく。
俺「ルーデル大尉」
ルーデル「ん?なんだ終わったのか?」
俺「はい、すみません待たせてしまって・・・」
ルーデル「いや大丈夫だ。そんなに待ってはいない・・・それではいくか」
ルーデルは残っているコーヒーを飲み干し、代金を払おうと財布を出そうとしたが、
俺「あ、すでに代金は払っておきましたので大丈夫ですよ」
ルーデル「・・・お前は本当にそういうところにはぬかりがないな」
ありがとうございます。と笑いながらいう俺にルーデルはため息を吐く。本当、人のことに気を利かす相手だと思い、財布を仕舞う。どうせ俺のことだから渡そうとしても受け取らないだろうし、後で給料袋にでも混ぜておこうと密かに心に決めたルーデル。
二人はそのまま店を後にした。
そんな二人を見送った店のオーナーはポツリと一言呟いた。
オーナー「・・・あの二人、なんだかんだでお似合いじゃね?」
ウェイトレス「ええ、そうかもしれませんね」
ウェイトレスもクスクス笑いながら同意した。
~~帰り道~~
俺「いや~疲れましたね大尉」
ルーデル「ああ、そうだな」
ゴトゴトと揺れる車内の中、俺は達成感を得たような笑顔でルーデルに話す。ルーデルはルーデルで、本当に人のために働くことが好きな男だな、と思い呆れたような顔になっている。
俺「?俺の顔に何かついていますか?ルーデル大尉」
ルーデル「いや・・・なんでもないさ」
はあ、そうですかと答え俺はまた運転に集中する。だが、俺はああと声を漏らす。後ろにある袋の中を漁り、
俺「ああ、そうだ大尉これどうぞ」
ガサリと漁った袋の中から俺は何かを取り出しルーデルへと渡す。どうやら箱のようだ。ルーデルは呆気に取られたような顔になり箱が何かを見る。
ルーデル「・・・これは?」
俺「まあ、普段お世話になっているお礼と言うことで・・・」
ニコニコと・・・でもどこか照れるような顔になった俺は、ポリポリと鼻を掻く。ルーデルはそんな俺に対して、ふうと息を吐き
ルーデル「開けて見ても?」
俺「どうぞどうぞ」
ルーデルはガサガサと箱を開ける。すると中から出てきたのは・・・
ルーデル「・・・コーヒーカップ?」
中から出てきたのは何の変哲もない、くすんだ白色をした陶器製のコーヒッカップだった。俺はカリカリと頭を掻きながら話す。
俺「いや・・・実はもっと飾りっけのあるヤツでもよかったんですが・・・ルーデル大尉はあまりそういうのは好まないと思いましてね・・・」
ルーデル「・・・」
ルーデルはコーヒーカップをジッと見つめる・・・それに俺は不安を感じたのかあせあせと、
俺「あ、あの、気に入りませんでしたか・・・?」
ルーデル「いや・・・実に私好みのカップだよ・・・」
ふふ、と笑うルーデル。その表情はどことなく嬉しそうなのは言うまでもないだろう。俺もどこかしらひっとした顔になり、
俺「よかった~。もし気に入られなかったらどうしようかと思っちゃいましたよ」
ルーデル「まさか、お前が私のために買ってくれたのだろう?なら、その好意を無下にするなどとんでもないことだ」
ルーデルは嬉しそうにコーヒーカップを見る。実はルーデル、今までこのように男性から品物を貰ったことがないのだ。過去には渡してくる男も居たのだが、それも大体ルーデルの地位に目が眩んだ物ばかりで心の詰まったものなど一つとしてなかった。
だから、実際に心の詰まった品を貰ったのは
初めてなのだ。
- だがしかし。ルーデルはそこでふと疑問に思うことがあった。
ルーデル「(・・・ん?つまりは俺は私のことを思ってこれを買ってくれたということなのか?)」
つまりそれは・・・
ルーデル「~~~~ッ」
俺「ちょ、え!?どうしたんですかルーデル大尉!急に顔赤くして・・・!?」
ルーデル「い、いや、何でもない!!なんでもないぞ!!」
急に顔を紅く染めたルーデルに、俺は驚いたように聞く。ルーデルは慌てたようにブンブンと頭を左右に振って大丈夫だと答える。
その後、基地までの道のりのなか。ルーデルは顔を真っ赤に染め下を俯き、俺はそんなルーデル大尉を心配しながらも安全運転で基地まで帰って言ったそうな・・・・
オマケ
アーデルハイド「おや?大尉。新しいコーヒーカップですか?」
ルーデル「あ、ああ・・・俺のヤツがな・・・買って・・・くれたんだ」
アーデルハイド「(え、なにこの可愛い生き物)」
顔を若干紅く染め、ポツリポツリと答えるルーデルに、アーデルハイドは思わずそんなことを思ったとかどうとか・・・。
最終更新:2013年02月15日 12:55