格納庫の内部では、無線機とチャートを木箱に並べた簡易な指揮所が設けられ、
ミーナが、無線機のチャンネルを操作しながら、
シャーリーにコンタクトを取っていた。
ミーナ「シャーリーさん、聞こえますか? 宮藤さんとリーネさんも離陸しましたよ」
シャーリー『いっけねえ! ドーバーDC、ストライク01フライト、エアボーン』
警戒管制員『ドーバーDC、ラジャー。LOUD AND CLEAR、レーダーコンタクト。
ベクター1-2-0、ディセントANGEL-15』
シャーリー『ストライク01、ラジャー』
警戒管制員『ターゲット1-2-0、ヘッドオン200マイル、ANGEL-10』
シャーリー『ストライク01、ラジャー』
ミーナ「敵は超高速型ネウロイ“ヴィルベルヴィント”よ」
チャートに定規と鉛筆で線を引きながら、ミーナが顔を上げた。
ミーナ「目標は…、このまま進むと…、ロンドン!」
坂本「ロンドンだ! 直ちに単機先行せよ。シャーリー、お前のスピードを見せてやれ!」
シャーリー『シャーリー、ラジャー』
ミーナ「頼んだわよ、シャーリーさん」
開け放たれた格納庫の扉越しに、俺達は空を見上げた……、のだが。
ルッキーニがシャーリーのストライカーユニットを誤って破損させてしまい、
見様見真似でカタチだけ元通りにした事が発覚しちゃったりする。
整備俺「そういう事は、ちゃんと整備側にも伝えましょうね?
整備側としても、悪いようにはしないからさ。
機体側のトラブルに関しては、整備側の責任ってことになっちゃうんだけど、
運用側から一方的に責任を押し付けられるほど理不尽なことはないんだ」
このままシャーリーがストライカーユニットを飛ばし続ければ、良くて空中分解。
最悪の場合、魔導エンジンが吹き飛ぶ可能性もあるのだ。
坂本「シャーリー大尉、帰投せよ、繰り返す、直ちに帰投せよ!」
…応答、なし。
ノイズ交じりの空電が、スピーカーから虚しく流れる。
整備俺「あかん…聞こえてねえ……!」
ミーナ「宮藤さん、リーネさん、早く追いついて……」
坂本「繰り返す、シャーリー大尉、帰投せよ!」
坂本が無線に向かって叫んでいるとき、
海の向こうから、何かが破裂するような衝撃音が響いた。
坂本「何だ…!?」
ミーナ「シャーリーさん…!」
整備俺「これって、まさか、ソニックブーム…!」
整備俺は、失礼、と一言断りを入れて無線機の送信機を掴んだ。
整備俺「ドーバーDC、ストライク・オペラ。レーダーエコー、確認できますか?」
管制官『ストライク・オペラ、ドーバーDC。4エコー。1ネウロイ、3ウィッチーズ』
坂本「こちらでもシャーリー大尉の無事は確認した」
いつのまにか、眼帯を外していた坂本が振り返った。
普段は眼帯に隠された、紫色の瞳。
整備俺「(おい、中学2年生がこれを見たら大喜び間違いなしだな)」
そして、犬のような耳と尻尾が生えている。
…くそ、この状況で、いちいち突っ込んでられるか、馬鹿///
整備俺「先行進出した1機の速度、わかりますか?」
管制官『スタンバイ』
しかし、整備俺の交信は、シャーリーからの交信によって遮られた。
シャーリー「少佐、やりました! あたし、音速を超えたんです!」
操縦俺「マジで音速突破しやがった…!」
整備俺「冗談…だろ?」
ストライカーユニットって、一応、レシプロのプロペラ機なんだろ?
レシプロ機で音速突破なんて、物理的に不可能なはずなのだが。
坂本「止まれええええ! 敵に突っ込むぞ!」
シャーリー『……え? ええ!!?』
再び、轟音。今度のは、破裂音ではなく、爆発音だった。
リーネ『…敵、撃墜です』
ミーナ「シャーリーさんは?」
芳佳『…あ、大丈夫です! 無事です、シャーリーさんは無事です!』
警戒管制員『大型のレーダーエコー消失。残ったエコーは3つ、いずれもウィッチです』
整備俺「……だそうです」
その後、坂本が怒鳴り、ミーナが顔を赤くしていた。
シャーリー、芳佳、リーネの3人に何があったかは、俺達は何も知らない。
俺達は何も知らない。
何も知らない。
最終更新:2013年03月30日 02:00