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 操縦俺「ストライク11、ディス・イズ・ストライク21。コピー?」
 整備俺「芳佳さん、聞こえてたら返事してくれ!」

 俺達は、機上無線で芳佳を呼び出していた。
 しかし、無線機のレシーバーからは、耳障りなノイズばかりが鳴り続ける。

 整備俺「あかん。聞こえてねえ。電波状況が悪すぎる」
 操縦俺「もう少し接近します。呼びかけを継続してください」

 操縦俺は、旋回半径を狭め、目標物との距離を縮めた。

 整備俺「くそ…、聞こえてたら返事してくれ!」
 何度目かの呼びかけのあと、ようやくレスポンスが返ってきた。
 芳佳『整備俺さん…? ひょっとして、あの輸送機ですか…?』
 整備俺「ああ、そうだ」

 整備俺「芳佳さん、司令部からあんたの撃墜命令が出た」
 芳佳『違うんです、わたしはそんな…!
   信じて下さい、整備俺さん。このネウロイは、今までのネウロイとは違うみたいなんです…!』
 整備俺「俺達も、隊長も、芳佳さんを撃墜するつもりはない。
    隊長や、みんなの思いを無駄にしないでくれ。お願いだから、大人しく帰ってきてくれ…!」
 芳佳『お願いです、整備俺さん。私、どうしても確かめたいんです…!』

 くそ、会話が噛み合ってねえ。
 俺達と芳佳の間で、要領を得ないやりとりが続いた。

 ――このとき、俺達は、どうして芳佳の話に耳を傾けてやれなかったのだろうか。
 上級司令部からの撃墜命令に対して、上司の意図を汲み、仲間として芳佳を庇うということ。
 そのために、仲間のもとに連れ戻すということ。それらのことだけに、俺達は囚われてしまっていた。
 ――視野狭窄。
 俺達は、年長者として、上位者として、やってはいけない過ちに陥っていた。

 今思えば、不審な点が多すぎる。
 相手がネウロイ――つまり敵――ならば、何故こちらを攻撃してこないのか。
 今回のネウロイ(?)は、俺達を無視しているようだったので、俺達は、その存在を忘れていた。

 『宮藤さん、操縦俺さん。こちらは501リーダーです』
 ノイズ交じりのラジオは、ミーナの声だった。

 ミーナ『宮藤さんとネウロイの対処はこちらが引き継ぎます。
    整備俺さんと操縦俺さんは基地に戻って待機していてください。
    ただし、別名あるまで即応態勢を維持すること。いいわね?』
 操縦俺「ラジャー。ミッションコンプリート、RTB」

 操縦俺は操縦桿を倒して反転。
 俺達は、機体を帰投進路に向けた。


――
――――

 操縦俺「芳佳の奴、帰ってきてくれますかね?」
 整備俺「ふん。家出した子供というのは、夜中にこっそり帰ってくるものだと相場が決まっている」
 操縦俺「でも、バレてないと思ってるのは本人だけで、大抵はバレバレなんですよね」
 整備俺「そういう事さ。まあ、茶でも飲みながらゆっくり待とうじゃないか」

 整備俺は、水筒から湯呑みに扶桑茶を注いだ。
 茶はすっかりぬるくなっていたが、それが、コックピット内の雰囲気と妙にマッチしていた。
 整備俺「旨い」

 ミーナ自らが出撃し、陣頭指揮を執っているということが、俺達に安心感を抱かせていた。
 だけど、その“ウィッチのみんなに任せておけば安心だ”という思い込みが、俺達を死ぬほど後悔させることになった。

 ほぼ真正面、はるか遠くのほうで、何かが一瞬きらめいた。
 俺達の輸送機の音ではない、遠雷のような爆音。
 1970年代の暴走族がパレードしているような、けたたましいエンジン音は――。

 整備俺「パルス・ジェット!?」

 至近距離で通過。
 かなりの大型機、おそらく戦闘機だろう。F-15よりも大きいかもしれない。
 その、特徴的な後退翼のシルエットだけが辛うじて確認できた。

 操縦俺「…っく……!」

 交錯時の衝撃で、Ju52の機体が激しく揺れた。コントロールを失い、きりもみ状に落下するJu52。
 機体の各部から、不気味なきしみ音が鳴る。
 整備俺「エンジェル20、19、18、17、……!」
 操縦俺「――! ――――!」
 出力全開、海面に向かってほぼ垂直に降下。
 速度が乗り、機体が少し安定したところで、操縦俺はラダーを蹴り飛ばした。 
 整備俺「10、9、8、7、……!」
 闇に染まる海面は、確実に迫ってきている。

 きりもみが止まったところで、操縦俺はゆっくりと操縦桿を引き、
 細心のコントロールで機首を上げた。

 整備俺「.7、.6、.7、エンジェル.8! うひょ――っ!」
 奇声を上げる整備俺の隣で、操縦俺は大きく息を吐きながら親指を立てた。
 操縦俺「カールスラントの急降下爆撃は世界一イィィィッ!!!!!」

 いや、これ輸送機だし!
 爆撃とかしてないし!
 このテンションは、あれだ。
 徹夜明けの妙なハイテンションによく似ている。
 つまり、ヤキが回っていたのはウィッチーズだけではなく、俺達もだったということだ。

 整備俺「くそ…。引き返すか?」
 あの不明機が飛んで行った方向には、間違いなく、芳佳やミーナがいる。

 操縦俺「いえ。引き返すのは先に基地の状態を確認してからにしましょう」
 あの不明機は、501基地の方角から飛んで来た。
 隊長以下、戦闘可能なウィッチのほとんどが出撃してしまった現在、基地に残された戦力は手薄だ。
 あの不明機が、もし、新手の敵であったら――最悪の状況も考えられる。

 現在の俺達の位置は、かなり基地の近くまで来ている。
 もし、あれが本当に敵機だったとしても、ウィッチが簡単にやられるとは思えない。
 そして、それを急いで追いかけてたとしても、俺達が何か出来る訳ではない。
 よって、俺達は、まず基地へのアプローチを試みることにした。
最終更新:2013年03月30日 01:53