カールスラント奪還のための作戦は問題もなく終了した。

単独で現れた人型ネウロイ…俺が戦闘不能になってからは他のネウロイを出すどころか完全に巣は沈黙。
予定通り’クリフォト’が自爆を仕掛け、これを消滅させる。オペレーションマルスに続いた人類の大勝利に人々は喜びを露わにしていた。



バルクホルン、ハルトマン、ミーナも悲願の母国奪還を果たしたが…その嬉しさと同等かそれ以上に懸念すべき事項が新たにあがってしまった。

先日の戦った人型ネウロイ、コアを破壊し体の表層部が剥がれ中から現れた人。

彼の身柄は奪還したカールスラント本国…というわけではなく、昨日今日で復興等不可能なため現在カールスラント政府が本拠地を置いている場所の医療収容施設が預っている。
未だに意識は戻っていないらしい…過去にもネウロイと同化?に近いことをした人物の例はなく意識が回復するかどうかすら怪しいところなのだ。

身体は生きている、しかしネウロイに洗脳されているかもしれないし、確認できていない他の異常があるかもしれない。

それらの可能性を考慮した結果、隔離された医療施設に監視つきの収容となっている。


バルクホルン(大丈夫さ…あいつはそんなに簡単に死ぬ奴じゃない)


誰にでもなく自分に言い聞かせて部屋を出る。いつもならだらしない相方を無理矢理にでも起こすところだが折角の休暇だ、昨日は疲れただろうし今日はこのまま放っておいてやるか。


そうだ、今日はクリスの見舞いにでも行こうか!。
もう聞いているかもしれないけれど、随分心配をかけたようだし報告に行くべきだな、うむ!













―司令室―


バルクホルン「ミーナはいるか?」

ミーナ「どうしたのトゥルーデ?こんな朝早くから」

バルクホルン「今日は非番だが一応な。クリスの見舞いに行ってくる、現地の車とヘリの貸し出しと使用許可をくれ」

ミーナ「もちろん構わないわ。いってらっしゃい」

バルクホルン「助かる」

扉に手をかけて退出しようとしたところで背後から声がかかる。

ミーナ「俺さんの事はなるようにしかならないわ。今は待つしかないの、気持ちはわかるけどもう少し落ち着きなさい」



もしもの事態を怖がって焦っているのはお見通しらしい。伊達に何年も一緒に戦ってきてはいない。

バルクホルン「……そうだな。うん、そうだ…」



その通りだ、今ここで私が悩んでも信じて待つぐらいしかできることはない。

ひとまず、ブリタニアまで行ってこよう。























  • ブリタニア・クリス病室-


バルクホルン「クリス…起きてるか?」

クリス「あ、お姉ちゃん!」


ネウロイの本国侵攻の際に逃げ遅れて怪我を負い、瘴気に晒されて長い間意識不明だった私の妹も少し前から回復しだしていた。
丁度自暴自棄になっていた時期に宮藤達との一幕があった頃だったか。


そんなクリスもそろそろ療養期間を終え退院できる日も近いらしい。


クリス「お姉ちゃん聞いたよ!カールスラント取り戻せたんだって!」

バルクホルン「ああ、もう復興の計画も始まっている。家に戻れる日はそう遠くないはずさ」


以前私が持ってきた花は少しだけ萎れていたので、花瓶の水を新しく変え今日持ってきた花と差し替えているとクリスが何やらこっちをジーっと見つめてる…。

な、何だ…私は何かやってしまったのか!?


クリス「お姉ちゃん…どうしたの?」

バルクホルン「えっ?」

クリス「なんだか元気ないね」


501の奴らだけでなくクリスにも気づかれるなんて…そんなに私は顔に出やすいのだろうか?って、同じ事ほんの少し前にも思ったような気がしないでもない…。

クリスもなかなか強引で聡い子だ、誤魔化しは効かないだろう。


バルクホルン「なんだ…その…な。………………俺が生きてたんだ」

クリス「俺って………………あの俺さん!?!?」


何も言わない私を見てクリスは肯定と受け取ったらしい。
以前クリスが目覚めた時には一日中それまでの経過を話していた。もちろん俺のことも含めて。
幼馴染で小さい頃に相手してもらっていたから酷く悲しんでいたものだが…。

クリス「そっかぁよかった…」グスッ

よほど嬉しかったのか目に涙を溜めながら、しかし自然と笑顔になっていた。

クリス「それでおにいちゃ…俺さんは今どこにいるの?」


もともと話すつもりだった。先日の作戦のこと。敵のこと。彼が現れたこと。



一度失った大切な…大切だった人。やっと自分の中で…国を取り戻したことで区切りをつけようと、つけたはずだったのに…。


彼は約束通りにまた目の前に来てくれた。
でも――――――――――――――――





バルクホルン「ま、また……グス…あいつがいなくなってしまうんじゃないかって……!!」


話したことで堰を切ったように涙が出てきた。凄く嬉しいことだというのは間違いない。また俺と話ができるかもしれない、また一緒に過ごせるかもしれない。

しかしそれ以上にまた失ってしまうという可能性のほうが頭を埋め尽くしていた。

怖いのだ、万が一の事態が。


クリス「泣かないでお姉ちゃん……」

二人の昔をよくわかっているクリスはただ静かに側に座っている姉の手を握っていた。


――――――――――――――妹の前で大泣きしてしまう私は姉失格かもしれないな。
最終更新:2013年02月15日 13:30