整備兵1「・・・・・・。」

整備兵2「・・・・・・。」

整備兵は完全に意気消沈していた。
つい先日届いたばかりの零式艦上戦闘脚・改が・・・。

整備長「あー、片方は完全にイっちまってるなこりゃ・・・。」

整備兵1「あんだけ許容量底上げした機体の回路を焼ききるとか・・・。」

整備兵2「どんな魔力量してるんだよ俺軍曹は・・・。」

整備兵1「一部の整備兵はクラッシャー俺って呼んでるらしいぜ・・・。」

二人の整備兵はorz状態でストライカーの前にへたり込んだ。
そんななか整備長だけは顎に手を当てて何かを考え込んでいる。

整備長「・・・おい、たしかリトヴャク中尉が前に使ってたストライカーが片足分だけあったよな。」

整備兵2「え?」

整備兵1「はい、たしか前に片足分だけ破壊されたやつですよね?」

整備長「おう、あれ今すぐもってこい。」

整備兵2「どうするんです?」

整備長「なぁ、俺たちだって技術屋の端くれだ・・・俺軍曹の馬鹿みたいな魔力に耐え切れる機体、こしらえたくないか?」

整備兵1「ま、まさか整備長!?」

整備長「幸いこの零式も片足分だけならかろうじて生きてる、それにリトヴャク中尉の片足分・・・材料は十分あるだろ?」

整備兵2「そういうことですか・・・。」

整備兵1「兄妹の使ってたストライカーを片足ずつ使って・・・やばい、何か燃えてきた!!」

整備長「必要なモンは俺がミーナ中佐にかけあう!思いっきり魔改造してやれ!!」

整備兵2「よっしゃ!早速作業に取り掛かろうぜ!」

整備兵1「俺前から俺軍曹の機体に取り付けたい機能の妄想してたんだよ・・・ふへへへへ。」

整備兵2「技術屋魂、見せてやるぜ!!」

こうして、メカニックオタクたちの夜が更けていく・・・。



【サーニャSide】

ミーナ「それじゃあミーティングを始めます。」

ミーナ中佐は壇上に立ち、黒板に張られた資料を指した。

ミーナ「先日発見された人型ネウロイを本国は『ファントム』と呼称、私たち501がその討伐を行います。」

坂本「ファントム・・・俺にそっくりな外見といい不気味な霧といい・・・まさに影というわけか」

お兄様を撃墜した人型ネウロイ・・・。
自然と、手に力が入った。

サーニャ「・・・エイラ。」

エイラ「・・・・・・。」

昨日の話は犬さんが現れた件でごたごたしていたきちんと話せなかった。
だからちゃんと話をしたいんだけど、エイラはずっと黙ったままだ。

エーリカ「・・・・・・。」

リーネ「・・・・・・。」

昨日その場に居たハルトマン中尉の様子も少しおかしい。
あと、なぜかリネットさんも。

ミーナ「そして・・・その件とは別に紹介する方が居ます。」

犬『一応はじめまして、俺の使い魔の犬と申します。』

昨日突然現れたお兄様の使い魔を名乗るハスキーはぺこりと頭を下げた。
犬さんが現れた翌日、私たちウィッチーズのメンバーはミーティングルームに集合していた。
それにしても言葉を話せる使い魔が居るのは芳佳ちゃんの兼定のこともあって知ってたけど、やっぱりびっくりする。

シャーリー「そういえばサーニャ、体調はもう良いのか?」

サーニャ「あ、はい・・・。」

犬『・・・よろしいですか?』

犬さんの一言で部屋が静かになる。
その声に少しイラつきがこもっているのを感じたから。

犬『さて、早速ですがみなさんにお話があります。』

ミーナ「何かしら?」

犬『私の主を撃墜した人型ネウロイ・・・ファントムについてです。』

犬『今の主は戦場には出られない、ですからあなた方だけでヤツと戦わなくてはなりません。』

バルクホルン「言われなくてもそのつもりだ。」

シャーリー「ああ!俺に怪我させたこと後悔させてやろうぜ。」

犬『やる気が合って結構です。早速ですが私が主の中で知りえた情報をお話します。』

その言葉に、この場の全員が真剣に耳を傾け始めました。
もちろん、私も。

犬『ヤツの特徴は知っての通りビームの霧です。どうやらこれは自由に収束、拡散ができるようですね。』

犬『もちろん、大量に収束すれば巨大なビームを放つことができます。』

犬『濃度の濃い部分だと銃弾すら焼ききり、そして霧散している状態のものを吸引すれば・・・。』

犬さんはそこから先の言葉を発しなかったけれど、みんな何が言いたいかは分かっている。
私の脳裏に映ったのは、いまだ医務室で目を覚まさないお兄様の姿だった。

犬『・・・続けます、対処法についてですが・・・。』

バルクホルン「あるのか!?」

犬さんの言葉を聞いたバルクホルン大尉が勢いよく立ち上がった。

犬『ヤツが大量に霧を吐き出す前に叩く、コレに尽きます。』

バルクホルン「・・・・・・。」

犬『非常に不満げな顔をされていますがコレが最も有効なのですよ。』

坂本「それはわかるが・・・。」

犬『もちろんそちらの言いたいことも分かります。次善策としては・・・。』

犬さんがまずはハルトマン中尉の方を向いた。

エーリカ「私?」

犬『ええ、あなたの固有魔法で吹き飛ばしてしまってください。』

ミーナ「待って、それは私も考えたけれどそれだとより広範囲に霧が拡散してしまわない?」

犬『いえ、私が見た限りですが、あの霧は本体から一定距離までしか拡散できないようなんです。』

エーリカ「そうなの?」

犬『ええ、本体が制御できなくなるのか・・・あるいは大気中のエーテルとぶつかって消滅するのか・・・私は後者だと思いますがね。』

ミーナ「そう・・・それならサーニャさんのフリーガーハマーでも・・・。」

サーニャ「え?」

犬『そうですね、霧が密集している部分に打ち込めば爆風で霧を散らせるでしょう。』

シャーリー「それならリーネのライフルの弾道が確保できるんじゃないか?」

リーネ「どうでしょう・・・爆風で視界が悪くなるでしょうし・・・。」

坂本「ならばサーニャの魔導針で正確な位置を割り出せば・・・。」

犬『そうですね、ある程度の狙いは絞れるかもしれません。』

ミーナ「勝機が見えてきたわね、作戦のメインメンバーは・・・。」

ミーナ中佐が辺りを見回す。
ハルトマン中尉、リネットさん、そして私・・・それぞれに目配せをした。

犬『ああ、それとエイラさんもそこに加えておいてください。』

エイラ「・・・えっ。」

さっきまでずっと顔を伏せていたエイラが反応した。

犬『・・・個人的には非常に心配ですが・・・彼女の未来予知で霧の収束をある程度予測する必要がありますからね。』

ルッキーニ「心配って・・・?」

犬『主の二の舞になられては困りますので。』

エイラ「っ!」

宮藤「え・・・?どういうことですか?」

犬『・・・失礼、何でもありません。』

エイラ「・・・・・・。」

犬さんはそれ以上の追及をやめたけど、まだ何か言いたそうな表情でした。
(犬に表情があるかと聞かれると微妙だけど)

ミーナ「・・・今日は解散にします、また後日に改めて会議を行います。」

犬『・・・・・・。』

ミーティングは微妙な雰囲気の中で終わった。



その後、みんながミーティングルームから去った後・・・。

ミーナ「ところで、犬さん。」

犬『なんでしょう。』

ミーナ「俺さんがこの世界に飛ばされた理由・・・何か心当たりはありませんか?」

犬『・・・ありますとも。』

ミーナ「・・・・・・!」


犬『・・・主を戦いの世界に放り出したのは・・・私ですから。』



【犬Side】

さらに追求しようとするミーナ中佐を振り切り、主の居る医務室へと向かう。
主の中へと戻ってしまえば不要な追求をされる心配はなくなる。

犬(・・・"今回"こそ・・・失敗するわけには行かない・・・。)

しかし、私の思考は中断される。

犬(・・・ん?)

ハンガーが騒がしいようだ・・・。

整備兵1「だぁからぁ!ビーム撃てるようにしようぜ!ビームライフル!俺軍曹の固有魔法なら・・・。」

整備兵2「んなもん作れるかぁ!!もっと現実的なもん考えろ!!つーかもうストライカー関係ないだろ!」

整備長(ビームソード考えてたんだがなぁ・・・。)

犬『・・・・・・。』

これは正直引く。
大の大人があたりに部品や工具を撒き散らして怒鳴りあっているのだから当然の反応だろう。

犬『・・・ん?』

しかし、ラックに固定されているストライカーを見て私は驚いた。

犬『あれは主のものと・・・サーニャさんの・・・!!』

種類の違う二つのストライカーが一つのセットとして並んでいた。

犬『・・・議論中のところ失礼します。』

整備兵1「・・・あぁ!?・・・あーっと・・・?」

整備長「ああ、噂の俺軍曹の使い魔の・・・。」

整備兵2「ああ!言葉はなせるって聴いてましたけどホントに・・・。」

犬『そのストライカーについてなのですが・・・。』

整備長「ああ、俺軍曹のストライカーが片足イカレちまってな・・・。」

犬『!!・・・片足だけですか?』

整備長「ん?おう・・・だからもう片足をリトヴャク中尉ので・・・。」

これは・・・もしかすると・・・。

犬『ず、図面を見せてください。』

整備兵1「え?まぁ基本的な部分はもうできてるんですけど、魔改造がまだで・・・。」

整備兵2「バッカ!改良と言え!」

犬『・・・これではダメです。』

整備長「どういう意味だ?」

犬『主の固有魔法は・・・たとえるならひとひねりで大量に水が出る蛇口です。』

整備兵1「は?」

犬『つまり・・・先ほどのたとえで言うならば・・・ホースが細すぎると水はうまく流れない・・・最悪逆流してしまうでしょう?』

整備兵2「・・・つまり、魔道エンジンのほうじゃなく回路のほうの許容量を上げろってことか?」

犬『ええ・・・今の3倍以上にしてください。』

整備兵2「さ、三倍!?」

犬『ええ、必ず必要になります。』

整備長「・・・わかった、まかせとけ。」

整備兵1「整備長!?今の3倍ってなると・・・しかも術式の調整とかもまだ・・・。」

整備長「バカヤロウ!俺らの仕事はウィッチがきちんと戦えるようにストライカーを整えることだぞ!!」

整備兵2「・・・ああ、そうだなおやっさん!」

整備長「誰がおやっさんだ!」

犬『・・・で、ではお任せします・・・。』

この情熱は尊敬に値するのだが・・・暑苦しいのは何とかならないのだろうか?

犬(しかし・・・。)

ちらりとストライカーを見る。

犬『今回は・・・もしかすると・・・それなら・・・。』

私は駆け足で医務室へ向かった。

犬『後は・・・主の心次第・・・。』

こうなった以上、主には決断を急いでもらおう・・・。
その答えを得るために、私はさらに速度を上げた。
最終更新:2013年03月30日 00:54