ゆっくりペースだった午前中とは対照的に、午後は急ぎ足の日程となった。

 俺達は、坂本に連れられ、午後イチの訓練を見学した。
 訓練参加者は、坂本の他に、芳佳、リーネ、ペリーヌの3人。
 坂本曰く、芳佳とリーネは新人のため強制参加だが、
 ペリーヌは自主的に参加しているとのことであった。
 俺達の姿を見た途端、ペリーヌが明らかに不機嫌な表情をしたが、気にしないでおこう。

 坂本の実施する訓練項目は、基礎体力練成。
 体操から始まり、長距離走、筋トレ、短距離走、そして再び長距離走、体操。
 20代半ばの若手軍人である俺達から見ても、ハードな訓練だった。

 芳佳「」
 リーネ「」
 ペリーヌ「」
 坂本「はっはっはっ、まだまだだな貴様らも。このぐらいで倒れるとは情けないぞ!」

 訓練が終わり、倒れる若年ウィッチらの中心で豪快に笑う坂本。
 坂本は、3人を引きずり、風呂へ行ってしまった。
 曰く、訓練後の風呂は各別らしい。
 知らんがな。
 幹部候補生学校とか、航空学生とかでも、そんな時間は無かったからな。

 ぽつんと取り残された俺達。操縦俺が、ぽつりとつぶやいた。
 操縦俺「煙草、喫いたいっすね…」
 整備俺「この際、禁煙したらどうですか?」
 操縦俺「うーん。酒と煙草が無ければやってられない時もありますからね?」

 行くあても無かった俺達は、とりあえず図書館で時間を潰すことにした。
 しかし、図書館に向かう途中、エンジンの爆音が聞こえた。
 レシプロ・エンジン特有の爆音だが、飛行機のものじゃない。多分、バイクか何かだ。
 音のする方へ行くと、女の子が、下着姿でバイクをいじっていた。
 ――で、なんだこの胸は。
 正直、今まで一番目の遣り場に困ったぞ。

 シャーリー「シャーロット・E.イェーガー大尉だ。堅苦しいのは苦手だ。シャーリーでいい」
 イェーガー?
 チャック・イェーガーの親戚か何かか?
 ちなみに、シャーリーはバイクが好きで、それ以上にスピードが大好きらしい。

 シャーリーと話していたら、もう一人、ツインテールの女の子が飛び跳ねながらやってきた。
 どう見積もっても小学生ぐらいだ。
 ルッキーニ「フランチェスカ・ルッキーニ、少尉だよ!」
 操縦俺「(どう見ても小学生ぐらいじゃないか…)」
 それでも、階級は整備俺と同じ。どうなってるんだ、この世界は。

 色々話していたら、課業終了ラッパが鳴ったので、俺達は2人と一緒に食堂に向かった。
 知り合いが増えるというのは、良いことだ。
 朝メシよりも昼メシ、昼メシよりも晩メシのほうが、楽しかった、と思う。

 晩メシを済ませた俺達は、医務室から引き払い、
 (寝ゲロの件については平謝りすることになった)
 坂本の計らいで休憩室の一角に間借りすることになった。
 芳佳に案内され向かったそこは、障子で区切られた6畳の和室だった。

 整備俺「なんか、物凄く既視感を感じるんですが」
 操縦俺「整備俺さん、百里のとき、居室じゃなくて休憩室の和室を占拠してましたよね」
 整備俺「懐かしいとでも言えばいいのか…」
 百里の501SQ内務班からの呪いか。何のいやがらせだこれは。
 とりあえず、寝床の確保はできたから良しとするか。

 坂本から金を借り、BXで日用品を揃えた。
 今度、給料が入ったら返そう。

 大浴場を借りて一風呂浴び、畳の上に布団を敷く。
 その頃には、修学旅行みたいな気分を楽しむ心の余裕も出てきた。

 22:00、消灯ラッパ。
 整備俺「俺はもう寝ますよ…」
 操縦俺「じゃ、俺は外で一服喫ってから寝ます」

 操縦俺「(ひょっとしたら、)」
 整備俺「(今日の事は全部夢で、)」
 操縦俺「(明日の朝起きたら、元の世界に返ってたら…?)」
 整備俺「(どっちに転んでも、出来る事をするしかない、な……)」
 操縦俺「Zzz...」
 整備俺「Zzz...」
 ――こうして、俺達の長い1日が終わった。
最終更新:2013年03月30日 01:57