【俺Side】
俺「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」ガガガガガガ
謎の人型ネウロイへ向かって弾を撃ち続ける。
しかし人型ゆえの小ささとその機動性もあり、ネウロイに弾があたらない。
俺「くそっ・・・。」
エイラ「俺!ビームが来るゾ!」
俺「了解!」
何とか固有魔法は使える程度まで調子を取り戻したエイラの合図に合わせシールドを張る。
エイラの言ったとおり、ネウロイが両手から二発のビームを発射してきた。
俺「っ!・・・そこまで威力は高くないな。」
エイラ「俺そっくりだから速いのかと思ったケド、そうでもないしナ。」
俺「確かに思ったほど速くは無いな・・・まさかただ姿形を真似しただけなのか?」
さっきから攻撃もビームのみ。
しかも一発の威力は普通のネウロイの半分程度しかないだろう。
エイラ「もしかして、そんな強くないノカ?」
しかし、妙なのはあの翼から出ている霧だ。
俺のフォースウィングのように常に翼の形をとり続けるわけではない。
それどころか人型ネウロイの周囲に漂っていて・・・本物の霧のようだ。
坂本『俺!エイラ!』
俺「少佐!」
坂本『もうすぐお前たちの居る地点へ到着する!無茶はするなよ!』
エイラ「わ、ワカッタ!」
もうすぐ増援が来るというなら無理して突っ込むことはない。
敵をけん制しつつ味方の合流を待って一気に叩けば・・・。
そう思っていた。
俺「」ゾクッ
背筋を、何か冷たいものが通り抜けた。
俺(な、なんだ・・・?一体何が・・・?)
この感覚に従いネウロイを注視する。
といってもあふれ出した赤い霧のせいでよく見えないのだが。
やがて、霧が俺の居る地点にまで到達した。
そして、その霧を吸った瞬間。
俺「っ・・・がっ・・・ゲホッ!!」ビチャッ
エイラ「お、俺!?」
口から生暖かくて赤い液体が零れ落ちた。
エイラ「オイ!どうしたんだヨ!」
俺(肺が・・・体の内側が焼けるみたいに熱い・・・っ!!まさか!?)
俺は呼吸を止め、一気にネウロイから距離をとった。
俺「ゴホッ・・・ぐっ・・・。」
エイラ「ど、どうしたんダヨ!?」
俺「エイラ・・・ゲホッ・・・あの霧を絶対に吸うな・・・。」
エイラ「霧・・・?」
俺「あの霧は・・・あのネウロイのビームだ・・・。」
エイラ「び、ビームの霧!?」
俺「ウィッチが普段無意識に纏ってる魔力のおかげで・・・ゲホッ・・・体が傷つくことはない・・・けど。」
一度吸い込めば、今の俺のように体の中をビームで焼かれることになる。
エイラ「なら、遠距離から射撃で・・・!!」
エイラがネウロイへ発砲した。
しかし、銃弾が霧に触れた瞬間「ジュッ」という音と共に消し飛んだ。
エイラ「なっ!?」
俺「多分ネウロイの周囲の霧の濃度だと銃弾が届く前に焼ききれるんだ・・・。」
つまり。
近づけばあの霧に体の内側から焼き殺される。
しかし、遠距離からの攻撃はネウロイへ届く前に無効化される。
俺(けど・・・。)
これだけでも十分理不尽な強さだというのに、未だに嫌な予感が消えない。
俺「・・・?」
よく見ると、霧が少しずつ一箇所に集まっているように見える。
まるでばらばらにしたものをもう一度組み上げているように・・・。
俺「・・・まさかっ!!」
坂本「俺!エイラ!」
俺「少佐?・・・だめだっ!!来るなっ!!」
坂本「何!?」
エーリカ「なにあれ・・・霧?」
バルクホルン「一体何なんだ・・・?」
あの霧は防御のためだけのものじゃない・・・!
霧はすべてビーム、そしてソレを一箇所に収束したら・・・。
俺(俺の後ろの方向にはエイラと少佐たち・・・それにサーニャの居る基地。)
ネウロイの周りを覆っていた霧が晴れていく・・・いや、一箇所に収束し巨大な光点となる。
俺「っ・・・やめろぉおおおおおおおおおおおおお!!」
そして、その光が解き放たれた。
ネウロイの周囲を覆っていた霧はすべて一箇所に集まり、巨大なビームとして俺たちへ向けて発射された。
俺「ぅぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
シールドを張る。
フォースウィングも解除、固有魔法で全ての魔力をシールドへと注ぎ込む。
シールドによってはじかれたビームが海面をえぐり、雲海に風穴を開ける。
俺「ぐっ・・・がっ・・・ガハッ!!」ビチャッ
エイラ「俺!?」
俺(まずい・・・さっき霧を吸った時に肺を・・・呼吸が・・・っ!)
先ほど霧を吸ったときのダメージがきつい。
だが、逃げるわけには行かない、負けるわけにも行かない。
俺「ここで俺が負けたら・・・みんなが・・・基地の・・・サーニャがっ!!・・・がふっ!!」ビチャッ
意識が一瞬消えかける。
だめだ、もう少し持ってくれ!
俺「あ・・・あぁああああああああああああああああ!!」
やがて、赤い光の奔流は止んだ。
ビームの余波を防ぎきれなかったのか・・・服はボロボロだしそこら中やけどをしているようだ。
けど・・・。
俺「・・・・・・。」
守りきった・・・。
あれ?体の自由が利かない・・・。
あ・・・もしかしなくても落ちてるよなこれ・・・。
エーリカ「俺ぇっ!!」
バルクホルン「大丈夫か俺!!」
エーリカとバルクホルンにキャッチしてもらったみたいだ。
はは、持つべきものはいい仲間だよまったく。
ネウロイ『・・・・・・。』
ルッキーニ「あっ!逃げた!」
人型ネウロイは撤退していく。
あたりに漂っていた霧も消えたようだ。
坂本「ハルトマンとバルクホルンは急いで俺を運べ!!他は周囲の警戒を怠るな!!」
坂本「わかった!頼む!!」
やばい・・・意識がかすれていく・・・。
エーリカ「俺!しっかりして!」
バルクホルン「くっ・・・頼むぞリベリアン!!」
シャーリー「任せろ!」
シャーリーに抱えられて俺は基地へ運ばれていく。
ここで、俺の意識は完全に途切れた。
エイラ「俺・・・・・・。」
【ミーナSide】
ミーナ「軽度のやけど、そして呼吸器系の損傷・・・宮藤さんが居て助かったわね。」
俺さんが撃墜されたとの報告を受けた翌日。
私は報告書へ目を通していた。
シャーリーさんに運ばれてきた俺さんはまさに死ぬかどうかの瀬戸際だった。
何とか助かったのは宮藤さんの必死の治療と・・・運が良かったとしかいえない。
ミーナ「そして俺さんに酷似した人型ネウロイ・・・その特徴はビームの霧・・・。」
近距離に近づくものを焼き、遠距離攻撃を無効化する。
気体という性質上、ウィッチのシールドは意味を成さない・・・。
ミーナ「・・・最悪の敵ね、なんとか倒す方法を考えないと・・・。。」
あの霧が人の住む場所で撒かれたら・・・想像もしたくない。
宮藤「あの・・・失礼します。」
ミーナ「宮藤さん・・・俺さんの様態はどうかしら?」
宮藤「怪我自体は治したんですけど・・・意識がまだ。」
ミーナ「そう・・・ありがとう、サーニャさんは大丈夫かしら?」
宮藤「少しは落ち着いたみたいです、今はエイラさんが見てくれてます。」
ミーナ「そう・・・。」
昨日、ハンガーへ向かっている最中にサーニャさんが廊下で倒れているのを見た時は心底驚いた。
ちょっと恥ずかしい悲鳴を上げてしまったのは秘密にしておこう。
宮藤「・・・あの!」
ミーナ「なにかしら?」
宮藤「俺さんがやられたネウロイって・・・どんな相手だったんですか?」
ミーナ「・・・それについては明日のミーティングで話すわ、今はしっかり休んで。」
宮藤「はい・・・失礼します。」
宮藤さんは部屋から出て行った。
【サーニャSide】
サーニャ「・・・ぁ・・・。」
少しずつ意識が覚醒していく。
最初に目に入ったのは見慣れた天井だった。
サーニャ「ここは・・・私の部屋・・・?」
昨日は確か・・・魔道針がすごく強い反応を示して・・・それで・・・。
サーニャ「そうだ・・・お兄様とエイラは・・・っぁ・・・。」フラッ
横たわっていた上半身を急に起こしたらめまいがした。
まだ熱は下がりきっていないようだ。
ふと、ベッドの右側に人の気配を感じた。
エイラ「・・・zzz・・・zzz。」
サーニャ「エイラ・・・無事だったのね・・・。」ホッ
安らかな寝息を立てる友人の姿を見て安心する。
エイラが無事だったのだ、きっとお兄様も無事に違いない・・・。
いや、お兄様はいつも無茶をする人だ。
また魔力切れで眠っているかもしれない。
サーニャ「・・・お兄様は・・・どこにいるのかな・・・。」
お兄様の部屋?それとも医務室?
もしかしたら元気に訓練をしているかもしれない。
隣で眠っている友人なら知っているだろうか?
サーニャ「エイラ・・・エイラ、おきて・・・。」
エイラ「・・・!サーニャ!」
サーニャ「ど、どうしたの?」
エイラが目を覚ますと同時に大声を出したのでびっくりしてしまった。
サーニャ「エイラ、お兄様は・・・?」
エイラ「お、俺は・・・。」
サーニャ「エイラ・・・?」
エイラの話を聞き終わるや否や、私は体調が悪いことも忘れて医務室へと駆け出していた。
【俺Side】
気がついたら俺は真っ暗な空間に居た。
俺の立っているところだけがスポットライトに照らされたように明るくなっている。
俺「・・・ここは・・・?」
辺りを見回していると、別の場所が同じように明るくなった。
そこには子供が一人立っている。
?『うぇ・・・ひっく・・・うぇぇええ・・・。』グスッ
俺「あれは・・・妹?」
見間違えるはずがない、小さいころの妹の姿だ。
泣いている小さいころの妹に別の子供が走ってきた。
?『やめろっ!妹をいじめんなぁ!』
妹『おにいちゃん・・・。』
俺「あれは・・・小さいころの俺・・・?」
そういえば、妹は小さいころはよく近所の悪ガキにいじめられてたっけ・・・。
そんな妹を庇ってケンカするのが俺の日常だったんだ。
俺『大丈夫だ!妹は俺が守ってやるからな!!』
妹『ほんと・・・?』
俺『ああ!なんたって俺は・・・兄貴だからな!』
妹『・・・うん!』
その会話が終わると、小さい俺と妹は消えていった。
俺「・・・なんだったんだ一体。」
小さい俺と妹がいた場所の明りが消えた。
また周囲が暗い空間へと逆戻りする。
かと思えば、こんどは別の場所が照らされた。
?『よかったわねサーニャ、お兄ちゃんができたわよ。』
?『おにいちゃん・・・?』
俺「サーニャと・・・サーニャのお母さん・・・?」
サーニャ『・・・おにいさま・・・。』
母『私たちが一緒に居て上げられないときは・・・サーニャのことよろしくね?』
俺『任せてください、サーニャは俺が守りますよ。』
短い会話が終わると、また人影は消えて元の暗い空間へと戻った。
俺「・・・そっか、俺こんな約束してたんだな。」
どちらかを守ろうとすれば、どちらかを破ってしまう約束だ。
だって、俺が守ると約束した二人は・・・存在する世界そのものが違うのだから。
?『けど、あなたは守りきった・・・。』
俺「!?」
突然聞いたことのない声があたりに響き渡る。
そして、俺の目の前にスクリーンのようなものが現れ、そこに映像が映し出された。
俺『逃げろっ!!妹ぉっ!!』
こちらへと突っ込んでくるトラックの前に居た妹を突き飛ばす映像・・・。
俺『よっ、さすがにあきらめるのが早すぎないか?』
サーニャを抱きかかえ、ネウロイのビームをシールドで防ぐ映像・・・。
?『しかし・・・その結果がこれです・・・。』
俺『ここで俺が負けたら・・・みんなが・・・基地の・・・サーニャがっ!!・・・がふっ!!』
謎の声と共に映し出されたのは、血を吐きながら人型ネウロイからの巨大なビームを防ぐ俺の姿だった。
?『もう良いではないですか、あなたは十分に戦った・・・その身を犠牲にしながらも必死に・・・。』
?『あなたが安息を得る権利は十分にあるはずです・・・少なくとも、命を張って戦う世界に居る必要はない・・・。』
?『あなたが望めば還れます・・・あなたが本来居るべき世界へ・・・。』
俺「えっ・・・。」
?『まだ決断を下せないというのであれば待ちましょう・・・私は、常にあなたと共にあります。』
俺「待てよ!お前は一体・・・!」
?『いずれ直接お会いしましょう・・・その時を楽しみにしております・・・。』
その言葉を最後に、視界がブラックアウトした。
【エーリカSide】
エーリカ「・・・起きないなぁ・・・。」
医務室の椅子に座ったまま目の前に横たわる少年を見つめる。
やけどを負った肌は宮藤の治癒魔法によって綺麗に治っていて、もとの美しい肌が見える。
エーリカ「起きろよ~、起きないといたずらしちゃうぞ~。」
いつもの調子で『ちょっ!おいエーリカ!!』なんて反応が来るのを期待したがそんなことはなかった。
エーリカ「ホントにイタズラしちゃうぞ~ほれほれ。」ツンツン
ためしにほっぺをツンツンしてみた。
意外とやわらかい。
エーリカ「起きないなぁ・・・。」
とりあえずベタだけど額に肉って書いておこうか?
そう思ってどこからともなく極太油性ペンを取り出して俺の顔を覗き込んだ。
俺「・・・スー・・・スー。」
エーリカ「・・・・・・。」
昨日大怪我をした人間とは思えないような安らかな寝顔のせいでやる気がなくなった。
さっきまで座っていた椅子に座りなおす。
エーリカ「・・・むぅ。」
それどころか、胸がもやもやしてきた。
もやもやする胸なんかないだろうって?これが自然体だから良いんだよ!・・・グスッ。
エーリカ「なんなんだろう、この感じ。」
前に感じたのは・・・そうだ、俺と二人で買い物に行ったときだ。
俺がサーニャんサーニャんって言ってるのを聞いてたら・・・。
エーリカ「・・・思い出したらまたむかむかしてきた。」
そんなときに医務室の扉が勢いよく開かれた。
サーニャ「お兄様っ!」ガラッ!
エーリカ「うわっ!さ、サーニャん!?」
医務室に飛び込んできたのはサーニャんだった。
ていうか、考え事をしていたこのタイミングでまさに渦中の人がやってくるって・・・。
サーニャ「ハァ・・・ハァ・・・お兄様は・・・?」
エーリカ「俺ならまだ起きてないけど・・・。」
エイラ「サーニャ!」バッ!
エーリカ「うわっ!」
今度はエイラが走りこんできた。
エイラ「まだサーニャは熱が下がってないんだから寝てなきゃダメダロ!」
サーニャ「ごめんなさい・・・けど、お兄様が・・・。」
エイラ「俺なんかよりも自分の心配シロヨ!昨日だって倒れたんダロ!?」
なんとなくだけど大体の事情はわかった。
きっと俺のことが心配でここに飛んできたサーニャんと・・・それを心配したエイラが追いかけてきた、ってところかな。
・・・っていうか。
エーリカ「エイラ、俺『なんか』っていうのは聞き捨てならないなぁ・・・。」
俺があの巨大ビームを防いでくれていたからこそ今私たちは生きてるんだ。
エイラ「あっ・・・ご、ゴメン・・・。」
サーニャ「・・・ねぇエイラ、どうしてお兄様を目の敵にするの?」
確かに俺とエイラの仲はそこまで良くは無いけど・・・目の敵って言うほどだったっけ?
何かあったのかな?
エイラ「ソレは・・・サーニャが・・・っ!」
サーニャ「私・・・?私がどうしたの?」
エイラ「だってサーニャが!俺のこと好きだナンテ言うカラ!!」
エーリカ「!?」
エイラからの衝撃の告白に言葉が出なくなった。
俺とサーニャんって兄妹・・・だよね?
サーニャ「待ってエイラ、それとどういう関係が・・・。」
エイラ「・・・っ!サーニャの馬鹿!!」ダッ
サーニャ「あ・・・待ってエイラ!!・・・ぁっ・・・。」フラッ
エーリカ「あっ・・・サーニャん!!」
エイラ「あっ…!」
ふらついて壁にもたれかかったサーニャんに駆け寄ろうとしたとき。
?『やれやれ・・・病室では静かにしていただきたいものですね。』
どこからか聞いたことのない声が響いた。
エーリカ「えっ…?」
あたりを見回すが声の主と思われる人物はいない。
サーニャんとエイラも声が聞こえたようで不思議そうにあたりを見回している。
?『あなた方の足元ですよ。』
言われるがままに足元に視線を向ける。
そこにいたのは…。
エイラ「…犬?」
そう、犬だ。
犬種はシベリアンハスキーだろうか?
ただ、毛並みは普通のハスキーと同じだが瞳の色が金色になっている。
犬『こうして皆さんの前に姿を現すのは
初めてですね…。』
犬『初めまして、俺の使い魔の犬と申します。』
私たちは気づかなかった。
病室の外に、エイラの叫びを聞いてしまった人が居ることを。
リーネ「サーニャちゃんが・・・俺さんのことを・・・?」
最終更新:2013年03月30日 00:53