俺とペリーヌの300m
俺「よお、ペリーヌお疲れさん」
ペリーヌ「…俺さん。ここでは危険すぎますわよ?」
戦闘終了後、汗で額に貼りつく髪をはらうペリーヌに近づく一人の男。
金色の猫っ毛に厚手のタオルをかけて背中に手を添える。
整備兵でもなく、誘導員でもない。彼の所属はレーダー技術員であり、本来ハンガーには来るはずがない。
否、来てはいけないのだ。
俺「固くなるなって。愛する子猫ちゃんが空から帰って来たんだ。お出迎えぐらい、いいだろう?」
これにはどんな女の子でも真っ赤になる。
自分よりも背の高い、走ってきて少し汗臭いが、汗と一緒にふうわり香る香水が胸を高鳴らせる。
周りから見たら疲弊したウィッチを労わり、基地へと誘導する唯の1兵士。
しかし二人の間柄は恋人だった。
隊長のミーナによって男性との接触が禁止される中、二人は恋に落ちたのだ。
ペリーヌ「まったく、貴方には緊張感というものが足りないのです!隊長に見つかったら貴方は―――」
俺「除隊、もしくは東部にでも飛ばされてしまうさ。それか、祖国の奪還かな?」
さらりとウインクしながら言う俺にペリーヌは俯く。
ああ、もう俺さんはまたこんな事を仰って…こうやって私の心をかき乱して、楽しんでらっしゃるのだから。
ペリーヌがもだもだしながら表情に影を落とす。
そんな、外から見ても分かるペリーヌの乙女っぷりに、隣を歩きながら頭をわしわししていた俺は頬の緩みを抑えられない。
ペリーヌは徹頭徹尾、可愛いのだ。
こうしてぷんすか怒ってはいるが、本当は嬉しくて嬉しくてしょうがない。
だってこんなに文句を言いながら、俺の手を離さない。
整備兵「まったく、お迎えならよそでやんな!まったくこの技術士官は…」
シャーリー「まーまーいいじゃないか。今しか会えないんだろ?俺さん」
ルッキーニ「いいじゃんいいじゃん!私は気にしないから!」
戦闘が終わった後のいつもの光景にニヤつく二人が場を納める。
下手なことをいってもしょうがない。彼等はしっかり職務をこなして、今しかない時間を過ごしている。
ハンガーから基地までの300m。それが俺とペリーヌが話し、触れあえる唯一の場所だった。
基地まであと、200m。
距離を見つめたペリーヌは、俺との距離をゼロにした。
俺「怪我はなかったか」
ペリーヌ「当たり前です。傷があっては、貴方と共にいられないでしょう?」
身長差でつい上目遣いになってしまうペリーヌに、俺は息をつまらせる。
怪我をしたらすぐに医務室か、宮藤の治癒で近寄れない。
ストライカーが帰ってきて、ハンガーが活気に満ちる数十分。
ウィッチが戻る遅すぎない時間、数分。
愛を伝えられる時間はあまりにも少ない。
基地まであと、140m。
坂本「お前達、そろそろミーナが来るぞ」
エーリカ「書類がはやく終わったんだって!ほーら、はやくキスしなきゃ!」
バルクホルン「ば、馬鹿者!そういうのは私達が言うことではないんだ!…早くすませろよ」
ばたばたと駆け抜けるウィッチ達は冷やかしながら基地へと向かう。
宮藤「お夕飯間に合うかなぁ…リーネちゃんはやくー!」
リーネ「ま、待ってよう!あ、俺さん、ペリーヌさん、時間は平気ですからね?」
俺「はは、ありがとうみんな。ペリーヌはもう少し俺にくれ」
ペリーヌ「お、俺さん!?私もはやく―――」
エイラ「なんだよツンツンメガネ。俺中尉といたくないのカヨー」
サーニャ「だめよ、エイラ。ペリーヌさん、ゆっくり来てくださいね」
ペリーヌに絡み始めたエイラをサーニャがやんわり引きとって行く。
基地まであと、60m。
ウィッチは全員引き揚げた。ちなみに、二人の事を知らないのはミーナだけ。
隠すからには徹底的に。ここで現れる彼女たちの乙女心に癒されているのは俺だけではない。
可愛くて、仲間思いの良い子達だ。
出撃毎のこれを見る度に、整備兵達は和やかな気持ちになる。
この方達が世界を守ってくれているのだと思うと、仕事にも気合が入るというものだ。
ペリーヌ「その、俺さん」
ペリーヌが俺の手を引く。
俺「なんだい?」
俺は腰をかがめ、ペリーヌと目を合わせる。
ペリーヌ「…ここまでですわ」
基地まであと、10m。
俺「見れば分かるさ。――愛してる、ペリーヌ」
ペリーヌ「…そういうことは、態度で表してくださいまし」
整備兵が忙しなく通り過ぎたその時に、二人はそっと唇を合わせる。
さよならは言わない。だってまた会えるのだから。
基地まであと、0――――
ペリーヌ「私も、愛していますわ」
Fin…
- あ行age -- 名無しさん (2014-01-30 04:06:36)
最終更新:2014年01月30日 04:06