前回より数日後…

基地司令室にて*

ハッキネン「では、後はお任せ下さい」

マスター「ああ。だがよ、一つ聞きたい事がある」

ハッキネン「何か?」

マスター「なぜあいつなんだ?他にも沢山いるだろう」

ハッキネン「……申し訳ありませんが、軍事機密ですので」

マスター「復興支援が軍事機密ね……まあなんにせよだ、あいつを頼む」

ハッキネン「頂いたメモに注意事項が?」

マスター「ああ、それとな、あいつたまに夜泣きするんだ。理由を聞いたって答えやしねえで、ずっと女房に抱きついて泣き続ける。
     そんで、翌朝にはケロッとした顔で家の掃除してんだから、よくわかんねえ奴だよまったく」

ハッキネン「……私から言えるのは、これは決して不幸な選択ではないという事くらいです」

マスター「…不幸にしてみろ。常連共連れて、基地を襲撃してやる」

ハッキネン「肝に銘じます。それでは…失礼致します」



基地ゲート前*

俺「わぁ…ここがカウハバ基地…」

衛兵「ん?どうした坊や、何かようかい?」

俺「あ、えっと、今日からここでお世話になります○○と言います!」

衛兵「ああ、君が例の…では司令室に行ってもらえるかな?道案内は…」

エルマ「あれ?俺君?」

俺「あ、エルマ中尉!こんにちわー!」

エルマ「こんにちわ。一体どうしてこんなところに?」

衛兵「聞いてないんですか中尉?ハッキネン少佐が基地に雇ったんですよ」

エルマ「えっ?!そ、そんなこと今初めて知ったんですけど…」

衛兵「ああ…まぁとにかくこの子を司令室に連れて行きたいのですが」

エルマ「あ、じゃ、じゃあ私が連れて行きますね。行こう、俺君?」

俺「ありがとうございます中尉!衛兵さんも!」

衛兵「うんうん。頑張って働いてくれな。では、お任せいたしますエルマ中尉」



基地内*


俺「基地内、初めて入りました…」

エルマ「えへへ、意外とぼろっちいでしょ?」

俺「そんな事ないですよ~スラッセンの仮設テントなんか目じゃないくらいです!」

エルマ「あう…ごめんね…私たちが頼りないばっかりに…」

俺「え?いや、そんなつもりじゃないですよ!ご、ごめんなさいこっちこそバカな事いっちゃって…」

アホネン「あら?エルマ中尉、そのちっこいのはなんですの?」

エルマ「あ、アホネン大尉。えっとこの子は…」

アホネン「ああ、今朝のミーティングで言っていた雑用係さんですわね。私はミカ・アホネン大尉。第一中隊の隊長ですわ。
     以後よろしく…といっても、私の部隊は男子禁制ですので、立ち入らないようにお願いしますね」

俺「は、はい!よろしくお願いします…ええと…アホヤネン大尉…?」

アホネン「使い古されたネタありがとうございます」



エルマ「で、ここがトイレで、あそこが倉庫で…」

俺「えっと…エルマ中尉…その、司令室は…」

エルマ「あ…! うぅ…ごめんね、なんか案内するのが楽しくって忘れちゃって…」

俺「あはは…(だ、大丈夫かなこの人…)」

エルマ「ええと…あ、ここが司令室ですよ。一応身だしなみは整えてね?」

俺「は、はい…なんか緊張しますね…」

エルマ「ハッキネン少佐は雪女って言われてるけど…実際はとっても優しい人だから大丈夫だよ!」

俺「そ、そうなんですか?そういえばなんとなくそんな気も…」

エルマ「じゃあいきましょうか。ノックして…」

『どうぞ』 
ガチャ

エルマ「エルマ中尉です。俺君を連れてまいりました」

ハッキネン「……何時間待たせれば気が済むのですか?」

エルマ/俺(ヒイィィィィ…!)ガタブル



司令室*

ハッキネン「そういうわけで、貴方を正式に当基地の第二中隊雑用係に任命します」

俺「は、はい!精一杯がんばります!」

ハッキネン「そんなに固くならなくても大丈夫です。恐らく貴方には第二中隊の身の回りの世話などを頼む事になるでしょう。エルマ中尉?」

エルマ「はい?」

ハッキネン「朝申し付けた通り、全員を営舎に待機させてありますか?」

エルマ「え?あ、はい? そ、そんな命令ありましたっけ…」

ハッキネン「このように、第二中隊副隊長はあまり使い物になりませんので、細かな指示等は穴吹智子中隊長か、ビューリング少尉に仰いでください」

エルマ「う…うぅぅ…ひどい…」

俺「あは…はは… わ、分りました~」

ハッキネン「ではエルマ中尉、彼を"寄り道せず"営舎まで案内を」

エルマ「ふぁぃ…」



ハッキネン「ああ、そうそう、忘れていました俺君」

俺「はい?」

ハッキネン「他にも何名か忘れている者がいるようですが、ここは最前線、かつ軍の施設です。
      一歩間違えれば命を落とす事も十分ありえる、死と隣り合わせの場所だという事を忘れないでください」

俺「…はい」

ハッキネン「では、エルマ中尉、お願いします」

エルマ「…了解いたしました」


俺「ふぅ…緊張しました…」

エルマ「ごめんね、私が道草くっちゃったばかりに…」

俺「いえそんな!え、えと、これからよろしくお願いしますね?」

エルマ「あ、うん!こちらこそよろしくね!
    うちの隊のモットーは『みんな頑張ろう』だから、俺君も頑張ってね」

俺「はい!分りました!」

エルマ「うぅ……まともな子でよかったぁ…」

俺「はい?」



第二中隊詰め所*

エルマ「え~…そういうわけで、今日から皆と一緒に働く事になった俺君です!拍手~!」

ぱちぱちぱちぱち…

智子「君が噂の魔力を持った男の子ね?」

ハルカ「なんか…思ってたよりも小さい子で安心しましたね」

オヘア「ハルカのいう事はあまり気にしないでOKねー 久しぶりね、俺君!」

ウルスラ「研究サンプル…」

ビューリング「……」ムスー

俺「み、みなさん!不束者ですが、精一杯がんばりますので、よろしくお願いしますっ!」

オヘア「あはは!そう固くなっちゃ身が持たないねー」

智子「そうそう、まあ見ての通り聞いての通り、いらん子なんて呼ばれてるところだからね…あまり緩すぎるのも問題だけど」

エルマ「で…ビューリング少尉はなんでそんなに渋い顔を…」

ビューリング「……」ムスー



ビューリング「…いいのか、お前。ここは戦地だぞ?」

俺「えっと…その…」

ハルカ「まぁまぁまぁまぁ!いいじゃないですか~。
    雑用係ということは、つまるところパ・シ・リですよね?!」

智子「あんたって子は…ひぁぅん!き、急に尻を撫でるなぁぁ!!」

ハルカ「え、急じゃなければいいんですか?」

智子「そういう問題じゃなああああいっ!」(抜刀する音)

オヘア「わあああ!トモコ!ストップ!ストップねー!俺君がちびっちゃうねー!」

エルマ「う、ウルスラさんもビューリングさんも止めてください!きゃあぁっ!」

ウルスラ「…面倒くさい」

ビューリング「……本当にお前…いいのか?ここは、こんなところだぞ…?」

俺「あは…あははは…」

マテー! アブナイネー! チュウイィィ! アブ!アブナイデスカラ!    ザシュッ! アッ…



ハルカ「」

智子「えー…とにかく!俺君、少佐から聞いたと思うけど、第二中隊の雑用をお願いする事になるわ」

俺「は、はい…」

オヘア(完璧引いてるねー…)エルマ(ドン引きしてますね…)

智子「貴方に頼みたいのは、掃除に料理に、ええと…掃除に料理にお使いに…」

ハルカ「パシリ…」ボソ

智子「そうそう、要はパシリ、使いっぱ… あんたはまだ伸びてなさい」ゲシ

ハルカ「あぁんv」ガク…

智子「まあ、言葉は悪いけど、そういった事をお願いすると思うわ」

エルマ「そうですねー、私の書類整理なんかも手伝ってくれるとありがたいです」

オヘア「あとは、私たちにお茶汲みしてくれたりー」

ウルスラ「…実験の手伝いとかも頼みたいかも」

ビューリング「…まあ、無茶はするなよ?」

俺「わかりました!マスターのとこである程度の事は仕込まれてますので、少しでもお役に立てるように頑張りますね!」



智子「そういえば、俺君何か特技とか趣味とかないの?」

俺「へ?ううーん…得意なのは…家事とかです。趣味は…ううーん…?」

ビューリング「コーヒーは美味かったな」

俺「あ、コーヒーは大好きですから、美味しく淹れるように勉強したりしました!」

智子「へ~…なんでビューリングがそんな事しってるの?」

ビューリング「色々あってな…疲れるからあまり聞かないでくれ」

オヘア「掃除に料理に、使いっぱ…お茶汲み…まるでメイドさんねー」

ハルカ「でも助かりますね。食事は基地食堂でしたけど、お夜食やおやつは自分で作ってましたし」

エルマ「そもそも、材料があまりないですからね(復活した…)」

ビューリング「なんにせよ、こうなった以上は仕方がないか(復活した…)」

オヘア「みんな料理下手くそだから、期待しちゃうねー(復活した…)」

ウルスラ「私、ケーキが食べたい(復活…)」

智子「さすがに、ズボンの洗濯だけはさせられないけどね(復活したか…)」

俺「はいっ!みなさん、よろしくお願いしますね!」ペコリ



その夜 営舎外*


ビューリング(表向きは復興支援の一環…建前としては立派だが…)
ビューリング(他勢力から隠蔽するために、基地で保護する…か)
ビューリング(…あんな子供に、それだけの価値があるのか?)
ビューリング(単純に、スオムス軍部が独り占めしたいだけのように見えるが…)

俺「あ、ビューリングさ…少尉!」

ビューリング「ん…ああ、階級はいらない。お前は軍人じゃないからな」

俺「えへへ…ありがとうございます カハヴィを淹れたので持ってきました!」

ビューリング「そうか、ありがとう」

俺「あの、嬉しかったです。褒めていただいて」

ビューリング「なんの話…あぁ、コーヒーか。いや、私はタバコを吸うからな。紅茶よりコーヒーの方が味が単純で分りやすいんだ」

俺「それでも、やっぱり褒めてもらって嬉しかったですよ…」

ビューリング「…そう、か」

俺「それに…憧れのウィッチさん達と、それもビューリングさんと一緒に暮らせるなんて、夢みたいです!」

ビューリング「……マスターや酒場はいいのか?」

俺「あ…… マスターは、最初出て行けって急に怒り出して…でもその後お上さんが本当のこと話してくれて……その…もう、お金がないから、一緒に…すめなくなる…って…」グス



ビューリング「…なあ、俺」

俺「は、はい…なんですか?」

ビューリング「きっとマスターやおかみさんは、お前のこと本当の家族だと思ってる」

俺「……うん」

ビューリング「今は…戦争中だ。平和な時なら、きっとお前を基地によこしたりなんかしない」

俺「……」

ビューリング「だから…その…少しでも早く平和を取り戻す。絶対にだ。だから、あの人達を恨んだりは…」

俺「恨むだなんて…っ おかみさんも、マスターも…風邪だけは引くなって…抱きしめて…うぅ…」

ビューリング「…はぁ……ほら、背中を貸してやる」

俺「う…ビュー…リングさ…ん……ごめん、ごめんなさ…うぅぅぅ…」グジグジ

ビューリング(まったく…なにをやってるんだかな、私は)



一方その頃 司令室*

智子「男性の魔力保持者…数は少なく目撃例も最近では殆どない…」

ハッキネン「そうです 故に彼は余計な争いの種になりかねません」

智子「だから、基地で保護する?」

ハッキネン「そういうことです 何しろ今は戦時ですから…」

智子「なるほどね… まあ確かに上の人達がこの事をしったら五月蝿いでしょうね」

ハッキネン「実を言うとそれだけではありません。彼の魔力がどんな性質の物なのか、見極めたいのです。」

智子「…どういうこと?」

ハッキネン「ウィッチには固有魔法がある。あなた方にもあるのでしょう?」

智子「……ん、まあね まだここでは使ってないけど…」

ハッキネン「もちろん彼を戦場に出すつもりはありません。ですが、固有魔法がどのようなものかによっては…」

智子「十分利用価値がある、って事ね」



ハッキネン「…あまり、良くはない事だとはわかっていますが」

智子「いいわよ、なにせ今は戦時ですもの。使える物は親でも使え。私たちもそんな感じで集められたようなものだしね」

ハッキネン「あなた方には心から感謝していますよ。
      ともかく、あらゆる国の軍上層部から、彼を隠蔽しなくてはなりません」

智子「他の国は分るけど、なんでスオムスにまで警戒する必要が?」

ハッキネン「……それについて詳しく話す事は出来ません。
      ともかく、彼には普通の人間として存在してもらわなくてはならないのです」

智子「木を隠すなら森の中…ね なんだか釈然としないけど、まあいいわ。秘密任務ってわけですよね?」

ハッキネン「はい。あなた方第二中隊は、彼を雑用係として匿いつつ、極めて消極的で構いませんので、彼のウィッチとしての素質や魔力の性質を監視・調査してもらいます。」

智子「了解いたしました、ハッキネン基地司令殿」

ハッキネン「よろしくお願いいたします…… 出来れば、彼とは仲良くしてあげて下さいね」

智子「ええ、まあうちの部隊の子は、皆いい子ですから」

ハッキネン「……ええと、一応彼は思春期の子供だという事をお忘れなく」

智子「…ハルカ一飛曹は、まあ…そこまで馬鹿だとは思いませんが…」

ハッキネン「行為に及ぶ際は、彼のいない所でこっそりと、あまり大きな声を出さないようにお願いします。 なにせ、ここの壁は薄いので」

智子「なっ…わ、私はそのべつにそんな趣味を持ってるわけではなくあの子が無理やりにですねその、って聞いてますか少佐ほんとですからね誤解しないで(ry」


いらん子中隊雑用係の俺君はビューリングお姉ちゃんが気になるから頑張るよ 第三話 おわり
最終更新:2013年02月15日 13:11