「私の名前は、黒田那佳です!」

元気溌剌、天心爛漫な少女、黒田那佳が答える

私「黒田か、よし、覚えたぞ」

私「私の名前は『私』リべリオン海兵隊大尉だ」

那佳「リべリオン海兵隊?………あっ!!」

何かをはっ!と思い出したかのように、黒田が変な声を上げた

どうかしたのかな?と私が訪ねると、黒田はあはははと苦笑いを浮かべながら答えた

那佳「えっと……私、今日からノーブルウィッチーズに配属されることになったんです」

ノーブルウィッチーズ?つまりこの部隊に………いや、違う

おそらく彼女が言っているのは、この私が所属するB部隊ではなくセダンのA部隊のことだろう

彼女が着ている藤色の袴、おそらく扶桑の華族しか着ることが許されていない高貴な物だ

そのことから彼女が貴族魔女で構成されたA部隊に着任するということは簡単に解る

解るのだが…………

私「………」

……どうも彼女からは貴族というイメージが湧いてこない

どちらかというと―こう言うと失礼なのだが―庶民っぽいのだ

いやまぁ私も、『いかにも貴族です!』みたいな態度の人間は気に食わんから非常によろしいことなのだが、な

私「つまり君は……行く部隊を間違えた、と」

那佳「あ、あはは……」

居心地悪そうにした黒田がぽりぽりと頬を掻く

「これはまた困ったお嬢さんだね」

カーラが彼女らしい含み笑いをしながら喋る

おいおい、君とてまだ少女ではないか

那佳「あの、そちらの方達もノーブルウィッチーズの?」

私「ああ、その通りだ」

マリアン「私はマリアン・E・カール。リべリオン海兵隊大尉だ」

キリッとした顔つきで、先陣を切るマリアン

ジェニファー「私はジェニファー・J・デ・ブランク。同じく海兵隊大尉です」

カーラ「カーラ・J・ルクシック。残念ながら私は海兵隊じゃなく、ブルーレッグスの中尉だよ」

那佳「マリアンさんとカーラさんとジェニファーちゃんですね!覚えましたっ!!」

ジェニファー「ちゃん!?」

ジェニファーが素っ頓狂な声を上げる

さすがに初対面の相手にちゃん付けされていては溜まったものではない

……が、わかる!わかるぞ黒田君!キミの気持ちも!

確かにジェニファーは『ちゃん』だ!!

那佳「ご、ごめんっ!つい……うっかり」

ジェニファー「あ…え…えっと、大丈夫です、慣れてますから!」

マリアン・カーラ「「慣れてる…ねぇ?」」

ニヤけ面のマリアンとカーラが全く同時に、ジェニファーを小突いた

ジェニファー「な、なんなんですか二人とも!」

ズビシッ!とジェニファーは二人に人差し指を突きつける

とりあえず私は面白そうなので傍観することにした

マリアン「いや?別に?」

カーラ「ただジェニファーはかわいいなぁ、と思って……な?」

マリアン「ああ、そうそうその通り」

全くもって同感だぞ、二人とも!

ジェニファー「う……!う……!う……!…っ大尉~~~~~っ!!!」

がばっ!とジェニファーは私に抱き着く

おおよしよし、いい子だいい子だ

マリアン「あっ!ジェニファー、お前!ずる……何で大尉殿に抱き着いているんだっ!私も抱きつきた……大尉殿に迷惑だろ!」

カーラ「マリアン君、本音が漏れているよ?」

マリアンが鬼気とした表情で私に抱き着いているジェニファーに迫る

途中何かを言い直していたようだが、あいにく私の胸の中で、ひどいですひどいです!などと愚痴をぶちまけているジェニファーの声に覆われ、聞き取れなかった

黒田「………ぶっ」

黒田「あっはっはっはっ!!」

私「?」

黒田「あなた達すっごく面白いですね!扶桑の漫才みたいです!」

けらけらと黒田が腹を抱えて笑っていた

……確かにこの状況、他者から見ればいささか奇妙かもしれない

それと漫才か……私も一度扶桑で見たことがあるがいやいや中々楽しめた

改めて扶桑語を学んでて良かったと実感したものだ

黒田「あ、私は黒田那佳扶桑陸軍中尉!よろしくお願いします!」

黒田が三人に向けて、びしっ!と何処か可愛げのある敬礼を行う

軍隊の作法も、彼女の魅力を引き立てる一つと化していた

私「ははははっ……君の方こそ、扶桑の貴族様かと思ったがずいぶんと陽気な人間ではないか」

那佳「え?あはは……えーっと……」

私「……話は我が基地に戻ってゆっくりするとしよう」

私「そのストライカーも壊れているのだろう?治る間ディジョンでゆっくりするといい」

那佳「ホントですか!?ありがとうございますっ!!!!!」

これで少しの間だが、基地が一層賑やかになるな。結構結構!

……さて……と

私「………司令、私だ。対象の保護に成功、これより基地にエスコートする……それと、機体の回収班を回しておいてくれ、オーバー」

これで、よし

私「それでは諸君!基地に帰投するぞ!」

「「「了解!」」」

那佳「あ、あの……私はどうすれば?」

彼女はちらと煙を吹きだしているストライカーを見ながら、不安げに呟いた

私「ん?……ああ、心配せずともよい」

那佳「え?それってどういう――――」

ひょいっ

那佳「ふへっ!?」

変な声を上げる黒田……ふむ、ずいぶんと軽いな

ジェニファー・マリアン「っ!!!!!!!!」

那佳「あのあのあの私さん!?いったい何をしていらっしゃるのでしょうか!?」

私「何?見てわからんのか?……お姫様抱っこだ」

那佳「あ、そうですか……じゃなくてですね!」

私「心配せずとも君は軽いから何も問題ないぞ、黒田君」

それにたとえ本当でも、一人の少女に重いなどと言うのは礼儀作法以前に一人の男性として失格だ

ジェニファー・マリアン「「問題大有りですッ!!!!!!!!」」

ジェニファーとマリアンが声を揃えて私に迫る

……一体どうしたのだ怖い顔をして?

ジェニファー「大尉殿!お言葉ですが黒田中尉はまだうら若き少女!」

ずいっ!とジェニファーが顔を近づける

マリアン「純情可憐な乙女が、見ず知らずの男性にお姫様抱っこなどという少女の憧れ(笑)その物なことをされていいのでしょうか!?」

ずずいっ!とマリアンも私に迫る、凄い気迫だ

ジェニファー「いや!いい訳ありません!」

ジェニファー・マリアン「「ですから不肖ながら私たちめが、黒田中尉をお運び致します!!!!!!!」」

すごくすごい速さで私をまくし立てる二人。なんというコンビネーションだ!

私「あ、ああ、解った。二人がそう言うのなら彼女のエスコートは任せよう……」

彼女達の気迫に気圧され、少々どもってしまう

ジェニファー・マリアン「「はっ!」」

私は抱えた黒田を、彼女達に任せた

その時カーラはと言うと……爆笑していた

……よく笑う奴だ

私「……よっ、と」

黒田を地面に降ろす、もちろんゆっくりと優しく、繊細な動きで、だ

那佳「あっ………」ボソッ

ジェニファー・マリアン「「なに残念そうな顔してるんだッ!!(ですかッ!!)」」

那佳「えっ!?べ、別にそんなことないよっ!!」

私「?……どうした三人共?」

三人「なんでもありません!!!!!!」

急に三人が声を荒げた

どうやら二人に何かを言われたようだが小声だったらしく、何を言われたのかは私には知る由もない

私「そ、そうか…まあいい……ならば改めて皆の衆よ!我らが城に帰還するぞッ!!」

「「「「はいっ!!!」」」」

こうして……奇妙な一団にまた一人、奇妙なメンバーが加わったのであった……
最終更新:2013年03月30日 01:28