~病室~


 ミーナ「なんなのこれ・・・・・・。」

 まず、ベッドの上に鎮座する狐色の丸い物体、これを物体Aと呼称する。
 その物体Aに縋りつくエーリカと引き剥がそうと奮闘するバルクホルン。
 これが現在、ミーナの眼前で展開されている光景だ。

 正直よく解らない。
 だが傍観したままでは始まらないと判断し、とりあえず物体Aに縋りつく寝ぼすけエースを
 目標にすえる。

 ミーナ「お は よ う フラウ、トゥルーデも。」

 エーリカ「あー・・・・・・ミーナ、おはよ・・・う!?」

 バルクホルン「お、おはようミーナ。」

 実ににこやかに挨拶したはずであるにも拘らず、相手の表情は引き攣り気味である。
 エーリカに至っては一瞬で目が覚めてしまったらしい、何故かは謎であるが。

 ミーナ「フラウ、とりあえず早く着替えてきて、もう直ぐ朝食の時間よ?」

 エーリカ「わ、わかったよ!」

 自室から持ち込んだのであろう枕を抱え、脱兎のごとく病室から飛び出して行った。
 普段からこれぐらい寝起きが良ければいいのに、とミーナが思うのも仕方のない事だろう。

 ミーナ「トゥルーデ、一体なにがあったの?」

 バルクホルン「私も朝食の前に僕少尉の様子を見ておこうと思ってな。
        来てみたらハルトマンが一緒に寝ているのを発見して、とりあえず起こそう
        としたんだ。
        そしたら先に僕少尉が起きてしまってな。
        いきなり人がいて吃驚したのか、尻尾を出して丸まってしまったんだ。
        あとは見ての通りだ。
        悪い事をしてしまった。」

 バルクホルン曰くこの物体A、どうやら僕らしい。
 今は毛並みのい良い尻尾で完全に外部から隔離されているのが現状だ。
 たしかに防御力は高そうである。
 だがこの状態を解くには少々骨が折れるかもしれない。

 ミーナ「そう、解ったわ。
     トゥルーデも先に食堂に向かっててもらえる?」

 バルクホルン「ああ、宮藤たちにも少し遅れると伝えておくよ。」

 ミーナ「ええ、お願いね。」

 バルクホルンが退室し、病室には物体Aこと僕とミーナの二人きりとなった。
 とりあえずベッドの淵に腰掛け、黄金色の毛並みを撫でてみる。

 ミーナ(これは・・・・・・手が離せないわ。)

 その毛並みはとても柔らかく、艶やかで滑る様な手触りを伝えてくる。
 ハルトマンがなかなか離れなかったのも頷けると言うものだ。

 ミーナ(顔をうずめたくなってしまうわね。
     ・・・・・・少しだけならいいかしら。)

 と、ミーナが考えたときには既に眼前十数センチの所にまで顔を接近させていた。

 ここで物体Aがもぞもぞと動き、中から尻尾を掻き分けて僕が顔を覗かせる。
 そこは丁度ミーナが顔を近づけていた所だ。
 図らずも数センチの距離で見詰め合う事となってしまった二人。
 鼻先が触れそうである。

 その状態が十秒ほど続いた後、先に動きを見せたのは僕だった。

 僕「あの、オハヨウゴザイマス・・・・・・。」

 ミーナ「・・・・・・え、あぁ。
     おはよう。」

 僕「・・・・・・ぇぅ。」

 至近距離は少々耐え難いのか、半分ほど顔を引っ込めてしまった。
 まだ警戒は続いているらしく、落ち着かない様子だ。

 ミーナ「・・・・・・(なにこのカワイイイキモノ)
     お、驚かせちゃったかしら。
     ごめんなさいね?」

 僕「ぅ~・・・・・・。
     いえ・・・・・・大丈夫です。」

 とは言ったものの、未だに居心地悪そうに鼻から上だけ顔を覗かせた状態だ。
 ミーナはそんな僕の頭に手を置き、優しく撫で始める。

 ミーナ「昨日は大変だったけど、よく頑張ってくれたわね。
     結構な難敵だったみたいだけど、おかげで助かったわ。
     でも、あまり無茶しちゃ駄目よ?」

 僕「はい・・・・・・んぅ。」

 撫でられるのが心地良いらしく、僕は目を細めてされるがままとなっている。
 そして、ようやく緊張も解れたのか、体を包んでいた尻尾もほどけて小柄な体が露になった。

 ミーナ(これは・・・・・・マズイ、マズすぎるわ!)

 何やらマズイ事になってしまったらしい。
 ちなみに今の僕は成人用の病室着に身を包み、ぺたりとベッドに座り込んだ状態だ。

 サイズが合ってないせいか服が少々肌蹴ており、左肩から胸元までが大きく開かれている。
 さらに、少し前屈みになっているせいで白い素肌と幾許かの傷跡が見て取れる。
 付け加えるとすればこんな所だろうか。

 そんな状態で目を閉じて撫でられる感触に身を任せているのが現状だ。
 確かに少々無防備すぎるかもしれない。

 ミーナ(誘っているの?誘っているのね?
     ・・・・・・お持ち帰りしちゃおうかしら。
     いえ、むしろ此処で頂き―――。)

 宮藤「おはよう、僕君。
    ミーナさんもおはようございます。」

 リネット「おはようございます、ミーナ中佐。
      おはよう、僕君。」

 ミーナが慌てて入り口の方を見ると割烹着姿の宮藤とエプロン姿のリネットがいた。
 極めて危険な思考を巡らし始めていたミーナだったが、結局は二人によってその欲求を発散
 させる機会を逸してしまった。

 ミーナ「お、おはよう、二人とも。(あ、あぶなかった)」

 僕「おはようございます、宮藤軍曹、ビショップ曹長。」

 リネット「リーネでいいよ、階級とかもいらないから。
      って、あの、えーっと……。」

 宮藤「私も階級は付けなくていいからね?
    あ、玉藻さん、おはようございます。」

 僕「あぅ……、玉藻おねーちゃん、おはよう。」

 玉藻「おはようございます。
    お二人には初めまして、ですね。
    僕の使い魔の玉藻と申します。」

 ミーナが向き直ると、ベッドの上には僕を膝に乗せて肌蹴た服を整える妖弧の姿があった。



~食堂~


 バルクホルン「で、ハルトマン。
        なんで僕少尉のベッドにお前が寝ていたんだ?」

 納豆をこねつつバルクホルンが問う。

 ちなみにエーリカに因る『病室侵入事件』は既に周知となっており、現在バルクホルン大尉
 による尋問が慣行されている。
 周りの反応は、呆れ、妬み、興味、等様々である。

 エーリカ「えー、オトメの秘密をこんなトコで話すなんて……ィヤン♪///。」

 などとの給いつつ顔を赤らめるエーリカ、はぐらかす気なのはみえみえだ。
 しかし、そんな事で引き下がるバルクホルンでは無い。

 バルクホルン「何がオトメの秘密だ!!。
        第一、いくら幼いからって寝床に侵入するとは。
        貴様それでも―――」

 ミーナ「おはよう、みんな。」

 バルクホルンがヒートアップし始めた所でミーナが食堂に入ってきた。
 騒がしくなっていた食堂もミーナの登場によっていくらか落ち着きを取り戻す。

 坂本「おはよう、ミーナ。」

 ペリーヌ「おはようございます、ミーナ中佐。」

 シャーロット「おはよう、中佐。」

 ルッキーニ「おはよー。」

 サーニャ「おはようございます、中佐。」

 エイラ「オハヨー、中佐。」

 エーリカ「モグモグ」

 バルクホルン「ミーナ、僕少尉はどうだったんだ?」

 ミーナ「なんとか落ち着いてくれたわ。
     今は二人と一緒に食事中でしょうね。」

 恐らく二人とも気を使ったのであろう。
 宮藤とリネットは此処では無く病室で食事をとるらしい。

 シャーロット「そう言えば、宮藤が別に何か作ってたな。」

 ルッキーニ「なんだろうねーアレ。」

 坂本「おそらく、雑炊か何かだろう。
    体力の落ちている時には消化に良い物を食べさせた方が良いからな。
    扶桑では、床に伏せっている者には粥や雑炊を食べさせるのが一般的なんだ。」

 一同「へぇー」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 芳佳です。

 只今、僕君とリーネちゃん、そして玉藻さんと一緒に朝ごはんを食べています。

 そう言えば、一部の肉食動物の母親が子供に食事を与える場合には、まず母親が獲物の肉を
 咀嚼して柔らかくしてから子供に食べさせるそうですね、口から口に直接。

 ……。

 ええ、失念してました。
 玉藻さんは狐です、そして僕君は人間です。
 でも、親子のような間柄な訳で……。

 何が起きているのかは以下のリーネちゃんのコメントを持ってお察し頂ければ幸いです。



 リネット「え、えっちなのはいけないとおもいますっ!!」


 僕君……愛されてるね♪
 おぉぅ、舌まではいってるよ……。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一同「ごちそうさまでした。」

 朝食も食べ終わって食後のお茶を飲み始めた頃、再びバルクホルンが問い始めた。

 バルクホルン「さて、改めて訊くが何でハルトマンは僕少尉と一緒に寝てたんだ?」

 エーリカ「えー、またそれ訊くの~?
      ……まぁ、ご飯も食べ終わったしいいかな。」

 坂本「なんだ、まるで朝食前だと都合が悪かったみたいだな?」

 エーリカ「あー、てゆーか朝からお通夜色の雰囲気っていうのに叩き込みたくなかった
      だけなんだけどね。
      ちょっと繊細なのもいることだし、いまは病室だけど。」

 今度ははぐらかす事は無く答えるつもりらしい。
 しかし気は進まない様子だ。

 エイラ「ナンダそれ、また重い話しナノカヨ。」

 エーリカ「まぁねー、それが昨日に―――」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


~病室~

 こんばんは、エーリカ・ハルトマンです。

 只今、僕少尉の寝てる病室にお邪魔してます。
 と、言うのも少々事情がありまして。

 坂本少佐曰く、僕少尉は添い寝したら巻き込まれるぐらい寝相が悪いそうで。

 まぁ、ベッドに入って朝になったら床の上だったっていうぐらい寝相の悪い自分としては
 気になる訳ですよ。
 他人の寝相と言うものは。

 さて、僕少尉の寝姿拝見っと。

 僕「・・・・・・う・・・っく・・・・・・うぅ・・・・・・いや・・・だ・・・いっちゃ・・・・・・やだ・・・・・・」

 ……んー、ちょっと予想外。
 ってゆーかメチャクチャうなされてるよ、この子。
 しかも泣いてるし。

 最早寝相が悪いってレベルじゃない。
 もしかしてこれが毎晩?
 だとしたら、まともに寝れた事なんて無いんじゃないの?

 エーリカ「一体どうしたらココまで酷くなるんだよ……。」

 そうこうしている内に、手が宙をさまよい始めた。
 まるで何かを追い駆けているみたい。

 思わず手を握ってしまった。

 僕「・・・隊長・・・・・・」

 隊長・・・・・・?
 ああ、前の部隊のか。
 そう言えばこの子を残して戦闘不能になったんだっけ。
 話しによれば、この子が戦線に居たのは7~8歳の頃だ。
 そんな頃に仲間の墜されるところを目の当たりにして、それからはずっと一人。
 支えてあげる人も居ないんじゃぁこうなっても仕方ないかな。
 ってゆーか使い魔とやらは何してたのさ。

 むぅ、それにしてもしっかりと手を握りこまれてしまった。
 放してくれる気配はまったく無いね。
 準備しておいて良かったよ。

 エーリカ「……仕方ないなぁ。」

 いつまでもこうしてる訳にも行かないし、かといってほっとくほど薄情にもなれない。
 ちょっと言い訳臭い気もするけど、そんな感じで多少の事には動じないだけの覚悟を完了。
 枕を置いて隣に侵入。

 では、おやすみなさい……。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 エーリカ「―――っていうことがあったんだよ。」

 一同「……。」

 水を打ったように静まり返った食堂、皆一様に絶句している。
 エーリカはそんな彼女らを見渡して軽くため息をついた。

 エーリカ「まぁ、あの二人が席を外してたのは幸いだったね。
      人の死に目に遇った事の無い子たちにはちょっとヘビーな話しだし。」

 ミーナ「それは、たしかにそうね。」

 坂本「まぁ、この隊では未だに死者は出ていないからな、幸いな事に。
    宮藤の治療魔法の効果も大きいが。」

 バルクホルン「ふむ、そういうことか……気を使わせたな、しかしだ。
        その割には随分と食い下がっていたな?」

 エーリカ「え~、だってあの子すっごくやわこくってぬくいんだもん。
      いや~もう抱き心地がいいもんだから放しがたくってさ~。
      しかもだよ、あの子ってば擦り寄ってきてしがみついてくるのよ仔犬みたいにさ。
      これがまたカワイイのなんのって。
      いや、あの子の場合は子狐か。」

 一同(そんなにかわいいのか……。)

 ここにきて鉛のように重かった空気が一変、なんとも気の抜けた物になった。
 同席していた者達の表情も和らいでいく。
 人の生死に関る話題など続けて欲しくないのが本音なのだろう、口に出す事は無くとも。
 この辺りの切り替えはムードメーカーとしては流石と言ってもいいかもしれない。

 エーリカ「おかげで久しぶりにベッドの上で朝を迎えられたよ。
      いや~、何でかしんないけど昨日はよく寝れたなー。」

 ペリーヌ「それは単に、終始ベッドの上で睡眠をとれたと言うだけの事ではありませんの?」

 エーリカ「……かもしんない。
      う~ん、やっぱり僕君には私のトコに来てもらった方がいいかなー。
      主に私の安眠のために。」

 だが少々やり過ぎた。
 ここで先日の『僕少尉と相部屋権争奪論戦』が再燃したのである。

 エイラ「チョットマッター!」

 サーニャ「……まったー。」

 まず異を唱えるのはエイラとサーニャの二人。
 対抗意識は充分に有る様だ。

 エイラ「そんなに安眠したけりゃ抱き枕でも買えばイイダロ。」
 サーニャ「コクコク」

 エーリカ「うっ……。」

 エイラ「それに、ルーズすぎる生活習慣に巻き込まない保障ハ?」
 サーニャ「コクコクコク」

 エーリカ「ううっ……。」

 サーニャ「ハルトマンさん……、お部屋、片付けられますか?」
 エイラ「無理ダナ。」

 エーリカ「グハァッ。
      トゥルーデェ~……。」

 形勢が極めて悪いと見たエーリカは、隣にいるバルクホルンに援護を求める。
 どう見ても自業自得だが。

 バルクホルン「お前は生活習慣を少し改めろハルトマン。
        しかしだ、私の所ならその様な心配はまったく無いぞ。」

 シャーロット「四六時中堅物と一緒じゃ息つまりそうだよなー。」
 ルッキーニ「なー」

 続いて話しに加わるのはシャーロットとルッキーニの二人である。
 こちらも充分にやる気はあるようだ。

 バルクホルン「なんだと?
        整頓された部屋に規則正しい生活。
        それのどこが息が詰まるというんだリベリアン?!」

 シャーロット「……真面目な話しな。
        あの子と相部屋になったとして、どう扱うつもりなんだ?」

 シャーロットも思うところが有るらしく、神妙な面持ちでバルクホルンに問う。
 問われたバルクホルンは少々面食らっている様子。

 バルクホルン「そ、それは当然、上官として寝食を共にしつつ軍の規律に則った生活と
        言うものをみっちり、それこそ我が子に教えるように仕込んでやるつもりだ。
        それが何かまずいのか?」

 ルッキーニ「その辺の事って、もうとっくに終わらせてるんじゃないかなー」

 バルクホルン「ムッ……。」

 シャーロット「それもあるけど。
        そんなことしたら、どんなに素養のある子でも潰れるだろ……。
        只でさえ心身ともにズタボロの状態で此処に来てるんだぞ。」

 バルクホルン「ムゥ……なら、お前ならどうするというんだ。
        お前も大尉であの子は少尉だ、上官と部下と言う関係以外にどういう
        付き合い方があるというんだ?」

 シャーロット「私は別に上官だの部下だのなんて気にしないけどね。
        私があの子にしてあげられる事なんて、良き友人になる事ぐらいさ。
        だけど、せめて力の抜きどころぐらいは作ってやりたいな。
        ルッキーニのいい遊び相手にもなってくれそうだし。」

 ルッキーニ「あの子が元気になったらいっぱい虫取りとか鬼ごっことかするんだ~。」

 バルクホルン「お前達も、もう少し規律と言うものをだな。
        しかし友人か……。
        ……確かに必要だ…だが……姉として……。」

 どうやらかなり揺らいでいるご様子。
 そんな彼女にエーリカが「がんばれー」などと声援を送るも聞こえてはいない様だ。

 ここで新たに参戦する者が約一名。

 ミーナ「でもやっぱり、もともと相部屋だった所にもう一人追加は厳しくないかしら。
     私の所なら広さも充分にあるし、ほとんど模様替えする必要もないわ。」

 エーリカ「えー、ミーナのトコはまずいんじゃないの~?」

 ミーナ「あら、どうして?」

 エーリカ「ミーナの部屋って、資料やら書類やら満載じゃん。
      中には機密のやつもあるんでしょ?
      そんな所にホイホイ連れ込んで大丈夫なの?」

 ミーナ「……やっぱり、まずいかしら?」

 一同「うん!」

 全員から一斉に力いっぱい頷かれた。
 そしてミーナはいじけ始める。

 ミーナ「そんなに全力で頷かなくてもいいじゃない……。
     私だってあんな可愛い子をぷにぷにしたりもふもふしたりこねこねしたりして
     癒されたかったのよ……。」

 そんなミーナの肩に手を置いて優しく語り掛ける人物が一人。

 坂本「ミーナ……。」

 ミーナ「美緒……。」

 坂本「疲れてるなら、そろそろ休暇でも取って羽を伸ばして来た方がいい。
    それに幼子に逆セクハラまがいの行いはまずいぞ。
    指揮官以前に人として。」

 ミーナは完全に止めを刺されたらしく崩れ落ちる。
 その様子を尻目に下手人は小さくガッツポーズ。

 ミーナ「そんなんじゃないわよ~……。」

 坂本「まぁ、ミーナの所はまずいかもしれないが、私の所なら何の問題も―――」

 ペリーヌ「なりませんわっ!!
      男女七歳にして同禽せずと申しまして、なにか間違いがあってからでは遅いでは
      ございませんかっ!!
      それに坂本少佐のお部屋には刀とか刀とか刀とか、子供の手の届く所に置いては
      いけない物がありますわ!!」

 ここにきて終始静観に徹すると思われたペリーヌが乱入。
 一気に捲くし立てた。
 流石の坂本少佐もやや押されぎみの様だ。

 坂本「そ、そう……か?
    しかし、私の所なら布団を一式追加すれば直ぐにでも入居可能なんだが……。」

 ペリーヌ「な り ま せ ん!!」

 坂本「おぉぅ……。」

 流石に勢いに押されきったのか、坂本美緒が戦線より離脱。
 事態は混迷を極めつつある。

 ルッキーニ「じゃー、ペリーヌは誰のトコならいいのー?」

 ルッキーニの一言で、視線がペリーヌに集中した。

 この中で僕の受け入れを表明していないのはペリーヌのみである。
 彼女の推薦を得られれば、大きなアドバンテージを取れるかもしれない。
 皆はそう考えていたが、そうは問屋が卸す事は無かった。

 ペリーヌ「私は、先日も申上げた通り。
      個室に入っていただくべきだと考えますわ。
      先日のお話しでは、ずいぶんと強力な使い魔をお持ちのご様子。
      しかも人の形も採れて単独での行動も行えるとなると、実質二人を受け入れる
      形になりますわ。
      流石に定員は超えるでしょう。」

 面倒見も良い様ですし、と締めくくる。

 此処まで決め手を打つことの出来た物はおらず、事態は振り出しに戻った。
 全員が次の一手を考えている所に、宮藤、リネットの両名が食堂へと戻ってくる。

 リネット・宮藤「た、只今戻りました……///」

 坂本「お、二人とも戻ったか……ん?
    どうした、二人とも顔を赤くして。」

 リネット「な、何でもないですぅ……。///」

 宮藤「いやー、ちょっと刺激の強い光景を目にしまして。///」
 リネット「よ、芳佳ちゃんっ……。」

 バルクホルン「刺激の強い……?
        ……僕少尉に何かあったのか?」

 宮藤「その~、朝食は玉藻さんが食べさせてたんですけど。
    食べさせ方が狐さん流のやり方だったんですよね。」

 一同「狐さん流?」

 皆一様に首をかしげる。
 そんな中、使い魔に狐を持つ一名が理解の色を見せた。

 エイラ「もしかして……口移しカ?」

 リネット・宮藤「そーなんです……。」

 宮藤「余にも自然にやってた物ですから一寸止める気にはならなかったんですけどね。
    アハハハ……。」

 リネット「僕君は一寸恥ずかしそうだったけど……。」

 一同沈黙、思い浮かべてしまったのか皆一様に顔が紅く染まっていた。
 そんな雰囲気に耐えかねたのか、ルッキーニが先の話題を二人にもふる。

 ルッキーニ「ねぇねぇ芳佳ぁ、リーネェ。
       いま僕を誰の部屋に入れるか話してたんだけどー。
       二人は誰の部屋がいいとおもう?」

 宮藤「え、またその話しなんだ……。
    私達のトコがもっと広かったらよかったんだけどね。
    玉藻さんも来るし。」

 リネット「でも、あの雰囲気がいつもって言うのはちょっと……。」

 一同「……。」

 それから様々な意見が出されるも、結局決め手を打てた者は居らず、僕少尉の希望次第
 という実に消極的な結論を持って論戦は幕を閉じた。



~基地内・桟橋~


 丸一日の遅れで到着した日照丸から急ピッチで物資が降ろされていく。
 かなりの量の荷物のため、基地内のウィッチ以外のほぼ全員が搬出と整理に駆り出されていた。
 姿が見えないのは当番のレーダー員と通信兼管制員、後は衛兵ぐらいのものだろうか。

 そんな中、扶桑海軍の仕官服を身に纏った長身の男を先頭に新任の兵と思われる男達が
 整列していた。
 男達の前にミーナと坂本と整備兵長が立ち、鋭い視線を巡らす。
 新任者達はその視線に顔を強張らせている様子だが、仕官服の男は気にしていない様子だ。
 男が気合の入った大声で号令を懸ける。

 俺「気をーつけぃっ!!」

 ザッ!

 俺「敬礼っ!!」

 一糸乱れぬ動作で敬礼を送る。
 受け取ったミーナと坂本と整備兵長も返礼を送った。

 ミーナ「どうぞ、楽にしてください。」

 俺「直れ、休め!!」

 全員が休めの体勢をとった事を確認してさらに声を張り上げた。

 俺「本日、マルキュウサンマルより、俺特務少尉以下、通信兼管制員一名、電探員一名
   飛行脚整備員三名、局地戦闘飛行脚・震電二式甲型及び乙型運用試験班員六名、
   第501統合戦闘航空団ロマーニャ基地に着任いたします。」

 ミーナ「野郎大尉が居られないようですが、どちらに?」

 俺「野郎大尉は先日の暴挙、並びに薬物不法所持の現行犯により拘束、まもなく……。」

 野郎「タスケテー」

 俺「失礼、只今積み降ろし中です。」

 三人が船の方に目を向けると、随分と手の込んだ縛り方(亀甲縛り)で身動きを封じられた
 野郎がクレーンで船から降ろされる所だった。

 三人「ブッ……。」

 ミーナ「ププ……コホン、解りました。
     マルキュウサンマル、俺特務少尉以下十一名の着任を認めます。
     後、連合軍総本部議会扶桑代表、山本五十六中将閣下より、書類と運用試験副責任者
     への封書が有ります。
     確認願います。」

 ミーナから俺に書類が渡される。
 内容を確認しニヤリと俺が笑った。
 そして、封書を開く。

 封書を読み進めるうちに困惑の色に染まっていく俺の顔。
 なにやらとんでもない内容だったご様子。

 ミーナ「あのー、なにか御座いましたか?」

 俺「あー、こちらも命令書だった様です。
   内容は、野郎大尉が任務遂行に不適格と判断された場合。
   使用可能な階級の最上位の物に固定し。
   運用試験責任者代行、並びに第501統合戦闘航空団の指揮下にて試験航空歩兵の任を全うせよ。
   との事です。
   他にも細々と有りますが、それはまた後ほど……。」

 ミーナ「はぁ……、そうですか。
     それでは新任の皆さんは整備兵長に、俺特務少尉は私達に着いて来て下さい。」

 新任者一同「了解!!」
最終更新:2013年03月30日 01:39