ミーナ「お2人には、魔力検査を含めた身体検査を受けてもらいます」
坂本「男でも魔力を持っている――つまり、ウィッチの素養がある人間は、ごく少数ながら存在する。
また、その場合、とても強力なウィッチである可能性がきわめて高い」
バルクホルン「貴様らがそんな魔力を持っているとは思えんがな」
ミーナ「ですが、一応、念のため魔力検査も受けてもらいます」
俺達「了解です」
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魔力検査の結果、俺達に魔力はゼロ。ウィッチの素養は無しであった。
坂本「ふむ。やっぱりとは思っていたが、残念だったな」
書類を指先で弾いた坂本の表情が、ほんの僅かに沈んだ。
坂本「ウィッチの数が1人でも増えれば、我々の負担も減ると思ったんだがな…」
マンアワー(労働力)の不足した現場がどれだけ大変なのかは、俺達も身にしみて知っている。
どこに行っても、現場は大変だ。
坂本「…あ、いや、何でもない。今のは忘れてくれ」
整備俺「…そうですか」
操縦俺「うーん、残念?」
整備俺「はン。俺は凡人だ。俺は凡人のままがいい」
感情を誤魔化すように笑う操縦俺と、複雑な表情をしながらも意外にあっさりしている整備俺。
ちなみに、身体検査の結果は2人とも健康状態良好、異状なしであった。
坂本「流石に現役青年将校だけあって、2人とも体は絞れてるな」
ふむ、という風に、口元に手を当てて頷く坂本。
坂本「まだ2人の正式な処遇も決まっていないんだろう。なら、一緒に体を鍛えてみるのはどうだ?」
バルクホルン「そうだな。少佐に叩き直してもらったらどうだ。その締まりのない顔も少しはマシになるんじゃないか」
整備俺「そうですねえ。考えておきますよ」
操縦俺「(この大尉さん、ずいぶん突っかかってくるな…)」
俺達に関する書類の束を見ながら、ああでもない、こうでもない、と言い合う3人。
そんな光景を見ている間に、いつのまにか時刻は16:30を回っていた。
ミーナ「終礼の時間ね。会議室に集まって頂戴」
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会議室にて終礼中。
坂本「――連絡事項は以上だ。最後に、新任士官を紹介する。
整備俺少尉と、操縦俺士官候補生だ。訳あって501で預かることになった」
ミーナ「それでは、お2人さん、どうぞ」
促されるまま、俺達は前に出た。
整備俺「整備俺少尉です。現在は23歳です。
原隊は…、扶桑国空軍、第*航空団……ということにしておいてください。
職種は航空機整備です。戦闘機と練習機の整備をやっていました。
軍に入る前は、大学で経済学と経営学を学んでいました。専攻は経営史でした。
他にも、国際関係や歴史といった分野も得意です。
ジュニア・ハイスクールとハイスクールの教員免許も持ってますよ。
進路のことや勉強のことなど、色々相談してくれたら嬉しいです」
操縦俺「同じく、扶桑国国防空軍、第*輸送航空隊、操縦俺士官候補生です。
年齢は25歳。職種は操縦で、1年半ほど輸送機に乗っていました。
空軍に入隊する前は、陸軍で1年間歩兵をやっていました」
整備俺「皆さんのなかで、知っている人もいるかと思いますが、
我々は、この時代の人間でもなければこの世界の人間でもありません。
至らぬことも多々あるとは思いますが、今までの経験を活かして皆様のお役に立ちたいと思います。
それでは、よろしくお願いします」
ミーナ「第501統合戦闘航空団“ストライクウィッチーズ”隊長、
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です。
お2人にはしばらくの間、隊付将校として実地研修をしてもらった後、
しかるべきポストで仕事をしてもらう予定です」
坂本「戦闘隊長の坂本美緒少佐だ。
同郷のよしみということで、困ったことがあればいろいろ頼ってほしい。
訓練にはいつでも付き合うぞ」
整備俺「ランニングならいつでも付き合いますよ」
トゥルーデ「ゲルトルート・バルクホルン。階級は大尉だ。業務に必要な事項は私の方から申し送っておく。
私は貴様らのことをまだ信用した訳じゃないからな。皆を傷つけるようなことがあったら絶対に許さんぞ」
整備俺「よろしくお願いします」
シャーリー「シャーロット・E.イェーガー大尉だ。堅苦しいのは苦手でね。シャーリーでいい。
リベリオン出身で趣味はバイク、好きなのはスピード。よろしくな」
操縦俺「俺もバイク好きですよ」
整備俺「俺は2輪より4輪のほうが好きだな」
シャーリー「今度、ツーリング行こうな」
整備俺「そうですね。面白い道があったら連れていってください」
エーリカ「エーリカ・ハルトマン。中尉だよっ!
わたしのことはエーリカでいいよ。未来人のお兄さんがた、よろしくね」
ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ。
せいぜい隊長や少佐から捨てられないよう頑張ってくださいまし」
サーニャ「サーニャ・V・リトヴィヤク中尉です。よろしく……」
操縦俺「(なんか眠そうだな…)」
エイラ「エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉ダ。サーニャは渡ないからナ」
整備俺「(勝手に言ってろよ…)」
ルッキーニ「フランチェスカ・ルッキーニ少尉だよ! ムシ好き?」
操縦俺「良いですね。虫捕りは得意だよ」
整備俺「俺は苦手だ…」
リーネ「リネット・ビジョップ軍曹です。一緒に頑張りましょうっ」
宮藤「宮藤芳佳軍曹です。何でも相談してくださいね」
ミーナ「以上、私を含む11名が“ストライクウィッチーズ”になります。
私たち隊員はみな家族です。この子たちのことも、よろしくお願いします」
坂本「以上で2名の着任挨拶を終了する。わかれ」
さて。
今回の着任挨拶で、501の隊員のうち、友好的なのかそうでないのか、はっきりと分かれたと思う。
シャーリー、エーリカ、ルッキーニ、リーネ、芳佳、そして坂本の6人は友好的だ。
バルクホルン、ペリーヌ、エイラは明らかに警戒している。
サーニャも身構えているが、リーネと同じように、慣れていくにつれ友好的になる可能性は高い。
バルクホルンに関しては、仕事に私情は持ち込まないタイプだと思うが、少々不安だ。
ミーナは保留、しばらく様子を見るといった感じか。
隊のトップいうことで、立場上中立的な態度を取らざるを得ないのだろう。
ただし、やや警戒傾向な気はする。
だが、初見で半数以上が友好的というのは、大きなアドバンテージと見ていいだろう。
少なくとも、俺達の居場所は確保できたということだ。
それだけでも、異世界での生活を始めるに際して、幾分か気は楽になった。
最終更新:2013年03月30日 01:59