――夜 ミーティングルーム



俺「しっかし、ネウロイってのは何考えてるのか分からんなぁ」

私「仕方ないさ。そもそも怪異と呼ばれていた存在だ。人類である我々に理解できる方が可笑しいんだ」

俺「全長3万メートルのタワー型、か。まるで軌道エレベーターだな。カブトの映画版を思い出すぜ」

私「ウィッチに対抗して、あの手この手で攻めてきている、と見るべきだろうか……?」

俺「俺がネウロイだったら性能は後回しにして、とにかく数で攻めるがなぁ。一週間も昼夜問わず、全世界のウィッチでも対処しようがない数で責めりゃ、あっちゅうまに戦線は崩壊するぜ」

私「確かにな。あれだけの質量があるんだ、不可能とも思えん。性能を考慮に入れなければ、ウィッチの数が限られている以上は最も有効な手なのだろうが……ふむ、それこそ考えるだけ無駄か。怪異の考えなど分かろう筈もない」


此度、姿を見せたネウロイは俺の言った通りの異形であり、コアはその頂点に存在していた。
どのストライカーの限界高度も、およそ1万メートルほど。つまり、そもそも攻撃が届かないのだ。


俺「もっさんも無茶するねぇ。ロケットブースターで段階を踏んで打ち上げて、それからコアを破壊? ムチャクチャすぎるだろ」

私「敵がどの程度の攻撃能力を有しているかは分からんが、近い内にロマーニャへ到達する。手段が一つしかないのなら、それを選択するしかあるまい」

俺「最終的には正面からの力押しだぜ? 葛葉ライドウか、アイツ等は。あーあ、サーニャんと宮藤、かっわいそー。下手すりゃ死ぬな」クク

私「――おい」

俺「何が一番愉快って、作戦を考えたもっさんが危険を承知した上で、それでも二人を何一つ疑わずに信じてることだろうな。作戦が失敗したら潰れるぜ、あの女」


私「そうならんように、祈るしかないだろうな」

俺「そしてまたしても蚊帳の外の俺であった」

私「はあ。整備班が計算したら、お前の魔法力でロケットブースターを使用したら爆発すると聞いた時は、笑ってしまったよ」

俺「隊長さんももっさんも事態を重く見て、急遽使い捨てのつもりでストライカーを用意してくれたが、とんだ無駄骨だったな。まあ、楽して稼げるなら文句はないがね」


私「ふむ、魔法力の貯蔵量もさることながら、瞬間放出量も並のウィッチとは段違いということか。これは更なる改良を視野に入れねばならんな」

俺「作業の進行状況は?」

私「2、3割といったところだな。重さを変えずに耐久力を増やすんだ。その難しさ、分からないわけじゃあるまい」

俺「まあね。ましてや魔法力に対して、だもんなぁ。完全に試行錯誤の繰り返ですしおすし」

私「やれやれだ。制御した上でそれか。気苦労が増える」

俺「すまねぇなあ……いつもいつも迷惑を掛けて」

私「それは言わない約束だろう――――などと言うと思ったか? お前が済まないと思っているなど、ありえんからな」フ

俺「酷ェや。まあ、俺のことよく分かってるってことですけどー」


バルクホルン「む、俺と私か。ここにいるとは珍しいな、二人とも」ガチャ

ミーナ「……………………」ブスゥ

俺「あからさまに嫌そうな顔すんなよ。綺麗なお顔が台無しですよー?」

ミーナ「そんなことを言ったからって、許して貰えると思っているのかしら」ゴゴゴゴ

俺「チッ、うっせーな。反省してまーす」シレッ

ミーナ「まるで反省してないわよね、その態度!?」

俺「なぜばれたし」

ミーナ「分からない訳ないじゃないの!」


バルクホルン「なあ、私、一体何があったんだ? 俺を見るたびにミーナがあの調子なんだが……」

私「いや、うん、何というか、そのなんだ。…………聞かないでやるのが一番の優しさだと思うぞ?」

バルクホルン「はあ、そうなのか?」

私「そう――――なんじゃないかなぁ……傷口に塩を塗り込む必要もないだろう」ウンウン

バルクホルン「私の知らないところで、そこまでのことが!?」


俺「まーまー、そう怒るなよ。ガキの悪戯に本気で怒るなんて大人失格ですよ?」

ミーナ「そうね。でも、それは子供の場合だけです! いい年した大人が悪戯していれば誰でも怒るわよ!」

俺「やだ、俺ちゃんまだ未成年でちゅよ」

ミーナ「いきなり赤ちゃん言葉を使わないで、気持ち悪い!」

俺「へーへー。で、お二人さん、何か深刻そうなお顔をしてましたけど、どうかした?」

ミーナ「…………ッ」ギョッ

バルクホルン「あ、ああ、……その、少し、問題がな」


いきなり確信を突いてきた俺に、少しばかり面を喰らうが、二人は起こった問題を語り始めた。

近いうちに決行されるであろう作戦に最も難色を示した人物は、誰であろうサーニャの相棒のエイラである。
理由は単純。彼女自身が語るまでもなく、サーニャの隣で戦えない、守ることが出来ないという理由だったのだろう。

しかし、それも作戦の性質上、仕方がない。
『未来予知』の固有魔法を持つエイラは、一度たりとも戦場でシールドを張ったことがないのだ。
サーニャが攻撃役であり、もう一人は防御役を担当するという作戦に、彼女の先天的な才能は意味をなさない。


俺「でも、ミーティングの時は反論はなかったし、問題なんざねぇだろ?」

バルクホルン「そうなんだが、昼頃にペリーヌやリーネと訓練をしていたのを見たか?」

俺「あー、アレ。シールドを張る訓練だったのか? にしちゃあ、滑稽だったがなぁ」


ミーナ「そう言わないで上げてちょうだい。アレは才能が……」

俺「笑わせるな。才能のせいで努力ができないって? そんなものは単純にアイツにやる気がないだけだ」

バルクホルン「おい、いくらなんでも言い過ぎだぞ」

俺「俺は俺の考えを曲げるつもりはない。才能も確かに重要だよ。だが、結果を変えるのは何時だって当人のやる気と努力だ」


口調も表情も平時のものだったが、その言葉には明確な怒りが込められているような気がした。


私「――――ミーナ隊長、バルクホルン」


俺が何に対して怒りを抱えているのか理解できず、困惑する二人に私が耳打ちする。


私「アイツの前で、努力がどうという話は止めた方がいい」

ミーナ「どういうこと……?」

私「…………アイツにはアイツなりの信念や考えがあるんですよ」

バルクホルン「普段のアイツは、努力など鼻で笑いそうだがな」


誰の目から見ても分かるほどに溢れる才能と能力を持っていて、その上全てを馬鹿にしたような態度の俺だ。確かにそう考えるのも無理はないだろう。

それでも、何とか言いたいことを押し殺し、二人は話を続ける。


ミーナ「それでその後、サーニャさんとエイラさんの間で何かあったようなの」

俺「…………何かって?」

バルクホルン「原因は分からんが、恐らくは喧嘩でもしたんだろうな。サーニャもエイラも、目に見えて落ち込んでいる」

私「成程。それで隊の士気が落ちるのではないか、と」

ミーナ「勿論それもあるけれど、一人の家族として二人のことが心配なのよ」

俺「軍人のくせにお優しいことで」

バルクホルン「茶化すな。、全く……」

俺「実際、それぐらいが調度いいかもな。軍規に徹したところで得られるものは役に立つかも分からない勲章だけ。人としての幸せは、立ち入る余地はない」

バルクホルン「それは、そうかもしれんが……」

俺「仕事や軍規に徹した人間が、晩年になって家族を顧みなかったことを後悔するなんてよくある話でしょ。何事もほどほどが一番ってことですよ」

私「お前にしてはなかなか真面目なことを言うじゃないか。俺の言葉にも一理ある、バルクホルンも胸に留めておくくらいはしておいたらどうだ?」

バルクホルン「いいだろう。但し、俺が言ったからではなく、私がそれを認めたからだ。……本当だ、絶対だぞ!」

私「いや、そこは別に強調しなくてもいいんじゃないか?」


俺「露骨に好感度違い過ぎ、ワロタ」

ミーナ「自分の方が好感度が高いと思っていたら、私は貴方の正気を疑うわよ」ハア


俺「まー、でも、ほっとくしかないんじゃないの? 他人の喧嘩に首突っ込んでもロクな結果にゃならんでしょう」

ミーナ「でも、……」

俺「じゃあ、今にでも首突っ込んでくれば?」

バルクホルン「い、いや、しかしだな」

俺「お前等メンドくせーな。どうするんだよ、ハッキリしれ」

私「そうは言うが、これはデリケートな問題だ。こう、方向性や方針をすぐに決めることなぞできんだろう……」

俺「方向性も糞もあるかよ。結局のところ、首突っ込む以上、余計なお世話以外の何物でもねーよ」

ミーナ「それも、そうなのかしらね……」


サーニャ「あ、…………失礼します」


俺(お、噂をすれば。ああ、もう話聞くからな。まだるっこしいのは面倒だ)

バルクホルン(お、おい。遠回しに、遠回しに聞けよ!)

俺(分かってまーす)

ミーナ(不安しか感じない……!)

私(…………どう考えても、遠回しな聞き方をするような奴じゃないと思うが)


俺「おー、どったの? こんな時間に?」

サーニャ「えっと、いつもはこの時間に夜間哨戒があるから、中々眠れなくて……」

俺「ふーん。ちょうどいい、どうせ寝れないなら、茶でもどうよ? お前等もいいよな?」

ミーナ「え、ええ。勿論」

サーニャ「じゃあ、一杯だけ……」


サーニャはどこか遠慮しながらも開いていたソファに腰掛け、俺は残っていたカップに紅茶を注いで渡す。


俺「それで、エイラと喧嘩したんだって?」

ミーナ&バルクホルン(ド直球ーーーーッ!?)ガーーン

私(まあ、そうなるよな。鬼に横道はないのと同じで、アイツにも横道はない)ハア

サーニャ「ど、どこでそれを……?」

俺「いやいや、面を拝めば分かるさ。あからさまに、友達と喧嘩しちゃったーって顔してますよ?」


はあ、と生返事をしながら、サーニャはそんな顔をしていただろうか、と自分の顔を触る。
ミーナやバルクホルンの名前を出さない辺り、俺も筋は通すつもりではあるようだ。


俺「喧嘩の仲直りに関しちゃ、俺は一家言持ちだぜ。何せ、しょっちゅう私と喧嘩しているからな」

私「喧嘩、ね。どちらかと言えば、私が一方的にお前を叱りつけていると言った方が正しいと思うが?」

俺「っるせーな、似たようなもんだ。……まあ、それはそれとして、他人に言うだけでも結構違うもんだとは思うが?」


サーニャ「………………」チラ

ミーナ「私達のことは気にしないでいいのよ」

バルクホルン「まあ、珍しくコイツもこう言っているんだ。為にならねば聞かなければいい、物は試しだろう」


俺「何を言ってもフルボッコだな、俺。辛辣過ぎて涙が出そうだ」

私「だったら、自分の行いを改善するんだな。自業自得だ。お前のような生き方は、他人からすれば酷く迷惑なものだ」

俺「別にいいんですけどね? 他人の話ならともかく、他人からの評価なんて下らねぇ。毒にも薬にもならぬ駄菓子の如き助言、いらぬ世話ッッッ! という奴だな」

私「お前のそのブレなさに関してだけは評価に値するよ、全く」ハア


サーニャ「………………実は、」


サーニャの口から語られた喧嘩の内容は、実に単純な理由だった。
エイラがシールドを張ることをあっさりと諦めてしまったこと。それに自分でも考えられないほど怒ってしまったこと。そして、今、自分がどうすればいいのか分からないこと。

よくある子供の喧嘩だ。問題の根が深い訳ではなく、その場限りの感情に身を任せてしまった結果。
問題は、サーニャもエイラも喧嘩というものをしたことがない故に、仲直りの手段を見つけられないでいることだろう。


俺「……で、色々あって、エイラと喧嘩してしまったと」

サーニャ「…………はい」コクン


あー、どうすっかなぁ、と頭をかきかき考えるが、やがて何をするのか纏まったらしく、俺は口を開く。


俺「じゃあ、まずエイラが何故簡単に諦めてしまったのかという点を解消しようか」

サーニャ「あ、あの、それはどういう意味が……」

俺「あ? だってお前等二人、付き合いばっかが長いだけで、お互いのことよく知らないだろ?」

サーニャ「そ、そんなこと……!」

俺「あのなー、サーニャん。友達ってのは、相手が何が好きで何が嫌いとか、一緒に居て楽しいだけじゃ、上っ面だけのつまらない関係になっちまう。だからこそ、まずは相手のことを考えてみようってことさ」

サーニャ「………………」


私「それで、お前はエイラが諦めたのをどう見る?」

俺「単純に苦労が嫌い、めんどくさいを押したいと思います!」

私「台無しだよ! それじゃあ、彼女が凄いダメ人間じゃないか!!」


俺「冗談はさておき。まー、アレだな、苦労や苦難に相対したことが極端に少ないんだろ」

ミーナ「どういうこと?」

俺「エイラは生まれてこの方、これといって苦労もせず、何とかなって生きてきたってことだ」

バルクホルン「それは、いくらなんでも言い過ぎだ。誰にだって、危機に直面することだってある」

俺「言い方が悪かったな。言うまでもなく、そういう場面だってあっただろうさ。だがな、多分、アイツはそれを一人で解決するような事態には陥っていないと思うのさ」

サーニャ「……一人で?」

俺「そう。勿論、それは悪いことじゃない。周囲の人間の手を借りて、事を成すのが悪い訳じゃない。寧ろ、いい事だとさえ言えるさ。しかし、今回の件はどうだ。他人に手を借りてどうこうなる問題か?」

私「無理だな。シールドは他人に手を借りて張るものではない」


俺「加えて、宮藤はシールドの巨大さと強度に関しては隊随一。自分が張れないのなら、他人にやって貰った方が安全確実ってな」

サーニャ「…………でも、ッ!」

俺「これに関しては誰が悪い訳でもない。恵まれ過ぎた環境、他者と自分との能力と才能の差。そして、エイラの苦難に対する耐性。その他諸々が相俟っての現状だ。まあ、俺は一切関係ないんですけどね?」

私「“無傷のエース”の、思いもよらぬ瑕と言ったところか……」

俺「失敗は成功の母である、されど成功は破滅の父だ。失敗を知らぬ天才は、反復訓練の重要性を理解していない場合が多いからな」

サーニャ「じゃあ、どうすれば……」

俺「んー、どうにもならないんじゃないのかねぇ。身に着いた習慣は、なかなかどうして拭いきれるものではないからなー」


サーニャ「………………」

俺「さて、次はサーニャん自身の問題だ。何故、怒りに任せてしまったのかは、わざわざ考察する必要はない、よな?」

サーニャ「……はい。芳佳ちゃんは、信用しているけれど、やっぱり私は…………」


エイラに守ってほしい、と続けるつもりだったのか。だが、結局、彼女の口から言葉が紡がれることはなかった。


俺「そうか。……だったら、それをハッキリ伝えよう。思っていても、言葉にしなければ伝わらないさ。残念ながら、人間はそこまで融通の利く生き物じゃない」

サーニャ「で、でも……嫌われたら、どうしようって、思って……ッ、私、エイラに酷い、ことを……」グスッ

俺「おいおい、泣かないでくれよ。俺が悪者みたいじゃないか。いや、確かに善人じゃねーけどね。……私、ハンカチー」

私「全く、それくらい常に持ち歩いておけ」


投げ渡されたハンカチを受け取り、流れ始めたサーニャの涙を拭う。
相も変わらず無表情で、それでも優しげに拭い続ける姿は、何処か普段の彼からはかけ離れているように見えた。


俺「はーい、泣き止んだ?」

サーニャ「……は、はい。すみません」

俺「あー、いいよいいよ。かわいこちゃんの貴重な泣き顔シーンだ。脳内に焼き付けておいたから」

サーニャ「えぇ……ッ!? わ、忘れてください!///」

俺「いやでござる! 絶対にいやでござる! この脳内映像は子子孫孫に伝える一家の家宝とする!」


サーニャ「そ、そんなぁ……」

私「あー、ウチのバカの戯言だ、気にするな。どうせ明日には忘れている」

俺「失礼な! 三歩も歩いたら忘れるわ!」

私「私の予想以上に鳥頭だった!?」

俺「だから、俺はもう此処から一生動かない」

私「家族の為に働くって言ったじゃないか!!」


俺「でも、まあ、早く仲直りはしておけよ。後悔は先に立たない。いずれ別れの時は来るんだ。できるだけ、楽しい思い出は多い方がいいだろう?」

サーニャ「…………でも、」

俺「気楽に行こうぜ。失敗すればそれまでだった、成功すればまた笑いあう。それだけで十分だ。……十分、すぎるさ」

サーニャ「………………」


一体、俺は何を思うのか。事の正否に関わらず、友との関係はそれでいい、と瞳を閉じ、それこそ歌うように呟いた。
私は、そんな俺から目を逸らし、無言で紅茶を啜る。俺の過去を知る者として、彼もまた、何か思う所があるのだろう。

その姿に、サーニャは勇気を振り絞って、一つのお願いを口にした。


サーニャ「あ、あの、……エイラと仲直りをする時、俺さんも一緒に来て貰ってもいいですか?」

俺「え、ヤダ。メンドいし」


サーニャ「」


私「なんで! お前は! そこで! 断るんだぁぁぁぁぁッッ!!」

俺「いやだって、他人の関係に首を突っ込むとロクなことになんねーんだもん。あと俺は関係ないし」

私「最低だ! お前は最低な人間だ!」

俺「だーかーら、知ってるってそんなこと。このボキャ貧。もっと罵倒のバリエーションを増やせ」

私「逆に私が怒られた!?」


勇気を振り絞ったお願いを無碍に断られ、放心するサーニャの姿に俺は大きく溜息を吐く。


俺「しゃーない。最低限、お願いくらいは聞いてやるか」ヨイショ、と

サーニャ「え? あれ? わ、私、どうして俺さんの肩に担がれて?」

俺「なんでって、これからエイラんとこ行くからだよ」

サーニャ「えぇ……!?」

俺「俺はまだるっこしいのはゴメンだ。くっついたり離れたりなんてラブコメ的な要素は、この俺がぶっ潰す!」

サーニャ「そ、そういう話じゃないですから……ッ」

俺「そういう話です! 俺はラブコメ的な要素するにしても、くっつくだけで離れるとかないからいい!」


ふはははー、早くこんな面倒なこと終わらせてやるぜー、と息巻いて、ミーティングルームを後にするサーニャと俺。

空になったティーカップを眺めながらも、笑って二人を見送る私。どうやら、サーニャとエイラについて考えていた俺に満足したようだった。


私「話の途中から一切話さなくなったが、どうかしたのかバルクホルン、ミーナ隊長?」

バルクホルン「――――ハッ!?」

ミーナ「あ、あら、ゆ、夢ね。そうよ夢に決まっているわ。あの人が、真面目に受け答えをするなんて!」

私「残念ながら……いや、喜ばしながら、か? ともあれ現実ですよ、今の光景は」


バルクホルン「いや、まてまてまてまて! あのバカが、サーニャの相談を受けるわけがない! おい、アイツがなんで真面目なんだ?! 誰が変なものを食べさせた!?」

私「いや、普段は真面目にやっていないだけで、シリアスな展開が出来ないって訳じゃないからな、アイツの場合」

ミーナ「う、うぅ、嘘よ! 俺さんは『俺は真面目にふざけてる』とか言う人でしょう!?」

私「まあ、間違ってはいませんけどね。…………年下には、結構優しい奴なんですよ、一応」

バルクホルン「……信じられないぞ、その台詞!」

ミーナ「ふ、ふふ、そうよ、夢よ。ミーナ、おかしな幻想を見ていては駄目。朝起きたら、またBBAと呼ばれる現実が始まるわ。……あら? 現実って何だったかしら?」


私(好感度が最底辺どころか、下に突き抜けてるぞ、俺。お前が少し真面目にやっただけでこの様だ。…………どうなるんだろうなぁ、本当)










――後日談



私「それで、あの二人はどうなったんだ?」

俺「あぁ? 聞いての通りだよ。作戦前にシールドを張れるようになったエイラがサーニャの盾役になって、ネウロイ粉砕ってオチ」

私「私が聞きたいのはそういう――いや待て、作戦前にユーティライネンはシールドを張れるようになったのか?」

俺「ああ、俺が手伝ってやったからな」

私「どんな魔法を使った。身に着いた習慣はそうそう拭いきれるものじゃないと言ったのはお前だぞ」

俺「そうですよー。でも、人間、追い詰められると自然にできちゃったりするよね?」

私「…………お前、まさか」


俺「エイラの未来予知が意味のないよう木に縛り付けて、銃で撃ちまくって弾丸を山ほどプレゼントした。そしたら張れた」


私「アホかお前はぁぁぁぁぁぁッ!?」バシッ!

俺「いってぇっな、殴んなよ。いいじゃねぇか、一発も当たらなかったし、結局シールド張れたんだしよぉ」

私「バカか!? もしシールド張れなかったどうするつもりだったんだ!?」

俺「宮藤の治癒魔法がある。大丈夫だ、問題ない」

私「問題大ありだ、この戯けぇぇぇぇぇっ!!」


俺「いやぁ、実際、銃弾如きじゃウィッチは死なないらしいし、身に危険が迫ればオートでシールドが展開するそうじゃないか」

私「だからと言ってなぁ!」

俺「しょうがねぇだろ、シールド展開するより早くライフルの弾避けるような奴だぜ。他に方法あるの? 俺のやり方批判するなら別の方法考えてから言えよな」

私「ぐっ……! しかし!」

俺「安心しろよ。ちゃんと急所は外してやったし、BBAにしこたま怒られたんだよ。勘弁してくれ」


サーニャ「…………俺さん」

エイラ「げえ…………」


俺「あからさまに嫌そうな顔すんなよ、愛しちゃうぜ?」

エイラ「お前なんかに愛されたら、あたしは悲鳴を上げるゾ」

俺「もう扱いがゴキブリと同列でござる。別にいいけどね、お前に嫌われても痛くも痒くもねーし」

サーニャ「駄目よ、エイラ。今日はお礼を言いに来たんだから」

私「……お礼?」

サーニャ「はい。先日、エイラの訓練を手伝ってくれたお礼です。……………………やり方は、あの、その」

私「うん、言いたいことがあるなあハッキリ言っていいぞ? バカでもアホでも、死ねでもな!」


俺「しかし、お礼ねぇ。嫌々やってたし、別にいいよ」

エイラ「嘘ダ! 絶対嘘ダ! だってお前、ずっとニヤニヤ笑ってたじゃないカー!」

俺「ああ、笑ってましたけど? お前の表情が怯えに歪み、涙で濡れていく様は、とても楽しかったです」

エイラ「こ、このぉ、このこのぉ、オタンコナス! サディスト! 冷血漢!」

俺「はっはー! 残念だったなぁ! 俺に罵倒なんて通用しねぇよ!」

エイラ「くぅぅぅぅぅっっ!!」ジタバタ


私「あー、しかし、本当によかったのか、リトヴャク。ウチのバカがまたアホをやらかしたようだが……」

サーニャ「や、やり方自体については、何も言えません。正直、エイラが死んじゃうんじゃないかと思って……」

私「で、ですよね」ダラダラ

サーニャ「でも、俺さんはエイラと話す時もちゃんと付いて来てくれましたし、エイラにも、私と話し合うように言ってくれましたから」

私「アイツは規則も法も気にしにしないが、自分から言ったことはキチンとやり通すからな」


サーニャ「私、兄弟がいなかったから、何だか、お兄ちゃんみたいだな、って」

私「うん。私はそんな兄を持って、死ぬほど苦労しているんだがね」

サーニャ「え、えっと、それはその……」

私「ああ、すまない。嫌味を言っている訳ではなくてだな。その、なんだ。礼を言っておくよ、あんな馬鹿を褒めてくれて」


身内を認めて貰ったことに、少なからずテレを見せて笑う私に、サーニャもまた微笑み返した。


サーニャ「そうだった。お礼にケーキを作ってきたんです。リーネちゃんや芳佳ちゃんと一緒にですけど。私さんもご一緒にどうですか?」

私「頂こう。……おい! 二人とも何時までも罵りあいしてないで、こっちへこい!」


俺「おい、ズボンちゃんと洗ったか? ビビって漏らしたズボン、ちゃんと綺麗に洗ったか?」

エイラ「漏ラシテナイ! 変な言いがかりツケンナっ!」

俺「うそー。サーニャとの関係がもう終わるんじゃないかとビクついてたヘタレでビビリなエイラさんが漏らさない訳ないじゃないですかー、ヤダー♪」

エイラ「ヘタレじゃない! へたれじゃないカラナっ!!」


サーニャ「もう……! エイラも、いい加減にお礼を言ったら?」


エイラ「グヌヌ……! サーニャがああ言ってるだけで、あたしは欠片も感謝シテナイカンナー!」

俺「へーへー、どうでもいいですよー。感謝されても腹の足しになるわけでもなし」

エイラ「でも、その……背中押してくれたのは本当だし、感謝しないこともナイ……」

俺「あからさまに屈辱的って顔されても、ありがたみも何もねぇよ」

エイラ「くっ……! …………あ、ぁ、ありがとう」

俺「……………………………どういたしまして」


エイラの言葉に、珍しくまんざらでもなさそうな表情で俺は返事をするのだった。
最終更新:2013年03月30日 01:19