――ハンガー
俺「かったりー。んでジャガイモ剥かなきゃなんねーんだよぅ」シャリシャリ
私「無駄口を叩くな。この程度で済んだんだ、御の字だろうよ」シャリシャリ
バルクホルン「………………」シャリシャリ
俺とバルクホルンは命令違反、私はジェットストタイカーの無断改造への罰として、ジャガイモの皮むきをさせられていた。
サーニャ「私達が寝ている間に何が……?」
俺「バルクホルンの、太いんだよ! 硬いんだよぉ!? 暴れっぱなしなんだよ!! なビッグマグナムこと50mmカノン砲と俺がバルバトスになって敵フルボッコ、以上!」
エイラ「いや、バルバトスって誰か分からない上に、言い方が気持ち悪イ……」
ペリーヌ「本当に、人騒がせなストライカーでしたわね」
ミーナ「それに使う人間もね」
シャーリー「まあ、おかげでネウロイも倒せたんだし、いいじゃないか」
ミーナ「規則は規則です!」
俺「もうやってらんね、おーわりっとぉ」
バルクホルン「おい、きっちり自分のノルマを……」
私「バルクホルン、コイツにその言葉は意味がない。こっちがそういう頃にはもう終わってる」
俺「ほらよ、俺の分。これで文句はねぇよな?」
坂本「あー、そういえば、トイレ掃除もあったのではないか……?」
俺「残念ですが、それも終わってます。ピッカピカ、用を足すのに躊躇するレベルでピッカピカにござる」ドヤッ
坂本「…………罰則が、まるで意味を成していない」ガックリ
ミーナ「全く、少しは反省しなさい」ハア
俺「…………反、……省……?」キョトン
ミーナ「
初めて聞いた言葉のようにリアクションするのは止めなさい!」
私「…………」シャリシャリ ←もう、全てを諦めた表情で一心不乱にジャガイモの皮を剥く。
バルクホルン「…………」シャリシャリ ←世話を焼くタイプだが、自分の許容範囲を超える相手なのでスルーしつつ。
俺「悪りぃ、言っている意味が理解できないからブリタニア語かポルトガル語で頼む」
ミーナ「申し訳ないけど、私は始めからブリタニア語で喋ってるわよ!?」
エーリカ?「皆さん、どうもお騒がせしました」
坂本「……ん? どうしてお前が謝るんだ?」
シャーリー「そうだよ、ハルトマンのせいじゃないだろ?」
エーリカ?「いえ、私は……」
俺「は? お前ら何言ってんの? どう見たって別人だろ?」キョトン
私「……よく似てはいるな。姉妹か?」フム
シャーリー「いやいや、お前等が何を言ってるんだよ。どう見たって……」
宮藤「皆さーん、食事ですよー」ガラガラ
皆の会話に割り込むように、芳佳とリーネが今日の夕食を運んできた。
俺「またイモか、米が喰いてえ。欧米食なんざ糞喰らえじゃぁぁぁッッ!!」
私「ただで食べられるんだ、文句を言うな」
シャーリー「えー、でも上手いだろ? リベリオンの食べ物」
俺「ふざくんな。どれもこれも大味で大雑把な上にカロリーが無駄に高いんだよ。そんなだからぶくぶくぶくぶく太るんだ。この肥満大国出身者め。テメェの将来はブタ確定~♪」
シャーリー「太らないし! 絶対に太らないし! これでも色々気を使ってるんだからな!」
俺は嘘つけと鼻で笑い、テーブルの上に両脚を乗せてくつろぐ。普段は他人に礼儀がどうのと言う割に、自身の行儀は大変悪い。
宮藤「はいはい、それくらいにしてくださいね。あ、ハルトマンさんもどうぞ。フライドポテトですよ」
エーリカ?「あ、頂きます」ヒョイ
宮藤「あれ? ハルトマンさんって、眼鏡かけてましたっけ?」
エーリカ?「はい、ずっと……」モグモグ
エーリカ「おー、美味しそー! 私にもちょーだい!」
宮藤「あ、はい。こっちのハルトマンさんも……って、ええ!?」
宮藤の声に全員の視線が集まり、事情を知らない者は二人のハルトマンを前にして、驚きの声を上げた。
エーリカ?「お久しぶりです、姉さま」
エーリカ「あれ、ウルスラ?」
ミーナ「こちらは、ウルスラ・ハルトマン中尉よ。エーリカ・ハルトマン中尉の双子の妹よ」
全員『……妹?!』
ミーナ「そして、ジェットストライカーの開発スタッフの一人なの」
俺「ほら見れ、やっぱり俺等の言う通りじゃん。別人だったろ?」
エーリカ「え? 嘘ぉ!? ミーナもトゥルーデも初めて見た時は分からなかったんだよ?」
私「そうなのか?」
バルクホルン「ああ、雰囲気が違うのは分かったんだが、ああも顔の造形が似通っているとなぁ……」
俺「全く、仲間甲斐のない連中だよ。お前等の眼球はちゃんと健康的に機能してるんですかぁ?」
シャーリー「こんなに似てると違うところを見つける方が難しいって」
エーリカ「む、そこまで言うなら、服装とかで見分けてないか確かめてあげるよ。ウルスラ、ちょっと来て!」グイッ
ウルスラ「ね、姉さま!?」ズルズル
仲間を悪く言われたのが気に入らなかったのか、エーリカはウルスラの腕を引いて、ハンガーを後する。
何をするのか、と俺以外の全員が顔を見合わせ、数分後、二人は戻ってきた。全く同じ格好で。
バルクホルン「ハルトマンの制服を着せたのか。これは、流石に……」
ミーナ「私達でも、話してみないと分からないわね」
ペリーヌ「一卵性双生児という奴ですわね。ここまで似ていると、鏡合わせのようですわ」
エーリカ&ウルスラ「「さあ、どっちのハルトマンでSHOW!」」
俺「右が妹、左が姉」
私「右に同じく」
エイラ「どーせテキトウに言ってんだロ? こんなの分かる訳……」
ほぼノータイムで答えを出した二人に、エイラどころか全員が訝しげな視線を向けた。
エーリカ「あ、当たってる……!」
ウルスラ「凄い。声色も姉さまに合わせてたのに……」
サーニャ「どうして分かったんですか……?」
俺「どうしてって、なあ……?」
私「一卵性双生児と言えど、何から何まで同じとは限らん。趣味嗜好や性格が違うように、見た目にも多少とは言え差異はあるさ」
リーネ「あの、私達にはその差異が分からないんですけど……」
俺「具体的には、職業畑の違いか筋肉の付き方が違う。あと、微妙に妹の方が眉が目に近いな」
坂本「微妙って、全然分からんぞ」マジマジ
俺「そうかー? ミクロン単位で違うと思うけど?」
シャーリー「ミクロン!? ミクロンって言った今!? 何でそんなの分かるんだよッ!?」
俺「あとなんか、姉の方がゴミの臭いがする。ゴミ屋敷で暮らしてんのか?」
エーリカ「ゴミ……!? ゴミなんて、いくらなんでも酷いだろー!」
俺「あ、すみません。鼻がひん曲がりそうなほど臭いんで、それ以上近づかないでくれます?」
エーリカ「ひどいー! トゥルーデ、俺がイジめるー!」
バルクホルン「自業自得だ、馬鹿者。あんな風に部屋をゴミで溢れさせているお前が悪い」ハア
ウルスラ「姉さま、まだ掃除が苦手なんですね……」
俺「汚部屋暮らしのエーリカ、か」
私「某ジブリ映画のように言うのはやめてくれないか」
俺「うるせー、耳をすませばのカントリーロード歌うぞ。あんな青春送ってねーっつの!!」
私「ああ、私もだ。主に、お前と母さんが馬鹿ばかりするからだがなぁ!?」
シャーリー「なんで、この二人はこんな無駄にスペックが高いんだよ……」
坂本「駄目だ、シャーリー。いちいち気にしていたらキリがないぞ」
俺「んでー、わざわざ妹ちゃんはノイエカールスラントだかからジェットストライカーを取りにきたのか、ひっまじーん!」
私「お前は黙ってろッ!」ボグッ!
俺「ごふッ!? ……ひでぇ、いきなり裏拳かよ」
ウルスラ「バルクホルン大尉、この度はご迷惑をおかけしました。どうやら、ジェットストライカーに致命的な欠陥があるようです」
バルクホルン「まあ、試作機にトラブルは付き物だ。それよりも、壊してしまって済まなかったな」
私「まあ、原因は私なのだがね」
ウルスラ「いえ、これだけ原型を留めているなら原因の究明はそれほど難しくはないでしょうから、寧ろありがたいくらいです」
私「そう言って貰えて幸いだ。新入りの我々が試作機を壊したなど、洒落にならないからな」ハァ……
ウルスラ「お詫びと言ってはなんですが、ジャガイモを持ってきましたので、皆さんで食べてください」
ペリーヌ「ま、またこんなに……」ウンザリ
俺「うわぁ……ジャガイモの山とかリアルに見たわ。ここは北海道の農家ですかぁ?」
私「あって困るわけでもあるまいよ。イモは腹もちもいいしな。伊達にドイ……カールスラントの食糧危機を救った訳ではないさ」
ウルスラ「それから武装の方は何処に……?」
俺「あ、それについては貰ってもいい? 俺なら使えそうだからさ」
ウルスラ「……え?」
何か、信じられないようなものを見るような目で俺を見るウルスラ。
それも当然だ。まがりなりにもジェットストライカーの開発者。あの武装をレシプロストライカーで使いこなすことが出来ないのは誰よりも分かっている。
坂本「信じられんかもしれないが、事実だ。コイツは今日の戦闘で30mm機関砲を二つ持って空へ上がった」
ウルスラ「彼の固有魔法は怪力なのですか? そうでもなければ、説明が……」
坂本「いや、そうではないらしい。馬鹿げた魔法力で強制的にストライカーの積載量を水増ししたようなんだ」
ウルスラ「そんな……」アゼン
私「だが、それが良いこととも限らないようだ」
ミーナ「何か、あったのかしら?」
私「詳細な資料や点検は整備班が後で報告します。簡単に言ってしまえば、俺のストライカーはエンジンが焼き付いて、使い物にならなくなっていました」
ミーナ「どういうこと? 問題なく帰還したように見えたけれど」
私「ええ、エンジンを騙しだまし帰ってきたんですよ、このバカは」
俺「テヘペロッ☆」
私「それ以上ふざけたら、本気で潰すぞ?」
俺「へーい。何を潰す気だろうな…………BBA、私がいじめる。いいこいいこして?」
ミーナ「はいはい」ヨシヨシ
俺「BBAと呼んだのに、ビンタが飛んでこなかった、だと……?」
ミーナ「もう色々と諦めたわ。でも、お望みとあらばあげるわよッ!」バチコーン☆
俺「おうふ、油断させておいてからのビンタですか。予想外に効きますなこれは」ヒリヒリ
宮藤「うわぁ、鼻血も出てるし、頬に見事な紅葉が咲いてますよ……」
リーネ「だ、大丈夫ですか……?」
ペリーヌ「放って置きなさいな。どうせ大して効いてもいないでしょうし、反省する気もないのだから」
俺「うむ、全くもってその通り! 俺のことが分かってきたじゃないか」
エイラ「いや、反省はしろヨ」
サーニャ「ミーナ隊長が可哀想です」
俺「ふーん、そうか。でも俺はそう思わないね!」
エイラ「ダメダコリャ」
ミーナ「それで原因は何なのかしら」
私「恐らくは過剰な魔法力の供給かと……」
ウルスラ「ちょっと待ってください。魔導エンジンを守る為、必要以上の供給があった場合、自動的にリミッターが作動する筈では?」
私「それは聞いている。だが、そのリミッターすら壊れているようなんだ。どうやら俺の魔法力は、設計段階から想定されていた魔法力を大きく凌駕しているようだな」
ウルスラ「…………」ポカーン
俺「想定外なんてよくある話じゃないですかー、ヤダー!」
坂本「ふむ。何とかならんのか?」
ミーナ「そうね。俺さんのデタラメな強さは認めざるを得ないけれど、一度の出撃でストライカーを一機使い潰されたら溜まったものではないわ」
俺「いよいよ俺が相手にされなくなってきた件について、どう思われますか、バルクホルン大尉?」
バルクホルン「ええい、マイクを差し出すみたいに手を出すな、鬱陶しい! どう考えたところで自業自得だろうが!」バシッ!
シャーリー「ざまぁ」ケラケラ
俺「やれやれだ。隊全員に無視される日は近いかねぇ、こりゃ」ヤッテランネ
私「簡単な話です。過剰な熱で焼き付いてしまったのなら、その熱に耐えうる素材、あるいは排熱効率のよい素材を使えばいいだけですよ。そうすれば設計段階まで遡って作り直す必要はない」
坂本「いや、そんな素材がある――――あ」
ミーナ「成程。それで貴方の固有魔法の出番、と言う訳ね」
ウルスラ「貴方も、ウィッチなんですか……?」
私「ああ、固有魔法は金属操作といった所だ。まあ、調整やら何やらで1月くらいは俺に戦闘を控えさせてほしい」
ウルスラ「そんな短期間で大丈夫なので……?」
私「実際、構造や使用されている理論を変える訳じゃない。ただ、素材となる金属を融合させたりして、魔法力や熱に対する耐性を引き上げるだけだ。何とかしてみせよう」
シャーリー「はは。なんか、私が頼りになりすぎて怖いなぁ」
俺「バカ! そんなでもなきゃ、俺の兄弟なんて勤まるわけないでしょ!」
ミーナ「納得しちゃいけない筈なのに、凄く納得してしまったわ……!」
ウルスラ「相変わらず、姉さまの周りは凄い人で溢れていますね。…………何と言うか、色々な意味で」
エーリカ「うん、そうだね。でも、俺は例外だから。あんな変なのそうそういないからね」
ウルスラ「そうですか? 言動はともかく、突拍子のない行動なら、姉さまも似たり寄ったりだと思いますよ」フフ
エーリカ「あう、藪蛇! 妹に嫌味言われちゃったよー」
俺「そうか。まあ、発言はともかく行動は同類さん、仲良くやろーぜ」
エーリカ「うわー! 俺と一緒なんてヤダー!!」
俺「ふ、心ない言葉に心が痛いぜ」
ペリーヌ「その割には、相変わらずの無表情ですわね」アキレ
俺「ああ、そうだな。一つ言っておく、悪口言われて本当に痛いか?」
エイラ「お前のツラの皮でシールドが作れたら、まず間違いなく世界最強のシールドになるヨ、ウン」
俺「ありがとう。最低の褒め言葉だ」
ウルスラ「では、私はそろそろ帰ります。皆さんもお元気で」
エーリカ「えー、もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
ウルスラ「そうも行きません。ジェットストライカーが実戦配備が可能になれば、戦況は一変します。それこそ、ネウロイから祖国を取り戻せるほどに……」
私「そうだな。まあ、初対面の私が言うのもなんだが、身体には気を付けてくれ」
俺「いや、お前が言うと鉛のような金言だと思うがな、俺は」
ウルスラ「では、皆さんもご武運を」クスクス
俺「あ、帰る前に一つだけ」
ウルスラ「……? はい、何でしょう?」
俺「どうせ、もう後の話で出てくる予定もないんだし、裸エプロンでも見せてくれ」
全員『』
ウルスラ「いえ、初対面の女性にそんなことを頼むなんて、貴方は正気ですか?」
俺「思ったよりも冷静な反応と蔑みの視線をありがとう。で、してくれない?」
ウルスラ「しません!」
エーリカ「あのウルスラが声を荒げた!? 本気で怒ってる!!」
私「…………ウルスラ中尉。君にも見せておこうか、私の固有魔法」
俺「え? なんで? なんで急にそんな話になってるのん?」
私「お前のバカさ加減を矯正するためだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」シュゴァッ!
リネット「ああ!? ドラム缶が集まって、ハンマーみたいな形に!?」
シャーリー「おぉい! 大丈夫なのか、そんなに無茶して!!」
私「勇気で補えばなんとかなるわぁぁぁぁ!! もう心臓なんて知るかぁぁぁぁ!!」
バルクホルン「私まで変なことを言い出したぞ! 誰が収集付けるんだ、これは!?」
私「光になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」
俺「ちょ、それゴルディオンハンマー! いや、ゴルディオンクラッシャーの方じゃないか!! でもお前の場合はただの物理こうげ――――」グシャアアアアッ!!!
最終更新:2013年03月30日 01:18