その日、夜帰りになったプンスキー伯爵を迎えに行って、基地に帰った。
彼女がまだ飲み足りないと言うので、二人で飲むことになった。
俺「そんな夢を見たんですよ」
つい何日か前の、あの夢のような夢を一から話した。
嬉々として話す俺をプンスキー伯爵は憐れむような目をして見てきた。
堪らず俺は、
俺「でも俺は幸せです。なんせ夢にまで出てきてくれたんですから」
クルピン「…おめでたい頭してるね」
俺「プンスキー伯爵の頭の方が愉快ですよ。耳が生えるところとかが特に」
クルピン「君、馬鹿にしてる?」
俺「美しいと思います」
クルピン「ん、よくできました」
プンスキー伯爵は気分良さげに俺の頭を撫でると、器用に箸を使ってつまみを食べる。
クルピン「しかしこれおいしいね。なんだい?」
俺「鳥の唐揚げです」
クルピン「あれ、晩御飯に出てたっけ?」
俺「今日はいなかったじゃないですか」
そういえばそうだったね。と伯爵は中身なく言う。
こんにゃろう。襲撃が不安定になって慌ただしいのにひょいひょい遊びに行って。
それを迎えに行ったのだ。とんでもなく寒い中をかっ飛ばして。その所為で車両班に怒られて。
何度外に捨ててやろうと思ったか。
しかし気がつけば伯爵と二人で飲んでいる。
俺「寒かったです。外」
クルピン「君は犬のように忠実だね」
いきなりどうしたというのだ。
ビックリしてどうしたのかと聞くと、彼女はにこりと微笑んだ。
何故だかその日、鼻血は出なかった。素直に彼女を綺麗だと思った。
クルピン「この基地にいて、こんなに魅力的な子がたくさんいるのに、君は手を出さない。
盲目のようにニパ君を求めて……隊長との約束は、そこまでして守る価値があるかい?」
プンスキー伯爵はからかうように言った。笑わない目をして。
俺「天使に焦れた哀れな男。それだけですよ」
そう言うと俺君は立ち上がり、結露した水がいっぱいについたアイスペールを持って厨房に向かった。
厨房からは、俺君の頭に巻いてある手ぬぐいがゆらゆら見えた。
クルピン「…フラれちゃったか。ま、期待もしてなかったけど」
すりガラスで出来たグラスに、ついと結露の滴が伝う。
しばらく、がりょがりょと氷を搔きこむ音だけだった。その音に紛れるから、言ったのだけれど。
俺「ベラ」
何気なく聞こえた声に顔をあげる。
誰にことだいと聞くと、貴女のことですよ。と微笑む。
聞きたい事は色々ある。いきなりどうしてだとか、そもそもスペルが全然違うだとか。
すると顔に出ていたのだろうか。彼は口を開いた。
俺「ベラは美しいとかでしょう?だからベラ。綺麗じゃないですか」
人の気も知らないで俺君は機嫌良くアイスペールと共に歩いてくる。
そんなの滅茶苦茶だと、そして単純だなと思うと同時に、笑いと溜息が出てきた。
クルピン「やっぱり俺君は変だね」
俺「…潔いと――――」
クルピン「変だよ」
そう遮られる。
失礼な、どこが変なのだ。
でも、隣でクスクス笑いながらグラスをゆする彼女が綺麗だったので
にやけと共に鼻血が込み上げるという奇異な現象を抑えるのに、俺は必死だった。
最終更新:2013年03月30日 02:30