【夜、ワイト島分遣隊基地、風呂場にて】
チャポーン…
ウィルマ「ふぃ~やっぱりここのお風呂はいいわねぇー」
フラン「ちょっとあんた…また身体洗わずに入ったでしょ?」
ウィルマ「いいのよ~どうせ後で洗うんだから」
フラン「そーいう問題じゃない!!」パシャン!
アメリー「ま…まぁまぁフランさん。毎度のコトですし大目に…」
フラン「もう我慢の限界よっ!隊長からも何か言ってやってよー!」
角丸「そうねぇ……そんなに気にしなくても良いんじゃないかしら…?」
フラン「なっ何よ隊長まで!ちょっとラウラ!あんたも…」
ラウラ「…別に…後で洗ってもいい…」プカー…
フラン「ムキー!あんたたち揃いに揃って!いいわよっもう!」キリキリキリキリ
ぶくぶくぶくぶく
フラン(まったく…ほんとにこいつらは…)
ボコォ…
フラン「!?」
ウィルマ「…んえ?」
アメリー「……今のって…フランさんの後ろの方から…これってまさか…」
角丸「…フラン……いえ少尉、あなた…」
ラウラ「間違いなく…お」
フラン「ちっ違うわよ!!私がそんなことするわけな……ん?なによこれ?岩の間にちっちゃい穴が…」
スッ… ボコォ…
フラン「ここから泡が出てるみたいねー…」
ウィルマ「どうしたのフラン?」
フラン「いえ、なんかここに穴が」
ボコォォオ!
フラン「ひゃぁ!?」
アメリー「あわわわわ……泡がたくさん…」
フラン「どどどどうゆーことなのよぉっ!?」
ウィルマ「フラン!早く穴から手を抜いてっ!」
フラン「さっきからやってるわよ!…けど…抜けなくなっちゃったのよー!」
ボコォボコォボコォボコォボコォ…
角丸「一体何事なの!?それより皆でフランを引っ張るのよ!ラウラも手伝って!」
ラウラ「了解」
フラン「うわーーーーーん…!!」
バシャバシャ
角丸「皆、配置に着いた?いくわよ…せぇーのっ!!!」
スッポン… バシャーン!! ボコォボコォボコォボコォボコォ…
フラン「痛…っ…」
ウィルマ「フラン大丈夫!?」
フラン「え…えぇ…なんとか…」
アメリー「あぅぅ…でも見てください…穴に亀裂が…」
フラン「えっ?」
ピキピキィ… ピキピキィ…
パキィィィ!!
ラウラ「…!!このままだと壊れる」ヒョコッ
角丸「皆、危ないから離れて!」バシャバシャバシャ
ピキピキピキピキ…
パキィィィィィン…
バカァァァァァン!!
ウィルマ「うそ…岩が割れた?」
ザブゥゥゥン… ザー ザー
岩によって形成された浴槽の一部が欠け落ちる。
外部へ溢れ出る源泉湯。魔女たちの沈黙。
お風呂が壊れた。
ラウラ「壊れた」
フラン「んな……んなわけ、あるかあぁーっ!!!」
【数時間後、欧州、扶桑海軍設営隊所属基地にて】
隊長「……はい、了解です。即ワイト島へ向かいます」ガシャン
俺「先生…いや隊長。どうされましたか?」
隊長「うむぅ…よう分からん。なんでも簡単に風呂が壊れたようだ、パカーンと」
俺「へ?」
とある扶桑海軍設営隊に任務が通達された。後日、現地に赴き風呂の修繕作業を遂行しろとのこと。
急遽、環境や破損状況等を事前に調査するため俺と隊長の二名は先にワイト島へ派遣されることとなる。
隊長「良い機会だ、新米のお前は兎に角実践が必要だから着いて来い。出発は明日0500より。今すぐ準備に取り掛かれ、職人の朝は早いぞ」
俺「はっ!」
【二日後、夜、ワイト島分遣隊基地前にて】
ゴガァァァァ キキィ バン
隊長「扶桑海軍設営隊の隊長です。事前調査のため、こちらに参りました。」
俺「同じく、俺一等兵です」
角丸「お待ちしておりました…私がこの基地の隊長を務めます中尉の角丸です。遠方からのご来訪、心より歓迎いたします」
隊長「恐縮であります」
角丸「随分と予定より早い到着となっておりますが…これは」
隊長「はは申し訳ない。何せ貴女方とお会いすることを大変心待ちにしておりましたので」
俺「(おい先生…)隊長、持参した用具の不備破損等の再チェックは完了しました。全て問題ありません」
隊長「よし。早速ですが現場の破損状態や当時の状況等の確認を行ってもよろしいでしょうか?」
俺(え?何を言ってんの。もう夜だし明日からで良いじゃないか)
角丸「は、はい……しかし到着して早々作業に移られるのは…お身体の方もお疲れでしょうし…」
隊長「なんのなんの。私達は一刻も早く貴女方のお役に立てるよう行動する義務があります。そうだろう俺?」
俺「はっ!(嘘だろ!?これから直ぐ仕事すんの?こっちは疲れてんだよ…扶桑のウィッチさんお願い断って!)」
角丸「……ではお風呂場に案内します。こちらへどうぞ」
隊長「失礼します」
俺(ちょ……あぁ…ちくしょおぉぉ……)
【風呂場にて】
チェック中…
角丸「こちらが原因となった箇所です」
俺「こんなに岩がパックリいってるのは
初めて見ます…一体何があったんですか?」
角丸「それが私にもよく分からなくて…ただ、隊員のフラ」
アメリー「あっ!男の人がいますっ」
俺「ん?」
ウィルマ「設営隊の人もう来てくれたんだぁー早いね」
フラン「遅いわよ……一日でも早くお風呂に入りたいのにぃ…」
俺「あちらの方々がこの基地のウィッチですか?(外国のウィッチを生で見るのは初めてだ…)」
角丸「はい。一番背の高い彼女はウィルマ軍曹、隣のショートヘアーの子がアメリー軍曹、ツインテールの子がフランシー少尉です。」
俺(みんな俺より全然若そうなのに階級が上じゃねぇか…そりゃウィッチだからだけど。それにしても、あんな子でも少尉とはねぇ…)
角丸「あとここにはいませんが、もう一人ラウラ少尉という隊員がいます。後ほど挨拶に来させますので」
俺「いえ、親切にありがとうございます……あ、話の途中で切ってしまってすみません。ええと隊員のフラ…?」
角丸「フランシー少尉です。実はその…詳細は不明ですが彼女の行動が発端で。しかし悪気があったという訳ではありませんので…」
俺「一応当事者ということですか。(フランシーはたしか…ツインテール)では本人に当時の状況をお尋ねしてきます」
角丸「あ、今は彼女にあまり話しかけないほうが…」
俺「確認しなければなりませんので」テクテク
フラン「ん?なによアイツこっちに来て…」
俺「(睨まれとる。しっかし上官に見えないなぁ……うーんリベリオンの出身っぽい)あのー……どんな感じでおフロに入ってたの?」
フラン「なっ!なによあんた上官にたいしてその態度!それにあたしはウィッチなの!気安く話しかけるんじゃないわよ!」
俺「え?あ、す…すみません失礼しました!(やべ…幼いからって態度が…)」
フラン「だいいち女性に対してイキナリどんな感じでお風呂に入ってたかなんてフツー聞かないわよ!」
俺「ん……女性?(っていうか女の子…)」
フラン「ちょっと、なんでそこを疑問視するのよっ!?」
俺「いや、つい…」
フラン「ついって…あっあんたさっきから、いっ…いい加減にしないとぉ!」プルプルプル
俺「(ヤバい!このままだと折角欧州まで来たのに罰則くらって強制送還だ!)あっ…あの…しっ失礼しましたぁー!!」ダッ―!
アメリー「そそくさと逃げちゃいましたね…」
フラン「いったい何なの、これだから男ってのは生意気なのよ!ふそーが作ったこのお風呂もけっかんせっけーだったし!」プンスカ
俺「はぁ…怒られちった…まだ睨まれてる。(あの小娘めぇ)」
隊長「なんてことをしてくれたんだ」
俺「先生ぇ…」
隊長「お前ほど外交に無縁な奴は初めてだ」
角丸「まぁ…フランにも悪気があるとはいえ……」
隊長「おかげで当時の詳しい状況を彼女に聞きづらくなったし、ここに来て一時間も経過していないのにムードも悪くなった」
俺「いっいや、そのー他の誰かに聞いてもらうとか?」
角丸「あの子全然話そうとしないのよね…『悪いのはお風呂の欠陥設計のせいよ』ってずっと言ってるし」
隊長「過去にこの風呂を設計したのは扶桑の部隊だ。フランシー少尉が我々を嫌うのも言ってしまえば不思議ではない」
俺「そんな…あの、つまりどうすれば?」
隊長「隊長としては妥当でない指示を下すが、お前なりの方法で責任を取りなさい」
俺「俺なりのて…」
隊長「試行錯誤、それもまた鍛練だ。深いのぅ」
角丸「はは…(一応任務中なのに…この設営隊ってやっぱり他と何か違うのかしら)」
ウィルマ「さっきからみんなど~したんですかー?」
俺「お!あなたは…ウィルマ軍曹…でしたか?」
ウィルマ「はい、そういうあなたはどちら様?」
俺「申し遅れました、自分は設営隊の俺一等兵であります」
隊長「その隊長であります!」
ウィルマ「お二人ともよろしくね。困ってたみたいだけど?」
俺「それが…フランシー少尉についての件でどうしても聞きたいことがあるのですが――」
ウィルマ「――ふむふむ。なんだ、そんなことなら簡単よ!ほら、耳を貸して」グイッ
俺「えっ?(胸が…)あっ…ちょ(近い…近いよ…!)」
ウィルマ「えっとねぇ、それはねぇ」ゴニョゴニョゴニョ
俺「そ、それだけでよろしいのですか?(そ…それよりも……おっぱいが超至近距離に…肩に触れてる)」
ウィルマ「そう、わかった?仲直りも含めてちゃんと言うのよ?」
俺「は…はいぃっ!」
角丸「あれ、隊長さん?」
俺「え?」
ウィルマ「ん?」
隊長「…………」ギロリ
俺「…………」
隊長「………おい、おめぇよぉぉ、てめぇなりの方法っつったけど…ウィッチとの過度な接触ってのは…」ギギギ
俺「…………」キュ
隊長「厳禁ですよねぇ!?」ギリギリギ
俺「…………」ギュゥゥ
隊長「返事いぃぃ!!」ギリギリギリギ
俺「……………厳禁でござい゛ま゛ずう゛う゛」ギュゥゥゥ
角丸「隊長さん!いきなりどうしたんですか!?」
職人気質な隊長の眼を見た俺は一瞬にして理解した。
この眼は規則に抵触したことに対する「怒り」だけではない人としての「嫉妬」も含まれている。
先の読めない感情の変化に何度殺されかけたことか。
隊長「厳禁だろうがぁぁぁ!!」ギリギリギリギリギリギリ!!
俺「ゲッゲホンオェ!…あ゛ありがとうございまず、ヴィルマ゛軍曹!ざっそくフランシー少尉に謝罪じて参りまずっ」ダッ!!
ウィルマ「頑張ってねっ」
隊長「くそっ…くそおおおおォ!」
角丸「…ははは(やっぱり何か違うわ…本当に部隊として務まってるのかしら…)」
フラン「何?なんでまた来たのよあんた!」キリキリキリキリ
俺「先程は心ならずもご無礼を働きまして誠に申し訳ありません!」
フラン「ふんっ…謝ったって許してあげないわよ。あんたと話すことなんかなにも」
俺「わたくしのような下級兵士が少尉殿に話しかけるなど愚行でありました、少尉殿!少尉殿!!」
フラン「んなっ!?(少尉殿…)」
俺「失礼しました少尉殿!!(へへ強調して四回も言ってやったぞ…どうだ?)」バッ
フラン「あんた…もしかしてウィルマに何か助言されたんじゃないわよね?」
俺「……」ビクッ
フラン「……ふーん」
俺「……」ビクビク
フラン「……ま…まぁいいわ!そんなに謝るんだったら特別に許してあげよーじゃない!」
俺「あっありがとうございます!(ホッ…てか本当に効くんだな)」
フラン「で、あたしに何か用でもあんの?」
俺「はい、お風呂が壊れた時の状況の詳細を教えてくだされば――」
フラン「――ってこと。まったく…かってにあたしのせいにされたら困るわよ…」
俺「なるほど。岩の側面部に穴が開いていた…と」カキカキ
フラン「そ。そこにまぁ…手を入れちゃったら…泡がたくさん」
俺「んぅー穴ねぇー…穴があって泡が…ねぇー…」カキカキ
フラン「むー…もしかしてあんた信じてないでしょ?」
俺「いえ、当然信じてますよ。それにホラ、少尉の右手の包帯。ケガをなされておりますよね?」
フラン「え、これ?」
俺「それが証拠です。風呂の岩を殴るなんてコトは魔力を持ったウィッチであっても考えられませんし…推測するに整備を怠ったこちら側に過失があります」
フラン「ふぅん…」
俺「ケガをさせてしまって申し訳ありません、少尉殿」バッ
フラン「…な、なによよく見てるじゃない」
俺「……」
フラン「……えっと…その…こんなコトになるなんて思ってなかったし」
俺「……」
フラン「あたしも穴があるからって勝手に手を入れちゃったし…だからその…」
俺「…?」
フラン「そっそんなに謝られても困るし…むしろ謝るのは…あたしの…」モジモジ
俺「少尉殿?」
フラン「方で……あっ…あの…」モジモジ
俺「…………(あれ、意外と…)…かわいい…?」
フラン「…なっ!!?いっ今あんたあたしのコト馬鹿にしたでしょー!!?」
俺「うぇ!?(しまった!)いいいやそんなつもりは」
フラン「うるさーいぃ!」
俺「違います!今のかわいいってのは正直な気持ちで…」
フラン「なっ///…!?」
俺「嘘じゃないんです!」
フラン「あっ…あたしに恥じまでかかせてぇ…じょうかんぶじょくなんだからぁー!!」ムキ-!!
俺「い…や…(もう駄目だ)きょ…強制送還は止めてー!!」ダッ!!
フラン「あっ、逃げるなこらぁー!!」ダッ!!
角丸「あ…あらら…まぁフランから当時の状況は聞けたことでしょうし、一先ず一件落着と言うことで…」
隊長「いいえ、そうはなりません。この後あいつには始末書と制裁と胸の感触の伝達と制裁が待っております、ええ確実に」
角丸(はぁー…いろいろと不安になってきたわ)
「ワイト島」という聞き覚えの無い場所で、互いに未熟な俺とフランは出会った。
この時の俺は、まさかこの出会いが自分の人生を変えることになるとは思ってもいなかった。
つづく
最終更新:2013年02月15日 13:11