雲も無く、下弦の月が優雅に笑う今日は、ラル隊長の誕生日だった。
夕食の席でのプレゼントも終わり、数名が執務室に集まっていた。
大人組となると、自然と酒が入る。
そこで、俺はカクテルを作っていた。
ラル隊長、ロスマン先生、熊さん、プンスキー伯爵。下原さんは厨房に。
たまにはこんな日もいいだろう。
ロスマン「シルバーブレットを」
俺「ただいま」
レモンを絞る。すると、グラスで氷をかりこり言わせていた
プンスキー伯爵が噴き出すように笑った。
クルピン「ねえ先生、それってボクへの当てつけ?」
ロスマン「それ以外に何があるの?銀の弾丸……この手を退けてくれる?」
クルピン「オオカミはボクだけじゃないのになぁ」
ニヤニヤとプンスキー伯爵は視線を横に。
その先には向かいのソファにかけるラル隊長。シェーカーの音が小気味良く響いた。
俺「あれ、ラル隊長はオオカミでしたよね?」
ラル「そうか、エディータは私の事が嫌いだったのか」
残念だと、ラル隊長はくつくつ笑う。
ロスマン「ああもう!あんたが余計な事言うから」
サーシャ「クルピンスキー中尉、喧嘩は―――」
クルピン「お祝いの席でお説教を聴く趣味はないよ」
ぐいっと熊さんのグラスを空け、伯爵がちらと俺を見た。
ああ、なるほど。
俺「お酒は嫌いですか?」
サーシャ「い、いえ、辛いものしかないので…」
テーブルに置かれた酒瓶はジン、ベルモット、サケにウオトカ。
どうやら彼女等の好みは辛口らしかった。
俺「シラバブなんてどうです。甘くて飲みやすい」
サーシャ「では、それを」
とくとくとミルクに葡萄酒と林檎酒を注ぎ始めると
執務室の扉が開き、おいしそうな匂いと共に下原さんが入って来た。
下原「ジャーマンポテトです。すみません、これ位しか知らなくて……」
ラル「充分だ。ありがとう。それに、下原の料理に美味いはあっても不味いはない」
サーシャ「そうですよ下原さん。さ、こちらにどうぞ」
クルピン「いやぁ上手いねえ…いたっ、違うよエディータ。料理のこと」
ロスマン先生に小突かれながら、プンスキー伯爵は陽気に笑う。
やがて、そろそろ君も飲むといいとラル隊長が言ったので素直に従い、ソファにかけた。
座りながらでも出来るし、何よりラル隊長の隣だ。
俺「何をお飲みに?」
ラル「ハイボールを頼むよ」
俺「ウイスキーのソーダ割りですか」
良く冷えたウイスキーはとろみがでる。
それが良い。氷を伝うウイスキーが何とも艶めかしい。
ラル「そういえば、君がプレゼントを買って来てくれたそうじゃないか」
ラル隊長はグラスに指を這わせ、俺を流し目で見る。
優雅だ。この人の所作全てが妖艶な気品を醸し出し
それは俺を狂わせる。
上着を脱いだ格好で、胸元がすこしはだけている。
谷間は酒に灯され紅が薄く彩られていた。
俺「みんな頑張ってますから、当然ですよ」
下原「…俺さん、鼻血出てます」
サーシャ「まったく、仕方ないですね」
ポーカーフェイスを決めたのに鼻血は出た。
ラル隊長がくすりと笑ったのがどうしようも無く悔しかった。
クルピン「無駄な抵抗はやめなよ俺君。揉めばいいじゃない」
俺「ニパのおっぱいを揉んでからと決めてるんです」
俺がそう言うとロスマン先生がばんとテーブルを叩いた。
腰のホルスターに手を掛け、俺とプンスキー伯爵を睨む。俺は鼻血が止まらない。
ロスマン「ッあんた達は!本当に撃ち込んであげる?」
クルピン「それが君の愛なら」
俺「おっぱいを揉ませてくれたら考えます」
クルピン「あれ、エディータに手を出したらお仕置きだよ?」
ロスマン「……隊長」
ロスマン先生は、付き合ってられないと言わんばかりにラル隊長に声をかけた。
彼女はすっと熊さんを見る。熊さんは立ち上がり、言った。
サーシャ「クルピンスキー中尉、俺さん。」
俺「ふぁい?」
クルピン「なんだい?デートのお誘い?」
サーシャ「徹夜で正座、しましょうか」
その日のハンガーはセ氏0°を易々と下回った。
冬来りなば、春遠からじ。
オラーシャの春はまだ遠い。
最終更新:2013年03月30日 02:29